novel

Distance 3round やわらかな傷跡 14


 こういうのは、物凄く心臓に悪い気がする。

 そう水渚が思うのは、さっきから見つめてくる大介の視線だ。

「なんで、そんなに見るの?」
 居心地が悪くなってきて、水渚はとうとうそう聞いていた。

 場所はホテルのレストランなのだが、向き合って食事をしているのに、大介はあまり食が進んでないようだった。それどころか、水渚が視線を上げると、必ず大介の視線とぶつかってしまうのである。

 これはもう絶対見られているとしか思えない。

「ゆっくりと水渚の顔を見るのも、久しぶりかと思いまして」
 ゆったりと答えられて、水渚は赤面した。

「というか、そっちが避けてたんじゃん」
 水渚がそう返すと、さすがにそれはまずかったと思ったのか、言い淀む大介。

「ええ、まあ。色々考えることがあったもので。そろそろ食事はいいですか? さっきから進んでないようですが」
 話をはぐらかした上に、そのマズイ視線で言ってくるから卑怯だ。

「もう、いい」
 どうにもならなくて、水渚は食事をすることを諦めた。元々さっきから永遠と肉を切る作業だけしかしてなかったのだ。

 部屋に戻ると、なんだかドキドキしてきた。昼間あんなことを聞いたせいかもしれないし、自分が何を期待しているのかも解っているからだ。

「お風呂は先にしますか?」
「あ、後でいい」

「じゃ、先に」
 大介はそう言うと、さっさと風呂に入ってしまった。
 一緒にとか言われたらどうしようと考えていただけに、ホッとする。

「つーか、昔一緒に入ってたじゃん」
 一人で自分の妄想にツッコミを入れて、テレビを付けた。特に面 白いものはやってなくて、ちょうどやっていた映画の画面のまま、ぼーっとしていた。

 思えば、大介のことを好きだと自覚したのは、今年になってからで、期間としては短いのかもしれない。
 でも、大介が自分を好きだと思ってくれたのはいつだったのか。

 なんだかんだで聞きそびれていた。両想いなのは嬉しいが、理由というかきっかけが思いつかない。

 大胆になったのは、京都へ着てからで、東京では結構普通だったと思う。あれ? でも出てくる前もちょっと大胆だったかもしれない。

 東京駅や京都駅であんまりなことがあったので忘れていた。 

「うーん」
「水渚」

「う、はい!」
 いきなり後ろから呼ばれて、びっくりして大きな返事をしてしまった。

「お風呂、入ってきなさい」
「う、うん」
 どうにもこうにも顔が上げられない。なんとか大介を見ないようにして風呂まで辿り着いた。

 風呂から出てくると、大介は珍しく酒を飲んでいるようだった。

 別に禁酒をしているわけではないだろうに、飲める方なのに、酒はあまり飲まない。
 ぺたりとベッドに座ると、大介は酒を置いて近寄ってきた。

 クシャリと頭を撫でると、すぐに首にかけてあったタオルで頭を拭いてくれた。

「また、ドライヤーかけてませんね」
「熱いから、やだ」

「まったく、昔から変わってませんね」
 大介はそう言ってクスクス笑っている。

「ねえ」
「はい?」

「なんで、いきなり、考えが変わったの?」
 水渚がそう呟くように言うと、大介の手が少し止まった。

「考えが変わったというよりは、考えてみるのをやめてみたというところでしょうかね」
 苦笑したように大介は言う。

「やめる?」
 考えさせる為に言ったのに、考えるのをやめたらいきなりこういう展開になるのか?と水渚はキョトンとする。

「保護者だとか、道徳観だとか。色々世間体など。手を出すべきではないと考えていたのですが、じゃあ、本当はどう思っているのかということを本能で選んでみました」
 まあ、保護者代理としてはそういうところは考えないといけないわけだが、そういうのを捨てて正直になったのだ。

「……それで?」
 本能で何を思ったのだろうか?
 水渚は大介に尋ねる。

「貴方がとても愛しいと。他はどうでもいいんだと思いました。もう手放せそうにないですよ。それでも貴方は私でいいんですか?」
 ゆっくりとした口調で言われ、顎に手を添えて持ち上げられた。

「大介がいい」
 水渚がしっかりとした口調でそう言うと、大介のバスローブの胸元をグッと掴んで引き寄せ、近寄ってきた唇にキスをした。

 ほんとに、キスなんて頬くらいしかしたことなかったのだが、今は大胆になるべきだと本能が言っている。
 そうして離れると、大介がニコリと微笑んでいた。

「嬉しいですよ。私がいいんですよね?」
「そうだよ」

「では、他の人にこんなことさせてはいけませんよ」
 大介はそう言うと、キスをしてきた。

 それはさっきの水渚のようなキスではなく、深いものだ。

 入ってきた舌を絡ませ、大介の舌は自由自在に動き回り、歯茎やら口の中を全部舐めてくるのだ。

「んふ……」
 口の動きが変わるたびに声が漏れるのだが、そんなことはどうでもよかった。
 今は大介を感じていたい。その気持ちが水渚は強かったからだ。

 ずっと傍にいてくれた人。
 自分だけを大事にしてくれる人。
 そして、死んでしまった人を大事に思い、思い出を共有する人。

 全てにおいて、水渚には上位に位置する人。
 その人が自分を好きだと、愛しいと言ってくれる。

 それが今は嬉しすぎて、どうにかなりそうだ。

「……は…」
 唇が離れたと思うと、急に息が楽になる。眩暈を覚えるようなキス。そんなのはもちろん初めてだ。

 大介はそのまま水渚をベッドに横たえると、上に乗りかかり、もう一度キスをする。

 そして顔中にキスを降らせて、耳まで舐め、更に首筋にもキスをしていく。
 ゆっくりとバスローブが外されて、大介の前に水渚の体が全部見えるようになる。

 肩を撫で、そこにもキスをする。そこは強めにキスをし、キスマークを残す。

 まだ、余裕があるのか、キスマークをつけてもいい場所といけない場所の区別 がついていた。
 水渚が感じる場所は全部覚え、キスマークを残していく。

 こうして所有の証を残すことで、自分が安堵している気がした。

「ん……あ」
 乳首まで行き着くと、さすがにそこも感じたのか、水渚が身じろぎをする。
 口に含んで舐め転がして、噛んで引っ張る。

「あっ!」
 水渚はじわじわとくる快楽に身を躍らせることにした。大介を信用しているのもあってか、行為には抵抗は無い。
 シーツをきつく握っていると、手を離され、大介の首に回すようにされてしまう。

 だが、そうして攻められると、大介の背中に爪で傷をつけてしまう。

「あ、ご、ごめん」
 気が付いてそう言うと、大介はニコリとして言うのだ。

「これは、男の勲章というものですからいいんですよ」
 そう言われて顔が真っ赤になる。
 つまり、大介がそれだけ水渚を感じさせているということになるからだ。

 大介は水渚の両足を開かせると、その間に体を入れ、太ももにキスを落とす。そこにもキスマークを残しておく。
 水渚自身はもう既に触らなくても勃っていて、汁も出ている。
 手で握ってやると、水渚の体がびくっと跳ねた。

 恥ずかしいのか、足を閉じようとするのだが、大介がしっかりと押さえているのでそれは出来ない。

 そして水渚自身を口に銜えると、腰が跳ね上がり、閉じようとする足の力が抜けた。
 水渚自身を口で扱き、舌で舐め、少し噛んだりすると面白いように体が跳ねる。

「あっ…ん…あん…はっ」
 耐えられないというように、頭を振っているが、それでも感じているのは確かで、大介の髪に手を入れて、なんとか外そうと掴んでくる。
 それも無駄な抵抗で、すぐに追い上げられ、水渚はそのまま達した。

「あああ!」
 強烈なものに圧倒されて、水渚は一瞬頭が真っ白になった。

 絶頂へいってしまったから、なかなか意識が戻ってこない。ぼんやりとして、視線が何処を見ているのか解らない。

 だが、その目は潤んでいて、とても綺麗だと大介は思った。

 意識が飛んでいる間に、大介は先へと進んで行為をする。
 そんな水渚が還ってきたのは、大介が水渚の孔を十分に解して、指を入れてかき回している時だった。

「あ! うそ!」
 いいところを見つけられ、そこを擦られたことで一気に意識が戻ってきたのだ。

 こういう行為だとは知ってはいても体験するのは意味が違う。
 こういう格好も恥ずかしいし、それで自分が感じているのも恥ずかしいと思う。

「大丈夫ですよ。ここで感じることが出来るのは、水渚もよく知っていることでしょ?」
 大介はそう言って、またそこを摩るようにして、指の抜き差しを続ける。

「あ、ん! ああ…ん…はあ…ん」
 解っている、知識としては知っている。だが、体験するのではわけが違うのだと言いたいのに、まったく声は喘ぎ声しか出ない。

「あ…は…ん…あぁ」
 拷問かと思うような快楽を与えられ、もうどうにでもしてと叫びそうになった時、やっとその指が引き抜かれた。
 ホッとしたところに、さっきの指より硬い大きなものが進入しようとしている。

 先が少し入ったところで、それは止まってしまう。
 それも水渚の体が固まってしまったからだ。

「……大介……」
 不安そうに見られて、大介は苦笑した。
 頬を撫でて、頭も撫で、そして頬にキスを落とす。

「大丈夫ですよ」
 とはいえ、途中で締め付けられたら大介もさすがに痛いのだ。
 でもそれは顔に出さずに言う。

「そもそも、こういう行為のためのものではないのですから、水渚がそうなるのは当然です」
「でも、大介、痛いだろ?」

「それは水渚でしょ?」
「あ、うん、まあ、痛いけど我慢出来ないほどじゃないし……」

「私は大丈夫ですよ。とにかく、やるにしろやめるにしろ、水渚が力を抜いてくれないとどうにもならないんですがね」
 そう言って苦笑された。

 だが、水渚は真面目に言う。

「どうすれば、大介が気持ちよくなれる?」
 そんなことを言われるとは思わなかったのか、大介の顔に驚きが表れた。
 それも一瞬で、すぐに笑顔になっていた。

「そうですね。力を抜く協力をしてもらいましょうか」
 そう言って、大介は水渚自身を擦り始めた。

「あ!」

「そう、そこに集中して。気持ちいいでしょ?」

「う、うん、あぁ!」

「その調子です」
 意識を他に向けて、大介はゆっくりと腰を進めた。それはなんとか全部収まる。

「はあ……はあ……」
 お腹の中に何かあるような感覚。それは大介の一部なのだと思うと、妙な嬉しさがある水渚。

「痛くはないですか?」
 大介が水渚の頬を撫でながら聞いてくる。

「もっと痛いと思ってたから、なんか拍子抜けって感じかな」
 噂ではかなり痛いのだと聞いていたから、耳年増な水渚は相当に痛いのだろうと思っていた。
 でも好きな人から貰う、快楽へ行くための痛さなど、そんなに耐えられない程痛いとは思えない。

 そんな話をすると、大介がクスクスと笑った。
 そうすると、自然に中のものが動いて、水渚を刺激してしまった。

「あぁ!」
 声を上げた水渚を見て、大介は苦笑する。

「もういいようですね」
 それが合図なのか、いきなり大介が動き出した。

 その動きに一瞬で翻弄され、水渚は喘ぎ声を上げるだけになってしまった。

「あ、あ、あ、あ…んん」
 中で動く熱いモノが、出入りするだけの行為なのに、どうしてこんなに感じてしまうのか、水渚には不思議だった。
 でもそれも最初のうちだけで、最後にはもう何も考えられなくて、頭の中は真っ白になっていく。

「もうっ……ああ!」
 そう言った瞬間、水渚は背を浮き上がらせていた。
 達してしまったのだ。
 それと同時に大介も達した。

 中に熱いものが注がれていくのがぼんやりとした意識の中であった。
 それが気持ちよかった。
 けれど、このまま寝てしまってはいけないと水渚は一生懸命起きようとしたが、それを大介が笑いながら言う。

「眠っていいですよ」
 一生懸命意識を保とうと、水渚は努力していたのだが、大介に言われたとたん、すとんと意識が無くなった。
 そこで、もう何も解らなくなってしまった。