novel

ROLLN’ 眠れる森の王子様 冬

 冬。
 寒い日が続いて、響も前程バイトに出なくなった。

 それも卒論が忙しくて、バイトどころではなくなったからである。

 楸も単位を全部取り、卒論に取りかかっていた。
 だが、その卒論も父親の死と共に止まってしまった。

 兄が倒れ、周りが自分を跡目へと押し上げようとしている中。楸に自由な時間はなかったのである。
 その間も、楸は雑務に追われながらも、一目でいいから響に会いたくなっていた。

 ほんの一目でいい。
 そう思っていた中、楸に意外な客が現れた。

 それは楸と響の中を引き裂く人物だった。





 その日の夜、楸は時々響に会いたくなってと自宅の方を訪ねた。

 ここに来るのも最後だろうと思いながらドアをノックした。
 そうするとすぐにドアが開いて響が顔を覗かせた。

「お、久しぶり」
 楸の顔を見ると、響はすぐに笑顔になった。
 店にバイトにいかなくなってから、楸には初めて会う形になっていた。

「酒持って来たが飲むか?」
 酒の入った袋を差し出して家の中へ入った。
 響は貰った袋の中を覗きながら嬉しそうに微笑んだ。

「おお、飲みたかった所なんだ」
 ラッキーといいながら6畳の部屋へと入って行く。

「上機嫌だな」
 楸は不思議そうに聞いた。
 どうやら響は、楸の父親が亡くなった事を知らないようである。その様子を見ていれば解る。

「卒論が終わったんだよ」
 響は本当に嬉しそうにしていた。
 この卒論があるから、あの人物は響に楸の父親の死を知らせなかったらしい。

「そうなのか」
 納得がいった瞬間だった。



 酒を飲み初めて解った事があった。
 響は酒に酔うとタチが悪いという事である。

 響が酒に弱いのは知っていたが、ここまで絡むのは、やはり卒論が終わった嬉しさからなのだろう。

「ひさぎ〜」
 酔った響は楸に抱きついてきて、キスをせがんでくるのである。

 これにはさすがに参っていた。
 何度か、軽いキスをしてやっても、響は満足する事は無い。

「お前、キス魔か……そういやキスだけは好きだったよな」
 仕方ないとまたキスに応じることにした。

 前にもした事があったので抵抗はなかった。
 響の望み通り以上のキスをしてやる。

「は……ん」
 響はすぐにキスに夢中になった。

 その時になって、楸は気が付いた事があった。

 自分は響の事を恋愛感情でみていた事に……。
 本気のキスをしながら、楸は自分を押さえきれなくなっていた。

 楸はそのまま響を押し倒した。
 欲しいという感情が湧き上がってきて、響を抱きたいと思ってしまったからだ。

 酔った響は抵抗しなかった。
 それどころか受け入れている。

「本気で抱くぞ」
 キスが終わったところで楸が言った。
 響はぼーっとした顔をしていて、楸が言った言葉に首を傾げていた。

「抱きたいの?」
 そんな事を言い出した。
 まさに楸を悩殺する顔である。

 酔っている響は気が大きくなってしまう癖がある。だから冗談のつもりなのかそんな事を言い出したのだろう。

「じゃあ、遠慮なく抱くぞ」

 楸も覚悟を決めた。
 素直に抱きたいと思ったからだ。

 服を脱ぎ、響の服も脱がしていく。



 楸が覚悟を決めたのは、大学を出たら、もう響とはこうして会う事がないだろうと思ったからだ。
 それが響の為になる。

 借金は姉の方から貰っている。

 その姉から言われたのである。
 呼び出されたのは、雅が勤めているバーの方だった。
 そこで厳しい顔をした雅。

「単刀直入に言うわ。響と付き合わないで欲しい」
 本当に単刀直入だった。
 楸は少し考えてから聞き返した。

「何故だ?」
 そう聞いた楸に雅は真剣に答えた。

「あの子には普通の生活をしてほしいからよ」

「俺が普通じゃないからか……」
 納得がいった。

 自分は今やヤクザの跡目代理である。
 それを警戒するのは、普通の人として解る事だった。

「そうよ。あの子、貴方のことばかり話をするのよ。それは悪いことではないかもしれないけど。これから社会人になるあの子には、貴方に側にいられると困る事もあるから」
 そんな事を言われたのである。

 確かに響に自分は必要無いとは思った。
 響に迷惑を掛けてまで付き合いたいとは思えなかった。

 借金をしているのは姉の方であると、父も言っていた。
 その父も一週間前に亡くなった。
 借金の事は全て楸が請け負ったことになる。

 だから、その事で響の姉、雅に呼び出されていたのが今日だったのである。

 そのむしゃくしゃした気分が、響を抱くという行為に変わってしまっていた。

 こいつを失いたくない。そうした気持ちがあった。
 だが響の為になるなら、離れてやるのも仕方ない。

 それなら、響が会いたくなくなるような事をしてやればいいと自暴自棄になっていた。


「ん……」
「響……」
 唇を離して、耳にキスをしながら楸は響の名前を呼んでいた。

「あ……や……」
「お前が望んだんだぞ」
 楸はそう言って、響の身体にキスマークを残して行く。

 響の身体が、楸を夢中にさせた。
 女しか抱いた事はなかったが、響の身体は男っぽくなく、肌触りは女の方に近かった。

 乱暴に肌にキスマークを残して、胸の突起に吸い付いた。

「や……あぁっ」
 舌で捏ねて軽く噛んでみる。

 すると感じているのか、響の下腹部には熱いうずきが生まれていた。
 強く噛んだりして歯を立てると、響の身体がびくりと跳ね上がる。

「んんっ!」
 そんな響の声を聞いていると、楸も行為に夢中になってきた。
 優しく下着を脱がせ響の中心を握ってやると既に固くなっていた。

 萎えるどころか、そこはますます熱く固くなっていく。

「あっ!」
 響の形をなぞって指に力が入る。
 楸の無骨そうに見える大きな手が器用に動く。

 響が自分で処理する時とは大違いだ。

「気持ちいいのか?」
 固い指の腹で更に強く扱いて行く。

「あっ!んんっ!」
 響自身を包んだ手が上下に動くとあっという間に響は達してしまった。

 それから響の両足の間に楸は顔を落とした。
 響の張り詰めた中心にねっとりとした感触が襲う。

「はぁ……あっ……あっ!」
 柔らかくざらついた舌が絡み付く。

 響は楸の頭を引き剥がそうとしていたがその力はまったく入っていないも同然だった。

「……あっんぅ……っ」
 どんどん息があがって、淫らな声が響の口から漏れる。

 濡れた音が響いて聞こえ、卑猥な響きになっている。

 それまでより強く吸ってやると、響は我慢出来ずにその熱を解放してしまう。

 響は荒く息をしながら、その余韻に頭がぼうっとしてしまう。

「ん……」

「まだ終わりじゃないぞ」
 吐き出した精液を後ろの穴に流し込むようにして、楸は指を一本穴に入れた。

「あっ!」
 びくりと響の身体が跳ね上がる。

 それを押さえ付けて楸はゆっくりと指を動かした。

「んっ……はっ」
 初めてにしてはかなり簡単に響は指を受け入れていた。

 ゆっくり出し入れを繰り返すと、響の息も上がってくる。

 更にそこに二本、三本と増やしていく。

「んんっ……あっ」
 中で指を挫いて、内壁を引っ掻いてみる。
 何かを探るように動く指先。

 ある一点を通り過ぎた時、響が甘い声を上げて背中が弓形に撓った。

「ここか?」
 楸はそれを確かめた。

 すると響が一層高い声を出している。
 ここが響の感じる場所。

「んっ……変……」

「何が?」

「じんじんする……あっ!」
 何度も出入りを繰り返す指。

 それに響は甘い声を上げて身体を開いて行く。
 体内を出入りしていた指を楸は一気に引き抜いた。

「もう大丈夫だろう」
 そう言うと、響の足を大きく開いて穴に己を突き刺した。

「いっ!」
 痛い感覚が襲ってきて、酔っていた響は一気に酔いが覚めた。

「楸……っっ!」
 痛さのあまりしがみついた楸の腕に爪を立てて引っ掻いた。

「っ!」
 楸は小さな声を上げて、中へ入る動作をやめた。

「いっ痛い……っ!」

「力を抜いてくれ」
 楸はそう言って、響の中心に手を這わせた。

 何回か扱いてやると響の力が抜ける。
 それを見逃さず、楸は一気に響の中へと押し入った。

「あっ!」

「きつい……」
 楸ははっと息を吐いて、そこが自分に馴染むまでゆっくりと待った。

 響は圧迫感に苦しそうな表情を浮かべていたが、だんだんと楸の大きさに慣れてきていた。

「大丈夫だな」
 馴染んだのを確認してから楸はゆっくりと腰を動かした。

「っ!あっ!」
 響はぎゅっと目を瞑ってその衝撃に堪えた。
 痛みが襲ってくるかと思ったが、それ以上の快楽が響を襲って来た。

「ああっ! あ……んっ!」

 中をかき乱されるのと同時に感情までも持っていかれてしまう程、響は快楽を味わっていた。

 ぐしゃぐしゃとした感情。
 部屋には響の甘い喘ぎと、楸の息遣いしか聴こえない。

「も……だめ……」
 与えられた快楽に響は溺れていたが、もう三度目の限界が近付いていた。

 楸はより一層強く腰を振って二人は一緒に絶頂を迎えた。

「……はぁ……なんで……?」

「こういう意味でお前の事を好きだからだ。だからもう会わない。次会った時は覚えてろ。その時はもう離さないからな」
 白濁する意識の中で、響は楸が何度もそういうのを聞いていた。そしてそのまま意識を失った。

 楸はそんな響を一回しっかりと抱き締めた後ベッドに寝かせた。
 そしてそのまま部屋を後にしたのだった。



 響が目を覚ました時には、もう楸はいなかった。

 だが、楸に抱かれた事。
 そして最後に残していった言葉はしっかりと残っていた。

 そんなつもりではなくて、酔った勢いとはいえ、もう友達とは呼べない関係になってしまった事を、響は後悔していた。

 楸は響に恐怖だけを残して去ってしまったのである。



 それから楸とは連絡を取ってなかった。
 響は卒論が終わっても、バイトに出なくなった。

 次会った時、楸は自分をまた抱くだろう。そして離さなくなるだろう。その恐怖が自分の中に残っていたからだ。


 それから響は噂を聞いた。
 跡目争いがぼっ発し、混乱の中楸の兄が死んだ事。
 そして、楸が宝生組長組長として立った事。
 全部、流れてきた噂だ。


 それから二人は顔を会わす事はなかった。