novel

ROLLIN'2-9

 ぽっかりと目が覚めた響は、見慣れぬ天井を見つめ何度も目を閉じたり開いたりして、状況を判断しようとしていた。

 どう見ても知らない天井だ。確か会社にいたところまでは覚えている。だがこんなところに来た覚えはない。散々考えて、記憶が微妙に抜けていることに気付いた。

 会社にいて、何かしようとして部署を出た、そこまでは覚えているのに、何をしに部署を出たのかはっきりとしない。
 一体、自分はどうなったんだ?とやっと起き上がって周りを見渡し、呆然とした。

 大きな部屋だ。ベッドが中央にあって、部屋の周りには立派な調度品が並んでいる。

「えっと、どこだ?」
 白い壁、綺麗な絵画、綺麗なタンス。どれも身に覚えはない。
 ゆっくりとベッドから出て慎重に窓に近づく。

 そこから眺めた景色は、海だった。大きな窓ははめ殺しで開きはせず、その窓の下を見ると、断崖絶壁だ。飛び降りたら絶対に死体もあがりそうにない。
 外に繋がりそうなドアを見つけて開けてみようとしたが、鍵がかかっているのか、ドアノブは全然回ってくれない。

 一体何が起こったんだ? 
 混乱しながらも記憶を纏める為に部屋中を歩き回って考えるも、やっぱり部署を出てからの記憶がない。

「頭でも打ったのか? なんで覚えてない?」
 そうして考えているうちにドアが開いて人が入ってきた。
 びっくりしてそっちを見ると、そこには一人の男が立っている。

「起きたか」
「え、あ、はい」

「飯が出来てるぞ、こっちは昨日のだから、下げよう」
 男は大きなお盆の上に乗った食事をドア近くのテーブルにあった別の食事と取り替えて、ドアの外の誰かに渡して、部屋のドアを閉めてからこっちを向いた。

「どうした?」
 ポカンとしている響を見て、男はにっこりと笑った。
 その顔を散々凝視して響は聞く。

「あの、清掃員さんですよね?」
「ああ、あの時はそうだったな」

「あの時? えっと一体何がどうなって?」
 男は会社の清掃に来ていた清掃員だ。服装が軽いスーツだったので見違えてしまったが、顔を眺めている間に思い出した。一回しかちゃんと話していなかったが、絶対にそうだ。

「ん? もしかして覚えてない? びっくりしすぎて記憶抜けたか」

 そう言って男が近づいてくるのだが、その足取りに響の頭の中がチカチカと危険信号を出してくる。絶対にこいつに近づいたら駄目だ。間合いを取らないと危ない。そう告げている。清掃員の姿をしている時にはまったく感じなかった警告が今は凄く鳴っている。

 一歩二歩と近づいてくる相手に合わせて響が身を引くと、男は笑って足を止めた。

「ああ、正気だと駄目か。分かった、今はこれ以上近づかない」
 男はそう言って下がると、食事がおいてあるテーブルの傍にあった椅子に座った。

「何が聞きたい?」
 ニコニコした相手に響は未だに警戒心をむき出しにして、まだ怖いので一歩下がってから言った。

「あなた、誰? 清掃員は分かってるけど」
「俺は九十九朱明(つくも しゅめい)と言う名だ。清掃員は昨日で辞めてきた」

「ここは何処?」
「俺の家」

「海が見えるんだけど……いや、そうじゃなくて、なんで俺ここにいるんだ?」
「俺が連れてきたから。海はいいよな」

 どうしよう話になってないような気がする。
 全部俺が俺がで済む話じゃないのに、相手はそれで済むと思っている節がある。

 九十九朱明……全然知らない名だ。聞き覚えもない。そもそも清掃員の時につけていた名札は別の名前だった。そう高木だったか。
 偽名? だが偽名を使って就職してどうなる?

 いや、その前に、誰だかよく分からない人に、知らないところに連れてこられた事実を問題にしなければならない。
 誘拐。それが頭を過ぎって目を見張る。

「まさか、誘拐?」
 自分が誘拐される事態になるには、宝生関係しかない。ただの響を連れてきたとしても意味はないはずだ。しかし、不用意に宝生の名を出すわけにはいかない。関係がなかったとしたら危険すぎる。

「誘拐ではないな。俺のものを取り戻しただけだ」
「は……? 何言って……」

「お前は生まれた時から俺のものなんだ。生かすも殺すも俺の自由になるものなんだ」
 意味が分からない……そもそも俺のものとか言い切る自信があること自体が変態だ。

「いや、俺はあんたのものじゃないし、生かすも殺すもとか意味分からない」
 響がそう言い返すと、九十九は首を傾げて言う。

「お前の母親は月時梓(とき あずさ)だよな?」
「……そうだけど」

「父親は知ってるか?」
「……知らないし、知りたくない」
 交通事故で死んだと聞いていたが、就職するにあたって自分で戸籍を動かした時に、自分には父親がいないことを知った。そもそも伯父の話は怪しかった。父親について尋ねると必ず困った顔をしていたし、写真は一枚もなかった。処分したにしては徹底していたし、母親の写真を伯父が隠していたことやそこに父親らしい姿を見つけることが出来なかったことを思い出し、戸籍の父親の欄の空欄になるほどと納得したくらいあっさりしたものだった。

 今更、生きていると言われても困る。死んでいたとしても伯父が語りたがらなかったくらいだから、余程困った存在だったのだろう。それなら知らない方がマシだ。

「何故知りたくない?」
 九十九は不思議そうに響に聞いてくる。

「今更だから。生きていたとしても死んでいたとしても、もう関係ない」

「いや、関係はある。お前が何故ここに居なければならないか、俺のものであるのか、そういう意味で父親の存在は大事だ」
 九十九ははっきりとそう言い切った。

 何故自分がここに居なければならないか? それに父親が関係している?

「まさか……あんたが父親とか言うなよ……すっごい冗談に聞こえるし、そんなことであんたのものって言われる筋合いはない」

「俺の子だったら興味は一切無い。お前は俺が唯一興味があった人間の子供だからな。顔はあの女に似ているが、目や体つきに至っては父親そっくりだ」
 響の体中をなめ回すように見ての満面の笑みだ。

 どうしよう……本物の変態だ。楸のことを変態だと思っていたが、それ以上の変態にお目に掛かるとは思わなかった。
 体つきが父親に似ているからとか言い切っているが、思いっきり変態のオヤジだ。
 ぞっとして思わず出来た鳥肌を撫でていると、九十九は笑って言うのだ。

「お前だって、男のパートナーがいるだろう? それと一緒だ」
「い、一緒にするな!」
 一気に全身に鳥肌が立ってしまったではないか。

 逃げたい、すごく逃げたい。危機感が一層高まってしまったが、逃げられる場所は男が座っている椅子の後ろのドアしかない。窓ははめ殺しで開いたとしても海にダイブは勘弁だ。なので前進するしかないのだが、あの男に一歩でも近づくのはマズイ。射程距離に入ったら勝てるかどうか分からない。

 危機感があるのは相手に迫力があるからだ。威圧感だけが伝わってきて、それを浴びているだけで一歩も動けない有様だ。

 楸以外の相手にここまで怯んだことはない。ましてや相手は素手だ、飛び道具を持っているわけでもないのに、ここまで怯んだのは初めてだ。

 楸……あれ、今、男のパートナーって言ったよな? なんで知ってる?
 九十九の言葉を反芻して、響は目を見張る。

「男のパートナー。宝生楸、宝生組の組長。関東のヤクザを束ねるトップクラスの男。お前がその男の相手になったのは、大学の時か。それから二年ほど疎遠になっていて、再会し、4年前から同棲。宝生の一族からパートナーの証を貰っている存在。ああ、宝生の跡取り耀の家政夫という名目もあったか」

 つらつらと出てくる情報に響は冷や汗をかいた。確かに調べれば分かってしまうことだが、宝生の一族から証を貰ったことはほとんどの人は知らないはずだ。精々、想像で付き合っている関係と言い切るくらいなら誰にでも出来るかもしれない。むしろ情夫と言い切られた方が想像しているだけだと言い切れる。なのに、どうしてそれを知っている。どうしてそこまで詳しい。どうして響と楸の最初の出会いと別れを知っている。
 驚いて目を見開いている響に男は笑って手の内を明かす。

「情報は何も転がっているものではない。条件次第で貰えるものだ。まさか、身内から売られるとは思わなかっただろう?」
 身内に裏切り者がいるのだと九十九は言っているのだ。

 どうしよう、今宝生は大変な時期のはずだ。ただでさえ関西ヤクザやら大阪の事件やらで忙しい時だ。楸は自分たちも狙われている可能性を感じて、ほとんど事務所に泊まり込み状態なのだ。

 そんな時に身内に内通者がいることは痛手だ。

 響はキッと目の色を変えるとさっきまで怯んで距離を置いていた男に近づき、その横を通り抜けてドアに飛びついた。
 しかしドアは外側から鍵を閉められているようで、ドアノブは動かない。

「……くそ!」
 殴っても開きそうにないドアを何とか開けようと、余っていた椅子を掴んでそれでドアを殴った。
 だが、ドアが頑丈だったのか、椅子がもろかったのか、椅子の足が折れた。それでも殴り続けているうちにドアにはうっすらと傷は入ったが表面上のみでまったく損傷がない。

「なんで!」
 苛立って声をあげると、九十九がくすりと笑って言った。

「中に厚さ5センチの鉄板が入ってる」
「はあ!?」
 そう言った九十九になんでそんなものが入っているんだ?と忌々しいものを見るように睨み付けると、彼は更に笑顔になった。

「世の中、なかなか物騒なんで、一応の用心」
「物騒なのはあんただよ!」
 肩で息をしながら怒鳴りつけても九十九の笑顔は変わらない。
 そんなに面白いのかよ!

「ああもう! 出るにはどうしたらいいんだよ!」
 椅子を放り投げて窓側に行って窓を弄るも、やっぱりはめ殺しなので開くわけない。

 唯一あったバルコニー付きの窓も鍵がかかっているのか開いてくれない。傍にあった花瓶を振り上げて窓に投げつけるも、無惨に砕けたのは花瓶の方だ。窓には傷すら入っていない。

「そっちは防弾入ってるからなかなか割れないだろうな。割れたとしてもそっちは断崖絶壁だ」
「あっそう!」
 叫んで振り返った時、向こうのドアが開いていた。

「大丈夫ですか。凄い音がしたんですが?」
 一人の男がドアを開けて覗き込んでいる。

「ああ、大丈夫。猫が暴れているだけだ、問題はない」
「花瓶割ったんですか? 高いのに。すみませんが片付けておいてくださいね」

「ついでに椅子も壊した」
「あらら、見事な暴れっぷりですね……で、なんであなたは無傷なんですか?」

「さあ?」
 この暢気な会話に怒りが頂点に達したのは響だ。

 一気にドアまで走ったのだが、ドアにたどり着く前に九十九が立ち上がって響の進路を塞ぐ。伸びてきた手を避けて体を回してすり抜けてドアに飛びつこうとしたが、九十九の長い腕が響の腕を掴んだ。その捕まれた手の手首を反対の手で掴んで引きはがそうとしたが、体の重心がずれてそのまま九十九と一緒に絡まるように床に転がってしまった。

 響が下敷きになる形で上に九十九の体が乗っている状態、響は九十九に素早く両手を押さえ込まれてしまった。

「離せ!」
 体を起こそうとしても九十九の全体重を押し返すことは無理で、更に腕を押さえつけられているから体は起き上がれない。首を動かしてちょうど口が届く範囲に九十九の腕があったので響はそれに噛みついた。

 しかしかなりの強さで噛んだというのに、九十九は声を発することもなく振り払うわけでもなくじっとしている。
 暫く強く噛んでいたが、段々顎が疲れてきて、根負けしたのは響の方だった。

「……は……」
 ぐったりとして九十九を見上げると、彼は笑顔だった。

「いい噛みつきっぷりだな。結構痛かった」
「……平気な顔して……嫌みか?」
 こうして騒いでいる間にドアは当然閉まっていて唯一の出口がふさがれてしまった。

 ドアが閉まっているのを確認してから、九十九はゆっくりと響の上から退いた。その行動をゆっくりと見送った後、響は座ったままで後退った。

 九十九は噛みつかれた腕の袖を捲くって噛みつかれたところを見ていた。

「綺麗な歯形だな。牙だったら穴は空いたかもな」
 噛まれた痕を響に見せてそれを指でなぞって笑っている。その様子が自分の歯を撫でられているような気がして、響は更に後退った。

 正直、この男の感覚がさっぱり分からない。
 まともな痛覚を持っていたら、あの場は響を押さえている腕を放して抵抗するはずだ。そうして出来た隙に逃げだすつもりだったのに、この男は平気で耐えた。

「お前、可愛いな。頭はいいようだし、勘も鋭い。とっさの判断も上出来だ。俺が相手じゃなければ一回で勝てたのにな」

「そういうあんたは頭大丈夫か?」
「それはよく言われる台詞だな」
 よく言われるということは、普段もこうなのだろうか……。

「法月(のりつき)」
 九十九が呼ぶとドアがまた開いた。けれど戦意喪失している響はそれ以上九十九には近づかなかった。法月と呼ばれた男は、中を覗き込んで何ですか?と聞いてきた。

「見ろ。噛まれた」
 にっこりして報告する九十九に法月は驚いていないようだった。

「豹とかライオンじゃなくてよかったですね。ああ、向こうはドン引き中ですか。じゃ椅子片付けてしまいますね。花瓶はあなたがやってくださいよ。はい、箒とゴミ箱。私は噛まれるのはごめんですから」
 さっさと九十九に箒やらを持たせて、壊れた椅子を持つと法月は部屋を出て行った。

 九十九は言われた通りに花瓶の破片を後片付けし始めた。
 それを横目にしながら、響はなるだけ九十九とは距離を置いた。
 片付けが終わると九十九は部屋を出て行ってくれるようだ。それをじっと見送っていると、九十九は振り返って言った。

「飯、冷めてるけど、食べておけよ。昨日の昼から何も食べてないから、あれだ、力が出ないあんパンと一緒だ」

「い、一緒にすんな! 大体アンパンマンはお腹が空いて力が出ないなんて言ったことないぞ!」
 思わずアンパンマンの知識を披露してしまい、慌てて響は口を手で塞いだ。

「さすが家政夫、詳しいな」
 ニッと笑うと九十九は大人しく部屋を出て行った。
 九十九の気配がなくなると、響はどっと疲れが一気に出たようにぐったりとその場に寝転がってしまった。

 くそ……超弩級の変態相手かよ……。
 確かにお腹が空いていると力が出ないのはその通りだ。
 のそのそと起き上がった響は、出された食事を食べることにした。

 あの変態がどうやらこっちが起きている方がいいらしいので、食事に何か仕込むような真似はしないだろう。そう変な信用をして響は食事を平らげることに集中した。


「まったく何で噛まれてるんですか」
 法月は消毒液と包帯を出して九十九を手当しながら文句を言う。怪我していないのかと安堵したとたん噛まれてくるなんて、なんという酔狂な。

「あっという間に噛まれたからな」
「そこは振り払うべきでしょうが」

「いや、それがあっちの狙いだったからな。あそこで押さえていた腕を放していたら俺が頭に一発くらって終わりだ」
「あーなるほど。頭に血が上って暴れてるのかと思ってたんですが違ったんですね」

「ちゃんと状況判断してるぞ、あれでも。ドアの時は椅子使ったし、窓の時は花瓶だったけど、あのまま見てたら椅子持って窓に再突撃していただろうよ」

「……補強しておいてよかったですね。冗談だった窓から飛び降りるが可能だったかもしれないわけですし。でもあなたを人質に取って出てくる方法もあったでしょうに」

「俺以外に人がいなかったら意味がないだろう、その作戦」
「あーなるほど、わざと音を出してどれだけ人が駆けつけてくるか確認してたんですか。それで相手の人数数えて、仕留める予定たててたんですか。まったく綺麗な顔して戦闘体質ですね」

「だから、お前絶対にあの部屋入るなよ。まずお前が確実にやられるから」
 今度は触るなではなく、あの部屋に入ることすら禁じられた。だが話の流れからこれは忠告であるのは間違いない。

「えーと、私が一番仕留めやすいと判断されたわけですか……?」
 法月はぎょっとして尋ねた。まさか顔を覗かせただけでそう判断されるとは思わなかったようだ。

「俺とお前どっちとやるかってなったら、確実にやれるお前の方を選ぶだろう。お前、走っている最中に横にいた人間に急に目の前に手を出されたとしたら、それにぶつからずに避けたりできるか?」

「無理ですよ。普通の人間はびっくりしたままぶつかるか、避けようとして止まるのに失敗して地面に転がるかですかね?」

「綺麗に体反転して避けたぞ、あれ」
 そう言われて法月は信じられないものを見るようにして九十九に言った。

「……そんな人間、どうやって攫ってきたんですか……」
 人気のない裏路地で戦ったわけでもなし、しかもこれだけ言われたら通りすがりに何かしようとしても全部避けられる計算になる。それを社内で平然と攫ってきたのだから信じられないのだ。
 一歩でも出遅れて、それこそ物投げて騒がれれば、九十九でも躊躇する展開だ。

「それこそ偶然の産物だな。運がいいんだろう」
 確かに偶然で運がよかった。あのビデオを会社で見るとは思わなかったし、あれほど無防備になられるとも予想してなかったのだから。

 しかしあの動きを見ていたら、会社で攫う計画は無理だったようだ。正直一度動きを見ていたからそれなりに予想していたが、あそこまで完璧に動かれたら、こっちの方が確実に沈められていたかもしれない。さっきのは腕のリーチ差だけで勝っていたようなものだ。あそこで腕を掴めなかったら、あの部屋からは逃げられていただろう。

「まあ、私が仕留められたところで、この屋敷から出られないから大丈夫でしょうけど」
 法月がそう言って包帯を巻き終えた。

「他に何が出来るのか分からないから、部屋からは一歩も出したくない」
 九十九は言って巻かれた包帯を眺めている。ニヤニヤ笑っているのは、彼が法月が知っているこの10年の間、もしかしたら法月が知らない間も、彼が誰かに傷つけられたことがなかったからだろう。ある意味互角に刃向かってくる新しいおもちゃが愉快で楽しいのだ。

 だが新しいおもちゃの性能が不明な分、九十九もかなり警戒をしているようだ。その緊張感も高まって興奮もしている。久々に揺り動く自分の動揺も楽しんでいるらしい。

「酔狂もほどほどにしてくださいよ。ああ、そろそろ電話の準備が出来ます。まったく非通知完全無視とは恐れ入りましたよ。お陰で手間暇かかって仕方ないです。でもなんで今更電話なんてするんですか? このままだったら正体不明のままだと思うんですけど」

「ああ、なんか面白いことが起こりそうだからな。反撃も見てみたいし、やりっぱなしなのもつまらないから」
「はあ? 反撃ですか?」

「親子二代で何が出来るのか、興味がある。黙りのまま死んだ先代がどれほどの情報を持っているのかも知っておきたいしな」
 九十九はそう言って真面目な顔をした。