novel

ROLLIN'2-20

 宝生の本家に戻ってくると、本家を取り仕切ることになっている犹塚(いづか)が真っ先に顔を見せた。
 ヘリから組員が降りているが、楸のヘリからは槙と二連木が降りてきたが、楸と響が降りてこない。まさか何かあったのかと心配して近づくと、槙が大丈夫だと言った。

「すみませんが、響さんが着られそうな服ありませんかね?」
 槙がそう言うので犹塚が部下に指示を出して浴衣を持ってくると、ヘリの中で響の怒鳴り声がした。

「お前! 下着まで脱がすことはないだろう!」
「やまかしい、大人しくこれを着ろ。そんな敵の匂いが付いたもので本家に上がるな」
 どうやら取り込み中のようだが、ヘリの中から背広、ワイシャツ、ズボンと下着が順番に放り出されてきて部下達が呆然としている。

「犹塚、それは念入りに検査したあと燃やしておけ」
 組長から妙な指示が出て犹塚が首を傾げると、槙が付け加えた。

「九十九の持ち物だったものです」
「ああ、なるほど」
 戦利品がこれだけしかなかったのは仕方ない。
 先に報告を受けていた犹塚は、丁寧に服を保管して検査に回している。

「しかし、九十九も思い切ったことをしましたね。いくら響さんがあそこまでやったとはいえ、要塞を放棄とは」
 部下から映像で九十九の屋敷を見せられた時は、さすがの犹塚も眩暈がしたものだ。

 あれを響一人がやったと言われ、本家の老院たちはみな口をあんぐりと開けてその映像にかじりついてしまった。眩暈がしたのは犹塚くらいで、その映像を平気で見ていたのはじじいくらいだった。

「ようやりおる。あれが敵に回ったとしたら、空恐ろしいのう。一人であそこまでの働きをする者は今時おらんだろうし。あれを関西にただでくれてやるのはあまりに無謀な策よの」
 じじいはそう言って笑っていた。

 それを聞いた他の老院はぞっとしたものだ。響一人を敵に回すということはこういうことなのだと見せつけられたようなものなのだ。宝生の本家から部隊がたどり着く前に、九十九に誘拐されたはずの響が九十九の屋敷を半壊させ、九十九に反撃する余裕すらなくしていたのだから、やっと彼らは分かったのである。

 あれこそ、組長のパートナーであると。問答無用で知らしめたようなものだ。
 案の定、あそこまで一人でやり、九十九が屋敷がある島を放棄せざるを得ない状況に一人で持って行った響のことは、あの惨劇を直に見た組員の方が恐ろしいと実感している。
 響を怒らせるということはああいうことなのだ。

 組員達は響が武器を使えないことは知っている。耀の射撃訓練には来たことはあるが、響は見ていただけで、銃にすら触ったことはない。それなのに、どうやったらあそこまで持って行けるのかが分からない。だから余計に恐ろしい。

 最終的に九十九には逃げられたが、九十九に与えた打撃は大きかったし、九十九が隠れるつもりで用意していた島そのものを放棄させる結果になったことは、結果としては今回の事件、九十九に勝ったと周りに知らしめることが出来る。

「大体な! 「花火」って一言でどうにかしろってのがおかしいだろう!」

「「花火って何のこと?」と聞き返さなかっただけで上出来だ」
「どさくさに紛れて、約束もしてない「花火」とか意味分からない上に、テレビであんなの見せられたら、聞き返す暇あるか!」

「お前にやって貰いたかったことだから仕方ないだろう」

「俺はバズーカしか使い方知らないし、それがなかったらどうしたらよかったんだよ!」

「九十九が島にいる可能性があがった時から、バズーカくらいは用意しているだろうと思ったんだよ。それにお前が使えるのはそれしかないと分かってたから暗号を「花火」にしたんだ。一番似てるだろ」

「似てるか! 俺は昔見た懐かしバラエディの寝起きバズーカしか知らないし!」

「景気よく二階に五発、一階は一発、武器庫狙って屋敷半壊させておいての台詞か。寝起きどころの騒ぎじゃなかっただろうが。それとも巨人のガリバーでもあの島にいたのか?」 
 楸がそう言うとやっと響が反論できなくなった。
 さすがに響も景気よくやり過ぎたと思っていたらしい。

「普通、暗号で、しかも花火=バズーカになる思考回路が謎ですけどね」 
 槙が冷静に突っ込んでいるが、周りはこれを聞いて、楸が「花火」という暗号を送り、それに響が答えた形になっていた事実を知った。

「とにかく、その嫌な匂いがついている体は早々に洗ってもらおうか」
 楸がそう言ってヘリからやっと降りてきた。
 楸はすぐにヘリの中にいる響に手を貸して下ろそうとしたが、ふと思いついたように響を肩に担ぐとそのまま屋敷の方へ歩いていく。

「お、下ろせ! 歩けるから!」
「暴れると、浴衣がめくれて恥ずかしいことになるぞ」
 肩で暴れていた響は楸にそう言われてハッとなったようでピタッと暴れるのをやめた。さすがに下着すら着けてない状態は恥ずかしかったらしい。

 楸は本家に入っていくと出迎えに出ていた老院を無視して、控えていた内部の案内役にまず風呂への案内を頼む。無視された老院は響の方を見ることが出来ない者が多く、どうやら楸よりも素人である響の方が今は畏怖的存在のようだ。
 響に本格的にヤクザの知識を与えて鍛えたら、響はきっとすぐに楸と同じ位置に立てるような存在になれる。それだけははっきりと分かった事だ。

「話は風呂へ入ってからだ」
 楸がそう言うと、一同は安堵したらしい。
 とりあえず興奮しているらしい響を宥めてくるということなのだ。
 風呂へ案内された楸は、槙や二連木に風呂には誰も近づけないように言い含めると、そのままドアを潜っていった。

 楸は服を脱ぐのも面倒だと言わんばかりに、そのまま脱衣所を抜けると大きな杉の木で出来た風呂へ抱えていた響をぽんっと放り込んだ。

 いきなりお湯の中へ放り込まれた響はパニックになる。いきなりのお湯、体制が悪かったから一瞬溺れそうになる。手足をバタバタとさせて上半身をやっと浮かせて叫んだ。

「はぁはぁ……お前なっ……っ!」
 響が放り込んだ楸に文句を言おうとすると、楸も服を脱がずに風呂に入っていて、目の前に顔があったのだ。しかも怒鳴ろうと叫んだ口に楸はキスをしてきた。
 やっと息をした口に楸の口が重なっていると認識したとたん、楸はディープキスをしかけてくる。

「んんん……っ!」
 深く入り込んできた楸の舌が響の舌に絡んでくる。響はそれが苦しくて暴れていたが、楸が響の顔を両手で包んで更に深くキスをしてくると後は翻弄されるばかりだった。

 久々のキス。やっと安心して出来るキス。
 楸が事務所に泊まり込むようになって約三週間、そして響が誘拐されて三週間。一ヶ月半の間、二人は触れ合うどころかキスすらまともにしてなかった。

 熱く求めてくる楸は荒々しいキスをしてくるし、響は久々のキスに眩暈がするほど感じていた。楸が一旦息が出来るように響の唇を開けるもすぐに響の方が楸の唇も求めてキスをしてくる。

「ん……あ……はぁ……ん」
 向きを変えて何度も求め合って、やっとキスが終わった時は、響は口の中が麻痺したようになってしまった。

「はぁはぁはぁ……ん」
 響が深呼吸するように息をしている間、楸は響の顔中にキスをして首筋にもキスをした。

「……お前、無茶するなよ……スーツ1着駄目にしたじゃないか」
 全身風呂に浸かっている状態の楸を見た響は、そう文句を漏らした。キスをしてきたことや放り込まれたことは置いておいて言うことはこれだ。

「どっちみち、硝煙反応が出るような服を着て都内に戻るわけにはいかないから、この服の心配はする必要はない」
「……ああ……そうですか」
 響はそこまで楸が考えてここまでやったとは思ってないので適当な返事をした。
 楸は響の顔を覗き込むと、さっきまでの厳しい顔とは違い、心配を表した苦しい顔をしていた。

「……無事でよかった」
 そんな楸の顔を見て、響は目を見開いて楸を見ていた。
 こんな顔、今までみたことはないから響は驚いてしまっていた。
 普段、楸は響に何があってもいつでも冷静だった。

 けれど、今回は響の無事を確かめるまでは、声を聞くまではどうしたって安堵出来なかった。
 今までだって心配するようなことは何度かあった。しかしそれでも響なら無事だと確信できていた。今回は、九十九が相手だったことから、もしかしたら駄目かもしれないと一瞬思ったのだ。九十九が二度同じ事を繰り返すかもしれない。それが頭を過ぎったからだ。

 無事が分かった時でも、まだ安心は出来なかった。
 冷静になって淡々と対応していたが、内心は不安で不安で仕方なかった。

 この存在がどれほど大きいのか、改めて思い知らされた。
 響がもし九十九に殺されたとしても、楸は組長としては生きていける。
 しかし、心はきっと死ぬに違いない。自分の心を揺るがす存在は響しかいないからだ。

 一度、響を手放した後の楸の心は死んでいた。
 二度目出会った時、この世にいる何よりも、月時響を求めた。

 今更、亡霊のように現れた、九十九などという男に奪われるなど、冗談ではない。それが月時響という人間としてではなく、神宮領の子というものでしか扱われてなかったのなら尚更だ。
 そんな下らない価値観で、響を奪おうとする輩はどんなヤツでも許しはしない。

「楸も無事でよかった……爆破ニュース見た時は心臓が止まりそうだった……」
 響もそう言うと楸に抱きついた。首にしっかり腕を回して肩に顔を押し付けるようにして抱きつくと、楸も響を抱き返した。
 自分の中にある響の存在を感じて、楸は安堵の息を漏らした。

 ああ、やっと帰ってきた。俺の響。
 楸の中で緊迫していたものがなくなって、柔らかく温かなものが溢れてくる。

「響、愛してる」
 自然と溢れてきた感情にまかせて言葉を吐くと、楸に抱きついている響の抱きしめる腕の力が強くなった。
「俺も……愛してる」

 抱きしめ合った後、濡れた服を脱ぐと楸は手の平で響の体中を洗った。
 いくら九十九が触っていないとはいえ、あの匂いが全身に付いている感覚が残っていたからだ。最初は洗っていただけだったのだが、響の体に触っていると違う感情も生まれてくる。

「んん……や……そこばっか……んん」
 体中を洗った後、乳首だけを指でこねていると響が体を震わせて文句を言った。
 どうしたってこれは洗っている指ではない。
 指で押しつぶしてこねた後、指で引っ掻いて乳首を立ち上げ、それを指で摘んでひっぱる。

「あっ……あん……や……痛い……」
 痛くなるくらいに弄られて、響が抗議の声を上げる。

「ここだけで、達けそうだな……達けよ」
 ふっと耳に息を吹きかけて囁くように言うと、響は体を反らして達った。

「ん、あぁ――――――!!」
 弛緩する体を後ろから抱きしめて、楸はシャワーを出し泡を流した。

「ん……はぁ……はぁ……」
 後ろにいる楸の体に自分の体を預けるようにして響が息を整えている。その首筋に楸は唇を這わせて舌で舐める。キスマークを沢山残しながら、響の体に手を滑らせる。
 穴に指をあわせ、そこを暫くこねていると段々と柔らかくなってくる。目の前にあった用意されていたジェルを取りだして手の平に付けると、ゆっくりと穴の中に指を沈ませていく。

「んん……あ……」
 入り口はきつくて、誰も響に触っていないことは分かった。
 楸が触ってから一ヶ月半、響は誰にも体を許していない。九十九は結局響の言うとおり、触るどころか近づくことも出来なかったようだ。
 響は無防備になって楸に体を預けている。この事実は楸を酷く安堵させる。
 響が楸以外の誰にも体を許すことはないという証拠だからだ。

「んあ……んん……あぁ……そこやだ……あっ!」
 指を二本に増やして中を探ると、響のいいところをさすった。だが、そこばかりではなく、その周囲を焦らすように撫で、たまにいいところをさすると何度も響は体を震わせた。「指だけで達っておくか?」
 耳の後ろを舐め、そう囁くと響は首を横に振った。

「やだ……楸のが……欲しい……入れて……」
 響は楸に腰を突きつけるようにして、その場に四つんばいになると楸を誘った。

「これが、欲しいのか?」
 楸はすでに勃ち上がったものを響の割れ目に当ててゆっくりを擦りつける。

「んん……や……なんで? ……入れて……」
 ゆらゆらと揺れる響の腰を掴んで楸は暫く擦りつけていたが、やっと割れ目を開いてその穴に己を突き入れた。

「あぁ……入って……くる……」
 ゆっくりと狭い中をかき分けるようにして入ってくるそれを響は歓喜して迎え入れた。

「全部……入った?」
「いや、まだ半分だ」
 中が慣れていないのでどれくらい入っているのか分からず尋ねると、半分という返事に響は体を震わせた。

「う……ん、全部、入れて……奥まで」
「そう思うなら、力を抜け……引きちぎられそうだ」
 はぁと息を吐きながら楸が言うので、響はなんとか体の力を抜こうとするが思い通りにはなってくれない。

「んん……できな……い……あ」
「仕方ないな……」
 楸はそう言うとやっと響自身に手で触れ、それを扱いた。

「あっ! ……んあ……あぁ……ぁ……あぁ――――――!!」
 響の注意が前に向いたところで楸が一気に響を貫くと、それだけで響は達してしまった。

「くっ……」
 緩んだ内部が射精したことで急に締まり、中にいた楸は締め付けられたが、ここは耐えた。待ちに待った響の中だ。つられて終わるわけにはいかない。
 達ったと同時に体勢が崩れた響は腕に力が入らずに腰だけ突き出した形になって前のめりになった。

「ん……はぁ……はぁ……んん」
 息を整えている響の背中に重なって楸は響の項に唇を寄せて、そこに吸い付いた。ここにキスマークを残しても普段響は背広を着ているので、ワイシャツや襟に隠れて誰にも気付かれない。それをいいことに楸はその周りにキスマークを残す。
 綺麗な背中にもキスを落とし、いつもよりもキスマークを残した。

 大丈夫だ、本当に九十九は響には指一本触れていない。自己権威力が強い九十九なら、楸同様に脱がした時にこそ見える位置に所有物の証を残す。
 響の体は一ヶ月半誰も触っていない。

「楸……動いて……」
 中に馴染むまで動かずにいた楸に、響が強請ってくる。

「ああ……とても欲しそうだな」
 楸が動かないので響の中が求めるように蠢いている。
 響の腰を掴んで一気に出して入れる。

「あぁぁ――――――!! ひあ、あ……あぁ」
 待ち望んでいたものがやってきて響は甘い声を上げた。

「あ……あっ……あぁ……あっ」
 がくがくと体が揺れて、楸のペースに巻き込まれると響にはただその流れに乗るしかない。けれど久々の行為は自分が想像していたよりも力強く、そして強引だ。けれど、本能のまま楸が求めてくれることは嬉しい。獣のように唸りを上げて響に覆い被さってくると耳を甘く噛んできた。

「響……響……」
 何度も響の名を呼んで楸は響の耳にキスをする。

「あ……だめ……それ、だめ……っ」
 名前を呼ばれると弱い。楸の声は低くて響いて聞こえ、それが腰に突きつけぬようにじんと来てしまう。その声に弱いと感じるのはいつもだが、行為をしている最中に呼ばれる甘く蕩けるような声は反則過ぎる。これだけで耳からも犯されているような気分になってしまうからだ。

「あ……あぁ……あっ……も……だめ……んん……あぁっ」
 響の限界が近づいていて、これ以上は持たないと判断した楸はそのまま激しく響を揺さぶった。

「やめ……も……おかしく……なる……あぁっ」
「おかしくなれ……もっとおかしく」

「や、んぁ……あぁぁぁぁ――――――!!」
「くっ……!」
 おかしくなれと言われ、一気に貫かれた瞬間響は達し、それに合わせるように楸は響の中に熱いものを放った。
 熱いものを中で感じながら響はそのまま床に倒れた。その反動で抜けた楸自身からまだ溢れていたものが響の腰に降りかかる。

「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
 短距離でも走ったかのように深く息を吸ったり吐いたりしながらも、響の体はびくびくと震えている。今は何処を触られても感じるだろう。
 倒れている響を楸は抱き起こしてもう一度、響を確かめるように抱きしめた。

「やっと帰ってきたな、響」
 その声に響は安堵して、完全に緊張から解放された。