novel

calling-14

 アンカレッジの空港からウラジオストックに戻った俐皇(りおう)は、宿泊のまま放置していたホテルに戻った。
 たった一週間前に、ここで寧野(しずの)と一晩明かした部屋だ。
 感傷に浸るなんて久々であるが、今回はそれとは違ったものが感触として残っている。求めたものを多少は違った形であるが、一旦は手に入れた。それが忘れられない。
 甘く求め合ったはずだ。最初の嫌な記憶を塗り替えるには十分過ぎた甘い時間。
 それを思い出しながら一晩過ごした。
 夢は甘く満ちたもので、気分が良く目が覚めたほどだ。
 起きだし、気分を押さえるために朝食を頼み、それを食べているところに客がきた。
「悪いね、朝から」
 そう言って入ってきたのはパーヴェル・アクロフ。
 ロシア連邦保安庁の人間だ。
 朝食を取っている俐皇(りおう)の側にあるソファに座り、持っていたA四サイズの封筒をテーブルに置いた。
「欲しがっていたものだ」
 パーヴェルがそう言うと、俐皇(りおう)が何も言わないうちに奥の部屋から黒服の男が一人現れ、その封筒を取り、別の分厚い封筒を代わりに乗せてから、封筒を持って俐皇(りおう)の席まできた。
 黒服の男は俐皇(りおう)の前で封筒を開け、中身を出してテーブルに載せると頭を下げて隣の部屋にさがっていった。
 パーヴェルはそれを見送ってから、目の前に出された分厚い封筒を取った。
「へ、約束通り」
 五十万ルーブルの数を数え、にやついている。日本円にして百万程度のものだが、小遣い稼ぎにしては、破格の金額だ。
 俐皇(りおう)は広げられた用紙に目を落として、パンを頬張りながら読んでいる。その情報が百万円に相当するのかどうかは俐皇(りおう)の頭脳にかかっている。
 俐皇(りおう)がその書類を読み終えた頃に、さっきの黒服の男が戻ってきた。俐皇(りおう)が目を離した書類を取り、二言だけ俐皇(りおう)が聞き、それに頷いた俐皇(りおう)に頭を下げてから書類を持って隣の部屋に下がっていく。
「一枚足りないが、まあ、いいだろう」
 俐皇(りおう)の言葉にパーヴェルがギクリとした顔をした。
 その顔を見もせずに俐皇(りおう)はスープを一口だけ口にした後、スプーンを皿に残して皿を下げた。
「不味い」
 そう俐皇(りおう)が呟くと、パーヴェルはギクシャクとしながらソファから立ち上がった。
「一枚足りないのは……それ以上無理だったからだ……」
 情報機関の情報漏洩ともなれば、現在はかなり厳しい。その書類に記されていることを持ち出すにもかなりの苦労をしたのだ。そうパーヴェルは言っていた。
 その言葉に俐皇(りおう)は対した反応はしなかった。だが言った。
「飯食っていくか? さっきルームサービスを注文したんだ」
 俐皇(りおう)がそう言うと、隣の部屋からさっきの黒服の男が食事を載せたカートを押して入ってきた。驚くパーヴェルの前にテキパキとした動きで食事を並べていく。
 その食事は、さきほど俐皇(りおう)が食べていたものと同じだ。
「さあ、食べていけ。ここの食事は美味いぞ」
 俐皇(りおう)がそう言うのだが、本人は目の前で不味いと言ったではないかとパーヴェルは思ったが、同じ食事を見て、まさかと気づいた。
「……まさか」
 パーヴェルがそう呟いた瞬間、俐皇(りおう)がニヤリと笑った。
「もらう物はもらって、払う物は払った。だが……お前のその金は何処へ消えるのか」
 俐皇(りおう)はそう言うと席を立って隣の部屋に入っていった。
 パーヴェルは急いで持っていたマイクに向かって言った。
「突入!」
 パーヴェルの言葉に合わせて連邦保安庁が突入してくる。真栄城俐皇(まえしろ りおう)を逮捕するつもりでパーヴェルが囮になり情報を与えて信頼させたつもりで近づいたのだが、俐皇(りおう)はそれを最初から知っていたようだった。
 突入するために食事に一服睡眠薬を盛っていたのだが、俐皇(りおう)はそれを食べず、自分たちで用意したものを食べていた。最初から危険だと気づいていた。
 もともとこのホテルは俐皇(りおう)が宿泊したままであったことから、捕獲に使えると踏んでいったことだったのだが、俐皇(りおう)はそれを見越した上にわざと罠に入り込んできた。
 隣の部屋に逃げ込んだ俐皇(りおう)であるが、出てくる様子はない。
 その先に部屋の出口がないことは調べて分かっている。なのにだ。俐皇(りおう)はそうした。何故だとパーヴェルは考え、そして思い当たった。
「と、突入を中止しろ! 罠だ!」
 パーヴェルがそう叫んだ瞬間、部屋に突入した捜査員を巻き込んで部屋が爆発で吹き飛んだ。轟音と爆風、それに吹き飛ばされたパーヴェルは壁に叩きつけられた。
 音が止むと部屋の中に砂煙が起こり、周りから埋め声が聞こえる。 
「うう……くっ」
「た、たすけてくれ……」
 呻く捜査員と、突入の様子を見守っていた捜査員たちが入ってくる。
「救急車を呼べ!」
「くそ! 俐皇(りおう)はどうした!」
「姿を見てません!」
「パーヴェル! 何処だ!」
 爆破された現場に入ってきた捜査員がやっと壁に打ち付けられて気を失っているパーヴェルを見つける。
「大丈夫か、パーヴェル」
「う……」
 パーヴェルは吹き飛ばされはしたが、肋骨などを折った程度で済んでいる。爆発物からは遠かったのだろうが、少しでも位置が悪かったら、ガラスと共にビルの外へ落ちていただろう。
「り、俐皇(りおう)は……となり……」
 パーヴェルがそう言うと、捜査員が叫ぶ。
「俐皇(りおう)は隣の部屋だ!」
 その言葉に隣の部屋へ入ろうとするのだが、その先がなかった。
「駄目です! 底が抜けてます!」
「まさか、爆破の目的は逃走のためか!」
「下だ! 下にいる捜査員に伝えろ! 俐皇(りおう)が逃げた!」
 捜査員が右往左往している中で、救急車が到着し、警察も到着した。爆破処理班が呼ばれ、倒れている捜査員も運ばれていく。その混乱は、テロとして認識されたのか、ホテルの泊まり客が早々に逃げだし、ロビーは混乱、もはや警察が到着した時には半分以上の客がそのホテルから逃げ出していた。
 当然、捜査員の数は足りない。その中に俐皇(りおう)がいたとしても判別はできなかっただろう。
「くっそ、逃げられたぞ!」
 次官が叫んでいる。俐皇(りおう)を捕まえるために罠を張り、一年がかりで餌も用意したというのにだ。
 その日のホテルテロに対して、ロシア連邦保安庁は真栄城俐皇(まえしろ りおう)の名をあげようとしたのだが、その同時刻、他のホテルも爆破騒ぎになった。
 連続するテロ行為に対して、過激派組織が声明文を出した。その中に、俐皇(りおう)がいたホテルの爆破も過激派組織のものだった。
 

 その二日後、テロは過激派組織による爆破と発表される。
 俐皇(りおう)が関わっていたホテルでの捕獲を過激派テロに邪魔されたと上層部は判断。俐皇(りおう)の遺体が見つかっていないことから、本人は逃げたのだろうと結論づけた。引き続き俐皇(りおう)の操作は続けられているのだが、ロシア国内で俐皇(りおう)を見かけたという人間はいなかった。
 その真栄城俐皇(まえしろ りおう)は、変装をしてロシア国内を堂々と移動し、ドイツに辿り着くといつも通りの日常に戻る。
「この資料、調べ直してくれ」
「はい」
 俐皇(りおう)は部下にそう言い、ロシアのホテルでパーヴェルにもらった資料を出した。その情報を俐皇(りおう)が知っていることは連邦保安庁も知っていることだが、使えない資料を俐皇(りおう)に渡して、捜査員を殺されては意味がないことは知っているので、それなりの情報は渡してくる。
 俐皇(りおう)が別の手を使って仕入れた資料があるのだが、それと付き合わせて使えない情報を篩(ふるい)にかける。ロシア側も知られた情報を今後も使うとは思えないからだ。そのおかげで綻びがある情報を削除できるわけだ。
「ホテル、残念だったな」
 思い出のホテルだったのになと、マキシが笑っている。
「どのみち爆破まではしなくても、二度と使うことはないところだからどうなっても構わなかったがな」
 俐皇(りおう)がそう言うので、マキシは頷く。
 俐皇(りおう)が同じホテルを短期間で使うことはない。理由は簡単だ。お得意先だと知られれば命を狙われる確率があがる。だから長期滞在もしない。
 俐皇(りおう)のことを調べていれば、今回の俐皇(りおう)の滞在をおかしいと思うのが普通だ。
 珍しく俐皇(りおう)が人を連れていたことが、連邦調査庁が逮捕に踏み切った理由だろう。それもきちんと調べれば分かった事だ。だが彼らはそのどれも怠った。
 俐皇(りおう)の弱みはあるが、その弱みに付けいられる原因が一つ消えたのは運が良かったか。
「やっぱりお前にはアレは危険だな。忘れろとは言わないが手に入れるのは諦めてもらう」
 マキシがいつになく真剣にそう言い出した。
 俐皇(りおう)はそれを聞いて苦笑する。
「だから言っただろう。手に入れるにしても、それは寧野(しずの)が何処にも行く場所がなくなってからだと。居場所があるなら奪うことはない」
 俐皇(りおう)としては、同じ世界にいるけれど、取り引きをしたりする関係ではなく、完全に敵対する存在として生きている。織部寧野(おりべ しずの)はその敵対する組織に存在意義を見つけ、そこにいる。
 そうなる以上、寧野(しずの)は排除しなければならない存在であるが、それはできない。
 彼が生きているからこそ、今の自分があると俐皇(りおう)は思っている。
 いつかだが、寧野(しずの)が避けて通れないほどの存在となり、君臨することを俐皇(りおう)は目標としている。宝生耀(ほうしょう あき)を殺し、手に入れるしか道はないが、そうなった時、寧野(しずの)が言うことを聞いてくれるかと言うとそうではない。あくまで死ぬまで寧野(しずの)は抵抗するだろうし、手には入れられないかもしれない。それでも何があるか分からないのがこの世界だ。
 やってみなければ分からない。あの織部寧野(おりべ しずの)を有無を言わさずに手に入れる方法が転がっているかもしれないのだ。
 そのために俐皇(りおう)がやっているのが、金糸雀(ジンスーチュエ)殺しだ。
 寧野(しずの)を殺されてはたまらないので、金糸雀(ジンスーチュエ)候補になりそうな存在をすべて抹殺する。そして寧野(しずの)を最後の金糸雀(ジンスーチュエ)に仕上げる。
 たった一人の貴重な存在とすれば、金糸雀(ジンスーチュエ)伝説を信じる輩は寧野(しずの)を殺すことはできなくなる。裏社会において、織部寧野(おりべ しずの)を殺させないようにするにはこの手が一番手っ取り早い。
 実際その効果はあり、寧野(しずの)は誘拐はされたようだが、殺されるような環境には置かれてなかった。
 そして俐皇(りおう)は、最後の金糸雀(ジンスーチュエ)の血を引くであろう、貉(ハオ)の元首領、胡高黒(ホゥ ガオヘイ)を見つけ出し殺した。鵺(イエ)にかくまわれていて、居場所がなかなか分からなかったが、鵺(イエ)の行動を見張って一年、やっと尻尾を掴んだ。一度は失敗をしたが、今度は確実に仕留めるために俐皇(りおう)自らが赴いた。
 高黒(ガオヘイ)はあっけなく死んだ。
 元首領という我が儘なまま暮らしてきたのだろう。鵺(イエ)の待遇も良かったのだろうが、次に助けられた真紅(マリーノヴィ・ツヴェート)での扱いは相当悪い方だったらしく、高黒(ガオヘイ)は鵺(イエ)に逃げ帰ろうとしてホテルを出たところを捕まえられた。
 織部寧野(おりべ しずの)のことに関して何かを知っているかと思ったが、金糸雀(ジンスーチュエ)のことについて高黒(ガオヘイ)はちょっとした情報しかもたらさなかった。
 金糸雀(ジンスーチュエ)は、確かに数字に強い一族から一番力を持った人間が生まれたら、金を呼ぶことができる能力として現れるのが特徴である、というのが通説だったが、実際はその他にも違った能力が生まれることがあったのだという。
 危機感に異様に気づく未知予想ができるような人間だったり、スパイ活動に向いていたりという現在なら使いようがあるような能力者が生まれることもあった。だが貉(ハオ)はそうした金糸雀(ジンスーチュエ)は必要ないとして殺し、金の流れを生む金糸雀(ジンスーチュエ)だけを重宝したのだという。
 つまりそれ以外を殺せば、次の金糸雀(ジンスーチュエ)が生まれ、希望の金糸雀(ジンスーチュエ)が生まれるまで殺し続けた。結果、何代か続いて金の流れを読むことができる人間が生まれたのだ。
 寧野(しずの)の祖母である愛子(エジャ)や寧樹(しずき)が二代続いて出たことも特殊なことで、愛子(エジャ)の能力が高かったことから寧野(しずの)にも影響を及ぼしているのだという。
 強い血を持つ能力者の子供は必ず金糸雀(ジンスーチュエ)になったというから、他の民族の血が混ざった寧野(しずの)にも能力が受け継がれていた。ただ強く否定を繰り返した結果、その他の強い能力者である花(ツェピトーク)の方に力が一時的に移動をし、寧野(しずの)がやっと能力を開花させたことで花(ツェピトーク)は能力を失った。
 寧野(しずの)の方の力が強かったのだが、寧野(しずの)の能力は金の流れを読むものとは別の物として生まれ変わっていた。
 もともと寧野(しずの)の力は、危機感の能力として発揮されていた。例えば、自分の母親が殺された時もそうだ。
 寧野(しずの)はあの日、母親と一緒にでかけるはずだった。だが一人残された俐皇(りおう)が可哀想だと言って俐皇(りおう)と残ったのだ。
 普段は俐皇(りおう)も連れて行くとわめくのに、その日は大人しく俐皇(りおう)の家から一歩も外に出なかった。
 寧野(しずの)は知らず知らずのうちに、命を狙われていることを悟り、危険を回避したのだ。
 母親と一緒に出かけていれば、あの車に殺されていたし、自宅にいれば、きっとやってきた鵺(イエ)の暗殺部隊に殺されていただろう。
 本人も気づいていないうちに危険を回避したことはきっと今でも寧野(しずの)は知らないだろう。側にいた俐皇(りおう)だけが知っている事実だ。
 だから俐皇(りおう)は寧野(しずの)は金を生む金糸雀(ジンスーチュエ)にならないことを知っていた一人だ。
 だからこそ、寧野(しずの)を殺されないように金糸雀(ジンスーチュエ)一族を抹殺した。この先に生まれるであろう金糸雀(ジンスーチュエ)候補をなくしてしまえば、寧野(しずの)を殺すことは無意味になる。金糸雀(ジンスーチュエ)もいなくなる。
 寧野(しずの)は命の危機には必ず反応している。それはイタリアの病院爆破で既に確かめた。寧野(しずの)はその能力を開花させ、力を使っていた。
 今はそれでいい。
 寧野(しずの)は生きていられさえすればいい。
 どこにいるとか誰を愛しているかなんて、そんな些細なことはどうでもいい。
 一度はちゃんと抱いた。理由が理由でもそんなのは構わない。
 拒まれずにただ抱けたことは、一生残る。
 触りもせずに後生大事にするなんてできなかった。
 きっと愛しているなんて言葉で足りないほど、寧野(しずの)がずっと大事だった。
 寧野(しずの)が思い出さない記憶の中にいる自分が、どれほど救われたのか。すべてを失った時の絶望も這い上がるための力として、与えられたのか寧野(しずの)は知らないだろう。
 だがそれでいい。今生きているのは寧野(しずの)を思うためだ。
 そう思えているから、寧野(しずの)がこの世界のどこかにいてくれるだけでよかった。
「この先、どんなことがあっても、この手に入ることなんてないさ。俺はあの一晩だけでも満足だ」
 俐皇(りおう)はそう言って笑うから、マキシも呆れ顔になった。
「お前のそういうところ、本当に意味がわからん」
「分からなくていいさ。そういうものなんだ」
 俐皇(りおう)は一人満足している様子なのでマキシもまあいいかと頷く。
「さて鵺(イエ)はどう動いている?」
 マキシにそう俐皇(りおう)が尋ねると、マキシは首を振る。
「わかんねえ。スパイは消されただろうな。高黒(ガオヘイ)殺しからこっち、何の音沙汰もなくなった。こりゃ高黒(ガオヘイ)使って鵺(イエ)が身内情報の漏らしを疑ったってことだろうな。まあ当然と言えば当然か」
「なるほど、高黒(ガオヘイ)の情報は上層部のみが知る貴重な餌だったわけだ。それをこぼせばどのルートでバレたのか分かるようになっていたと」
「そういうことだろうな。高黒(ガオヘイ)はカナダ中を移動して暮らしていたらしいし、最新情報を盛らせるのはその上層部の中でも更に一部、当然バレやすいってわけだ」
 そう言われて俐皇(りおう)は舌打ちをした。
 これではスパイを無駄死にさせたどころか、その情報源も潰されたと考えた方がいいほどの失態だ。
 先を急ぐあまりの失態だが、まだ別途潜り込ませたスパイは生きているだろう。
「まあ、やつらとしても高黒(ガオヘイ)を殺されたところで痛手はないってことなんだろうけどよ」
 高黒(ガオヘイ)の知っている情報が漏れたのが、誰に漏れたのかで話が違ってきただろうが、鵺(イエ)にとって今更高黒(ガオヘイ)の情報がもれても一向に構わないという事情が出来上がっていた。
 俐皇(りおう)が金糸雀(ジンスーチュエ)一族を根切りし、花(ツェピトーク)も殺してきた。残るは高黒(ガオヘイ)だけで、完全に金糸雀(ジンスーチュエ)一族は死に絶えた。
 鵺(イエ)としては、寧野(しずの)を殺されては困る環境だった。それが俐皇(りおう)のお陰で寧野(しずの)を殺すことに意味をなさない環境が整った。そうすれば余計な情報を漏らす高黒(ガオヘイ)は用済みとなっていたはずだ。
 もしかしたら鵺(イエ)から高黒(ガオヘイ)の情報が急に漏れ聞こえるようになったのは、鵺(イエ)は殺せないが他に殺して欲しかったということになるかもしれない。
 俐皇(りおう)はそれにのせられたことになるわけだが、変なことに利害が一致した始末だった気がする。
 思った以上に鵺(イエ)の龍頭(ルンタウ)は頭が回るようだ。
「今回の目的、高黒(ガオヘイ)は始末したから金糸雀(ジンスーチュエ)問題も収縮するだろう。何せ知るものがいないんだからな」
 俐皇(りおう)がここ一年以上かかってやっていた金糸雀(ジンスーチュエ)殺しは完了したと言ってもいい。
「それじゃそろそろ本腰入れて、クトータのことも考えてもらいたいな」
 マキシがそう言うので、俐皇(りおう)は。
「もちろん考えているさ。あの目のたんこぶの九十九(つくも)の邪魔にならない程度に」
 九十九朱明(つくも しゅめい)はクトータの組織を俐皇(りおう)に奪われてから、姿を消した。何処へいったのか分からないが、あの九十九(つくも)が何の準備もなく消えるわけがない。
 ただでさえ潜伏が九十九(つくも)の得意分野だ。
 いつ寝首を掻かれるのかわからない状況を安定させるために、今後は注視していなければならない。