novel

everyhome-3

 海都(かいと)は摩鈴(まりん)と双子なので、顔も似ているが性格は大人しい方である。

「摩鈴、こっち」
 手を挙げて呼ばれて、そこに全員が座る。
 簡単なものを頼むと食べながら会話をする。
 ほとんど摩鈴と海都が喋っているが、那央(なお)と大雅(たいが)は聞いてないわけではない。

「そういや、摩鈴、今日は飲み会って言ってなかったか?」
「あーうん、カラオケ主体なんだけど」

「摩鈴、門限は?」
「あーうん、ここんとこちょっとヤバイかな。叔父さんまで話が通っちゃいそうでさ」

「叔父さん?」
「うん、本家の人。結構厳しいっていうか、怖いというか」
 摩鈴が困ったように言う。

「海都?」
 大雅が説明を求めると、海都が言う。

「ああ、なんか家のことには結構厳しい叔父さん、というか、お兄さんなんだけど。摩鈴があんまり遊びすぎてるから、そこで強制的にその人が動くんだろうけど。強引な人だから、摩鈴、もう遊びに誘われないかもしれないな」
 可哀想にと海都が苦笑している。あまり個人の行動に口を出すことはない家柄らしいが、家の行事に出なかったりすると厳しくなるらしい。その用事をすっぽかして遊び歩いていたのがバレたらしい。

「あ、はっきり言っちゃう人なのかな?」
 那央がそう言うと、海都が頷いた。

「もう物事はっきりさせるのがその人の性格でね」
 海都はそれはもう凄くというふうに言った。

「だったらしばらく大人しくしてればいいものを、なんでわざわざ面倒ごと起こすんだ」
 大雅はそう言って、呆れた顔をする。

 那央はそういう遊びにはいかないし、大雅はバイトで忙しいのでつきあったことはないが、さぞかし豪快な飲み方をしているのだろうと想像できる。

「那央、よかったら一緒に来ない? 食事タダでいいから」
 摩鈴がそう言って那央に誘いをかける。

「え?なんで?」
 那央は驚いて聞き返す。

「一人で居てもあれかなーと思って、お節介?」
「酒の席はあんまりよくないと思うぞ。こいつこの顔だしな」
 その誘いを大雅が断る。

「うん、だからさ、那央ちゃんで釣っていろいろ誤魔化しておいて、時間になったところでおじさんに迎えに来てもらおうかなと」
 那央を囮にして酒を飲むのを控え、さらに叔父さんが来たと言って逃げる予定を立てたらしい。

「……お前、なんて酷いやつだ」
 呆れてもう反論したくなくなってくる大雅。

「うん、だから、自分で行くと門限とか忘れるし、帰るのに雰囲気悪くなるしさ。迎えが来たらあれだろうし」

「じゃ、那央も迎えに行かせればいいんだよ」
 海都がそう言う。

「二人も迎えに来たらさすがにヤバイってわかるじゃん」
 にこにこして言う海都だが、大雅は納得しない。

「そもそも摩鈴が行かなければいいんじゃないか」

「それが出来たらなんもいわないよ。最初の居酒屋の幹事なんだもん。ドタキャンはまずいじゃん」
 摩鈴が我が儘を言って那央まで担ぎ出そうとする訳は幹事だからだと白状した。

「なんだ、幹事だったんだ」
「そう。抜けられないんだよね」
 摩鈴は困った顔でそういう。

 こうなると那央が断りにくくなる。本当に摩鈴が困っているのであれば助けてやりたいと思ってしまうからだ。
 大雅を見ると仕方ないという顔をしていた。

「俺も迎えに行くから、お前マジであんまり飲むなよ」
 那央だけを行かせるのは不安なので大雅まで迎えに行くことになってしまった。

「分かった」
 摩鈴は素直にそう言う。こういう時の大雅の忠告は聞いておかないと後が恐いのだ。

「お前の分かったは当てにならないから。この間の飲み会の暴れっぷりじゃな……」
 大雅は一度迎えに行ったことがあったがあれは酒乱だろうと思っている。愉快ではあるがやっかいだ。





 そうして那央(なお)は摩鈴(まりん)を迎えに行くことになったのだが、バイトに出ていた大雅(たいが)と落ち合う約束の場所に向かった那央は少し迷ってしまった。

 電話で大雅とやりとりしたが、先に摩鈴が飲んでいるという居酒屋の方が見つかりそうだったので向かうことにした。

 出来れば駅から出るなと言われてしまってきょとんとした那央だが、どうやら飲み屋街はヤバイらしく、そのとうりにするようにして駅に出ていると、駅前に車が止まった。

 凄い高級車ということくらいしか分からない那央はじっと見つめていたら、そこからモデルようにスラリとしたスーツの男性が出てきた。

 顔もよし、髪型はなでつけているだけ。それでも十分、高貴な人だなと思うような容貌だった。
 どこかで見たような、そんな気がして記憶を探ったが、あいにく人の顔を覚えるのは苦手で思い出すことは出来なかった。

 もしかしたら何か経済雑誌で見たのかもと思っていると、その人はまっすぐに那央の前にやってきた。

「?」
 なんだろうと見上げる。身長はちょうど15センチくらい違うだろうか。そんな感じでその男性は大きな人だった。

「すまないが」
「はい?」
 話しかけられて那央は首を傾げて返事をしていた。
 普段なら大雅に話しかけられても返事をするなと言われているが、どうもこの人が気になって返事をしてしまっていた。

「ここを探していて」
 そういわれて差し出されたマッチを見せられた。
 どこかキャバクラでも探しているのだろうとかと思って見ると、それは摩鈴が居るという居酒屋のマッチだった。

「あ……それ」
 思わず身を乗り出すと、男性は嬉しそうに聞き返してきた。

「知ってる?」
「ええ、これから友達を迎えに行くところです」

「それはちょうどいい、案内してくれると助かるのだが」
「はい、えっとちょっと待ってくださいね」
 那央は電話を取り出して大雅に連絡を取る。

 ちょうど大雅は反対側の駅に着いていて、これから向かうので那央もいけと言われた。こっちは人を案内するところだと説明しようとしたが早くに切られてしまった。

「すいません、友達がちょっとマズイみたいで、先急ぐんですがいいですか? 車は入れないのであの」
 那央がこの先は歩くしかないと言おうとすると相手もそれは解っていたようで。

「ああ、車は運転手がいるからどこにでも流せるから大丈夫だ」
 そう返事をしてきた。

「そうですか、じゃ行きましょう」
 那央は男性を横にして案内していく。
 居酒屋が多いところは、ちょっと離れるとキャバクラも多く
気をつけるようにと大雅に何度も言われていたが、これでは男性の方が危ない気がしてきた。

「こういうところはよく来るの?」
 男性はそう話しかけてきた。

「いえ、ほとんど」
「今日は迎えだけ?」

「ええ」
 これでは話は弾まないなと、那央は那央なりにまずいなと思って話しかけた。

「あの、飲みに行かれるのですか?」
「いや、私も迎えに行くところだ」

「あ、そうだったんですか」
 なるほど、この高級スーツで学生が行くような飲み屋に行くとは思えなかったので思わず納得だ。

 たぶん、兄弟か何かがいて、それで迎えに行くところなのかもしれない。まるで摩鈴みたいな子は沢山いるのかなと那央は思った。