novel短編

Honey-裏-2それはまだ、愛ではなくて

 結局利用することにした新藤はそのまま大知(だいち)の後をついて行くことになった。大知は当然のようにラブホテルを選び、その部屋に新藤を通す。ここまで来て拒否をすることも出来ず、新藤は諦めて大知の相手をすることになった。大知が何をしたがっているのかなど分からないほど初心ではないし、騒ぐほどでもない。

「新藤さん、シャワー浴びちゃって」
「そっちが先でいいよ」
 新藤がそう言うと、大知は逃げられることを警戒しているのか、新藤に先に入るように言い直す。

「わかったから、別にここまできて逃げやしない」
 新藤はそう言ってシャワーを浴びることにした。シャワーを軽く浴びて部屋に戻ると入れ違いに大知がシャワーを浴びに行った。その間することもないので、冷蔵庫からビールを取り出してそれを飲む。

 ここにきて少しだけ新藤は後悔するようになった。大知を利用なんてことしてはいけなかったのではないか。確かにこういう行為を後腐れ無く出来るのがあのバーだったけれど、今回はそういうことではないからだ。

 セックスだって初めてではなかったが、ここ数年ずっと織田を思っていたからその場限りでないとしなかった。一途になるとどうも他に目がいかない方で、当然相手にもそれが伝わってしまって、特別な関係にはなってなかった。
 しかしその織田は幸せになろうとしている。本音をいうとずっと自分が慰めたかった。でもあんな織田に自分の身体でと言うのも何か違う気がして言えなかった。

 こんなことをしてまで織田を守ってもなんの見返りだってない。空しいだけ。そんな寂しい思いをしている時に、誰かと寝るのは危険なことなのかもしれないと気付いたからだ。
 辛いときに温もりを知ったら、抜けられなくなる。
 そんなことを考えていると、大知が部屋に戻ってきた。

「逃げなかったんだ?」
 大知は新藤がビールを飲みながら座っているのを見てそう呟いた。
 大知が新藤が逃げることを前提に話をしてきたことに、新藤は一瞬だけ怒りを覚えた。自分はそこまで信用がないのかと、大知を睨み付けて言った。

「今更?」
 そう今更なのだ。そう口にしたとたん、もうどうでもよくなった。

 新藤がそうはき出すと、何故か大知は満足したように近寄ってきて新藤のビールを奪うと残りを飲み、そして新藤の顎を掴んでキスをしてきた。いきなりだったので新藤が動揺すると、開いた口の中にビールが流し込まれてくる。少し苦しかったがそれを飲み干すとキスは終わった。

「いきなり……なにを」
「いや、礼儀からな。キス美味しかった」
 大知はそういうと新藤の手を引いて立ち上がらせた。

「こういう時はキスはしないとか言う方?」
 新藤が少しだけ嫌がったのを大知は気にしたように尋ねてくる。
「減る訳じゃあるまいに、もういい」
 織田以外とするキスになど、意味があるわけがないからだ。

 大知はそのまま新藤をベッドに連れて行き、軽く突き飛ばすようにして新藤をベッドに寝転がす。そして大知が覆い被さってきた。

 その逞しい身体で両手を押さえつけられると、どうやっても逃げられないのはすぐに理解した。だから新藤はすぐに身体の力を抜いた。乱暴されるのは好きではないし、抵抗して傷つくのもいやだ。こんなことは一回限りなのだからと自分に言い聞かせた。

「……見下ろすとすごいいいな」
 少し乱れた新藤を見て大知は感想を漏らす。

「さっさとやれば?」
 こんなことさっさと終わりたい。そう思って大知を挑発するように言うも大知はにっとして言い返してきた。

「じゃ、お言葉に甘えて」
 ゆっくりと大知の顔が近づいてくる。ぎゅっと目をつむると、またキスをされた。目をつむったままでも感触でどういうキスをされているのか分かる。水音が離れるたびに唇から聞こえる。温かくぼうっとするほど気持ちがいいキス。大知はキスが上手いようだ。ろくにキスの経験がないから頭の中が靄がかかったようになってしまってまともにものが考えられない。

 唇全体を包んで舌先でじっくり舐める。閉じた隙間に舌をこじ入れられ深くもぐらせたり舌を絡ませたりしてくる。

「気持ちいい? なんかうっとりして」
「う……ん」
 頭の中が朦朧としてたから、本音が出てしまったのに新藤は気付かなかった。新藤の言葉に満足した大知は新藤の身体のあちこちに手を滑らせてなで回す。その感触だけでも腰が震えてしまい、感じないと思っていた場所まで感じて感覚がとぎすまされるようなきがした。

 手慣れている。それが新藤の感想だ。
 こういう手慣れた男に身をゆだねるのは案外楽なのだ。心地はいいし何も考えないまま無防備でいられて、緊張はあるが怯えがなくなっていくのだ。体中を撫でられてどんどん張っていた神経を解されているような気がしてくる。
 この安堵感は不思議だった。

「ん……は……んん」
 体中が溶かされてそこから生まれてくるものがある。

「は……っ」
 まだ柔らかい乳首を摘まれて引っ張られ、指の腹で捏ねられ強く押しつぶされたりする。いじられているうちにそれは固くなってくる。そうなると余計に敏感になる。

 産毛が逆だち、ぞくっとしたものが背筋をかけていく。新藤のものがぴくりと反応しだした。先端がぬれてきているのが分かる。
 大知の唇が首、そして腹を伝って下に落ちていく。当然もう勃っているのはバレているから、そこにもキスをされてしまった。

「あぁっ!」
「ちゃんと感じてくれてる、嬉しいな」
 大知はそう言って新藤自身に顔をそっと近づいて、新藤の勃ったものを口に含んでしまったのだ。するりと口に吸い込まれ生暖かく湿った口腔に包まれた。

「あ……ふ……んん……い……っ」
 がくりと腰が力を失う。指先が痺れて与えられた激しい快楽が全身を駆け回る。

 喉の奥まで呑み込まれて舌を使って擦り舐め取られる。ぎゅっと吸われるとたまったものがはき出されそうになってくる。がくがくと腰が揺れた。先端の刻みを掘り起こされるように舌を使われるともう駄目で、たえようとするとどくどくと激しい鼓動がなって息苦しい。

「だ……いち……あっ……い……う……ぁ」
「達っていいよ」
 咥えたまま喋られて少し歯が当たるともうだめでしゃくりあげるように新藤は言っていた。

「も……むり……や……ん……むりっ」
 そう訴えると大知は新藤のものを一気に吸い上げた。ねっとりとした舌を絡みつかせて新藤の弱いところをついてきたのだ。

「ああぁっ!!」
 放ったというよりは引っ張り出されたようなそんあ感覚だ。頭の中が真っ白になって、そのまま呼吸が落ちていく。一瞬何も考えられなくなってしまっていた。

 どさりとシーツの上に崩れる。浮いていた身体が落とされてやっと周りの音や感覚が戻ってくる。

「……ん……はぁ……はぁ」
 呼吸はまだ激しく、指さえ動かない。脱力した身体を投げ出したままにしていると大知がその先を進めようとしている。潤滑剤を取り出してたっぷりと取るとそれを後ろに擦りつけてくる。穴の周りをなで回してぷつりと指が進入してくる。

「あ……ん……あぁ……」
 またせわしなく呼吸が速くなる。出入りする指がこんなに気持ちいいと思ったのは初めてだった。前に一度したセックスはあまりいい思い出がない。かなり痛かったし、相手が気を遣ってはくれず、潤滑剤を使っても痛かった記憶しかない。そんな嫌な思い出があるのに、大知のやり方は丁寧で新藤を傷つけるようなやり方ではないのは一目瞭然だった。

「ん……あ……いい……あっ」
 指が二本に増やされて今度は少し乱暴に出し入れされた。潤滑剤の音がぐじゅぐじゅと聞こえそれがとても卑猥に聞こえる。入れられた指が中でバラバラに動いて中を解してくる。内側をぐるりと回し掻き回し、円を描いてはまた奥へ。
 もう翻弄されてしまい新藤はただただあえぐだけになってしまった。

 執拗な大知の指に穴はとろとろに溶けていった。体中が熱くて逃がせない熱が苦しい。のたうつ身体を押さえ込まれて新しい快楽を教え込まれていく。

「あ……あぁっ……ん……んん」
 顎があがって仰け反ると大知が興奮したように言った。

「すげ、綺麗……それに可愛い……見てるだけでぞくぞくしてくる」

「……な……に……ああっ」
「もっと気持ちよくしてあげる」
 そう大知が言うと足を抱えあげられ、腰が宙に浮いた。その間に大知が身体を入り込ませて、新藤の穴になにか熱いものがあてられた。身構えるよりも早く大知の熱が新藤の中にもぐりこんできた。

「――――――っ!!」
 小さな穴をいっぱいに広げられて奥に侵入してくる。一気に奥へ奥へと押し込まれていく。異物感だけがあるだけでまったくと言っていいほど痛くはなかった。過去に痛かったことが嘘のようにすんなりと奥まで入ってしまった。

「……とろけそう……」
 大知がはあーっと息を吐いてそう言った。中に入った熱が大きすぎて新藤はただ息を吐くだけだった。

「動くよ」
 新藤が落ち着くのを待ってから大知は動き出した。それはとても若さに溢れた早い動きで、突かれて仰け反り、勢いであとずさる身体を大知の腕が縫い止める。そして退いた熱がまた奥へと送り込まれる。ゆっくりと押し入って退いて。挿入を繰りかえしているうちに腹の間で擦られた新藤自身までもまた復活してしまう。

「ふ……あぁ……ん……あっ……あっ」
 あまりの激しさに頭がおかしくなりそうだった。暴走する快楽が押さえられずに新藤は手を伸ばしてしっかりと大知に抱きついた。そうしないと振り落とされそうだったから。

「あ……あっ……だめ……おかしく……なる……あっ」
「もっともっとおかしくなって……俺もおかしくなりそう」

「も……もぉ……だめ……っ」
 掠れた声が漏れたと当時に腹で擦られていたものが熱いものをはき出していた。がくんと腰が砕けたところにまだ大知が何度か腰を打ち付け、そして彼も中で達していた。

「……んっ」
 ぞくりとするほど艶めかしい声が上から聞こえた。温かいものが中にはき出されてその衝撃で新藤は小さく震えてしまった。


 ここまでだったらほんの一回セックスをしただけの関係だったかもしれない。
 この後だって新藤がシャワーを浴びて携帯を大知に返して、それで終わったことになったはずだったのだ。

 大知はただやりたかっただけだろうし、新藤もこれで織田に対しての思いも全部捨ててただの友達に戻れるとそう気分はよかったのだ。この時までは大知に感謝をしていた。
 のだけれど、この後の彼の執拗さに新藤は本当に困惑してしまうのだった。