novel短編

Honey-裏-5ずっと前から好きだったんだ

「何言ってるんだ? お前……」
 新藤がそう言うと大知(だいち)は興奮したように次々に言ってくる。

「いつもいつもセックスばっかしてるけど、俺だって新藤さんのこといろいろ知りたい! なのに全然話してくれないし、こっちがこっそり情報盗むしかないだろ!」
 そうとんでもないことを口走りはじめた。新藤の個人情報を盗んだり、こっそり後をつけたりしたのは、新藤が何も言わないから不安になってしたと言っている。

「何言っているんだ! そっちだっていつもセックスばかりに持ち込んで、どうせやりたいだけなら他にも相手してくれる人がいるだろ! もういいからどけよ!」

「いやだ! 俺が新藤さんがいいんだ!」
「俺はお前が嫌なんだよ!」
 はっきりと告げてやると、大知は一瞬言葉を失った。みるみる眉が下がり、食いしばる歯がぎしりと音がした。

「じゃなんでセックスのとき拒まないんだよ! いっつもいっつも俺のことあんなに誘惑しまくって!」
 大知の新藤の方が誘ったという言葉に、新藤は冗談じゃないと叫ぶ。

「な! なんでそんなの知らない!」
 そう言って叫び合っていても話は全然収集がつかないまま、大声を出した二人は肩で息をしながらにらみ合っていた。
 そうして大知は新藤の胸に頭を乗せて小さな声で呟くのだ。

「どうしてなんだよ……なんでやめるとか別れるとかになるんだよ……」
 その言葉に新藤は少しカチンときたが怒鳴り返すのは違うと思って静かに言う。大知にはもう襲う余裕はないようだった。

「そもそも付き合ってなかったからな……」
 新藤がそう言うと小さな声で反論が返ってくる。

「俺は付き合っていると思ってた」
 そう言われて新藤は驚く。そういえば織田たちはそう言っていたと言っていたなとふとさっきまで忘れていたことを思い出した。

「なにがどうなって付き合うなんてことになってんだ? 俺たちそんな約束事なんかしてないし、そもそもまともに話し合ったのは最初の時くらいだろ」
 新藤はそこが分からなくて大知に聞いた。

「新藤さん、セックスしてくれたから」
「は?」
 そういわれてもあれは条件があったはずであるし、そもそもそれだけで付き合っている関係とははっきり言えないではないかと新藤は思う。

「そこが違う。あれは一回限りのつもりだったんだ……」
 新藤ははっきりとその時の気持ちを言っていた。初めからそういう予定だったのだ。

「俺は違う。そんな一回限りだなんて思ってなかった」
 大知はすねたようにそう言う。どうやらセックスをするだけのセックスフレンドという言葉は彼の頭の中には最初からなかったようである。

「じゃ、なんでその後もセックスしてくれたんだ? そこが分からない」
 一回限りだったら何度も大知と寝る必要はなかったはずだと大知は言っている。

「お前が強引だったからな、随分流されたと思う。それは悪かった」
 流されたのは自分が悪いと自分の悪いところは新藤も認めた。

「だからやめるのか? 俺は新藤さんのことどんどん好きになってたまらないのに……」
 そう大知が告白したものだから新藤は驚いてしまった。心臓がドキドキとしてさっきの言葉は聞き違いではないかと思えてしまう。

「……え?」
 驚いている新藤に大知も驚いていたようだ。
 びっくりして顔を上げて、まさかという声を出した。

「もしかして、俺が新藤さんのこと一目惚れしてセックスに誘ったの分かってなかった?」
 そう真剣に言われて新藤はきょとんとしてしまう。初めから好きだったというのだから。

「……は? いや、そんなの分からないし……」
「人を脅してまでやろうと思うほど、俺落ちぶれたのにな」
 思い切ったことをしたつもりだったと大知が言うのだが、新藤に伝わるはずもない。

「そういう性格なんだと思ってた……」
 そう言うとがっくりとした大知。

「そんなわけないじゃん。新藤さんをあそこのバーで初めて見た時からずっと好きだった。声かけてくれないかなって思ってたけど、いつも織田さんと待ち合わせてたみたいだし、でも諦めきれなくて新藤さんが一人になるチャンス狙ってやっと声かけたのに」

 そんなことをこの大知が考えていたとは思いもしなかった。そうだったとしたら彼はかなりの勇気を振り絞って自分に声をかけてくれたことになる。とてもそうは見えなかったけれど。でも彼は最初から自分の主張は通していたことになる。彼は本命以外に興味ないと言っていた。その本命が新藤のことだったのだ。

「それは……悪かった」
 まさか噂の本命が自分だなんて思うほど新藤は自分に自信があるわけではない。素直に謝ると、大知は照れたように笑った。彼がそういう笑い方をするのは初めてみる。

「いや、いいんだけど。でももう駄目なのか?」
 好きだと告白したのに、それでも新藤は自分とは縁を切りたいのかと大知は問う。

 こんなに好きなのに諦めなければならないのかと。
 その姿はさっきまでの自分に重なる。
 新藤は少し笑って身体の力を抜いた。

「な、なに?」
 大知はびくっとして新藤をのぞき込んでいる。

「まったくなんだって後からなんだよ。全然伝わってないから。大体会ってる時はずっとセックスばかりで全然何も話してないじゃないか。それじゃ大知がどんな人間なのかも分からないだろ?」
 新藤はムッとした顔をして大知に言っていた。

「……え?」
「いいから、さっさと腕ほどけ、痛い」
 痛いとはっきり告げると、大知は慌てて上からどいた。

「あ、ごめん」
 新藤がそう言うと大知は素直になって腕を解いてくれた。ずっと圧迫されていたので少し痛かったが、この腕でしたいことがあったからそれを優先させた。新藤は大知を抱きしめたのだ。

「え?え?」

「ばか、最初にそういうことは言え。俺だって大知のこと好きなのに諦めるところだったじゃないか」
 そう耳元で言ってやると大知が新藤のことを抱きしめ返した。

「マジ? マジで?」
「好きになったから、身体だけの関係が嫌になったんだよ……でももういいや」
 結局は両思いだったからあんなセックスになったんだろうし、恥ずかしいこともたくさんしたけれど、それももうどうでもいい。これからだってやっていくことだろうから。

「新藤さん……悪いけど、我慢出来ない」
 そう言うと大知は新藤を抱きしめたままソファに押し倒した。
 新藤は苦笑して大知に言う。

「お前は本当に直結だな」

「やりたい盛りなんだよ。つか、新藤さんがエロイからもういろいろしたくてたまんねえんだよ。いつも夜しか会えないし、時間はないし、かといって家に押しかけるのも迷惑かなと思って我慢してたし、新藤さんが俺としかしてないのも解ってたから、いつも頑張ってた」
 どうやら直結に結びついた原因は若さだけではなく、新藤が大知としか寝ていないことを知っていた。なので夜は頑張っていたというのだ。解ってしまえば、とてもくだらないことで意地を張っていたものだ。

「明日も休みだから、話は明日でもいいか……」
 大知に押し倒されるとやはり駄目で、身体が熱くなってくる。今は告白されたばかりだったし、気分ものってきてしまったから押さえは新藤も出来なかった。

「おいで……大知」
 新藤はそう言って大知を誘う。妖しげなその姿に大知はごくりと唾を飲み込んだ。

「もうエロすぎ……」
 そう呟くとすぐさま大知は新藤にキスをする。何度もしてきたキスだけど今日はまた違ったものになる。

「ん……は」
 散々口内を犯しながら、手はすでに乳首をいじっていた。軽く引っ張りながらこねまして撫でる。

「んはっ……」
 新藤の唇から大知の唇が離れて、顎を伝って首筋や耳の中まで舐めてどんどん舌が下に降りていく。乳首にたっすると舌で縮こまった乳首を転がしながら足の間をいやらしく触る。柔らかく触って新藤をじらすと案の定新藤が声を出して言った。

「や……ん……もっと……ちゃんと……」
「ん?」

「さわって……いじって……っ」
「了解、ついでに舐めておく」
 新藤自身はすでに勃ちあがっている。それを握って扱いてやると新藤が身体を仰け反らす。そのままゆっくりと舐めて先端をいじってやる。

「ああぁっ……は……あぁ……きもち……いいよ……あっ」
 そして穴の方も同時にいじり始める。最初は円を描くようにしながら徐々に押す力を込めていく。舐めてぬるぬるになった性器から漏れた液で穴を解し、前を咥えたままぷっつりと指を入れていく。新藤のいいところを探すように中をゆっくりと広げ揉むように中を撫でる。

「は……ん……あっ……だめっ……そこ、あぁっ!!」
 大知は見つけた場所をしつこく撫で続け、新藤の腰が浮いて背中が反り返った。そのまま無意識に腰を揺らして指を中に誘うように動き出す。

「……すげ、エロイ」
「ん……あ……もっとして……」
 そういって新藤は腰を突き出す。そこに大知は口を這わせて舌を穴に入れて舐める。

「あぁあんっ……や……それは……やっ」
「仕方ないでしょ、なんもないんだから」

「あぁあ……あっあうぁんっ……」
 穴の中に唾液を送り込んで固い穴を解していく。指を入れて出し入れし、さらに指を増やして中を柔らかくしていく。

「も、いい? 今日は悠長にやってらんないから」
「ん……あっ、きて……もっときて……」

「新藤さん、エロイからそれ」
 行為に夢中になっている時の新藤はとにかく艶めかしい。ただ綺麗な人だと思っていたけれどこの変貌は予想してなかった大知にはいい誤算だった。
 孔に大知自身を当てて、内壁をかき分けて新藤の中に入り込む。中は温かくていつも大知を締め付けてくる。その感触をなんとかやり過ごして奥まで到達する。

「あ……んふ……あっあっあつい……あついよ……」
 しっかりと収まった状態で大知は新藤にキスをした。新藤は夢中になって舌を絡ませてきて唾液を呑み込んでくれる。溢れたものは流れていってしまってそれが光ってさらに妖しさを増す。

 大知はそのまま動きだし、中を遠慮無く動き出し好き放題に中を暴れ回ると新藤はただ息を吐く間に甘い声を上げるだけになってしまう。快楽だけが支配する。

「あ……あっ……う、ん……あ、ん……っ」
 だんだんと動きが速くなって新藤は手を伸ばして大知にしがみつく。この激しさはいつもあったものよりすごくて身体はずっと揺すられてジェットコースターのような感覚になってしまう。

「……ん、ごめん、一回いかせて」

「あっ……んんだめ……もう……だめ……深い……きもちい……」
「そのままいっちゃって」
 ちゅっと耳にキスをして大知は言う。

「あ……ん……あっあだめ……いっちゃう……いっちゃっ」
 ぐんぐんと押し込まれて前も触られて新藤はすぐに達してしまった。その締め付けで大知も達する。
 はあはあと息をしながら大知が新藤に抱きつく。

「すげ、やっぱいい……」
「……ばか……とばし、すぎ……」

「セーブできないっつったじゃん」
「も、だめ……」

「もう一回だけな」
 もう体力は残ってなくて一日いろいろあったものだから疲れていた新藤に、大知はにっこりとして言った。こいつの性欲の限界は一体どこにあるのだ?とちょっとした恐怖を浮かべた新藤は、後三回も達かされることになってしまったのだった。

 翌日起きた時には新藤の声は出なくなっていて、枕で大知に抗議していた。

「ごめんってば……次からちゃんとセーブするし」
 大知は笑ってその枕の攻撃を受けながら言う。
 冗談じゃないと新藤が怒りを見せたが大知は懲りる様子はないようで、ただただ笑っているだけであった。

 今日は話し合いと言っておいたのにこれでは話し合いどころではないと新藤の怒りは収まらない。けれどそれに大知が笑って言う。

「話し合いはまた今度ね。ま、喋れたらだけど」
 そうからかわれて新藤はとうとう抗議するのをやめて布団に潜り込んだ。

「新藤さん、俺の名字、市川です……市川大知」
 大知はそういって新藤をあやしながら自分の身の上話を始めていた。

 次第に気になり出した新藤が布団から顔を出してくると、新藤の顔を見ながら大知は話を続けていく。
 新藤は初めて大知が何者でどんな人となりなのかをその日ずっと聞くことが出来たのだった。