novel短編

Dolls-兔(てう)-6

 翌日、家中の鍵を交換してもらい、セキュリティも新しく付け直した。壊れていた監視カメラも普及させ、兔がいることを考えてのセキュリティを用意した。
 Dollを狙う人間もいて、兔のように容姿が少し珍しいものは希少価値となっていると読んだのもあり、徹底させて兔にも緊急用の防犯装置を持たせた。
 それから食料を通販で仕入れた。
 当分出前で食事を済ませ、料理は料理本を見ながら一から覚え直した。
 イリヤが単身赴任している間も一人だったが、ほぼ店屋物で済ませていたため、料理はご飯を炊くくらいと簡単なものしかできない。
 どうせ暇だからと一から勉強し直しながら、兔と一緒に作っていくのも楽しかった。
 麻世を解雇してから二週間して、様々な不自由が段々とこなせてくるようになり、当たり前のこととなり始めていた。
 それでも人に触れるのが嫌な嘉藤と、人前に出る訳にはいかない兔の生活は基本引きこもりだ。
 嘉藤は基本的に、祖父の遺産と投資や株で生活費を膨大に稼いでいる。すべて仕事は人任せなので、悠々自適なのだが、それでは生きがいはなかった。
 兔が来てから、自分で何かをするということをするようになり、それだけで楽しくなっていた。
一ヶ月もするとまともなことができるようになる。
 兔に至ってはデザートを作ることも覚えた。そのためにオーブンを買ったし、様々な機器を購入したほどだ。
 今日のデザートは大好きなイチゴのショートケーキだ。
「ホイップが付いてしまっているよ」
 兔の頬に付いているホイップを舌を使って舐め取った。
 兔がくすぐったそうにしていたが、それでも嘉藤は舐めた。
 その唇を兔が追ってきて言った。
『キス……したい……高和の唇、美味しそう』
 兔がうっとりしたようにそう言うものだから、嘉藤はそのまま兔の言う通りにした。
 唇を当てて舌で唇を舐めて、深いキスをした。
『気持ちいい……高和……あっいい』
 唇が塞がっていても声が聞こえて、くすぐったい気分になった。
 チュチュッと頬にもキスをして離れた。
「美味しいな」
 そう言うと、兔の体がストンと床に落ちた。
「うわっ兔!」
 完全に床に座り込んでいる兔は、真っ赤な顔をしてぼーっとしている。
 抱き起こすのに触れると、兔は。
『キスすごい、すごい気持ちいい……もっとしたい』
 どうやらDoll特有の快楽に弱い性質は残っているのか、快楽には正直だった。
「……兔」
『高和、抱いてほしい』
 顔を真っ赤にしたままだが、真剣に兔がそう言う。
『大好き、好き、好き同士はセックスをできるって書いてた』
 最近読んだ本の中にそうした描写がされているものがあったのだろう。最初こそ夫婦にしか認められないことだと思っていたようで、そうではないと知ってからの兔は積極的だった。
 嘉藤はそれに惹かれるように、兔の首筋にキスをした。Dollに欲情するなんてと頭の中では思っていたが、それでもやっと触れられるという気持ちの方が大きかった。
 最初から兔に対しては欲情するのを押さえていたと思う。混乱や妻のことがなければ、その日のうちにどうにかしていただろう。
 ある日、スルリと嘉藤の中に入り込んできて、そして居着いてしまった。その存在感は孤独だった嘉藤の心を埋めてくれるものだった。
 かつて妻を愛したことと、それ以上の愛情を持って兔には接していたと思う。本当の夫婦としてしたかったことを兔としていたと思う。
 こうやって孤独を埋めてくれて愛してくれるのが、Dollだと分かっていても、欲情した心はもう止められなかった。
 小さな体を抱き上げて、ベッドに運び入れ、服を脱がしながらも体中にキスをした。
「はっ……は」
 兔の息が上がって口からは吐息が漏れてきた。
『気持ちいい……いい……』
 ふわふわとしたような言葉になっていて、考えて浮かんでいる言葉ではないようだ。ただ感じるままに感じて、それが思考として残っているというようだ。
真っ白な体の胸にある突起に唇を寄せて触れると、ビクリと兔の体が跳ねた。体に舌が這う感覚など味わったことはないだろう。だからびっくりしたのと同時に乳首が感じることが驚きだったようだ。
『あっ……乳首、舐めるの? ……舌、気持ちいい……ザラザラしてて気持ちいい……』
 もっと舐めてと言わんばかりに兔が胸を突き出してくる。
「乳首を舐めるのは気に入ったか」
 そう嘉藤が言うと、兔はうんうんと何度も頷いた。
 快楽に弱く作られているとはいえ、それでも嗜好の違いはあるはずである。兔は嘉藤が触れたところは何処でも気持ちがいいと思えるようだった。
 他人をあれほど怖がっているのに、嘉藤に対してだけはあけすけであるのは、嘉藤に取っては喜ばしいことだ。
 妻のように自分を裏切ることは絶対にない。それがDollだ。
 Dollには主人に対して何でも心を開くように作られている。
Doll所持をしている個人となれば、趣味の嗜好もそっち系であることが多い。真路が言っていたようにsex Dollとしての方が有名で、国で保護されるほど酷い遺伝子操作をされていることまでは広まっていない。
 sex Dollだから、誰でもセックスしていいという話として広まっているが、そうではない。主人以外の干渉はDollが精神的に壊れる要因とされる。そのため個人保護においてのDollセックスは認められているわけだ。Dollの精神安定のための一つである。
 だから嘉藤が兔を抱く時に、兔から望めば、その対象として嘉藤が認められたことになる。
 初期Dollは、最後に作られたDollからしても約二十年以上経っている。つまり精神的にも大人であるため、Dollとのセックスを規制する法律自体が無効になっている。改造の偽Dollに関しては、従来の成人以下のセックス自体が禁止されている状態である。
 だが兔は精神的な年齢は十七歳である。
 そんな子供にセックスを覚えさせるのもどうかという世間的な道徳観はあるが、そんなことよりも兔が待ちきれないとばかりに体をすり寄せてくるのに嘉藤はその辺の道徳観を捨てていた。
 淫らに蠢く兔は、可愛くて綺麗で、体の隅々まで舐めてやりたいほどだった。首から乳首から、腹や足まで舐めて、内股にもキスを降らせた。
「はっはっ……はっはっ」
 柔らかい兔の肌に触れ、心が満たされていくのが分かる。
 兔の腰を高く上げて、兔の中心を咥えた。
『……ああああぁあぁぁぁ―――――! 気持ちよすぎる、ああ、高和、気持ちいい、いいっ!』
 舌で舐めて吸ってやると、兔はあまりの快楽に言葉が浮かばないような嬌声を上げ始めた。
「っ――――――!」
 びくびくっと体を痙攣させて達した。
 恐らく初めてであろう射精は、思った以上に長く、精液も濃かった。
 それを吐き出して、兔の孔に触れると少し濡れていた。
 DollがセックスDollと言われる所以(ゆえん)だ。
 孔に潤滑液のような液体がでてきやすく作っている。長年のsex Dollとして作られてきた操作された遺伝子情報は支障がないので受け継がれている。
 指を兔の孔に忍ばせると、中が濡れている状態だった。
 一本の指を動かすと、ヌルヌルと簡単に動かせ、二本にして中を広げると兔は腰を動かし始めていた。
 真っ赤な顔をしながらも快楽には貪欲で、もっともっとと求めてくる。
 前立腺を擦ってやると、兔は綺麗に達した。ピューッと精子を吐き出して、それが腹を濡らしている。
「いい子だ」
 孔を三本の指で広げてから、嘉藤は自分の勃起した性器を兔の孔に当てた。
 亀頭が上手く入り、ずるずると中へと押し入る。
『あ、あ、あ、あ、入ってくる……高和が入ってくる……あ、あっ!』
 しっかりとした重圧感が内壁を押し上げて入ってくると、さすがに兔も苦しそうに受け入れたが、それ以上に嬉しさが勝っているようだった。
 内壁がしっかりと嘉藤の性器を包み込み、滑りがその侵入を助けてくる。
奥の奥まで達すると、兔が嬉しさに痙攣をしていた。
「入れただけで、空イキしたのか」
 きっちりと締まっている孔が、嘉藤を咥えて離さない。
『あっあぁあっ……ん、んっ、いい……んぁ』
 頭の中は嬌声だらけのようだ。まともな思考が何一つなく、行為に没頭している。そんな兔が可愛くて、嘉藤は兔の唇にキスをした。
 そしてゆっくりと舌を味わうように舐めあい、腰を引いて一気に突いた。
『あーっぁああ! あん! あん! あ! いいっい…っい、これ、これぇっすごいよぉ――――――っ!』
 パチュパチュと音がなり、腰を打ち付けると兔が心の中で嬌声を上げている。息が上がった口からは、息を吐く音が大きくなっていて、全力疾走でもしているかのようだ。
 圧倒的に違う肉体に押さえられて、打ち付けられるセックスを兔は喜んで受けている。これを無理矢理だと言う人がいたら、きっとDollの性質のせいだと言い訳をするのだろう。
 心から喜びの声を上げているなんて他の人には理解できないことだ。
 はっはっと息をもらし、甘えるように抱いてくれと言う兔は可愛くて、酷くしたくなる。中にたくさん注いで、いっぱいにしてやりたくなる。
 そんな感情が浮かんで、嘉藤はそれを実行した。
 うねる内壁が嘉藤自身を扱き上げ、あっという間に嘉藤は達した。人と寝たのは、約六年ぶりだ。妻以外と寝たことがない嘉藤は、セックスの素晴らしさをまた感じられて嬉しかった。
 好きなもの同士が抱き合うことは、自然の理だ。
 たとえ、兔がDollであってもそれは変わらない。Dollに少しの印象操作があるだけのことだ。
『あ! あ! 止まんな……止まんないよぉっ、あっあっあっ! いっいくぅ! あっあっあっ! 凄いぃいっ凄い!』
 兔の性器から精子が有り得ないほど吹き出た。潮を吹いたのだ。少し腰を動かすだけで、それはピュッと吐きだしてくる。
『な、なんで……きもちいいっけど、とまらなぁあ……』
イッている兔の体を反転させ、バックで楽な体勢にしてやってから、抜かずに続けて突いた。いつの間にか嘉藤の性器は復活してガチガチに膨れている。
『はっ……はぁんっんっあっん! 凄いぃいい―――――っ!』
「いい、兔、気持ちいい」
 腰を振りながら、嘉藤は必死にそう言った。自分も同じだから、同じ気持ちだからもっと乱れてくれと願うように言うと、兔の嬌声はもっと上がった。
『あっ、あっ、高和……ぁん! んふぅっ! ひぁっ、あーっあーっ!』
兔が頭を振り乱して、ビクリとして達する。
 それでも嘉藤は突き続け、兔の孔はあふれ出た残滓(ざんし)が泡となっている。それが音を立てて部屋中に響いていて、卑猥さが増してくる。
 気持ちよければ濡れる孔ではあるが、Dollがそう思わないとならない状態になり、兔は嘉藤を受け入れ続けた。
『高和……愛してる……愛してる』
 いく瞬間にそう兔が言う。本当に愛おしくてたまらないと顔には書いてあった。
「私も愛してるよ……兔」
 そう言ってキスをした。
『嬉しい……』
 兔がそう言って果てた。
 一緒に達した嘉藤だが、兔がぐったりとなったのを見て、慌てて息を確かめてしまった。
 兔はどうやら気を失ったようで、息はしていた。
 それを確認して、嘉藤はほっと息を吐いた。
「……びっくりした……」
 兔がいなくなったらと一瞬でも考えたら、怖くて生きていけないと思えた。これだけ楽しく生活ができているのに、今更一人になるなんてできやしない。
「兔……お前は、すっかり私の一部だ」
 抱いたことなんて後悔はしない。こうやってひっそりと生きていくんだと思った。
 兔を抱きしめ、体を風呂で洗って綺麗にしてから兔の部屋に寝かせた。
 兔の部屋は、すっかり兔の好きなモノで埋め尽くされていた。小さな学習机のような机と椅子。その周りには兔が気に入って集めた文房具。本を読むのが好きな兔だが、この部屋にあるのは祖父の所蔵していた、昔の時代劇の小説だったりする。
 置いてあるベッドはあまり使わないが、それでもフリルが付いたものでまとめているのは、ただ単に嘉藤が好きで兔に似合っていると言ったからだと思う。兔は与えられたものなら何でも着ただろう。
 Dollの主人を裏切れない性質は、どこまでも嘉藤を追い詰める。自分が望んでしたことをDollは断れないからと言われたら、そうだろうなと思える。
 セックスDollとしての性質もまたあるから始末に負えない。
 世の中のDoll愛好家はこうしたことはしないのではないかと考えると、心が軋むのだが、世界が二人で閉じているなら、それでもいいかとさえ思えた。
 もう兔がどう思っているのかなんて、問題ではなくなっていた。
 けれど、嘉藤にはしなければならないことが残っていた。