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switch101-16 シャム双生児

「あーあ。いっその事。透耶とくっついたままで良かったのになあ」

 下らない事を思う俺は、結構ヤバイかもしれない。
 そう言う俺を一蹴したのは、友人の当麻だ。

「あたしは嫌よ! 何で、くっついてるあんた達の面倒見なくちゃならないわけ!」

 当麻が完全に切れそうな顔で怒鳴ってくる。
 まあ、当麻は怖いしなあ。

「だああ!! あの天然ボケは! 何処ほっつき歩いてるのよ!!」
 ヤバイな、マジ切れそうだ。

 この一ヶ月、俺の兄貴である透耶が行方不明なのだ。
 まあ、一週間くらいなら余裕はあったんだが、もう一ヶ月だ。

 さすがに、俺も諦めてたんだけど。
 とうとうやったんかー?ってくらいで、透耶ならやりかねないし。

 最初の一週間は焦った。
 まだ捜せば間に合うだろうと思った。

 だけど、さすがにもう駄目かなあ?って思った所へ、編集者の手塚さんから連絡があった。
 透耶からの連絡で、仕事の打ち合わせをしたと言ってた。

 ということはだ、透耶にはやるきはなかったわけだ。
 それは安心した。
 約束だから、しないと言った言葉を透耶はちゃんと守ってる。

 しかしだ。
 居場所がバレるのが困るってのは、どういうことだ?
 しかも言い淀んでた?
 言えない訳でもあるのか?

 まあ、電話してくる位だから、それなりにやってるんだろうけどよ…。
 透耶の銀行残高が一向に動かないのはどういうことだ?

 おいおい、怪しい誰かに買われてるなんてこたぁねぇよな?
 携帯は相変わらず繋がらねぇし、メールは返ってくるし…。


 あれほど、携帯は一日一回繋げて、メール確認しろっつってんのに!
 携帯をメモ帳代わりにしてんじゃねぇ!!アホ兄貴!!!

 突飛な行動をする兄貴であるが、ここまで徹底して消えたのは初めてだ。
 
 従姉に聞いても知らないと言うし、珍し過ぎる。
 透耶は、何かあると俺に相談する前にあいつ、従姉に相談するし、あいつは信用に値するから、あいつが嘘をつくわけないし。
 嘘付くどころか、あいつはペラペラ喋るしな…人がこうこう嘘をついてと頼んでいたと、一言一句間違えねぇ答えやがる。

 こういう時は、透耶も頭が回るのか?
 ヤバイ所を徹底的に避けて、無難な所で無事確認させてんじゃねえ!!

 従姉には脅されてしまったしよぉ。
 まったく口が上手いのは、透耶と同じだ。

「あら、透耶だって子供じゃないのよ。自分の行動くらい責任持ってるわ。連絡してこないって? 大丈夫、ただ単に話しにくいだけよ。帰って来るまで待ってみれば? こっちに連絡があったらさり気なく聞いてあげるわよ。光琉も仕事があるのでしょ? だったら一旦引き受けた仕事はプロなら完璧にこなしなさい。無様な醜態晒したら、どうなるか解るわね」

 これじゃ、ぐうの音出ないって…。
 何が怖いって…こいつも透耶も笑って怒るんだ!!

 透耶だって、あいつだって、俺が仕事を蔑ろにしたら、総攻撃しかけてくるぞ!
 透耶なんか、自分がやった事、棚に上げして攻撃するぞ!!

 だけど、俺もあいつも、さり気なく透耶に甘いのは、お互い様なんだけどな。


 で、二度目の連絡があったのは、本が発売されて四日目だったか?
 また場所は言えないと言っていたが、本屋がある所であるのは、日本にいるという事だから、まあいい。

 だがな、俺には居場所が解ってしまったんだ!

 透耶は沖縄にいる!
 勘じゃねえぞ、絶対だ!

 ラジオから流れてきた、あの、クソふざけた歌詞!!
 あれは俺が作った、門外不出の歌じゃねえかよ!!

 この日本で、まるっきり同じ歌作れる奴がいたら、俺はそいつに抱きついてキスして、一晩一緒に甘い夜を送ってやる!!!

 ガン!と思わず、側にあった椅子を蹴飛ばしてしまった。

「やだああ!! 光琉ー! お願い落ち着いてー!」

 のあああ!
 マネージャーがまた俺がキレたんじゃないかと大騒ぎを始めた。

「悪いー。ちょっと思い出し怒りだから」

 俺は少し不機嫌な声で言った。

 くそ!
 仕事さえなけりゃ、絶対沖縄まで探しに行って、あの物騒な口を塞いでやるのに!!

 門外不出の歌、何曲垂れ流しやがったんだ!!!!

 帰って来たら、どうやってお仕置きしてやろうかあ?! ああ?!