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switch101-28 菜の花

「透耶、菜の花って食べられるのか?」
 いきなり恭がそんな事を言って書斎に入ってきた。

「は?」

 一体何がどうしてそんな話になったんだか…。

 俺にはさっぱりで事情を聞いた。

 すると近所の奥さん達に、お裾分けだと言われて菜の花を渡されたんだそうだ。

 一応、食用のだから大丈夫よ!と念を押されたらしいが、恭には菜の花が食べられること自体が不思議でならないらしい。

「だってあれ道ばたに生えてるやつだろ?」
 そう言ってまだ不審顔。

「それは普通の菜の花だけど、食べられない事もないんだよ」

「そうなのか?」
 本当に驚いている。
 その姿が俺には面白かった。

「どうやって食べるんだ?」

 まったく調理した事ない材料に出会って鬼柳は困り果てているようだった。

「食べられるよ。おひたしとかにすると美味しいんだよ」
 と、俺は京都で両親が作ってくれていたおひたしを思い出した。

 あれって結構美味しいんだよねえ。

「本当に大丈夫なのか?」
 やっぱりまだ迷ってる。

「大丈夫だって。食用に栽培されてたんでしょ? だったら普通の野菜と変わらないって」

 俺がそう宥めると、なんとかまだ納得してないけど、渋々とばかりに部屋を出て行った。

 で、結局どうなったかって。

 ちゃんとおひたしとして食卓に並んだ。

「作り方が解らないから聞いてきた」

 そう恭は作り方が解らないから、近所の主婦にその作り方を伝授してきてもらっていたのだ。

 そこまでしなくても普通にできると思った俺は驚いてしまった。

 そういうのは本当にまったく作った事がなかった。というか信用してなかったんだね。

 俺が食べるから余計に気を使ったんだろうけど。

 何もそこまでしなくてもいいのにねえと思ってしまった。

 けどちゃんと出てきたモノは美味しくて、久しぶりにこういうのを食べたなあと思った。

 でも恭の心配性。
 なんか笑っちゃいけないけど笑ってしまったよ。

 そこまで慎重なんだもんね。

 食材にこだわっているだけの事はあるけど。

 料理人鬼柳恭一のメニューの中に、ちゃんと菜の花のおひたしが加わったのは確か。