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switch101-30 通勤電車

 俺があの少年を見かけたのは、ちょうど三年前。

 初めて乗った通勤電車で、異様に目立つ存在だった少年。
 顔は女性並みに綺麗で可愛いのだけれど、制服が男物だったので少年だと分った。

 でも、その表情は暗く、そして鋭い視線があった。
 何か思いつめている顔をしていて、それで誰も近寄れない雰囲気をかもし出している。

 痴漢とかに会いそう感じだけど、あの雰囲気では近寄れないだろう。

 そうして、俺は通勤電車に乗ると、何故かその少年に目が行ってしまっていた。

 だが、二年目の途中。
 少年は同じ電車に乗ってくる事はなかった。

 そのまま少年をみかける事は無くなり、時間帯でも変えたのかと思った程度だったのだが、少し心配だった。

 その一年後。
 少年を見かけた。
 俺も住む場所が変わって、あの電車に乗らなくなっていたから、少年の事は忘れていた。

 でも、帰りの電車の中で、少年は背の高い男性と一緒にいた。

 初め、少年と気が付かなかった。
 表情があまりに違っていたから気が付けなかったのだけど、やはり目立つ顔を見れば、あの時の少年だと気が付く事が出来た。

 あの頃の近寄れない雰囲気はまったくなく、まったくの別人のような感じになっていた。

 それを守るようにしている男性に少年は笑いかけている。
 それを見て、俺は何故かホッとしてしまった。

 あの頃、少年は消えてしまいそうなくらいの存在感しかなかった。それが今やちゃんと生きている表情をしている。
 それがあの男性との出会いに関係しているのだろうと思えた。

 どういう関係かなどはどうでもいい。
 ただ、少年が生きる意味を見い出して元気でいた事が俺には嬉しかった。

 よかったな、幸せなんだよな。
 そう思うと、俺も幸せになろうと思った。

 ちょうど、今付き合っている彼女と結婚するかどうかで迷っていた。
 でも、あの少年の幸せそうな顔を見ていると、俺も彼女にああいう顔をして貰いたいと思えてしまった。


 その晩、俺は彼女にその話をして、プロポーズをした。

 誰かを愛する事は、幸せなのだと、あの少年が教えてくれた気がした。
 同じ東京の空の下で、少年も俺も幸せに生きているのだから。