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switch101-31 ベンディングマシーン(自動販売機)

 夜、俺は仕事に行き詰まってしまっていた。

 普段、こういう風に悩んだりしないのだけど、三つの結末が浮かんでしまって、そのどれを選んだらいいのか解らなくなってしまっていた。

 その時、恭が部屋に入ってきた。

「透耶、終わりそうか?」
 時計を見ると、11時を回っていた。
 そろそろ寝る時間だと言いにきた恭に思わず。

「終わらない…無理」
 少し情けない声で答えてしまった。
 仕事の事で泣き言は言いたくなかったけど、本当に無理だと思ってしまったし、恭の顔を見てしまったら口にしてしまっていた。

 そりゃ、出来ないのは自分のせいだし…。
 きっと呆れてる。

 そう思って恭を見上げると、恭は何を思ったのだろう?
 すごく真剣な顔をして俺に近付いてきたかと思うと、俺の腕を引っ張って椅子から立たされた。

 何だぁ?
 と思っていると、直ぐさま俺は恭の肩に担がれてしまった。

「何?」
 いきなりなのはいつもの事だから、それほど驚きはしなかった。
 だけど、仕事中と解っているはずだから、何かするとも思えない。

 俺が何?と言ったのに、恭は何も言わずにスタスタと歩いて行く。

 このまま寝室に直行なのだろうか?


 そう思っていたが、恭が歩いて行く先は、どう考えても車庫の方。
 相変わらず、訳の解らない行動をする恭だ。

 どうするんだろう?

 そう思いながらも大人しくしていると、やはり車に乗せられた。

 本当に何がしたいんだろう?

 さっぱり訳が解らず、恭に靴まで渡された。
 恭も車に乗って、エンジンをかけて外へと出て行く。

 何処か行く予定でもあったっけ?

 そんな事を考えてみたけど、約束をした覚えはないし。
 恭は何も言わないし。
 何で、無言なんだろう?

 不思議だったけど、流れる景色がいつもと違うのに気を取られて、俺は頭の中にあった仕事の事を段々と忘れていってしまった。
 夜のドライブは、かなり久しぶりだったので、それを楽しむ事にした。

 もしかして、気分転換にドライブに連れ出してくれたのかな?
 ふとそう思って恭を見ると、煙草片手にでも真剣に運転をしている。

 こういうのはやっぱり適わないよなぁ。
 俺は思わず笑みが零れてしまう。

「透耶、何か飲むか?」
 いきなり恭が言ったので俺は頷いた。
 
 ドライブの途中で、自動販売機を見付けてそこへ車を止めて降りた。
 車に戻らず、そのままそこでコーヒーを飲んだ。

 うーん、何かひらめきそうな気がして、ふっと視線を上げると、恭と目があってしまう。
 どうやら、ずっと俺を見てたらしい。
 
 う…目が反らせない。
 ジッと見つめ合ってしまった。

 すると、やはりなのだろうか?
 恭の方が先に動いて、口に当てたままになっている缶を握っている手をヒョイっと退けると、キスをしてきた。
 思わず、受け入れてしまったから恭が止まる訳ない。
 恭の結構本気のキスに、俺はまだ慣れなくて、いつもすぐに翻弄されてしまう。

 だけど、今日は違った。

 恭には悪いけど、今まさに小説の結末が浮かんでしまったんだ。

 悪い悪いと思ってても思考は止まらなくて。
 あーだこーだと考えていると、いきなりキスがやんだ。
 さすがに恭にも解ったみたいだ。

「とおや〜っ。キスの時くらい、仕事忘れてくれ〜」
 そう懇願されてしまった。

「…ごめん」
 素直に謝った。
 これはさすがに俺が悪い。

 あ…すごく不満そう。
 恭の顔がそう言ってる。
 俺は苦笑して、恭の首に腕を回して引き寄せて、俺からキスをした。
 軽く触れるくらいで離れたんだけど、腰をがっしりと掴まれてしまう。

「それで済むと思うなよ」
 やばい…どうやらスイッチが入ったみたいだ。

 逃げようとしたんだけど、当然逃げ切れるわけもなく。
(何処へ逃げればいいのか解らなかったし)

 腰に回した恭の手はしっかり俺を掴んでいて、飲みかけのコーヒーは、さっさと取り上げられてしまった。
 車に押し付けられる感じで、濃厚なキスを受ける羽目になった。

 もう、こんな事する為のドライブだったのかよ!
 俺がそう怒った所で恭から返ってくる答えは意味不明。

「だって、透耶が誘ったんだもん」
 なんだよそれ…。
 まったくもって意味不明だ。