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switch101-32 鍵穴

 俺は鬼柳さんに監禁されてから、ずっとする事がなくて別 荘中をくまなく捜索した。
 それは逃げる為に何かないかと思っての事だったけど、時は既に遅し。

 俺が逃げられそうな一階のドアは全部外からカギがかけられているし、玄関も外からのカギが多くなってるし。
 二階は二階で一回別の部屋に隠れてたら、ドア壊して入ってきて俺を捕まえた。

 それ以来、全部、それも寝室だけはカギが壊されて外からしか閉められないようにしてあり、他の部屋は全部カギがかけられてしまった。

 唯一入る事を許された部屋は書斎のみ。

 トイレやお風呂に閉じこもる事も考えたけど、どうせ、馬鹿力で壊して入って来て、また寝室に連れ戻されるに決まっている。
 そうなったら、またセックスされてしまう。

 激情した鬼柳さんは、獣のように怖くて、俺は逆らえない。
 怖くて逃げだせない。

 こうして逃げる事を考えるのは、鬼柳さんが食事を作ったりして、俺が一人になった時だけ。
 それ以外では、鬼柳さんは俺の側を離れない。

 書斎にいても入り口付近に椅子を置いて見張ってるし、トイレに入れば外で待っているし。お風呂は乱入で、ベッドは同じ。
 買い物にも出かけているみたいだけど、大抵俺が寝ている間で、起きた時にはちょうど帰ってくる時間になってる。

 はあ、何もかも見透かされたように俺は監視されてる。

 どうしてそんなに俺の事に構うんだろう?
 そうした疑問を口にした。

「透耶が好きだから、ずっと閉じ込めておきたい」
 と、ストーカーな返事が返ってくるだけ。
 抱く事だって。

「透耶を抱きたい。セックスしたい」
 というだけで、本当に何を考えているのか解らない。

 俺は俺でもう逃げる事すら出来ない。
 逃げ切ったとしても、俺の居場所はすぐにバレる。

 警察に駆け込めばいいのに、俺はそうしたくないとさえ思いだしている。

 こういう事をする鬼柳さんは、凄く優しいのだ。
 殴ったりする暴力は振るわない。
 セックスする時だけ、力を使っているに過ぎない。

 それ以外では、どうして?と問いたくなるほど、優しくて優しすぎる。
 その優しさが俺が鬼柳さんから逃げる事への執着を無くしてしまう。

 優しさに飢えているのかもしれないと自分でも思う。
 誰かに愛されたいとさえ思っているのかもしれない。

 でも俺はダメなんだ。
 心のドアはどうしても開けられない。

 カギなんかなくて、外から開ける鍵穴さえないんだ。

 それなのに、鬼柳さんは内側から俺がドアを開けてくるのを待っている。
 少し乱暴だけど、心に響く言葉で扉を開こうとしている。

 それが今は少し怖い。
 開けてしまったら、俺はどうなってしまうのか。

 優しい鬼柳さんまで、俺のせいで呪われて欲しくないんだ。

 だから、ドアは開けないで。

 今は解らないけど、開けてしまいそうになるから、優しくしないで。