switch

switch101-36 兄弟

 最初に透耶の弟を見た時、まったく似ていないと思った。
 次に本物を見た時も、まったく似てないと再度思った。

 これで双児か?
 そう疑いたくなるくらいに似てない。
 だが、周りは似ていると言い、透耶を光琉と間違えて話し掛けてくる人もいた。
 
 どうも皆目がおかしい。
 俺はそう思っていた。

 感動の再会になるはずだった透耶と光琉だが、奇妙な事になっていた。
 心配するでもなく、光琉は透耶に何か意味不明な事で怒っている。
 最初、それを光琉だと思わなかったから、締め上げてしまったのだが、透耶が止めなければ気が付かなかったかもしれない。

 本当にそれだけ似てないのだ。

 だが、光琉と話していると、所々透耶に似ている所がある。
 光琉の方が、もっと男らしい喋りなのだが、それは無理をしている部分がある。

 あの透耶と一緒にいたのなら、喋りが似てないのはおかしいんだろうが。
 いや、透耶の方が、光琉の喋りを真似して、男らしさを出していたのかもしれない。

 俺といる事で、元に戻ってしまったという感じだろうか?

 そんな事を考えながら、俺は透耶に何をしたのかを光琉に全て話した。
 細かく説明する事なく、簡潔に。
 その方が透耶に非はないと思ったからだ。

 当然、光琉は怒るだろうと思った。
 殴られても仕方がないのだが、光琉はそれを押さえている。
 ここで怒鳴って殴ったら、続きが聴けないとでも思ったのだろうか?

 淡々と進む話で、光琉の方が先に根を上げた。
 よく分からないが、透耶の感情が理解出来ないらしい。

 こういう所もよく似ている。
 何を言っても無駄だと感じた時、完全に諦めてしまう癖だ。
 妥協する事に慣れている。
 
 光琉と話している中で、透耶は俺が知っている透耶ではなかった。
 綾乃も同じような事を言っていたが、透耶は俺といることでかなり変わったようだ。

 それもいい方に。
 その事実だけが、俺には嬉しい。
 俺が透耶の生活を壊してしまったと思っていた。

 もしかしたら、透耶が唯一の身内という、双児の兄弟の光琉に見捨てられたらと考えたら、俺もどうしていいか分からない。

 絶対に透耶を手放したくはない。
 だが、俺がいる事で透耶が不幸になるのを見ていられない。

 光琉は何処かずれているのだろうか、俺と透耶の事は詳しくは聞いてこなかった。
 世間話をするように、ただ話すだけで、核心はついてこない。
 こういう配慮は、やはり透耶に似ている。

 聞いてはいけない事。
 当の本人がいない所で、その本人に困る事は絶対に聞いてきたりしない。
 
 光琉と話す事で透耶が知っている事以外の玲泉門院関係の話はきけたが、まだ謎は深い。
 透耶も光琉もある程度知っているだけで、それ以上深い事は知らなくてもいいというような感じだ。

 呪いの事は、諦めて受け入れている。
 ただ、何があるか、それだけを知っている感じだ。

 そして感じた事。
 光琉は絶対に誰とも恋愛をしない。

 光琉にとってこの世で一番大事なのは、兄である透耶なのだ。
 兄弟だからという繋がりではなく、俺のような邪な考えでもなく、ただ居てくれているだけでいいという存在なのだ。
 
 俺という存在を受け入れてもなお、それでも光琉にとっては、透耶しかいない。
 俺は、光琉のそうした気持ちを解ってしまった。
 この兄弟の絆は、俺と透耶の絆とは違う。

 だから、まあ、光琉のやりそうな事を感じた時にも、拒む事は出来なかった。

 2ヶ月も行方不明にし、心配させた事は、俺が透耶を失うかもしれないと自暴自棄になっていた時と変わらないはずだ。
 そうさせた自分は、少しは光琉に報わなければならないと思った。

 それもまあ、全部透耶の為なんだけどな。
 透耶と光琉が好きな時に、いつでも会えるようにしてやるのも、俺の役目のような気がした。

 だけど、まさか女装で。
 それが原因で事件が起こるなど、俺でも予想は出来なかった。