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switch101-41 デリカテッセン

 デパートに出かけた時、恭がデリカセッテンの前で立ち止まっていた。

 真剣に惣菜を眺めてて、なんだかそれがおかしかった。

 たぶん、これはどう作るんだろうと思って眺めているんだと思う。

 日本食のレパートリーはまだ少ないらしくて、俺が食べたいと思っても、近所のおばさんたちに作り方をきかなきゃ作れないものだってある。

 料理得意の恭でも、やっぱアメリカで育ってそこで覚えた料理だから、そっち方面 か、簡単に食べられるモノが多くなっている。

 だから日本食を今一生懸命覚えてるんだ。
 それも惣菜なんかで出てくるモノばかり。

 菜の花のおひたしすら知らなかったくらいだから、あれからずっと気にして勉強してるんだよね。

 食べ物の事になると真剣そのもの。

 趣味でできるようになって、必要にかられてやっていたと言っていた料理の腕前は、レストランなら一流シェフのように出来るけど、家庭料理になると弱いみたい。

 そういう所は不思議。

 今も真剣に見つめているのは、惣菜でよく見かけるものばかり。

「ここで睨んでても、味解らないし作り方も教えてくれないよ」
 俺が見兼ねてそういうと、恭はハッとして顔を上げた。

「こういうの作る本ってあるのか?」
 勉強する気満々な恭。

「あるよ。普通の料理本なんかに載ってるし」
 俺はそう答えた。

 料理本なんて腐る程出てる。

 そのどれにでも簡単な惣菜系の料理なら載っているはずだろうと思ったから、そう言ったんだけど。

 恭はもうその気になって、惣菜の前から離れて、買い物を途中でやめて本屋に向かった。

 本気だ。本気で惣菜系の料理を作るつもりだ。

 俺は恭に手を引かれて、本屋へと連れて行かれる。

 本屋には何度もきているし、恭も来た事あるから、速攻、料理本の前まで案内されてしまう。

「透耶ってやっぱこういうの食べてただろ?」
 そうして差し出された本を見ると、きんぴらとか肉じゃがなどの料理。

 今まで食卓に登らなかったのは、恭が作り方すら知らなかったからなのだと解った。

「うん、食べるけど」

「作って貰ってた?」

「お祖母様とか得意だったよ。作る人によって味が微妙に変わるから面白いけどね」
 俺がそう言うと、恭は次から次へと日本食に必要な本を取り出しては、俺が好きかどうか聞いてくる。

 今度から日本食がメインになりそうな予感がするよ。

 結局、恭は日本食がメインになっている本を三冊程買い込んで、そのレシピに合わせて食材を買い込んでいた。

 これで確実に日本食がメインの日々が続きそうです。