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switch101-49 竜の牙

 透耶は、全身が映る鏡を前にして溜息を吐いた。

 バスローブを羽織った状態で、前はまだ開いている。
 そこから覗く自分の身体を見て、更に溜息を漏らした。

 全身にあるキスマークの痕。
 首筋には歯形。
 内股にも歯形。

 所有物の証であるのだが、透耶にはこれが何を意味するのか解っていなかった。

「何でこんなにするんだろう?」

 そんな呟きを漏らした時、鏡に鬼柳の姿が映った。

「…鬼柳さん」

 透耶が驚きと共にホッとして鬼柳を呼ぶと、鬼柳は真剣な顔をして透耶に近付いてきた。

 じっと鏡越しに透耶を見つめたままで、鬼柳は透耶の身体に触れる。
 後ろから抱き締めた状態で、ゆっくりと頬を撫でて、項にキスをすると、今度は耳を舐めて囁いた。

「これの理由が解らない?」

 言って、首筋の歯形を人差し指で撫でる。

「…何なの?」

 透耶が聞いて振り返ろうとしたが、鬼柳が透耶の顎を掴んで視線を鏡に向けた。
 透耶は驚きながらも、鏡越しに鬼柳と視線を合わせる。

 先に鬼柳の方が動いたのだが、透耶の腰と顎を掴む手はそのままで、首筋の歯形にキスをした。

 透耶は鏡で、そうする鬼柳を見て、心臓が飛び出そうな程驚いた。

「き、鬼柳さん!」
 そう言って動こうとする透耶だが、鬼柳が腰を掴む腕をきつくした。

「…見てて、どうやってるのかを」

「え?」

 透耶が聞き返す前に、鬼柳が行動した。

 口を開いて、軽くではあったが透耶の首筋に噛み付いた。

「…ん」
 噛まれる感覚に透耶は少し目を閉じてしまう。

「見てなきゃ」
 鬼柳が鏡越しに透耶を見つめて言った。
 透耶ははっとして目を開けた。

「…だって」
 透耶が恥ずかしそうに視線を反らしたので、鬼柳は笑ってしまう。

「ここ、感じるんだったな。ごめん」
 笑いを含めた鬼柳の言葉に透耶が視線を上げた。
 鏡越しに鬼柳を睨み付ける。
 鬼柳はニヤリと笑っている。

「…そういう事、言うな…」

「んー、まあ、いいけど。これ、ここだけじゃないんだよね〜」
 鬼柳は言って、透耶のバスローブを脱がす。

「ほら、ここ。ここも。こことか」

 鬼柳は嬉々として、歯形がある場所を手で触れて行く。

 首筋、左肩、右脇、左の腰骨のある辺り、右内股。

「…んっ!」

「…あ、ごめん」
 鬼柳が熱心に説明していたのだが、触る所が全部透耶の感じる場所だったものだから、透耶は必死に両手で口を押さえてそれに耐えている。

 崩れてくる透耶の身体を支えて、鬼柳は優しく微笑む。

「これって、処理しないと駄目だよな…」
 透耶の前を触ると、もう既に立ち上がっている。

「…責任、とれ」
 甘い息を吐きながら透耶が言った。

 それを聞いて鬼柳が張り切る。

「畏まりました。お任せ下さい」
 などと冗談っぽく言って、透耶を抱えるとさっそくベッドに向かった。