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switch101-51 携帯電話

 透耶が書斎で仕事をしてた夜。
 側に置いていた携帯電話が鳴り出した。

 表示を見ると鬼柳からだった。

 さっと電話に出る透耶。

「恭? 仕事終わったの?」

 現在、鬼柳はエドワードの仕事を手伝っていて、忙しい毎日を送っている。

 朝早く出かけたと思うと、夜は深夜まで残業をしている。

 残業をする理由。

 仕事が終わらないのではなく、早く厄介払いをしたいが為の残業なのだ。

 その仕事の量は、のんびりやっていたら半年はかかってしまうくらいの量 。そんなのに縛られているのは嫌だと鬼柳は無理してでも仕事を片付けようとしている。

 その為、帰宅が深夜になる事が多くなっている。

『ああ、やっと終わった所。今から帰るから』

「うん、起きて待ってるね」

 透耶は鬼柳が戻ってくるまで寝ないで仕事をしている。

 透耶も忙しいのもあるが、鬼柳が仕事をしているのに自分だけ先に寝るのはなんだか悪い気がしていたからだ。

『先に寝てていいぞ』

「いいよ、起きてる。気になって眠れないもん」

『可愛い事言うなよ』

「何処が可愛いんだよ」

『俺がいなきゃ眠れないなんて…』

「言ってません!」

『そうとしかとれない』

「もう…」

 …どういう思考回路してんの…

 透耶は呆れてしまう。
 それでも電話を切ろうとはしなかった。

『今日は何かあったか?』

「ううん、いつも通りだよ」

『帰ったらセックスしようぜ』

「なんでそうなる!」

『いつも通りならいいじゃん』

「やだ、眠いから寝るの」

『テレフォンセックスでもいいぜ』

「電話切るよ」

 さすがにここまで付き合ってられないと透耶は本気で電話を切ろうとする。

『冗談冗談。タクシーつかまるまで話してて』
 鬼柳がそんな事を言い出してきた。

「何を話しするの?」
 透耶はクスクス笑いながら聞き返した。

『こういうのって離れ離れな恋人同士みたいじゃん』
 電話の向こうでは鬼柳がクスクス笑っている。

 この状況でも楽しんでいるかのようだった。

「普通ならそうだねぇ」
 透耶も思わず頷いてしまう。

 本来なら、こういう所から始まるんだよね…。

『こうやって会えないのが寂しいとか言うんだ』

「あははは。言うかも」

『透耶は寂しくない?』
 優しく問われて透耶は素直に答えてしまう。

「…少し寂しい」

 それに鬼柳も言う。

『俺も寂しい』

 このままラブラブな会話がタクシーがつかまるまで続いた。