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switch101-88 髪結の亭主

「誰に切って貰ってた?」
 恭が俺の髪を触ってそう聞いてきた。

「光琉に頼んだら、光琉のヘアメイクさんが切ってくれたよ」

「それで綺麗なのか」
 恭はそういって切り口を見ていた。

 恭に会うまでは、定期的に髪は切ってたから、ここまで伸びたのは初めてかもしれない。

「うん。でも光琉がいう髪型にしかしてくれないよ」

「あー初めて会った時くらい?」

「うん、それくらいにしかしてくれないんだ」

 もっと短くして欲しいとは頼むんだけど、光琉が全部決めてしまって、ヘアメイクさんもその通 りにしかしてくれない。

 なんでだろう?

「なんで?」
 恭も不思議がってるし。

「似合うからって言われてるけど、まあ、邪魔じゃないくらいだし、ずっとそれだったから、いつも任せてた」

 文句言うのも失礼な気がしてきて、最近ではもうお任せな状態になってるんだ。

 向こうも忙しい中やってくれているから、文句言えないよ。

 でも、さすがにここまで伸びると邪魔かなあ。
 肩にかかった髪が顔に被さってくるので、それを掻き上げていた。

「括ってみる?」
 恭がそう言い出した。

 今も梳くってくれていたけど、後ろで少し纏めている。
 なんか括れそうな感じ。

「出来るの?」
 そうした事をやった事があるのだろうか?と不思議になってきくと、恭はニコリと笑っている。

「ちょっと待ってな」
 そう言い残して、中庭を出て行った。

 どうするんだろうと思って待っていると、恭は櫛とゴムを持って帰って来た。

 そして、俺の髪を櫛で梳きながら、髪を纏めていく。

「やっぱ括れるな」
 恭は器用に俺の髪を纏めてゴムで結んだ。

 ちょうど暑くなってきているので、髪を括るのはちょうどいい感じになった。

「あ、すっきりする」
 首筋に風が通りに抜けて、とても気持ちがいい。
 やってもらってよかったかもとか思ってたら。

「そうか。透耶、項綺麗だな」

 恭はそう言って、いきなり項にキスしてきたんだ。
 油断してたから、俺はびっくりしてしまう。

「もう! 何やってんの?!」

「だって、誘ってるんだもん」

「誘ってません」

 もうどうしてそうなるわけ?
 油断も隙もないや。

 でも髪を括ってみると、暑さが少し和らいだ気がした。



 これでもいいかと思ってたんだけど、次の日にいきなり光琉に呼び出されて、髪を切る事になったんだ。

 恭も一緒についてきちゃって、俺の髪なのに、色々注文出したりしてるんだ。

 もうばっさりして貰った方がいいよと思って言いたくなっちゃうくらいのこまめな注文に俺は頭を抱えた。