Allegro vivace02

「よし、そうと決まれば話は早い。一次会で上手く抜け出して、駅まで来いよ」
 嗣永はそう言うと女性達と何か話して、いち早く一次会を抜けた。
 合コンは盛り上がり、二次会に突入することになっていたが、そこで阿古も抜けることを幹事に言った。
「俺も、もう抜けていいよね」
 そう阿古が言うと、幹事は申し訳なさそうに頭を下げた。
「悪かったな、阿古。できればお前の彼女も探してやろうと思ったんだけど、どういうわけか男と飯を食うだけになってしまった」
 本当にそう申し訳なさそうに言うので阿古は笑った。
「元々その気はなかったんだから、飯を奢ってくれただけでよかったよ。じゃ、おやすみ」
 阿古がそう言って気にもしていないことを告げると幹事はホッとした顔で、また明日と言いその場で阿古と別れた。
 阿古は酔っ払いがまだまだ盛り上がる商店街を抜けて、駅まで辿り着く。駅前は大きなホテルや繁華街が立ち並ぶ場所で、これから盛り上がる人たちが駅から吐き出されてくる。 その飲み屋街の反対側にはラブホテルなどが立ち並ぶ一帯がある。深夜の商売がこれから活気づく街である。
 その方面の駅の出口に向かって歩いていく。
 嗣永との待ち合わせは、その駅の前である。
 沢山の人がまばらになってきて、だんだんと夜の雰囲気がある気配になっていた。
 これから夜の街に出勤する人が多いのか、黒服の人や派手なドレス姿の人すらいる。
 そんな中を不安に形ながら駅の中を通って駅前に出ると、ピンクや紫の光が沢山溢れる街に出た。
 来たことは一度としてない。だからその雰囲気に飲まれて、思わず立ち止まったのだが、そんな阿古を誰かが腕を引いて駅の端に寄せてくれた。
「あ……嗣永……」
「たく、お前、出口で立ち止まるなよ……初々しくて呼び込みにやばい店に連れ込まれるぞ」
 腕を引いてくれたのは嗣永で、阿古はそんな嗣永に抱かれるように胸に抱きしめられていた。身長差は十五センチくらいはあるだろうか、そんな状態で阿古は少しドキリとした。
「……呼び込みって……」
「バーとかいろいろ。出てくる頃には通帳の中身全部吐き出されてるよ」
「マジで?」
 阿古もさすがに聞いたことはある悪徳なバーが実際にあると言われて驚く。
「まあ、いくぞ。こっち」
 嗣永はそう言うと阿古の肩に手を回したままで、先を急いだ。
 人並みを抜けて、更に奥の方まで進むと川がある。その橋を渡っていくとホテル街だった。川沿いは全てホテルが建っており、その反対側がバーなどのキャバクラなどがある地域だ。
 その川沿いのかなりいいホテルに嗣永は入った。
 外観からはビジネスホテルのように落ち着いており、派手さは一切なかったが、エントランスに入ると途端に派手な装飾がされたエリアになっていた。
「え……何これ」
「ラブホテル」
「こ、これが? 外、ビジネスホテルみたいだったよね?」
「景観の問題なんだろうな。最近は、こういうのが多いぞ。ほら、部屋を選べ。俺にはどれも一緒だから。お前の初めては好きな部屋の方がいいだろう?」
 嗣永はそう言いながら、阿古に部屋を選ばせてくれた。
 阿古も初めてのラブホテルなのだから、できれば思い出に残る部屋がいいなと必死に選んだ。
 まだホテルに人が入ってないのか、これからなのか、部屋はほぼ空(す)いていた。
 その中で、外が見えるプールのような風呂がついている部屋を阿古は選んだ。
「俺も半分出すから、ここがいい」
 そう阿古が言うと、嗣永は笑ってその部屋の鍵を取った。
「割り勘じゃ、俺のプライドが許さないから、お前は黙って奢られろ」
 嗣永はそう言って阿古の肩を抱いてエレベーターに乗った。
「いやそれじゃさすがに悪いから……」
「いいから、いいから。お前はこの先、俺の手管で喘いでくれればそれでチャラだ」
「喘ぐって……自信満々だな」
「天国を見せてやるよ」
「あははは、初めてで天国はヤバイね」
 阿古は釣られて笑ってしまい、ホテル代の話を流されてしまった。
 しかし、その先は本当に天国を見た。
 嗣永は自然に阿古にキスを仕掛けてきて、阿古は最初こそ戸惑ったが、その後は嗣永のいいようにされた。
 部屋に入る前にキス攻めをされ、ぼーっとしている間に部屋に連れて行かれ、気付いたら風呂に入っている状態だ。
「うわ、嗣永ってタラシだな……びっくりした」
 風呂に入った状態で、阿古がそう言うと、嗣永は阿古の躰中をチェックするように触っている。
「そうか、優しくしてるだけだぞ」
 嗣永はそう言って、阿古の性器を弄りながら、乳首を摘まんだり引っ張ったりして捏ね回している。そこまで乳首は感じないと阿古が言ったので、嗣永は開発してやると言って、捏ね回してくるのだが、阿古はくすぐったがっていた。
 しかし段々と何かが感じるようになってきて、腰が跳ねる。
「……ん……あ」
「そう、そのまま感じて」
 開いた足の間に嗣永が躰を入れて、向き合うようになったが、嗣永はそのまま阿古の乳首を舌で捏ね回し、吸って歯で噛んできた。
「あっんふっあっ」
「感じるようになってたか。いいぞ、そのまま」
 嗣永に乳首を吸われて、阿古は気持ちよくなってきて、そのまま嗣永に抱きついた。それが乳首を嗣永に押しつける形になり、一層強く吸われた。嗣永の片方の手は性器を扱いていて、それが強くなったり弱くなったりと、わざとじらしているのが分かる。
 そのままの状態で、嗣永はジェルを付けた指を、阿古の後ろの孔に忍ばせてきた。
「あっ……んっ……あっあっ」
 忍び込んできた指は何かを探るように出たり入ったりと繰り返し、一本の指がスムーズに出入りするようになると、二本三本と増えていった。
 その間も嗣永は乳首を舌で舐めて転がしながら、もう片方の手でペニスをやわやわと弄っている。
 三方をいいように攻められて、阿古は自分でオナニーをしているよりもずっと感じていることに気付いた。
「あはっん……あっんっきもちっいいっ……んあっ」
「何処がいいか言って」
「乳首もっ……ペニスも……後ろもいいっ……きもちいいっあっあっ」
「もうちょっとだけ広げるぞ、そうそのまま力抜いて。そう、阿古は覚えるの得意だな」
 嗣永に言われるがままに阿古は躰の力を抜いた。
 嗣永は本当に乱暴をするつもりは一切ないようで、優しく大事に抱いてくれた。
 初めての相手であることを承知であるからか、最初に手間暇かけてくれた。孔の拡張には時間がかかるから、指でゆっくりと広げてくれ、負荷に耐えられるようにしてくれた。
 ローションを溢れるほど付けて、孔を広げた後、嗣永は阿古にペニスに跨がるように言った。
「このまま跨がって、そう」
「こう? ……ここ?」
「そう、そのまま、腰落として。そしたら躰が自然に沈むから」
 風呂に入ったままだったので、躰がちょっと浮いたが、そのお陰か、無理な挿入にはならなかった。
 大きな嗣永のペニスに跨がって、嗣永か腰を掴んでくれ、嗣永の肩を阿古が掴むようにして支えてからだったが、先が少し入ると自然と躰が沈んでくれて、孔の中にペニスは入り込んできた。
「あ……はっ……はっはっ」
「息、吐いて。そう、ゆっくり吐いて吸って、腰落として、うん、上手いよ」
「あはっはっ……んんっんはっ」
 孔の中にペニスは入り込んでくる感触ははっきりと分かる。だが不思議と痛みはなく、ただ圧迫感だけが酷くあるだけだった。最初がそこまで感じるわけではないことも知っていたから、阿古も嗣永の言う通りに合わせた。
 ゆっくりと五分以上もかけて、ペニスを奥まで入れることができて、嗣永の上に跨がっている形だ。
「よくできたね、阿古」
 嗣永はそう言うと、阿古の乳首を舌で舐めてから吸った。
 ちゅーっと音が出るほどに吸われて、阿古の躰が跳ねた。
「んはあっっ!」
 自分でもびっくりするほどの大きな声が出て、阿古はハッとする。
「阿古、乳首を感じるようになったな。まあ、一時間も舐めてやってから、そうなるのは当たり前だけど」
「乳首ばっかり……もう……んあっん!」
 文句を言おうとしたら、腰を少し動かされて、孔の中が擦れて阿古の声が甘く上がった。
「馴染んできたし、そろそろ阿古、覚悟するんだな」
「え……あっちょっと待って……んはあっっ!」
 阿古は嗣永に乳首を吸われたままで、腰を掴まれて上から突き刺すように抉られた後、ペニスが孔から抜けていき、それがまた一気に奥まで突き入れられた。
「あっあああっっんっ! あっああっそんな……っあっ!あっ!」
 感じないはずの孔の中を擦られるたびに、ゾクリとする感覚が頭の天辺まで突き抜けてくるのだ。阿古は戸惑ったままで喘ぎ声を上げながらも、不安で嗣永を見た。
 その嗣永は乳首を噛んだままで、阿古を見上げ、ニヤリとしている。
 どうやら嗣永の望んだ展開らしく、阿古はホッとしたような安堵を浮かべて、そのまま快楽に身を任せた。
 散々突かれた後、阿古はとうとう絶頂を迎えた。
「あっああ――――――っ!」
 頭の中が真っ白になる瞬間、そういうのが訪れると、今まで一度も吐き出していなかった精液が噴き出すように出た。
 躰がガクガクと震え、嗣永に抱きつく形でその絶頂を迎えた阿古を、嗣永は優しく抱きしめてくれた。
「上等。アナルだけで達けただろ?」
 嗣永がそう言ってくるのだが、阿古は少し気が飛んでいるようで、ふわふわとしたまま嗣永に抱きついていた。
「とはいえ、俺は達ってないわけで、阿古、ここからは俺に付き合ってもらうぞ」
「……え?……なに? ってわっ」
 嗣永はそう言うと、阿古の腰を掴んで一気にペニスを抜いた。
 そして風呂の縁に阿古を捕まらせると、後ろから阿古の躰を貫いたのだ。
「ひああっっあっあっあああっ!」
 まだ開いたままである孔に一気に突っ込まれて、阿古はそれだけで射精をしてしまう。快楽に弱い体なのか、相性が良かったのか、それだけで感じた。
「阿古、お前可愛いな……この躰もいい」
「あっんっ……いきなりっ突っ込むの……んふっあっあっあっああっ」
「感じやすいみたいだから、そのまま感じて達き狂いしてろよ、阿古」
「ひゃっあああっんっ! あっ! あぁっ! あっ!」
 腰を強く掴まれて、激しく揺さぶられて阿古は嗣永の言う通りに最高に感じて、何度も絶頂を迎えた。
 嗣永が言った通り、天国を何度も見た気がしたほどだ。
 最初こそ怖かった行為だったが、嗣永は優しくしてくれたお陰で怖くはなかったし、ただひたすら気持ちが良かった。痛みもほぼなく、ここまでできるのは嗣永のお陰だ。
 だが、阿古の誤算はここからだった。
 嗣永は絶倫だった。そして阿古もそれに付き合えるだけの性欲を持っていた。
 何度も絶頂を迎えているのに、空イキだってしているのに、気を失うことがなく、何度も達したのだ。
「阿古、お前、本当に俺と相性がいいんだな……なあ、阿古、このまま付き合おう」
「……ん……あっなんで……あっあっ」
「もう俺と付き合うしか道はないぞ……阿古」
「あっ勝手に……あっあっあっ決めるなっんあっあああっ!」
「返事ちゃんとして、付き合うよな?」
 嗣永はそう言うと、阿古のペニスを掴んで達けないようにした。
「あっやだっあっ……いけない……やだっ嗣永ぁとって……手やだっあぁあ」
「じゃ、付き合うよな?」
「……んあっ付き合うから……いきたいっの……いかせて、いっぱいイク」
「それじゃ好きだっていいな。俺を好きだって、俺のペニスで気持ちいいって言いながら射精しな」
「あっ……いいっ……嗣永……大好き……! だからっあっああっイクっ……気持ちよくて……嗣永のおちんちんで気持ちよくてっ、あああっいくっいくっひああああっ!」
「合格。阿古、可愛いな本当に……とんだ拾いものだよ……んっ!」
 二人は同時に達した。
 嗣永は阿古の中で長く射精をして、精液を内壁に打ち付けると、やっとペニスを抜いた。そこまで抜かずに何回もしていて、溜まった精液が阿古の中から溢れ出てきた。
 阿古はそのまま風呂の縁と同じ高さの台の上に寝転がったままで、孔から嗣永の精液を吐き出した。
 荒い息をしている自分に気付いて、阿古はふと誰が言ったのか分からない言葉を思い出した。
 セックスはスポーツだって誰か言っていたなと。
 一時間以上、体中を弄られ、更に一時間以上、ひたすら全身を嗣永に攻められた。
 すっきりするほど快楽を得られたし、興味があったことはただひたすら気持ちがよかった。怖かった思いが一切消え、知識さえあればセックスもできることを証明された。
「阿古。大丈夫か……?」
「……ん、大丈夫……」
「中、生で出したから掻き出すからな」
「ん……ってあ、ああっ待って……んあああっ」
 掻き出すからと言いながら、嗣永は手っ取り早いと自分のペニスを入れて中の精液を掻き出した。
「ちょっと……それ違うっ……! 嗣永っもうっ! ああっ!も……だめっんああ”!」
 これ以上やったら気を失う。そう阿古が思っていたら、いきなり世界がブラックアウトしたのだった。

 冗談で阿古を攻めていた嗣永は阿古が気絶したのに気付いたが、阿古の内壁はまだしっかり反応があったのでそのまま射精までしてから、ペニスを抜いて、中を洗った。
 阿古はぐったりして気を失っていたが、嗣永は阿古の体中を綺麗に洗い、シャワーで暖めてから、バスローブを着せてベッドに寝かせた。
 風邪を引いては困るので、ドライヤーで頭を乾かしもしたし、部屋の温度もいいようにした。
 阿古はすっかり気を失ってから眠ってしまっている。
 可愛い寝顔が少し疲れているのは、自分のせいだと嗣永は苦笑する。
 それでも阿古の顔を撫でて、自分がすっかり阿古に夢中になっていることに気付いた。
 人は抱いてみないと相性が分からないとずっと思っていたが、まさか一目惚れした挙げ句、抱きたいからと脅しまでした。
 恋なんて自分からするものではないと思っていた。だが、自分から恋をした。
 こんな同性の男性にだ。驚いたし、不思議だったが、妙に納得できた。
 小さいのに強きで、思い切りもよく、ポジティブだ。
 そのくせ、人を気遣って傷つけないようにしているような人間。そんな性格は話してみればすぐに察した。
 だが、その心の奥に思い人がいることが、今は不快でしかない。
 阿古が嗣永の中にその思い人を見ていることをすぐに察した。それも利用した。似ているところがあるのは有利だった。阿古はそれに釣られて、すぐに頑なな心を緩めた。
 しかし、それはこれから先、邪魔でしかない。
 その思い人は、今日限り、阿古の中から出ていってもらうしかない。
 とりあえず言質は取った。あとは素の阿古を口説いていくだけだ。
 大丈夫、躰の相性はバッチリだった。それでなし崩しという方法もある。
「……ん」
 阿古が身じろいだ。
 起きたわけではないが、口元に笑顔が刻まれている。
 どうやら嗣永の印象は悪くはなかったようだ。
「阿古……悪いけど、俺と堕ちてくれよ」
 派手な嗣永が阿古と一緒にいれば、阿古がゲイであることは周りに広まる。阿古は知られたくないと思っている性癖を知らしめることになる。
 それが阿古をどういう方向へ持って行こうとするのかはまだ分からない。
 阿古がそれで不幸になる可能性もあるが、変わる可能性もある。
 変わる可能性を信じて、嗣永は阿古と付き合おうとした。
「……もう食べられない……」
 阿古が寝言でそう言った。
「そういや、躰に似合わずよく肉を食べてたな……阿古は」
 嗣永はそのまま笑って阿古の頬を撫で、フロントに連絡を入れて泊まりにした。朝まで阿古を起こすのは可哀想だなという気分だったからだ。
 そんな些細なことを可哀想だと思えるほど阿古に溺れている自分に、嗣永は自分を笑った。
 いつか恋をすることもあるだろうと、別れた相手に言われたことがある。
 きっと自分から好きになると、絶対に落として見たくなると。相手が自分のことを思っていないときほど燃えるような恋になると。
 それが今、嗣永にとって納得できるほど分かる言葉だった。

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