Eureka03

 その後、手島真希は暫く忙しい伊計(いけい)に煩わされることなく、学園生活を楽しんだ。
 濱田や森、坂脇という友人ができて、他の教師を警戒するつもりで彼らと共に行動しているうちに、四人がグループとして成立した。
 転入して一ヶ月ほど経つと、真希は違和感なく学生生活を送っていけるようになっていた。
 朝起きて学園に行き、夕方には濱田が暇な日はファーストフード店で喋ったり、勉強の復習をしたりしていた。
 真希と濱田の家は学園からは全く逆の方向に家があるので、学園の近くの駅周辺でよくたむろっていた。
 その濱田には、実は恋人がいる。ゲイを公言してから、伊計との関係を乗り越えた後に、知り合ったバイト先の取引先の人だそうで、相手は社会人だ。
 真希も紹介して貰ったが、とにかく優しい人で、真希のことも気を遣ってくれる大人の人だった。
「いい人だね」
 そう真希が褒めると、濱田が顔を真っ赤にして照れる。自分でもそう思っているのだが、友達に紹介するとなると、勝手が違ったらしい。相手の男性も濱田にこういうことを打ち明けられる友人ができたことが嬉しいようで、仲良くしてやってくれとお願いされた。
 そんな幸せそうな濱田を見送って真希は自宅に帰る。
 駅から二駅の場所にあるマンションで、周りは静かな住宅街であるが、真希が住んでいるマンションはその中でも高いマンションに当たる。十階建ての最上階を宛がわれている真希はここに独りで住んでいる。
 マンションは高所得者が住むようなオシャレな佇まいをしているのだが、真希は叔父が所有しているところを借りている。しかし伊計のように教師をしている人間が住めるマンションではないとふと気付いた。
 何処かの社長や経営者、そういう独り者が住んでいるマンションで日中は静かであるし、夜も静かだ。車がマンションの裏側にあり、そこからの出入り口を利用する人が多いので、表から出ている人はほぼ見かけない。
 夕方に帰ると、もちろん住人には一切会わない。エレベーターに一ヶ月乗って、一回も住人を見かけていないレベルの静かさだった。
 今日も真希は静かなマンションに戻り、買ってきたお弁当と翌日に朝食用に買ってきた卵とベーコンと食パンなどを冷蔵庫にしまったりして一段落をした。
 洗濯物は乾燥機でやるように言われていたので、それを朝に仕掛けていたので取り出し、畳んでいく。それが終わるとお風呂の用意をして、テレビを見ながら夕食を食べる。
 そんな日常が簡単に崩れる。
 コンコンと、窓ガラスを叩く音がする。
 ベランダのある方の窓ガラスだ。真希はすぐに察して、カーテンを開けた。
 そこには案の定、伊計が立っている。
「明日は休みだから暇だよな。降りてこいよ」
 急にやってきて、こちらの予定は一切聞かない辺りに、この関係性の問題を真希はすぐに察した。
「あのですね。いくら下の階に住んでいるから便利だと思っているんでしょうけど。少しはこちらの予定とか気にしてください」
 真希がそう言うと、伊計はそれが意外だったらしく、キョトンとしている。
「僕は、あなたの奴隷になったわけじゃありません。右と言われて右と言うようなことはしたくありませんし、したくない時はしたくないと言います」
「したくないのか?」
 伊計がそう言うので、真希は伊計に向かって言った。
「いえ、人には予定があるということです。ですので、したかったらアポをお願いしますってことです。今日はたまたま暇ですが、学生であるのでいろいろ予定もあります。あなたの予定は考慮してほしいくせに、こちらの予定は考慮しないというのは、こういう関係性において、非常に面倒なことになると思います」
 真希がそう一気に話し出すと、伊計は真面目に聞いている。
 そこまで考えたことはなかったのだろう察せられる態度だ。伊計と寝る人間は常に伊計を優先してくれた関係性で成り立っていたようだ。
「つまり、関係性の上で、予定は組みたいってことか。何だかきっちりしてるんだな」
「今まで無事だったのかもしれませんが、今後関係性が公になって困るのは僕ではなくて、あなたですよ。少しは慎重に行動をしてほしいです。あと学園内においても、ああいう急にされるのも困ります。関係をオープンにしたくないので、できればやめてください。もう既に二、三人にはバレてますが……」
 真希が捲し立てると、伊計もそこまで考えてなかったようで、うむと唸った。
「まぁ、確かに今まで大丈夫だったからこれからも大丈夫とは限らないな。その辺は考慮しよう。だが学園内でやる醍醐味もあることを忘れて貰っては困る」
「だから、既に二、三人に関係がバレてるので……」
「そのバレてる学生はお前の友達だろ? 他に言いふらすわけでもないんだから、勘定には入らない」
「……そこまでこだわりがあるんですか……?」
 あまりに必死に学園内にこだわるので、真希はそこを聞いた。納得できる理由があるとは思えないが、一応聞く。
「何のために教師になったと思ってる。このためだ」
 伊計がはっきりとそう言うので、真希はがっくりと肩を落とした。
 ただの興奮するポイントがそこだと言っているのだ。こんなのが教師になって大きな顔をしているのかと思うと、正直目眩しかしない。
「……分かりました。でも万全になってなければ断りますから、その時は……っ!」
 真希が更に要望を口にしようとすると、伊計はそれを塞ぐように真希にキスをした。
「んー! んふっんんんっ!」
 真希が抗議しようとして暴れかけると、伊計はそれを塞ぐように真希を抱きしめて胸の中に閉じ込めた。空気がなくなるように口の中まで蹂躙され、真希は息苦しさで抵抗力を失っていく。
「……ふあっ……んっ」
「言いたいことは分かったから、今日はじっくりやらせろ」
 伊計はそう言うと真希をそのままリビングのソファで押し倒した。
「ま、待って……ここは……だめ……」
 素早く伊計が真希の服をたくし上げ、乳首に吸い付いたのを真希が止める。
「……ここは……叔父さんの家だから、急に来るかもしれない……し……あっ」
 真希はそう言って伊計を止めると、伊計は真希の乳首を指で弾いてから言った。
「だから俺の部屋に来いと言ったぞ」
「わ、分かってます。片付けてからいきますから……いっいたずらしないでっあっ!」
 わざわざ真希の乳首を指で何度も弾く伊計が、なかなかさせてくれない真希に拗ねているのだけは真希にも分かった。
 本当に今まで忙しかったらしく、授業もそこそこに学園外で何かをしていたらしい。その鬱憤が溜まっているのか、真希に対する執着が酷くなっている。
「じゃ、早く降りてこい」
「……分かりました」
 真希が部屋に行くことを承諾すると、伊計は素早くベランダから降りていった。
 真希は服を直してから、部屋を片付け、携帯電話を持って部屋の電気を消してから伊計の部屋に向かった。


 伊計の部屋に行くと、伊計は既に風呂に入っていて、バスローブ姿になっていた。
 真希がベランダから中に入って窓ガラスを閉めると、伊計が真希を手招いて、寝室に向かった。
 寝室に入ると同時に、伊計が真希をベッドに押し倒した。
「……あの、服を……」
 自分で脱ぐと言うと、伊計はそれを無視してシャツを捲り上げた。
 現れた真希の裸体を伊計は吸い付くようにして躰を撫で回した。
「あ……ん……このまま? ……あっ」
 真希が服を着たままでするのかと問うのだが、伊計はそれに答えない。真希の躰に唇を寄せて、あちこちにキスマークを付けてくるのだ。
「あっんっ……あっあっああっ」
 真希は伊計にキスマークを残されるたびに、躰がびくりと跳ね上がるのだが、伊計が覆い被さっているので身動きはほとんど取れない。
「はっああっ」
 チュチュッと音がするほど強く吸われ、真希の気分もセックスをしたくて堪らないというように、性器が勃起をし始める。それを伊計がわざと擦るようにして躰を擦りつけてくるので、擦られて真希は感じた。
「あ……んあ……はっん」
 真希が躰を伊計に擦りつけるようにしてくると、伊計は真希の乳首に舌を這わせた。
 ピンと立った乳首を舌で捏ね回し、唇で吸って舌で転がす。
「あっちくび……ああっんっああっいいっ……ああっ」
 伊計が乳首を弄るのが好きで、真希の躰を触る時はいつも乳首を吸っている。
 片方の乳首も指で捏ねられて、引っ張られる。
 ただでさえ乳首が感じる躰なのに、伊計に抱かれてから異様に感じるようにされた。
 チュッチュッ音を立てて吸われ、舌で散々嬲られる乳首が完全に勃起してしまうと、伊計は真希に自分で乳首を弄るように言う。
「ほら、自分で弄ってろ」
「え、あっ……ああっ」
 真希はそう言われて自分の指で弄るのだが、その様子を眺めた後、伊計は真希のパンツを脱がして下着まで一気に剥ぎ取った。
 そうすると、すっかり立ち上がった真希の性器が露わになる。
 それに伊計が手を添えて扱きながら先端を口に含んだ。
「ひあっあああっ……ああっ……んああっあっあっんっ」
 真希は自分で乳首を弄りながら、伊計のフェラチオに耐える形になり、躰を仰け反らせながらも言われた通りに乳首を弄り続けた。
 伊計は完全に真希の性器を口に含んで、舌で舐め取りながら扱きあげる。
「もっ……だめ……ああっああっああ――――――っ!」
 真希が達すると、伊計はわざと口を離して、真希の腹に精液を吐き出させた。
「はっああ……あんっ……んんんっ」
 達した真希は躰を震わせながら、恍惚の表情を浮かべているが、伊計はその先を更に進める。
 ローションを取り出して真希の後ろの孔にゆっくり指を忍ばせて、中を広げていく。
 三週間ほど伊計とはしていないのだが、真希はいつでもできるようにと自分で解していたので、伊計の指も簡単に飲み込んだ。
「文句を言う割には、準備は万端って?」
「だって……それはそれで……ああっん!」
 文句を言おうとしたら前立腺を弄られて、真希の腰が跳ね上がる。
「あっああっそれっやっん! あああっああっんっあっは……ああっ!」
 何度も前立腺を擦られると、絶頂感が増して真希は躰を捻って逃げようとするのだが、腰を掴まれて引き戻された。
 しかしその時に抜けた指の代わりに、伊計の熱い性器が真希の内壁をこじ開けて入ってきた。
「ひああっ……んああっあつい……ああっ!」
 引き戻す勢いで性器が奥まで入り込んできて、真希の中で大きく膨らんでいる。内壁にぴったりと張り付いたモノに真希の躰がしっかりと覚えている形となる。
「はは、ちゃんと覚えてたか」
「だって……ああっん……うごいたら……まだっああっ!」
 前立腺の辺りを擦るように性器で擦られて、真希は躰が跳ねる。
 煽られるように中を掻き回されて、ゾクリとする感覚が快楽として真希を襲ってくる。
「ふああっ……ああっあっああ……あっああっんあっあはっ」
 ジュクジュクと音を立て、伊計の性器が挿入されている。それが繰り返されると段々と真希もそれが快楽に変わる。
 日常生活において、すぐに感じる場所ではないはずなのに、こうやってされると快楽を得ることができるようになる。初めての時はただ怖くて圧迫を感じただけなのに、段々と感じるようになり、今ではすっかりそこで感じることが好きになった。
 伊計とのセックスが好きだと、真希は思っている。
 躰の相性がいいのか、とにかく快楽を与えてくれて、満足させてくれる。
 セックスが気持ちがいいのは知っていたが、今以上にここまで満足できるものだとは思ってはいなかった。
「ああっいい……ああっ……なか……あっあっあっすごいっ……ああっん!」
 パンパンと音がなるほど強く突き入れられ、真希は快楽で頭が真っ白になるほどの絶頂を味わう。この瞬間が酷く好きだった。
「あああ゛――――――っ!」
「……くっ」
 絶頂を迎えた真希が躰を硬直させると、伊計のモノを内壁がしっかりと締め上げてきて、伊計も一回中で達した。
「……ああ……」
 中に熱さを感じないと思ったら、伊計はコンドームを付けていた。
 しかし、しっかりと出したはずなのにすぐに外してしまうと、新しいコンドームを付けようとしている。
「これで終わりのわけないだろ?」
 当然いうように勃起したままの伊計のモノは凶器のように反り上がっている。
 真希はそれに吸い寄せられるように張って近づき、伊計の性器を手で掴んだ。
「おおきい……んふっふっんんんっ」
 大きな性器をしっかりと眺めてから真希はそれを口に含んだ。
 誰よりも大きいそれを口にしてしっかりと扱くのは辛いのだが、これが自分に快楽を与えてくれるのだと思うと、愛おしく思えてくるので不思議だった。
「んふっ……ふっんんっふっんふ……あっ」
 ジュルジュルと音を立ててフェラチオをして、完全に勃起させていくと、伊計が真希を引き離した。
 完全に勃起した性器に伊計がコンドームを付けている。その間に真希は四つん這いになって伊計に尻を向けた。
「もっと……ちょうだい……ここに」
 腰を高く上げて、伊計を挑発すると伊計は無言で真希の尻を掴むと、一気に真希の中に押し入った。
「――――――っ!」
 脳天を突き抜ける快楽は、それだけで絶頂をした証拠だ。
 絶頂をしたまま突き続けられ、次の絶頂がやってくる。
 真希の性器からビューッと吐き出す精液が、突かれるたびに吐き出て、真希はもう何も考えられなくなっていった。


「ふ……あっ……ああっ」
 真希を散々抱いた伊計であるが、禁欲生活がかなりの期間だったせいで、伊計の性欲が収まらない。
「……も……無理……あっ」
 真希を抱えるようにして抱いている伊計は、真希の中から出てはいかない。内壁を押す圧迫感はなくなることがなく、伊計は何度果ててもすぐに勃起をしてくる。
「ちゃんと付き合うって言っただろ?」
 伊計は真希を下から突き上げながら、ぐったりしかけている真希の躰を揺すってくる。
 襲ってくる快楽に翻弄されてはいても、疲れは拭えない。
「あっ……あっああっあああっ!」
 すぐに絶頂に導かれて、真希は痙攣してベッドに倒れた。
 その勢いでやっと真希の中から抜け出た。コンドームには破れそうなほど精液が溜まっているほどで、伊計もそれを外してゴミ箱に捨てている。
「……はあ……気持ちいいけど……疲れた」
 絶倫で体力も有り余っている人間の相手は、さすがに学生の現役であってもついていけないほどである。
 それでも真希の性欲は満たされたのは間違いなかった。前ほどの物足りなさがなくなったことで、真希の心は満たされている。ここは心はないから、それはそれで割り切れば、躰の関係だけでも成り立つ。
 寧ろ、相手に好きだの嫌いだの、妙な感情を持って右往左往する心がない分。真希は過去を忘れられる。惨めな思いはもうしたくないという心はブレーキが思いのほか強くかかっていた。
 時計を見ると午前二時を回っている。
 五時間も何だかんだやっていたのかと思うと、真希はそろそろ終わりだろうとベッドから這い出た。
 伊計はベッドに座っていたが、着替えようとしている真希の躰を触りにくる。
「ちょっと……何して……」
 真希が着替えていくのを阻止して、伊計は服の中に手を入れ、胸を弄る。
 上着だけ着た状態で、立ったまま真希は壁に押しつけられて伊計に乳首を吸われる。
「あっ……もっ……なんでそこばっか……んんふっ」
「美味しそうな形をしているのが悪い」
 伊計がそんなことを言い出して、真希はベッドに連れ戻される。
「……もう……いいでしょ? 疲れて、寝たい」
 段々と性欲よりも睡魔に襲われてくる真希を伊計は気にせずに抱き始める。
「寝られるものなら、寝てみろ。後は好きにやるから」
 伊計がそう言い、真希の中に伊計の性器が入ってくる。
「あっ……んふあっ……あっやっん……ああっはげしっ……あっあああっ」
 挿入してからの激しい動きに、真希は寝させて貰えなかった。
 伊計はしつこく真希の躰を求めて、真希はそれに悶えた。
「ああっ……せんせぇ……ああっそこっあああっいいっ……ああっん!」
「本当に、お前は良すぎるんだよ……っ」
「……そんなのっしらないっ……もっああっ!」
「他には渡したくない……」
 伊計はそう言うと、激しく真希を食らった。
 眠かった真希は途中で気を失ってしまったが、伊計は最後まで貫いて中で果てた。
 ドロリと溢れ出す精液が、真希の中から出てくるのを見ると、伊計はやっと満足をした。 伊計は真希を抱くと、抱き潰してしまわないと気が済まない。
 どうしてこんな感情を抱くのかは、きっと相性がいいせいだ。
 今までの自分よがりだけの抱き方で満足してくれた相手には抱かなかった感情が芽生えてきている。まさに自分が口にしたように、誰にも渡したくないのだ。
 誰かと真希を共有することが、酷く嫌だった。この躰を誰かと共有なんて、あり得ないとさえ思う。前の所有者にだって返す気はさらさらなかった。
 どうしてこんな感情を抱いているのか、それがはっきりと分からない。相性だけでどうにか説明ができるものでもなさそうだった。
 まさに独占欲が沸いて、いつもと様子が違う。
 少し離れて自分で様子を見てみたが、抱きたい気持ちは収まることをせず、いつもは学生から抱いてくれと言われるところを、自分から相手を求めにいった。
「お前は俺の中の常識を壊しそうだな……それがいいことなのか悪いことなのか」
 この先の心の動きで決まるかもしれない。

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