Eureka08

 真希が携帯のアプリで言われた通りに、ある教室に入る。
「ドアを閉めて、鍵をかけるんだ」
 そう言われた。
 部屋の中に入ると、上沢(かみざわ)が教壇のところに立っていた。
 ハッとした真希が部屋の隅を見ると、そこに加藤が立っていて、椅子に座らされた濱田がぐったりとしていた。
「濱田……!」
「ほら、早くしないと濱田君にまた注射しちゃうよ?」
 加藤がそう言いながら注射器を取り出して、濱田の首筋に注射器の針を近づける。
 真希はそれを見ながら、ドアを閉めて鍵をかけた。中からスライドするだけでかかる鍵なので音がする。それを確認すると、上沢が真希に近づいてきた。
「こっちへこい」
「あ……っ」
 上沢が真希の腕を掴んで教壇の方へ連れて行く。
 真希は濱田が無事かどうかが気になって、視線を常にそこだった。
 濱田には意識がないようで、真希たちに反応はしない。クスリを嗅がされたか、打たれたか。だが、命の危険にさらされることはない。真希はそう思った。
 加藤や上沢の目的は真希だ。真希が言うことを聞くならば、濱田に何かをするとは思えなかった。
「何故、こんなことをするんですか?」
 真希はそう聞いていた。
 加藤や上沢が真希に固執する理由が見当たらないのだ。真希は一般的な学生である。何か特異なことなど何処にもない。思い当たることもない。
 どうしてこんなにしてまで、真希を狙うのか。
 それは聞いておきたいところだ。
 すると加藤はそれを考えてなかったようで、真希の問いにふむと顎に手を当てて考えている。
「そうだな……何故だろう。君に特別な感情はない。ただ珍しく伊計(いけい)が連れ歩いているから気になったというところだが……さて、ここまでして君を手に入れたところで、どうこうなるわけでもないのも確かだ」
 加藤も目的を見失っているのか、そんなことを言い出した。
 つまり真希でなくても良かったのだ。
 ただ伊計と一緒にいた、それだけで興味の対象になっただけのことだというのだ。
「あの伊計が、一人の学生に興味を持った。それがどういうのか気になったというのが本音かな。正直、学生を食うだけでは飽きてきたところだったし、学園は首になりそうだから、ついでに伊計も巻き込んで憂さ晴らしをしたかったってところかな」
 そう加藤が言う。
「伊計……先生が気になって、仕方がないってことですか?」
 真希がそう言うと、上沢が急に怒鳴りだした。
「余計なことを言うな!」
 上沢がそう言うと、真希をその場に押し倒し、力尽くで押さえつけると、服を破るように脱がし始めた。
「俺は、お前の躰に興味があるんだ。さっさとやさせろよ」
 上沢がそう言い、真希を乱暴に扱ってくる。加藤はそれにあまり興味が無いようで、のんびりとして答えた。
「そうだな。私は伊計のことをどうにかしたかったんだろうな。学園に来てから、そう思っていた。一目惚れとはこのことだろうか?」
 加藤がそう言う。その言葉に上沢は関心がないようで、真希のズボンを下着まで脱がせてくる。真希は抵抗をするのだが、圧倒的な力の差でどうにもできなかったが、ただ悲鳴を上げて叫んだ。
「た、助けて! 先生! こんなことしたって、どうしようもないじゃない!」
 そう叫ぶ真希を上沢が頬を殴って黙らせてくる。
「……っ!」
 その衝撃で真希は一瞬頭の中が真っ白になるが、それでも叫んだ。
「いやだ! 絶対にいやだ!」
「伊計とやるだけやってんだから同じだろ!」
 そう上沢が言うのだが、真希は負けずに叫んだ。
「違うに決まってるだろ! どうしてただの強姦野郎と伊計が同じなものか! お前なんかにやられたいわけないだろ!」
「きさまっ!」
「こうやって脅して、力尽くで殴ってくることでしかやれないくせに! 伊計は殴ったりなんかしないし、力尽くでやったりなんかしない! 同じなんかじゃない! お前なんかと同じじゃない!」
 真希ははっきりと違うことを強調した。
 たとえ、これが伊計にとって不利なことかもしれないが、その違いがあることだけは、真希が一番知っていることだったからだ。
 必死に抵抗する真希は、上沢の顔を引っ掻いたり、迫ってくる手に噛みついたりと、とにかく抵抗をした。端から見れば無駄な抵抗だったが、それでも真希はこれが重大な証拠になることを知っていた。
 真希が抵抗すればするほど、上沢は逆上して真希を殴った。
 真希の顔は腫れ、口の中が切れて血の味がするほどだった。
 それでも真希は抵抗した。こうすることで、真希が行為に合意だったという加藤たちの戯れ言が一切通用しなくなるのだ。上沢は真希が抵抗すればするほど、逆上してとうとう真希の首に手を回した。
「黙れ、こいつ!」
 上沢は真希が叫べないように首を絞め、力一杯絞めた。
「ぐっ……かはっ」
 真希はそれでも叫ぼうとしたのだが、空気が入ってこず、声どころか息もできない。
 ここまでは真希も考えてはいなかったが、いいようにされるくらいなら死んだ方がマシだと思えるほど、真希は加藤にも上沢にも屈しなかった。
 加藤がそれを見て止めようとしているが、それでも上沢の怒りが収まらない。
「殺してどうすんだ? さすがに殺人には加担したくない」
 加藤がそう言ったのと同時に、音楽室の鍵が開いた。
「いい加減にしろよ、お前ら」
 伊計の声がした。真希がそう認識した瞬間、真希の首を絞めていた上沢の手を緩んだ。
「……かっはっはっ!」
 急激に空気が肺に入り込んで、その空気で真希は苦しんだが、涙目になりながら伊計の方を見た。
 伊計は入り口からゆっくりと中に入ってきた。
 その後ろからは大きな騒ぎなっているようで、教師が三、四人ほど大声を上げながらやってくる音が聞こえる。
「もう終わりだ。だから抵抗するな」
 伊計がそう言うと、加藤は伊計を見てからニヤリと笑う。
 その笑いは、伊計を笑ったものではなく、計画が失敗したことを知った時の笑いだ。
「あの子は喋っちゃったんだね。まったく……困ったもんだ。最近の子は、口が軽くていけない」
 加藤がやっぱり駄目だったかと残念そうに言う。それに伊計は言った。
「口が軽いんじゃない。勇気があったんだ。嘘を嘘にしておかない勇気があったんだ」
 伊計がそう言うと、加藤は笑う。
「捉え方一つで、いい方にもなるというわけか。だから私はあなたが嫌いなんだ」
 加藤がそう言った。
 真希はそこで初めて、加藤という教師の葛藤が見て取れた。
 加藤は伊計の存在そのものがうらやましい存在で、眩しかったのだ。見た目や態度、適当であるはずなのに、学生には好かれていた。
 伊計と寝ていた学生が誰一人として、伊計のことを悪くは言わないのも関係しているのかもしれない。伊計が寝た相手を寝取ることで、伊計と寝ている気になっていた。知っている気になっていたのが加藤だ。
 伊計の節操のなささえ、加藤には自分が持てないものだった。
「ここで終わるのもなんだか悔しいですね」
 加藤がそう言う。
「大人しく投降しろ。警察には学園長が連絡をした」
 学園長は伊計から真希が加藤たちに狙われていることを知り、もう警察を呼んだ方がいいと言って警察を呼んだ。それから五分と立っていないが、パトカーのサイレンが遠くから聞こえてくる。
 ドアを開けたままでいるから、外の音を拾っているのだ。
 教師たちが伊計の後ろから中を確認して、更に警察を早く呼べと叫んでいる。
 とても学園内でだけ収めておける出来事でないことは、誰が見ても明らかだった。一人の学生が殴り倒されてぐったりしており、もう一人の学生も椅子に座らされているが、縛られている上に意識がない。
 こんな状況が正常なわけもなく、誰もが言葉を失っていく。
「私はここでは終わりませんよ」
 加藤はそう言うと、濱田に向けていた注射器を自分の腕に刺した。それはあっという間の出来事で、察した伊計がかけだして止めようとしたが、間に合わなかった。
「加藤! 何を打った!」
 そう伊計が聞くのだが、加藤は笑っているだけで答えない。さらには効き目が出始めたのか、舌っ足らずな状態になりながら、笑っているだけになっていく。
「くそっ、自分のクスリで廃人になって逃げる気か!」
 伊計がそう言いながら、救急車を三台呼ぶように言った。
「田宮先生は濱田をお願いします」
 伊計がそう言うと、他の教師が加藤が暴れないように様子を見ている。
 そんな状況に混乱した上沢が伊計に殴りかかるも、伊計はそれを避けて腕を取ると、そのまま一本背負いをして、学生用の机の中に投げた。
「取り押さえろ!」
 他の教師たちが一斉に投げ出された上沢を取り押さえた。そうしているところに警察官が四人が飛び込んできて、まずは暴れている上沢を現行犯で逮捕した。
「やめろ-! 俺じゃない! やったのは俺じゃない!」
 上沢がそう叫んでいるが、状況がそれを許さない。
 明らかに真希の上に跨がって殴っていたのは上沢の方であることは、誰もが分かっていることだ。嘘で逃れようとしても、真希の顔に付けられた殴った痕や首を絞めたであろう痕跡が上沢がした事実を証拠としてのこしている。
「真希! 大丈夫か!」
 ぐったりとして倒れたままでいる真希に、伊計が駆け寄ってくる。
 真希は腫れた瞼を上げて伊計を見た。
「……痛い……」
 真希がそう文句を言うと、伊計は少しだけホッとしたように息を吐いたが、真希を抱き上げたなら言った。
「お前、これを狙ってやっただろ? あいつらが証拠を残さないことを知ってたから」
 真希がわざと暴れて殴られている証拠を残したことで、この事件のことで上沢は確実に加害者になった。しかも殺人未遂だ。逃れることは絶対にできない。
 加藤はそれに加担して、濱田にクスリを使ったことも分かっている。
「……狙ったけど、ちょっと煽りすぎたかな……口の中が鉄の味だらけ」
 二、三日なんかで消えない傷を受けることで、真希は二人の犯行を絶対的に泣き寝入りできないようにした。最初から真希ができるのはこれくらいのことで、もし犯されていたとしても、真希は泣き寝入りはしないつもりだった。
「こうなる前に、助けたかったよ」
 伊計がそう言うのだが、真希は少しだけ笑って言った。
「現実はそう上手くできてないから……仕方ないよ」
 真希が溜息を吐きながらそう言ったが、伊計の顔は暗かった。
 こんな大きな事件になったら、被害者の真希は注目の的だ。さらには伊計のことに嫉妬したという加藤が起こした事件であるから、当然伊計もこのままではいられないだろう。
「これからが大変だ。大丈夫か」
「なんとかなると思うよ」
 真希は楽観はしていなかったが、それでも学園内の平和を取り戻したことはいいことだと思っていた。
「あなたも自分のしてきたことを振り返って反省してくれるといいんだけど……」
 真希はそう言うと、伊計の腕の中で意識を手放した。
 緊張していた状況では意識を保ってられたが、それ以上は無理だった。
 真希が意識を手放した瞬間、重さが増したが伊計は真希を抱えたまま救急搬送がされるまでは付き合った。
 本当は付き添っていきたかったが、状況が分かっているのが伊計だけで、学園長とバトンタッチするように付き添いを変わった。
 教頭がその場を仕切り、教師たち数人も立ち会って、事件のことを振り返ったが、翌日も取り調べの調書のために警察署に赴くように言われた。
 先の事件のことも教頭が話してしまい、伊計が加藤に恨まれていたという話から事件が始まっていることから、伊計からも事情を詳しく聞きたいということだった。
 しかし伊計は加藤については興味がなかったので、詳しくは知らない。
 何を思って伊計を填めたのかさえ分かっていない。
 真希はそのまま入院になったが、学園長から検査の結果、外傷などが大きいが大きな怪我ではないと告げられた。しかし顔が腫れてしまっているため、腫れが引くまでは入院することになった。
 さらにはあんな事件の後では精神的なトラウマもあるだろうからと、その方面の診断も受けると言われた。
 伊計は見舞いにいこうとしたのだが、真希の親族である叔父からは断られたという。
「さすがにあなたへの感情で加藤先生が事件を起こしたとしても、原因があなたである以上、親族からすれば……あなたのせいってことになってしまうから」
 学園長の言葉に伊計は真希への見舞いを今日のところは諦めた。
 真希の意識がはっきりしない今は、伊計が訪れても親族と揉めるだけである。
「伊計先生、当面の間、手島真希との接触は勘弁してください。時期が時期ですし、問題もありそうですし、このまま離れていた方がお互いのためだと思います」
 学園長は何か察したように、伊計に対して忠告をした。
「え……?」
 まさかそう言われるとは思わず、伊計は驚いた声を出していた。
「お二人の間がどういう関係であれ、周りからすれば面白がられるだけです。あなたもそうですが、手島さんはまだ未来がある人です。その学生の未来を教師として潰さないでください。いいですか、伊計先生、あなたは教師なのですよ」
 学園長にそう念を押されて、伊計は気付いた。
 確かに自分たちは世間に認められる関係ではない。
 真希がまだ学生で、伊計は手を出せば警察に捕まるような大人だ。この事件がなくても関係としては駄目であり、真希が子供である以上、関係を持ってすらいけないことだ。
「……分かり、ました……」
「あと、手島さんの叔父様は当学園の理事のお一人です。いいですか? あなた方の関係は絶対にあってはならないことなのです」
 その事実を学園長から聞き、伊計は心底驚く。
 真希が家族と仲がこじれているのは、真希から家族の話が出ない時点で分かっていた。しかし叔父という人物が学園の理事である事実は伏せられたままだった。学園長からこうして念を押すように言ってくるということは、伊計は存在自体を疎まれていると考えた方がいい。
 だが、伊計が起こした事件ではないので、理事も伊計を解雇はできない。
 理事側も真希のことを公にして伊計との仲を裂くことはできるが、真希の将来のためには絶対にしないだろう。だが、伊計に近づかないように言うことで牽制はできる。
 つまり伊計が真希に近づくことで、伊計を解雇する理由を公にしないままで解雇できる理由ができてしまうのだ。学園長としては伊計を残したいのだろう。だからわざわざ牽制をしてきた。
 関係を公にしても誰にとってもよい関係にはならない。
 そう言われたのだ。



 真希がふと目を覚ますと、そこは真っ白な天井が見える部屋だった。
 目を開いたら、片方が暗くて驚いたが、そこに手を当てると、眼帯だと分かって溜息が出た。
 おまけに顔中に貼られたガーゼを押さえるために顔に包帯を巻かれていた。想像以上に腫れた上に、切り傷もあったようだった。
 喋ろうとして口を動かすと、切れた口の中がまた痛みを持って傷が開いた。
「……っ」
 びっくりするような痛みで、真希は驚いたが、口を開け閉めしているとやっと口の中の唾液で口が動くようになってきた。
 すると病室のドアが開いて、人が入ってきた。
 真希が驚いて音のした方を見ると、そこには真希の叔父、手島信二が立っていた。
 オールバックにした髪を固めて、ダブルのスーツをきっちりと着こなし、スラリとした立ち姿。彫刻のように整った顔は、四十だというのにまだ三十代半ばに見られると本人は自慢していたほど若々しい。
 そんな人の顔が今日は、いつも以上に厳しい顔をしている。
「真希、起きているんだな。体調はどうだ? ああ、喋れないか?」
 そう言いながら椅子に座った。
「……すみません」
 真希はやっとそう言った。なんとか口を動かして声を出すのに、痛みを感じないように工夫をして喋ると、信二は続けて言った。
「君のせいではない。この事件はね。そこで結果報告をしておく。事件を起こした二人の教師は逮捕された。一人は君を暴行し、殺そうとしたからね。ただもう一人は自分で作ったクスリを打って気がおかしくなっているらしい。精神鑑定どころか病院送りは確定だろうね。警察が間に入っているから、事件として大きく報道されることになる。しばらくの間、テレビを賑わすだろうが、一週間もしないうちに収まるだろう」
 信二がそう言い、真希も頷いた。
「君の友達の濱田君だが、幸い少量のクスリで眠っていただけで済んだようだ。暫くは体調を見て暮らすことになるが、検査の結果が良好だったので退院をしている。君が助けにきて怪我をしたことを知って、申し訳ないと言っていた。あの子が捕まったから君が助けに行ったことを知ったのだろうね」
 真希が捕まった濱田を助けるために行動した結果が今回の事件だが、真希は濱田を巻き込まないで今回の結果に繋げたかったと思っていた。
 真希の当初の目的は、伊計の無実の罪を晴らすために、加藤たちの罠に飛び込んでみるというものだった。それには濱田と別れる必要があったのだが、まさか濱田が狙われるとは思っておらず、考えは甘かった。
「君の行動は感心しないが、気持ちは理解できる。この件に関して、学園側は教師二人の学生への暴行で届け出ている。彼らの過去のできごとは表沙汰にはならないと警察も見ている」
 こんなに大きな事件に発展したら、名乗り出て被害を訴える人はいないだろう。ここまで誰にも知られずに人生を変えた人たちが、ちゃんとした未来を得られていたら、絶対に泣き寝入りしたままで心にしまっておくだろう。
「君のことに関しては、警察に被害届を出しておく。暴行とはいえ、君は診断書が出るほどの怪我をさせられた。おまけに殺人未遂でもある。この点でも教師を学園から追い出すことはできる。こちらからは弁護士を立てて対処しているから君は気にしなくていい」
「……はい」
 子供の真希に何かできることはないと言われ、真希は自分の未熟さを実感する。
 守られなければ生きていけないことは、前の事件で知っている。今も自分は守って貰っていると実感している。
 こうなったら真希は大人に右から左まで全て手を引いて貰わないと動けない。
「事件のことは今後、また変わってくるだろうから、その時にきちんと話をするとして、問題は君自身のことだ」
 信二がそう言いだして、真希はやっぱり来たかと息を吐いた。
「君の中には二の舞という言葉はなかったようだね?」
 信二の言葉に真希は言い訳すら思い浮かばなかった。
「君の好みがそういう職種だとは知っていたが、今度は大人しくしているという約束だったはずだ。今度は救えないよ」
「……分かってます」
「学園としては君を切るしかない。だが安心していい、君の未来が終わったわけじゃない。ただこちらの言う通りに行動して貰うことになるが、それでいいね?」
 真希の選ぶ未来はなく、大人が用意した未来の線路を行けと言われたのだ。
 それは真希にとって、絶対に逆らえないもので、断ることはできなかった。
「叔父さんの、決めた通りにします」
 真希はそう答えた。
 その時、真希は自分の胸に伊計がいるのを感じた。
 ああ、やっぱり後から気付くのだ。好きだったのだ。だから寝ていた。
 でもきっとこうなると思っていた。繋がることはない未来が待っている。二の舞でも繰り返したのは、そういうことだ。
 その後、真希は自宅に一度も戻ることなく、引っ越しをした。

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