horny

 1

「なぁ、あの綺麗なのって蓮見(はすみ)って言うんだよな」
 大学の学食から出たところで、すれ違った綺麗な顔をした男を目にした村雨(むらさめ)は、興味を示したように一緒に歩いていた仲間に聞いた。
「そうだよ」
「そうそう、あれが蓮見って、お前は実際に見たのは初めてか?」
 それに村雨は頷く。
 蓮見には会ったことはなかったが、今まで散々噂で知っていた。
 男喰いのホモだという噂で、彼の容姿に惹かれた人間が付き合ってみようとするらしい。けれど、蓮見との付き合いは必ず相手が壊れて終わる。
 蓮見に惚れ抜くのだが、それでも蓮見の言動についていけなくなって逃げるのだという。蓮見も蓮見で逃げた相手までは追いかけることはない。その相手は大抵大学自体を辞めてしまうため、噂が本当なのかは誰も確かめたことはないが、蓮見が悪く言われていることはないから、両方が悪いというただの恋愛の痴話げんかで終わっている。
 そんな蓮見には男が途切れたことがないのか、常に誰かと一緒にいるのだという。そんな中で大学教授だった男が大学を辞めた。蓮見と付き合っているという噂はあったが、大した騒ぎにはならなかった。
 大学教授が病気だったことが分かって、大学側が騒ぎを収めたからだ。
「本当に噂だけなんだな、蓮見って」
 村雨がそう言うと、仲間もうーんと唸る。
 散々噂話で盛り上がったりもしたことはあるが、真相は何一つ知らないわけだ。
「誰か蓮見に振られたヤツが、変な噂流してるんじゃないんか?」
「だよな、付き合ってたヤツとかが悪く言ってたってことは聞かないし」
 そもそも蓮見の相手との知り合いでもない村雨たちにはそんな話は入ってこない。けれど噂で聞くのも○○さんだとか○○くんだの、そういう伝達は聞いたことはないのだ。
「とはいえ、やりチンのお前が蓮見に興味持つなんて」
「まさか顔見たらやれそうだと思ったとか?」
 ケラケラ笑いながら言われて村雨は頷く。
「やれそうなのは本当。意外に」
 村雨の言葉に周りは驚きと共に笑いが起こる。
 蓮見が男喰いと噂されるように、村雨はやりチンだと言われている。合コンにいけば毎回違った女を連れ帰り、ホテルに行くのが日課だ。こんな調子なので彼女は出来たことはない。女の子の方もそれでいいタイプが寄ってくるのか、一回でヤリ捨てても文句を言われたことはない。
 そんな調子で三年まで来れば、大学にいる女のほとんどとはやったことがあるような状態で、さらに近隣の大学の女ともそうなっている状態だ。二週目に突入した子もいるような状態で、最近はそれにも飽きてきていた。
 何か新しい刺激が欲しいと思っていた時に、男もいいんじゃないかと思えてきたわけだ。その筆頭は蓮見だ。経験豊富で悪い噂がそこまでない相手に、一回ほどお世話になりたいわけだ。
 そういう村雨に周りはそれもありかなと笑う。
「お前くらいになると、男経験があっても、あああり得そうとか思えるからな」
 そんな言葉に後押しされて、村雨は蓮見の前に立っていた。
「なに?」
 綺麗な短髪にした金髪の蓮見が、目の前に立っている村雨を不思議そうに見上げていた。
 ちゃんとご飯を食べているのか怪しいほど細い体つきであるが首の長さがそれを余計に引き立てていた。耳にはピアスを開けた後がついているが、今はピアスを付けてはいなかった。テーブルに置かれている指は長く、男の特徴である固そうな感じではなかった。どこか中性的な雰囲気がある蓮見を見ていると、その気にはなってくるのだ。
「蓮見、お前と一回やってみたい」
 村雨は蓮見に聞こえるだけの声でそう言った。



 蓮見にやってみたいと言ったところ、蓮見は大して驚きもせずに村雨に付いて来いとだけ言って連れてきた。
 場所は、ちょっとした高級住宅街、マンションもある場所であるが、そこへ蓮見は村雨を連れて行く。
 三十回建てのマンションのほぼ最上階に近い部屋の番号を蓮見は押し、エレベーターを操作する。
 すると蓮見はすっと村雨の前に座り込み、いきなり村雨の股間を掴んだ。
「おい……ちょっと蓮見?」
「大丈夫だって、このエレベーター使ってるの俺だけだから」
 蓮見はそう言うと、さっと村雨のペニスをズボンから取り出した。
「へぇ、さすがヤリチンだけのことあるね。大きくていい形してる」
 そう蓮見は言うと、何のためらいもなくペニスを口に銜え込んだのだ。
「ん……ふ」
 美味しそうに咥え、ジュルジュルと音を立ててペニスを啜る蓮見は、慣れたように村雨を高めていく。女にもやってもらったが、ここまでの舌を使ったテクニックの人間には出会えなかった。
 気持ちがいいという言葉に出来ずに、村雨は蓮見の頭を撫でていた。ひくついた先端から先走りが出始めるも、蓮見はそれを飲み込んでいく。入りきらない唾液がぼたぼたとこぼれ、エレベーターの内部にしたたる。それさえ気にせずに、蓮見は村雨のペニスを夢中で舐めている。
「ん……でる……んぁ」
 強く吸われて村雨は蓮見の口腔に精液を放っていた。
「んっぶ……」
 腰を強く突き入れられて、喉の奥で発せられた精液に、蓮見は一瞬噎せたが、勿体ないとばかりに吐き出したものを手で拾って受け止めて、それを舐めて飲み干して見せた。
 正直、村雨はこの行為をいつもやっている女がやったとしたら、引いていただろうと思えたのだが、蓮見の行為はとてもいやらしく、そして官能的に見えたのが不思議だった。
 蓮見が精液をすべて飲み終えるのを待っている間に、村雨のペニスはすっかり元通りに起っていた。
 そそり立つそれを見つめて、蓮見はうっとりとしたように言うのだ。
「すてき……絶倫はすてき」
 待ってましたとばかりの反応に、村雨の理性は切れた。
 がつりと蓮見の腕を掴むと、壁に手を付かせて立たせた。
「がっつかなくても、させるって言ったよ?」
 蓮見はそう言うのだが、途中で気が変わったり、エレベーターに誰かが乗り込んできたら終わりだ。その前に、どうしても村雨は自分のペニスを蓮見の孔の中に入れてしまいたかった。
 飢えたようにぜーぜーっと荒い息を吐きながら、蓮見の下半身を裸にさせてしまうと、そこで村雨は驚愕する。
 蓮見のアナルは、すでに準備が出来ているように、アナルビーズが入っていて、それを引き抜くための輪っかが見えた。
「誘われた時にトイレにいって入れてきた」
 そう言われて蓮見が常時そういうものを持ち歩くほどの男食いであることを思い出す。噂はどうやら本当で、蓮見が女ならヤリマンというようなところだろう。
 村雨は輪っかに指を通すと一気にアナルビーズを抜き取った。
「ひぁ、あああっ!」
 中にはローションも入っていただろう。それらがアナルビーズに付き、滑りは泡となっている。プクプクとローションが音を立てている。濡れたようになっている蓮見のアナルが、獲物を待つように収縮している。
「くそっお前、淫乱すぎるだろ!」
 待ちきれないとばかりに、村雨はビーズを投げ捨てると両手で蓮見の尻を掴み、割れ目を広げて、アナルを確認する。
「ふふ……っふ……」
 蓮見が待ちかねているように腰を揺らした。その直後に熱い塊であるペニスが蓮見の中に一気に突き入れられた。
2

「ッ!」
 蓮見は一気に突き立てられた村雨のペニスに歓喜した。
「……あぁ……はぁ……すごい……いい……村雨……ペニスすてき」 
 ニヤリとして蓮見が村雨を振り返るも、村雨にはそんな蓮見を見る余裕はない。
 初めての男に、初めてペニスをアナルに突き立てた。その状況なら良くあることだろうが、問題はそのアナルが最高級なものだった場合だ。うねる内壁が村雨のペニスに纏わり付いて、しっかりと締め付けてくるのだ。
 こんなのはよほど使い込んでいないと出来ないことだろう。
 それがローションの滑りを借りて、ズリュリとうねってきたらたまったものではない。そう村雨はこの一突きですっかり蓮見のアナルの取り子になってしまったのだ。
「運が悪かったね、相手が俺で」
 可哀想にと言うように蓮見が言ったのが合図だった。
 村雨は一気にペニスを抜き、さらに突き入れてパンパンと音を立てリズム良く蓮見のアナルを犯した。
「あぁんっ……きもちぃっ、ん、はぁっ……」
エレベーターの個室内に、パンパンと音がなり、ヌチャニチャとローションが音を鳴らす。そしてお互いの喘ぎ声が重なり、他の音は一切聞こえない。
 まして人がいつ来てもおかしくない状況に晒されていることもあるのか、興奮は最高潮に達している。そんな環境でセックスをしたことがない村雨は、吊り橋効果がある環境に置かれていると言ってもいい。
 異常なセックスが気持ちがいいことをここですり込まれているわけだ。
「あんっあっん……はぁ、はあ、ん、硬い…きもちいい……んっ!」
 蓮見は甘い声を上げ、突かれるたびにペニスから透明な液を先走りさせている。ペニスはブラブラと激しく揺れて、精液が壁にまで降りかかっている。
「あひっ、あっぁっ、ふぁっ、あぁんっ!」
 ぎりぎりまでペニスを引き抜いて、そして強く突き刺すように奥まではめる。
「あぁんっそこっいいっ……あ゛っあんっあんっあんっ!」
 最後には入れっぱなしで射精をされた。
「あぁッいいっいいっ…んっ」
 けれど村雨は出ていかない。ムクムクと中で復活するようにペニスが上向きになる。それが蓮見のいいところに当たって、蓮見は甘い声を出した。
「村雨……んっ絶倫……なの……すきんっあっイイッあッあん」
 アナルを掻き回すように動き回る村雨は、射精しても萎えず、一心不乱に腰を使って強く突いてくる。それは蓮見が立っていられなくなって、ずるりと床に沈み込んで、一旦ペニスが抜けた後も、村雨は床に寝そべった蓮見の尻を掴んで尻だけ上げた状態で、またペニスをアナルに突っ込んできたことからも夢中なのは分かった。
村雨の大きなペニスで奥を何度も突かれ、気が狂いそうに感じながら蓮見は何度も達した。
「はぁっはぁあっいくっイっちゃうっ…!」
 ビュルビュルトと射精し、精液をはじき出しながらまた達して、蓮見は体をビクビクと大きく震わせる。オーガズムは村雨がアナルの奥にペニスを突き立てるたびに襲ってきて、気が狂いそうなほど蓮見は感じた。
 これまでの誰もなしえなかった行為を、エレベーターの中で犯されたいと思っていた気持ちもかなえてくれる上に、絶倫で何度射精しても行為を兔のように繰り返す村雨をことの時の蓮見は本気で愛していた。
「あッあ゛ひっあッあんあんあんあんあんッ!」
 やっと満足したように出ていく村雨のペニスは、まだ勃起したままであったが、中へ出された精液は蓮見が苦痛と感じるほど出されていた。
 村雨のセックスは、執拗で腰使いが上手く、いやらしい。慣れたはずの腰使いだが、そこに興奮から来る稚拙な部分も見えて面白かった。
 村雨はもうここが何処か分かっていないだろう。
 エレベーターで、しかも監視カメラがあり、それが録画されていることなんて常識的なことも彼には分かっていないに違いない。
 幸いなことは、蓮見が言ったことは本当であることだ。
 エレベーターは蓮見しか使ってないどころか、このマンションにはまだ住人がいないこと。完成してから色んなことで揉めて蓮見の所有になり、二十階以上の住人はいないこと。そしてこのエレベーターはその20階からの専用エレベーターで、20階以下には止まらないこと。そして住人の入所は明日からであることである。もちろん、エレベーターの監視室にはまだ警備員はいない。だが、蓮見はその部屋にも入れる管理人であるから、その部屋のデータを部屋から見ることが出来る。
 エレベーターの監視カメラでこの行為を録画し、蓮見が飽きるまで、村雨に行為を迫ることが出来る。
 今までの相手は、エレベーターではさすがにしてくれなかった。住人がいないことを説明してもだ。部屋でした行為を録画したもので、今後の行為を迫ると、全員が逃げてしまい消息すら消された。
 だから村雨には残って欲しいと思っている。
 振り返ろうとしたところ、村雨が蓮見の顔を掴んだ。
「……っ!」
 乱暴な行為に驚いたが、その蓮見の目の前にスマートフォンがあった。そしてそれには今までの行為の一部が収まっていた。
『っあッんはぁっ……あぁああーっ!』
叫ぶ自分の声と、いわゆるハメ撮りした映像は、もちろん振動で揺れていたが、何をしているのかは容易に想像出来るものだ。
 黒光りするペニスが、蓮見のアナルに入って出る様子がアップで映る。蓮見は思わず、はっと声を出していた。
「……何……?」
『いくっ、いっちゃうっ……あっ……アッあッあッ、おちんぽ……いいぃぃっ』
 それを聞いて興奮した。
「お前、こういう風に撮影して相手をどうこうしようとしていただろう?」
 村雨の言葉に蓮見はハッとする。
 村雨は知っていた。蓮見の噂は沢山聞いたが、その中で一つだけ異常なものがあった。蓮見は撮影したもので相手を脅していたというものだ。
 だから村雨もそれを使った。
「お前が何をねつ造しても、これがあるかぎり、お前が望んだ行為だという証拠だ」
 村雨は必死に蓮見を脅した。
「何を言っているの……俺はただ、セックスをこうやってしてくれる相手が欲しいだけなんだ」 
 蓮見の言葉に村雨は眉をしかめる。
 蓮見はそれを見て、さらに言葉を続けた。
「俺は……ビッチと呼ばれるほど、セックスが好きだ。異常なところでするのも好きだ。だけど誰もこうやってくれなかった。みんな、一度やって後悔する。二度目はないって逃げる」
 蓮見のその言葉に、村雨はやっと合点が言ったように聞き返した。
「お前……セックスして欲しくて、相手を脅していたのか?」
「そうだよ。少なくとも大学で声をかけてくる人間は、俺に興味があるやつだ。だから、その後もセックスしてって頼むのに、誰もしてくれない……淫乱過ぎて引くんだ」
 しかも蓮見は男に慣れている。相手は何か得たいの知れない何かに見えてくるのだろう。
「セックスしたいって思うことが、そんなにいけないことなのか?」
 蓮見はそう言って、立ち上がる。
 その蓮見の苦痛の顔をからは想像出来ない、さっきまでのセックスの痕跡がボタボタっと音を立てて蓮見のアナルからこぼれて落ちる。
 それを見せつけるようにして蓮見は言う。
「だから村雨も責任取って……っ!」
 ここまでやったのだから、共犯だ。脅されただのは関係ない。蓮見とセックスをしたいと言ったのは、村雨だ。
 それを眺めた村雨は、ゴクリと喉を鳴らした。
 それはこれまでの誰も見せなかった行動だ。
「お前、セックスしたいだけなのか?」
「そうだよ、したいんだよ。その村雨の絶倫ペニス、理想過ぎる」
 蓮見はギンギンになっている村雨のペニスを眺めて言い、ペロリと唇を舐めた。
「その凶悪なペニス、早く俺にちょうだい……」
 そう蓮見は言うと、エレベーターを降りた。
 そこは30階最上階、廊下はなく、目の前に玄関らしいドアが一つあるだけだ。そこが蓮見の部屋であり、村雨が引き返すことが出来なくなる境目である。
 このエレベーターを降りたら、もう脅しは効かない。共犯だ。
 そしてエレベーターのドアが閉まれば、そのまま帰って日常が待っている。
 村雨は、一瞬だけ迷ったが、閉まりそうなドアをこじ開けて蓮見の前に出た。
 エレベーターは一気に降りていき、村雨は蓮見が許さない限りここから出ることも出来ないだろう。
「くれてやろうじゃないか……女も飽きてたところだ」
「それでいい、恋とか愛はいらない。そのペニスだけでいい」
 蓮見はそう言うと、村雨の手を取って部屋に招いた。
 その部屋から村雨が出たのは、三日後。
 だがその日の夜には、引っ越してきたほど蓮見との行為にのめり込んでいったのは言うまでもない。

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