sensualist

 1

 片平は闇に染まった廊下を歩いていた。
 最近、就職したばかりの学校の警備員の職は友人から紹介してもらったものだった。夜の学校の警備というのは、実際のところ忙しくはない。
 どちらかというと暇をもてあましているくらいにすることは、二時間に一回の見回りと施錠の確認。一回三十分ほどかかってしまうため、面倒ではあるが最初こそいちいち確認していたのだが、そのうちぱっと見ただけで閉まっているのか開いているのかがわかるようになり、見回りは楽になった。
 その日はいつもとは違った。
 何かを感じたのだ。誰かがいる。そんな気配。
 人がいない空間になれた片平には、その感覚の方が普通だったため、異変にはすぐに気づいた。だが誰かがいるような気配はするのに、音はしなかった。なんの音もないのに異変がすぐそばにあるのは気持ちが悪い。
 誰かが入り込んでいるのか、残っていた生徒でもいたのかと考えたが、すでに一回目の見回りを終えて、生徒をすべて帰し、玄関の鍵も閉めてしまった後に誰かがいたなんてことがあるだろうか。
 とにかく、今来た道を戻り、特別棟の方へ戻った。
 鍵を開けて中へ入り、入り口を閉める。
 二階への階段を上がりかけたとき、奇妙な声が聞こえだした。
「ん、あ……あっ」
 人の声だ。決して幽霊ではない。
 そう確信が持てたのは、声が何をしている時に出されるものなのかをすぐに想像できたからだ。
 どうやら忍び込んだ人間は部屋のどこかでセックスをしているらしいのだ。
 パチュパチュと何かを打ち付けるような音がして、片平は懐中電灯を消したまま、月明かりを利用して音のする方へ向かう。
 足を進めるとどんどん音が大きくなり、人の声が聞こえてきた。
 どうやら侵入者は、見回りの時間を把握していたようで、見回りが来るときだけ静かにしていたらしい。
(なんてやつらだ……)
 正直に言うとうらやましいほどであるが、片平はゆっくりと音がする部屋の隣に忍び込んだ。音がする部屋はいわゆる準備室と言われる部屋だ。簡単に言えば物置といえる。どちらの部屋からも入ることができるのだが、片平はその部屋の特徴を知っていた。
 偶然なのだが、誰かが設置した監視カメラがあり、それを侵入した部屋で見ることができる。小さなテレビが部屋の中に置いてあり、そこのテレビをつける前に持っていた音楽プレイヤーに差していたイヤホンをジャックに差しておいた。
 テレビをつけると、部屋中が明るくなる。
 それと同時に映像が流れてきた。
 暗いと思っていた部屋の中は月明かりで明るく照らされていて、誰かが何をやっているのか見えた。
 そこには、やはりセックスをしている二人組がいる。
 だが天井から紐か何かで吊られた男を男が犯している男だった。
「なんだよ、ホモかよ……」
 思わずため息が漏れた。女子学生だったらさぞかし楽しいものだったろうにと思えただけに結果に残念な気持ちになるが、隣から聞こえてくる喘ぎ声がその考えを打ち消す。
「あっ……んあっあぁぁあっ!」
 アナルにペニスが出入りするだけで男が喘ぐのだが、その声が酷く艶があり色っぽいのだ。 ビクッと体が震えて男が達すると、ビシャリと精液がはき出される音が聞こえた。
 ゆっくりとイヤホンを耳にはめると、吊られた男の達する声がした。
「いくっんぁあああぁぁぁっ!」
 片平はそれを聞いて思わず勃起をした。元から半起ちのようなものだったが、それでも達した声で勃起をするのは少しだけ屈辱だった。
 男の達する声などで興奮するなど、予想だにしなかったからだ。
 悔しかった。だからなのか、いったん廊下に出ると、物音を立てながら階段を上がる音を立てた。
「誰かいるんですか?」
 そう声を立てて準備室前でわざと声を出した。
 そして鍵を音を立ててだし、さっき入った部屋のドアを乱暴に開けた。
「いるのは分かっているんですよ。出てきてください」
 そう声を出しながら部屋中を探してから部屋を出た。
 すると、パタパタと音がして誰かが階段を下りていく音が聞こえてきた。
「待て!」
 階段を降りて追いかけると、その人物は一番近い出入り口から外へと飛び出して行った。
「次見つけたら警察だからな!」
 開いたドアからそう叫ぶと、その人物は門を超えてさらに先を走っていく。しばらくして学校外にある駐車場から車で逃げる音まで聞こえてきた。
「……つか、一人だったな」
 まさかと片平の心に不安がよぎる。
 鍵を閉めてからまた階段を上がる。どのみち、教室の鍵を閉めないといけないので部屋まで戻った。そしてつけっぱなしにしていたテレビを見る。
 すると、やはりさっき逃げたのは一人だけだったことが分かった。
 吊られた男はそのまま残されていた。下半身全裸で、上半身は辛うじてワイシャツを着ているだけの姿。足にはソックスがそのままであった。
 片平はその場で録画の準備をして、テレビを消すと部屋に入り込んだ。
「……!」
 吊られた男が息を飲む声がした。
 片平は懐中電灯でその吊られた男を照らした。
 やはり下半身はそのままで、今までしっかりやってましたといわんばかりの残滓さえもそのままで放置されていた。
 片平は側にある服を照らした。
 この学校のブレザーの制服だ。どうやら生徒と教師が居残りでスリルを楽しんでいたらしい。
 その制服のポケットから生徒手帳が出てくる。
 名字は羽野、顔は童顔だが綺麗な子だった。よくある官能小説で必ず餌食になるような少年と言ったらいいだろうか。とにかく、被害に遭いやすい子だろう。
「ひっく……ひっく」
 さすがに何も言わない侵入者が怖くなったのだろう羽野が泣き出した。
「こういうスリルを楽しんでいたんじゃないのか?」
 見つかってしまうリスクを冒してまで、こんなところで縛られているのだから、当然見つかったら置いていかれるリスクもあるはずだ。
「……違う……こんなの……」
 泣きながらであるが、違うと言う。
 それでもさっきまで楽しんでいたのは事実だ。
「男のペニスをアナルで銜え込んで、喘いで喜んでいたのに、何が違うんだ?」
 そう言って片平は近づき、羽野の尻を手で撫でた。
「!」
 びくりと羽野の体が跳ねたが、気にせずに片平はその尻を撫で続けた。
 ライトを尻に当てていると、アナルがヒクヒクと動いて、その中から残滓が垂れてくる。
 尻にライトを当てたままでテーブルに懐中電灯を置いた。
 尻を撫でながら、割れ目に沿って指を這わせ、アナルに一本指を突っ込んだ。
「これより太いものを入れてよがってただろう」
 一本指を入れたくらいではもはや足りないであろう中に、もう一本指を足してアナルを攻める。
「いや、あっ……いやぁ」
 羽野は吊られたままでも抵抗をしようとしたので、片平はすっかり立ち上がったペニスを早急にアナルに突っ込んでいた。
「あっあっあ゛っ!」
 恐怖で収縮しているのか知らないが、片平のペニスは半分入ったところで止まってしまう。
「……あぁ……おっ大きいっ……んぁあ」
 どうやら先の侵入者のペニスは片平ほどの大きさはなかったらしい。平均値を超えている片平のペニスの太さには驚愕しているようだった。
「どうだ? 今まで届かなかったところまで突かれてみたくないか?」
 中へ入り込むペニスに羽野ははあっと息を吐きながらそれを受け入れようとしている。体がそういうふうに覚えたのだろう。たとえ相手が変わっても、その行為が変わったわけではないからなのか、受け入れてしまう。
 この年齢の性に対して興味が大きさは、無謀な方法も受け入れたくなるのだろうか、羽野はいやがるそぶりはするものの、しっかりと片平のペニスを咥えて離さない。
 うねる内壁が心地よく、片平はその奥まで突いてみたくなり、ゆっくりとアナルを広げるようにして押し進んだ。
「ひっあぁああぁぁっ、だめっ……そんなの……入らな……」
「飲み込むのが上手いんだな、羽野君。俺のペニスがどんどん入っていくぞ」
 片平がそう言うと、羽野はびくりと体を震わせ、その片平のペニスを締め付ける。
「……え……な、まえ、あっんぁああ」
 内壁に絡みついていた残滓を使い、ペニスが押し進むのを助けてくる。ミチミチと皮膚を広げ肉を広げ、ペニスが完全に根元まで入り込んだ。
「ほら全部入った」
 そう言うと片平は持っていたスマートフォンでその結合部分を撮影する。
 カシャリと音を立てて撮られると、さすがに羽野も抵抗しようとした。
「やっ……ん……だめしゃしん……」
「ほら、ほら。ペニスが出たり入ったりしているぞ」
 今度は写真ではなく動画にしてゆっくりとその動きを撮影する。
 粘った残滓がまとわりついたペニスが出入りをゆっくりと繰り返していく。
「あぁあああっだめっ……んぁああぁ、だめ……それだめ……んぁぁあ」
 鼻に抜けるような甘ったるい羽野の声が聞こえ、決していやがっているわけではないことが分かってしまう。
 片平は一気に抜いて、今度は一気にペニスを奥まで突き刺した。
「んぁああぁぁ――――――っ!」
 奥まで突いた瞬間、羽野が体を強張らせて達した。
 そして同時にシャーッと音がした。
「だめ、いやぁぁぁ……」
 どうやら繋がれてからずいぶん時間が過ぎていたのか、膀胱にたまった尿が一気に吹き出してしまったのだ。
「最後まで出してしまえ、この先長いからな」
 片平はそう言うと、羽野に向かってさっき撮った動画を見せる。
「……うそ……そんな……ああ」
 動画に映っている自分のアナルにしっかりと大きいペニスが突き刺さっていて、それがゆっくりと出入りしている。そのペニスは凶悪なほど黒く、そして大きい。それが自分を犯しているのだと思ったのだろう、羽野は顔を真っ赤にしながら首を振るのだが、その目はしっかりと動画を見つめている。
 つまり興味があるわけだ。
 この今自分を犯しているペニスから目が離せないのだ。
 尿が出てしまうと、緊張していたアナルが緩んだ。そこを片平が羽野の腰をしっかりと掴んで腰を振った。
「あぁああっんぁあ……はぁあっすごい……んっぁ」
 さっきの教師よりは若いと自信がある上に慣れた片平の腰使いに、羽野は信じられない快楽を与えられていた。沸き上がる快楽に抑えきれない嬌声が口から漏れた。
「んぁああっはぁあ……んぁ……あぁあっあっあっ!」
 さっきまでの声を殺したセックスでは我慢できなかった部分が溢れ出て、声が大きく漏れた。嬌声を押さえろとは言われなかった。
 パンパンと音が出るほど叩きつけられ、ペニスが高速で出入りをする。熱いものが奥の奥まで羽野を抉り、勢いよく出ていく感覚は、これまでのセックスで得られなかった激しさだった。
「んぁっあっあっ……んぁあ゛っあ゛っあ゛っ」
 もう否定する言葉さえ口にではできない。それほどの激しさで突かれ、ただ快楽に羽野は溺れた。写真を撮られようが、動画を撮られようが、そんなのはもうどうでもよかった。ただその肉の塊でアナルを犯してくれるならなんでもよかった。
「ぁああああぁああ――――――っ!」
 奥の奥で、精子が吐き出された。予告もなく吐き出されたものを受け入れた羽野は、同時に自分のペニスからも精子を吐き出した。勢いよく吐き出された精子が尿のように吹き出し、それが気持ちよくて羽野は全身をくねらせながら、気持ちいいと表現した。
 片平がペニスを抜くと、ぽっかりと空いた羽野のアナルからは吐き出した精子がボタボタと逆流して出てくる。
 前も後ろも気持ちよくて、完全に天国を見ている羽野を片平は繋いだロープから外して、ぬれていない床に横たえた。
 ビクンビクンと体をまだ振るわせ絶頂を味わっている。
 長時間繋がれっぱなしだった手首には完全に後が残っているのだが、どうするつもりなのかとふいに片平は心配になった。
 その手首を撫でていると、羽野がふっと意識を取り戻したように視線がかち合った。
「この手首、どうすんだ?」
 そう片平が聞くと、羽野は驚いたような顔をした。
 片平の顔は逆光で羽野からは見えてない。だが心配している声だとは分かったようだった。
「……慣れてるから平気、それにサポーターするし……」
 手を引いて羽野はゆっくりと起き上がる。
 片平は立ち上がると懐中電灯を持ってから言った。
「二時間後にまた見回りに来るから、その時までに出て行け」
 片平はそう言うと部屋から出た。

2

 片平は隣の教室に戻り、録画したビデオを抜き出してそれを抱えてから教室に鍵をかけた。中からは開けられるので、次に鍵が開いていれば羽野が帰った証拠になる。
 腕時計を見るとまだ午後十時。
 午後七時から午前八時までの仕事なので、この先は長い。
 少し疲れた体を引きずって管理室まで戻り、汚れたペニスを洗った。さすがにそのままでは臭くてたまらないからだ。
 すぐにテレビをつけてそれを見ながらお茶にした。
 けれどテレビには夢中になれなくて、さっき録画したものを再生してみた。
 しっかりと懐中電灯が仕事をしていて、上から撮られたものは結合部分までしっかりと映っていた。
 無我夢中で羽野を犯す自分の姿や、それを受けて悶える羽野。
 表情は見えないけれど、口元あたりから涎が垂れているのか、それが光に反射している。失禁やオーガズムまでしっかりと映っていて、いわゆるAVの盗撮ものとして流通しているものに似ていた。
 それを見ながら片平はオナニーをした。羽野の声にまた興奮したのだ。
 そして射精をするまでやったところ、急にノックがした。
「あ、はい、ちょっと待ってください」
 時間は午後十一時。
 片平は慌ててズボンを履いて、ビデオを切ってからドアを開けた。
 ドアの外には生徒が立っていた。ただし、下半身はソックスだけの姿。
 顔を見れば、それは羽野だった。
「あの場所、掃除しておきました……」
「……ああ」
「でも、思い出して……収まらなくて」
 羽野はそう言って仁王立ちして、自分のペニスが立っている姿を見せつけてくる。
「……入れ」
 ゴクリと喉を鳴らした片平がそう言うと、羽野はそのままの姿で荷物を持って入ってきた。だが、ドアが閉まると同時に、そのドアに羽野を押しつけて片平は羽野のアナルを広げた。
 そこに顔を近づけて見るとソープの匂いがする。
「洗ったのか……」
 どうやらあの行為をしているのは初めてではなかったらしく、洗うものなどを持参していたらしい。
「洗いながら、指入れて、オナニーを二回もした……でも足りない」
「……どうしろと?」
「その黒い、凶悪ですてきなペニスを、僕のアナルに突き立ててくださいっ」
 羽野は自分でアナルが片平に見えるようにお尻を広げて突き出した。
 そのアナルを片平は何の躊躇もなく舌で舐めた。
「んふっう」
 入り口のドアにもたれるように羽野は体をくねらせた。
 ざらざらした舌触りがアナルの皺を舐め、舌がアナルの中に入ってくる。
「ああぁぁっ! それ……んぁ、いいっきもちいいっ」
 舌で舐められたことはないのか、最初は驚いていた羽野もそのまま片平のされるがままに体を預けた。
 ジュルジュルと音が出るほど舐めたところに、片平はペニスを押しつける。
「だめ……これ使って……?」
 そう言うと、羽野はコンドームを差し出した。片平はそれを受け取ってから放り投げた。
「今更何を」
 そう言うとそのままペニスを羽野のアナルに突き入れた。
 慣れたアナルは簡単に片平を受け入れた。
「んぁあああっ!」
 片平は羽野の腰を掴んで奥まで深く突き、そして出したりを繰り返す。
「んぁあ゛っあ゛……んあ゛っ、深い……んぁあ゛」
 届くところが指などでは比べものにならないほど奥まで入り込む。それはディルドなどでは得られない熱さを持っている。だから片平に犯してもらわなければ得られない快楽だった。
 羽野は逃げた教師のことはもう関係ないと思っていた。そんなことよりもこの警備員の男に犯されることの方がもっと気持ちがいいと思えたのだ。
 自分からねだったことは一度としてなかったが、今回は強請った。あられもない姿を晒して、アナルを犯してくれと、自分で穴を広げて見せたりもした。
 それによって片平は興奮をしてくれた。
 自分の貧弱な体で釣れるとは思えなかったけれど、片平は違った。
 突き入れ、前立腺を擦ったり、様々な場所をこすりつけるように入り込んでくる片平のペニスは本当に圧迫感があって存在感が酷くあった。
 これを一回きりで忘れるなんてできない。もしかしたらこの先も忘れることはできないのではないかとさえ思えた。
「んあっあ゛っあっあっんんぁあぁぁああっ」
 パンパンと叩きつけられて、羽野は達した。
 ビューッと精子が吐き出されるのだが、それでも片岡が達したわけではないので、突いてくるのは止まらない。
「いって……るっあっあっあっ」
 ドアに完全に縋り付いて訴えるも、片岡は気にした様子もなく突き続ける。その乱暴さがまたたまらない快楽をもたらしてくる。
「いってる……のに……いって……る……んぁあああ――――――っ」
 羽野のペニスからは精子がアナルを突かれるたびに飛び出ており、完全に潮を吹いていた。
「きもち……いいっいいっ……いくっいくっ……んぁあっ」
「くそっ……っ」
「ひあぁああ――――――っ!」
 片平は奥まで突き入れてから、中で精子を吐き出した。さっき一回は抜いたはずなのに、精子は止まることなく、長く精子を吐き出している。それが今までしてきたセックスの何よりも気持ちがよくて、片平は何度も奥まですりつけるようにしてから、ペニスを抜いた。
 そうするとドアにもたれていた羽野がずるずると滑って体制を崩して床に倒れた。
 その羽野のアナルからは、精子がドロリと漏れて、アナルがそれにあわせてパクパクと収縮している。
 それを見ると片平のペニスがまた勃起をした。
 床に横たわったままの羽野の腰だけを掴んで高く上げると、また片平は羽野のアナルにペニスを入れた。
「っ! またっ……くるの……ああっ」
 羽野は笑顔でそれを受け入れ、激しく乱暴に扱われても嬌声を上げ、何度も何度も潮を吹いては自分の精子まみれになりながらも、片平のペニスを受け入れ続けた。
 すべてが終わったのは、二時間ほど経っていた。
「……見回りをしてくるから、片付けて帰れ。その奥に風呂があるから使っていいから」
 軽く体を洗ってきた片平が着替えて見回りに出ようとすると、羽野はそのまま床で身動きがとれないままであった。
 それを避けて片平は部屋を出た。
 きっと一時的な気の迷いだろうと思えた。
 全館の見回りをして、さっき使った準備室もみてきたが、そこも綺麗に片付けられていた。ただ窓だけは換気で開けていたのか、匂いも消えてきた。そこにも鍵をかけ、教室にも鍵をかけてから、ゆっくりと教室を見回ってから警備室に戻った。
 部屋を開けると、さすがに匂いが残っていた。
 だが精子まみれだった床は綺麗に拭かれて片付けられていて、掃除に使ったであろう洗剤の匂いがした。
 とりあえず窓を開けて風を入れて匂いを抜く。さすがに明日朝にこんな匂いを残したままだと交代の警備員に不審がられる。片付けていた扇風機も使って匂いを外へと追い出してから、部屋中を見回った。
 風呂は使った形跡が残っていて、掃除道具入れも使ったものが片付けられていた。
 だが、羽野の姿は残っていなかった。
 それから片平は、ビデオを片付けようとして取り出そうとしたが、中身がなくなっていることに気づいた。
「……中を見たのか」
 好奇心で探っていて見つけたのか、録画したものがなくなっていた。
 さすがに脅迫の材料になりそうなものは残しておけなかったのだろうなと思ったが、すぐに鍵をかけたロッカーを確認して自分の荷物が荒らされていないか確認した。
 鍵はかかったままだったので開けてはいないだろう。
 ほっとして机に座ると、机の上に置いてあるメモ帳に何か書いてあった。
 それは――――――。
「ビデオなんかなくてもいいでしょう。来週も訪ねます」
 と書かれていた。
 片平はハッと息を吐き、それから頭を抱えた。
 羽野は片平とのセックスで、何かが目覚めたのだろう。セックスをするためだけに片平を訪ねてくるというのだ。それも毎週。これからずっとそうするという宣言だ。
「……冗談じゃない」
 ただからかっただけだったのに、本気になられては困る。
 どうしたらいいのだと片平は戸惑った。
 仕事を辞めるわけにはいかず、きっと来週はあのドアがノックされて、羽野がやってくる。そして自分はその羽野を見て、また勃起してセックスをしてしまうだろう。
 そう思うと目眩がした。
 すでに主導権は羽野に渡っている。片平が拒むなら仕事を辞めて、完全にここから逃げるしか方法がない。けれどそれができないことを羽野は知っている。
 さらにビデオを捕られた。それには明らかに片平が羽野を強姦したという証拠が残っている。
 好奇心で手を出したせいで、ビデオなど興味で撮ったせいで、片平は窮地に陥っていた。そして呆然としたまま朝を迎えたのだった。

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