雷鳴

1

 その日は朝からの快晴に、梅雨の合間の晴れだとテレビが言っていた。
 だが暑さは湿度の高さが変わらない上に、気温も上がったので汗が自然と沸く。その日の気温は、三十度を超えるだろうと予想され、日中の体感温度はもっと上がるだろう。テレビでは熱中症の予防を訴え、三木は朝からコンビニでウーロン茶を買い込んだ。 これから営業で二、三か所回るのだが、日中の一番暑い時間に外にいなければならないのが最悪の日だった。
 その日は同じ会社で同じ営業課に属する守屋と行動を共にする。
 契約が終了間近の契約書にサインをもらうだけの仕事なのだが、それでも緊張はする。相手に失礼がないようにと気をつけて訪問先を回った。
 保険の仕事で、契約を取るのはなかなか大変だ。だが昨今は様々な保険が用意され、よほどのことがない限り、どれかを契約してもらえる。
「それでは、契約が整い次第、契約書を郵送させていただきますので、よろしくお願いいたします」
 署名捺印をもらい、契約が終了したのは、午後三時を回っていた。
 三件回ってこの時間なら、早いほうであるが、問題は天気だった。今日は一日晴れていると予想されてはいたが、午後に入り急に雲行きが怪しくなった。
「まあ、雨ですって」
 契約先の奥さんがテレビをちらっと見てそう言った。
「駅まで走れば間に合いそうですね。では失礼します」
 契約が終了すれば、書類を会社に届けて、その日の仕事は終わる。後は調査や査定などが入るかもしれないが、それは営業の仕事ではない。できれば契約者が何処にも問題がないことを願うだけだ。
 契約書を一応持っていたビニール袋がついている封筒に入れ、それを鞄に入れた。
「よし、守屋、走ろう」
 準備ができたと三木が走り出すと、守屋も走って付いてくる。駅まで二十分の距離だったが、その半分もいかないうちに雨が降り始めた。
「げっ! 間に合う?」
「駄目だ、三木。この雨をやり過ごすぞ」
 そう言って守屋が三木の手を取って走り出した。近くにあるのはちょっとした小高い山で、その山の麓に小さな神社がある。そこの軒先を借りようというわけだ。
 賽銭入れのところの階段に上がったとたん、一気に雨が土砂降りになった。
「うわ、間一髪」
 三木が靴を脱ぎながら言った。
 それに習って守屋も靴を脱ぎ、賽銭入れ近くまで上がって雨の滴を避けた。周りの道からは悲鳴を上げながら走って去って行く人が数人いたが、誰も神社には気付かない様子で走って行く。
 スマートフォンで位置を確認すると、駅からは七分以上離れている。雨はだんだんと降り始め、集中豪雨といえそうなほどの雨の量が降り注いでいる。
「急激に発達した雨雲が発生、一時的な豪雨となるでしょう」
 守屋がテレビの天気予報を見ている。どうやら通り雨程度の予定だったが、そうはならなかったらしい。
 雨は強くなり、音も酷く鳴っていて、隣にいるはずなのに三木と守屋は話をするにも大声を出さないといけなくなった。
「会社に連絡した方がいい!?」
「え? 聞こえない!」
 叫び合っていても聞こえないほど雨が降り、さらにはそれが斜めに降り始める。
「うわ! 散ってきた!」
 すると守屋が三木の腕を引っ張って、社の中に入ろうと指示する。
「マジかよ!」
 守屋は遠慮なく、ドアを開け先に中に入ってしまった。
 三木は雨が斜めに降ってきて、書類が濡れることを気にして守屋の後に続いた。
 入り口は格子のようなドアであるが、それでも開いているのは上の方だけで、雨も入りにくい。中は暗いがそれでも外で斜めに降る雨を受けるよりは濡れない。
 広さは六畳ほどで、中には神事に使う道具などが入れられていて、神様を祭ってるのか、物置にしているのか分からない感じだ。
 だがその緩さが、この町の小さな神社らしくて面白い。
「神様、ちょっと失礼しますね。雨宿りです」
 三木は神様を祭っている棚を見つけ、そこに手を合わせて言った。
「面白いことをするんだな」
 守屋は神様という存在を信じていないらしく、三木を笑っている。「何だよちくしょう」
「会社にメール入れた。契約書濡らすな。雨宿りしてこいってさ」
 守屋はその文句を無視して、メールを送っている。
「あ、そうだ。荷物は絶対に濡れないところにと……」
 三木は奥の壁に鞄を置いてその近くに座った。守屋もその隣に座る。
 バケツをひっくり返したような雨が降り、止む気配が全くしない。轟音と木々が雨に打たれる音が大きすぎて、外からはそれ以外の何の音も聞こえない。
 座っているだけでは暇なので、スマートフォンを取り出して天気予報を見ようとするも、ワンセグは雨の影響で切れ、電波の状況も悪くなっている。
 半袖のワイシャツも少し濡れていて、気温も雨のせいで下がってきたのか、三木は体を震わせた。
「寒いのか?」
 そう守屋がスマートフォンに打って見せてから、三木を自分の膝に抱き寄せた。
「ちょっ! 守屋!?」
 三木は驚いて暴れそうになったが、それ以上の強い力で引き寄せられ、スッポリと収まってしまう。
 すると守屋が三木の首筋にキスを始める。
「あっ! お前っこんなところで……」
 やめろと言ってみても守屋には聞こえているのかは分からない。守屋は無視するかのように、三木を抱き寄せた手が、三木の乳首を服の上から触り始めた。
「ああっ!」
 ピクンと跳ねた三木の体を押さえつけるように抱きしめながらも愛撫の手を止めない守屋。
 三木は守屋とは、最近寝ている関係だった。恋人ではないのだが、お互いセックスをする相手を探すバーで知り合った。そして同じ会社だと分かり、最初こそ気まずかったが、次第に話が合う上に、時間の調整もしやすいため、セックスをする回数が増えた。
 特に守屋は絶倫は、三木に気に入られた。三木も体が小さい割に体力があるため、長時間のセックスが好きだったことから、なかなか理想の相手に出会えずにいたところだったので、守屋の絶倫は願ったり叶ったりであった。
 だが今は仕事中で、しかも神社の中での雨宿り中だ。
 キュッと乳首を服の上から掴まれて、三木は耐えきれず、守屋に完全に体を預けてしまった。
 守屋と寝るようになってから、守屋が三木の体を隅々まで開発していった。乳首を弄るだけで勃起したし、射精もできるようになった。だがそれは守屋のいやらしい触り方のお陰であって、普段は不思議と乳首で感じたりはしない。
「あっんっ……あっんぁ」
 嬌声が漏れるが、当然雨の音で掻き消される。
 外は豪雨どころか雷も鳴っていて、さらに酷くなっている。もちろん車以外が通ることはなく、少し道を入った神社に用がある人間はいやしない。
「んぁあっあっんぁっあっ」
 乳首を摘ままれて悶えているうちに、三木のワイシャツのボタンがすでに外されていて、下着をまくり上げて直に乳首を転がされた。
「あはっん……んんっあっ……ああっ……あっ」
 リズムよく乳首を摘まみ上げられて、ズボンの中で三木のペニスが勃起していた。きつくなったズボンのファスナーを開けて、守屋が三木のペニスを解放する。皮を被っていたペニスの皮を上手く守屋が剥き、扱きあげる。
「あんっあっ! んぁあっばかっ! こんなところでっ……んぁっ」
 三木がそう叫ぶのだが、守屋には何か言っているくらいにしか聞こえない。どうせ文句だろうからと、守屋は三木の首筋に舌を這わせたり、キスをしたりした。さらには三木の乳首を弄りながらペニスも扱く。
「だめっああっ!ぁああっ! いくっ! んふっぅ!」
 三木が体をビクリと痙攣させて達した。
「はぁあっん」
 ぐったりとする三木だが、守屋はハンカチで精液を受け止めてから、ポケットからコンドームを取り出す。
「お前……何して……」
 批判するような目をした三木の耳元で守屋が言った。
「今日の契約のことで、昨日できなかっただろ?」
 昨日は久々に会う日だったのに、契約三つという急病の同僚の仕事を押しつけられ、そのために失敗はしたくないという三木の言葉で、逢い引きが中止になった。
 守屋はそれがずっと不満だったらしい。
「終わったんだからいいだろ。どうせ、この雨は暫くやまないんだし、お前に入りたい」
 守屋がそう言って、三木のペニスにコンドームを装着した。そして守屋は自分のペニスに装着した。
 ガチガチに勃起した守屋のペニスを見て、三木はびっくりする。守屋は三木の首筋にキスを繰り返し、耳まで犯してくる。どうしてもしたいという態度を隠しもしない守屋に、三木は煽られた。


2

「たくっ仕方ないな……」
 三木もだんだんとその気になってきた。
 外の雨は斜めに降り続け、賽銭(さいせん)箱近くまで雨が飛び散っている。音は雷鳴と雨の叩きつける轟音で、中で何をしていても外の人間に気づかれることはないだろう。
 それもあって、三木はすんなりとズボンと下着を脱いだ。
 その間に守屋はポケットから小さなチューブを出した。市販されている有名な会社のジェルであるが、その一回使い切りミニサイズという女性に受けそうなピンクの入れ物のものだ。
「…………呆れた」
 三木の呆れ顔に、守屋は笑うだけだ。
 どうやらどこでもできるように、ポケットにジェルの入った小さなチューブを入れていたらしい。用意周到というよりは、馬鹿である。見つかったらいいわけができないレベルの物体をどうどうと取引先まで持って行くのは、呆れる以外に何ができる。しかもコンドームもさらっと出していたが、懐から五枚綴りのものを出してきたのも同様に呆れる。
 守屋はその容器からは、ジェルの蓋を開ける。いつもみたいに大量には使えないが、孔を解すくらいのことはできそうなものだ。
 三木が腰を上げた状態で守屋の前に晒すと、守屋はふっと気がつく。
「……石けんの香りがする……ってことは」
 どうやら三木も昨日の逢い引きを邪魔されて、セックスができずに困っていたようだ。今日の仕事が終われば、やっと休みになる。一日延びた休みであるが、仕事が終わればすぐにできるように準備だけは朝からしていたらしい。
 それが分かって守屋はニヤリと笑ってしまう。もちろん三木には見えていない。
 守屋は見えていないことをいいことに、ジェルを一旦床に置いて、三木の尻を掴むと、そこに顔を埋めた。
「ひやああ!」
 ピシャリと明らかにジェルや指ではない感触に三木はビクリとして振り返った。
「なにっやってんだ!」
 あまりに驚いて三木が逃げようとするのだが、守屋がしっかりと足を掴んでいて放してはくれない。舌は三木のアナルを愛おしそうに舐めてきて、その舌が触れるたびに三木はビクビクと体を震わせた。
 抵抗もむなしく、完全に三木はアナルを舐める守屋の舌に翻弄された。
「んぁっ! あっ……んんふっ……ああ……」
 守屋は三木を愛撫するのが大好きである。できれば早くアナルにペニスを突っ込んで気持ちよくはなりたいが、それよりも三木が悶える姿が好きだった。
「あっ!あっ! んぁっ! ああっだめっんんふっ」
 開いた足の間でペチャペチャッとアナルを舐める音が聞こえだした。雨が少し小降りになってきたのか、息遣いまで聞こえ始めた。だが雨音はまだしており、契約書類を持っている手前、少しでも雨が降っているなら、出る訳にはいかない。
「あっん! んあぁっ! ああっ」
 一応建物の中にいるとはいえ、一歩間違えば青姦である。
 誰にも見つからないだろうが、それでも人が絶対に来ないとはいえない。
 ザンザンと雨が時折強く叩きつける中、人に見つかるかもしれないと思いながらドキドキと緊張しながらの行為。それでも止まらないのは気持ちが高まってしまっているからだ。
「あ……ん」
 舌や指を入れてアナルを柔らかくした守屋は、やっと三木のアナルから顔を上げた。入ってくるわずかな光に三木のアナルが守屋の唾などで光っているように見える。
 それに守屋はゴクリと喉を鳴らして、三木のアナルにペニスを挿入し始めた。
「ん……あ……あ……んぁっ……んんん」
 ゆっくりと三木のアナルは守屋のペニスを飲み込んでいく。朝から慣らしておいたお陰もあり、いつもよりすんなりと挿入ができた。
 守屋はゆるゆるとペニスを進め、根元まで押し込めるつもりで四つん這いになっていた三木を抱き上げて起こし、膝に乗せた。
「……んぁああぁぁっっ!」
 膝に乗せられると、三木は自分の体重で体が沈み、ペニスが奥の奥まで突き刺さるのを感じて仰け反った。
 綺麗に仰け反っている三木の体を支えながら、守屋は三木の乳首に悪戯をする。
「んぁっあっあっだめっ! あっ!あっ!ああぁっ!」
 乳首を摘ままれて、三木の体が逃げるように動くのだが、その逃げることで浮いた体を守屋が腰を使って追い立てる。下から突き上げられるように挿入されて三木は仰け反り、嬌声を上げた。
「あっ!あっ!んぁ!あっ!んんっ!」
 守屋は三木を抱き留め、乳首を何度も摘まみ上げ、腰も突き上げた。三木は自らも腰を振り、守屋のペニスを銜え込んで身もだえる。その姿がまた守屋を煽り、守屋は三木を床に寝転がらせ、片足をあげると、横から腰を突く。
「あっんああぁああっ! んああっ! あぁああっ!」
 嬌声は我慢しようとするのに、口から零れ出てしまい、大きな声は周りに響いていたが、それを雨音がすべて消し去ってしまっている。
 雷鳴が鳴り響き、土砂降りがまた始まった。
「んぁあっ! あああぁあっ! あああぁあ! あっ!あっ!あああっ!」
 ザンザンと打ち付ける音に合わせて、守屋が挿入を乱暴に繰り返し、前立腺を刺激された三木は、悲鳴を上げて達した。
「ひぃいああああぁ――――――っ!」
 三木はいつもと違う環境と緊張から、全身で絶頂を迎え、ペニスに填められていたコンドームに精液が一気にたまる。
 だが守屋の腰は止まらず、素早い挿入を繰り返す。
「ひぁあ゛ッ! あ゛っ! あ゛っ! あ゛っ! いってるうぅってっ!」
 絶頂をしているのに、まだまだ追い詰められ、快楽から苦しいくらいの快楽を与えられ、三木は涙を浮かべて守屋に訴える。
「お○んちん……いやあぁあっ! ああっ! あああぁあ! んぁああっ!」
 この追い上げ方は、三木はマズイと思った。このまま続けられると、違うものが出る。そういう感覚だ。
「だめっだめっ! だめぇえええああああぁあああっ!」
 三木がそう叫んだ瞬間、三木は潮を吹いていた。
 コンドームの中にそれがたまった。幸い、沢山はでなかったのでコンドームで受け止められた。
 次の瞬間、守屋が達したのか、うめき声を上げて腰の動きが止まった。
 そして守屋のペニスが抜けると、三木はぐったりと床に倒れた。
 そこで守屋はやっと三木が潮を吹いたことに気付いた。
「あー、本格的なのじゃなくて良かった」
 そう呟いたのだが、それは三木には聞こえない。
 雨の音がさっきから酷く、周りの音が雨音と雷鳴だけだ。
 守屋は自分のコンドームを外して縛ってしまうと、三木のコンドームも外してやった。だが、守屋はそうしてやったのにも関わらず、三木を仰向けにすると、三木のペニスに口を寄せて吸い付いたのだ。
「……ああっ! ああああぁぁあっ!」
 萎えているはずの三木のペニスが、守屋の舌や口によって高められていく。あれだけ達したのだから勃起はしないと思ったのだが、昨日してなかったのが大きかったのか、守屋の口で扱かれているうちにすぐに勃起をした。
「ああぁあっああっん……いくっいくっ」
 ペニス全体を舐めあげられ、三木は体を震わせて達した。守屋はそれを口で受け、三木の精液をゴクリと飲んだ。
「はぁ……はぁ……ん、もう……お前、強引だって……」
 三木がそう言った時には、外の雨は止み、雷鳴は遠い空で鳴っていた。
 二人はそれに気付いて、急いで服を着て、コンドームなどもすべて拾い集め、持っていたビニール袋に入れ、神社の中を綺麗にしてから、人がいないのを確認して社から出た。
 すっかり雨は上がり、どす黒かった雲は遠くの空になっており、青空が顔を出していた。三木が時計を見てため息を漏らす。
 雨が降ってから一時間ほどだ。神社の中に入ってから三十分くらいはセックスをしていたわけだ。
 三木は、ハッとして振り返り、神社の神様に向かって謝った。
「申し訳ありません。もうしません」
 そう謝っている三木を守屋は不思議そうに見て言った。
「本当に神様がいるなら、やってる最中に俺らに何かあっただろ?」
「うるさい。気分の問題でもあるんだ」
「そういうもんか?」
「そうなの!」
 三木はそう言うと神社を出た。そして振り返って言った。
「電車に乗るの疲れたから、お前のおごりで会社までタクシーな!」
「マジかよ」
 守屋はそれを聞いて、少しだけしくじったかなと思ったが、続けて三木が守屋の横に来て言った。
「それでそのままラブホテルに行くぞ」
 その言葉に守屋は機嫌を良くして頷いた。
 遠くの空では尚も雷鳴が鳴っている。

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