情炎

1

 その日は、特に何かあるわけではない日だった。
 世間様では五月の連休が終わったところで、テレビや新聞も日常的なものになっている。そんな中、鏑木(かぶらぎ)は、やっと取れた休みを満喫するわけでもなかった。
 朝から何か嫌な気分がして、落ち着かなかったのだ。
 それがどういうことなのか分からないが、妙な胸騒ぎがして仕方がなかった。
 その日の予定はなかったし、出かけて何かあっても嫌だなと思いながら、携帯の確認をした。昨日は疲れて寝ていたので、全て放置して寝ることに専念した。
 充電器に置いたままの携帯を取ると、赤いランプが光っていた。何か着信していたらしく、慌てて携帯のロックを外して中を見ると、ショートメールが届いていた。友人の林など、数人を繋がっているため、鏑木も彼らと共通の話題で盛り上がる時に仲間内で使っているルームへの着信であった。
 それを開いてみると、衝撃的な言葉が書かれていた。
 ――――――叶内(かなうち)、死んだってな。
 その書き込まれた言葉に、鏑木は目を見開いた。
 叶内とは、高校時代の友人の一人で、林たちとも付き合いがあった。クラスメイトでもあったし、大学に入ってからは、帰省した時には食事したり、飲みに出かけたりもした仲間の一人である。
 ただ、携帯でのやりとりは誰とも何故かしていなかった。
 本人の弁によると、家族の意向で持たせて貰えないのだという。大学時代もバイトをさせてもらえず、結局、人伝いにしか連絡は取れなかった。林達も上京していたから、地元に残った叶内は、次第にグループからは離れてしまっていた。
 だから、その名前を見て少しだけ驚いた。
 静かな人だったという印象だ。友達の騒ぎを一緒に騒ぐのではなく、静かに側で笑っているだけだった。そんな叶内であるが、勉強はできたし、運動もできた。しかし高校の終わりに心臓を痛めたと聞いた。
 元々、心臓が悪かったらしいが、激しくなければ運動もできたはずだったのだが、それもできなくなり、心配した家族が束縛をしたようだった。
 叶内を自宅から呼び出すと、その家族に嫌な顔をされた記憶がある。
 そんな叶内が死んだというのだ。
 やはり持病の心臓の関係なのだろうか。
 そう思って書き込まれた内容を読んでいくと、仲間内でその噂話になっていた。
――――――自殺だって。
 ――――――聞いた。心臓も限界だったらしいって。手術も移植以外にないって。
 ――――――葬式も密葬みたいにしたらしくて、他のクラスメイトもたまたま寺の息子に話を聞いて知ったって言っていた。
――――――俺等も知らされてないから、皆驚いていた。俺等のグループにいたじゃん、あいつ。だから連絡ないのが意外だって。でも俺等、あの家族に嫌われてたじゃん。連絡なんてくるわけないって。
 ――――――そうだよな、鏑木くらいしか、実家に入れて貰えなかったもんな。そういや。
 ――――――そうそう、でも鏑木にすら連絡がなかったようだし。というか、何かあったんなら、鏑木が黙ってる必要ないしな。
 ――――――おーい、鏑木~。
 ――――――多分寝てるって。あいつ連休に休みがない仕事だったし、今頃、やっとの休みで死んだように寝てるっての。
 ――――――そっか。まあ、鏑木。こういうことだから、なんかあったら知らせてな。
 ――――――おやすみ~。
 ――――――またな。
 そうして話は終わっていた。
 叶内が死んだのは本当であるが、皆、地元に住んでいる他のクラスメイトに話を聞いたという。
 前に叶内に会ったのは、去年の大晦日だった。
 正月に帰れないから年末に帰省をしていた時に、実家に叶内が尋ねてきたのだ。
 部屋に入れて、小さな鍋を母親が用意してくれて、二人で食べたのだ。
 特に酒を飲むわけでもなく、黙々と鍋を突いて食べ、最近どうだ?と普通の会話をした。
 叶内は実家の不動産業の会計を手伝い、躰の負担を少なくしていると言っていた。心臓の様子も落ち着いていて、無理をしなければ普通に暮らせていると。だが、結婚などは相手に負担を掛けるのでするつもりはないし、子供を望めない。生きるだけで精一杯だと少し苦笑していた。
 その日は、そういう話をして、暫くすると叶内の実家の人間が叶内を迎えに来た。
 ――――――もうよろしいでしょう?
 叶内を迎えに来た男がそう言った。
 叶内はそれを聞いて少し笑った。
 ――――――ああ、そうだね。もういいよ。十分だ。
 それが叶内の答えだった。
 ――――――じゃあ、さよなら。鏑木。よいお年を。
 叶内がそう言った。それに鏑木は。
 ――――――よいお年を。あ、どうせ言えないから先に行っておく。あけましておめでとうってな。またな!
 叶内はそれに笑って手を振って、車に乗り込んで去っていった。
 それから叶内には一度も会ってないし、話をしていない。
 その日からたった半年だ。
 社会人になると、それくらい普通に友人に会わないこともある。まして地元にいる友人ともなれば、一年なんてあっという間である。
 だが、叶内は自殺をした。
 どういう状況だったのか分からないが、自殺だったのだ。
 心臓が悪化していたのは、年末には分かっていたのだろうか。それでわざわざ鏑木を尋ねて、実家まで来たのだろうか。そうとしか思えないほど、あの時の叶内の静かな笑みに何かある気がした。
 叶内を迎えに来た男が言っていた言葉は、もしかして別れの挨拶をしたのかという問いだったのだろうか。そう思えてならない。 
 だから、さよならという言葉はそういう意味だったのかもしれない。
 叶内と別れるときに、さよならなんて言ったことはない。ただいつも、またなと言っていたからだ。
 心臓移植もそう簡単にできるわけではない。順番を待っている間に死んでしまうことの方が多いという。
 ふと携帯から目を離して、テーブルの上を見ると、新聞に混じって、郵便受けから取ってきたダイレクトメールの間に、古風な白い封筒を見つけた。
 拾い上げてみると、裏には叶内の文字があった。
 しかし叶内の家族、妹の名前であった。
 ――――――ああ、連絡はくれたのか。
 そう思って封を切ると、中には三枚ほどの紙が入っていた。
 そこには妹の勝手で手紙を書いたこと、兄の叶内の手術が間に合わないほどに躰調が悪化したこと、年末にお邪魔をしたのは、兄の我が儘で、お別れを言いに行ったこと。様々な想いが篭もっていた。
 そして自殺。
 とうとう発作を起こし、次の発作で死ぬことが分かってしまった時、兄は自分の意志で死を選んだと書いてあった。
 病室で首を吊って自殺をした。死んだのは、一月の年が明けてすぐだったらしい。
 そして、心臓以外の丈夫な臓器は他人に移植されたという。それが遺書に書いてあった意志だったので、家族が叶えた。せめて、丈夫な臓器だけでも生きていてほしかったからと書いてある。その気持ちは分からないでもない。
 だが、そこからが問題だった。
 ――――――兄は、臓器を移植された人に成り代わって生き返ってくるつもりがある。
 そう遺書を書いていたらしい。
 何を言ってるんだかと思ったが、妹は本気でそれを怖がっている。
 どうやら、その時の叶内の様子が、まさに狂気をはらんでいたらしく、早く生まれ変わりたいから自殺したというのだ。
 それも、叶内は、鏑木に会うためだけにだ。
 ――――――兄は、鏑木さんを愛していました。友人としてだけではなく、人としてそして男として。その執着は酷く、呪いにも近いものでした。
 叶内の生への執着の一つの理由が、鏑木だと言うのだ。
「死んだのに、何言ってんだ……」
 やっと声に出た。
 その時だった。
 タイミングがよく家のチャイムが鳴った。
 ビクリとして、思わず携帯を落としてしまったのだが、チャイムは何回も鳴った。
 どうやら、誰かがオートロックの前でチャイムを押しているらしい。それに気付いて、慌てて手紙を置いてインターホンに出る。
『お荷物です』
 対応したインターホンには男の人が立っている。箱を持っているのが見えた。
「はい、今開けます」
 そう答えてロックを外す。
 どうやら宅配便が来たようだ。何か注文した覚えはないので、母親辺りが送ってきたのだろう。
 一分ほどして玄関のチャイムが鳴った。
「……はーい」
 すぐに玄関を開けると、さっきのインターホンに出た男が立っている。百八十センチはあり、大きな躰をした男。鏑木よりも身長が十センチは違い、躰の大きさも違う。
 宅配された荷物は大きな荷物なので、玄関に入って貰い、廊下に上げて貰う。
「サイン、お願いします」
 受取票にサインをお願いされ、ペンと一緒に受け取って壁に向かってサインをし始めた時だった。
 玄関のドアがガチャッと閉まり、宅配便の男が玄関に鍵をかけ、チェーンをしている。
「……なに、して」
 と、言いかけてハッとする。
 男が笑っている。
「鏑木……やっと見つけた」
 宅配の男はそう言って、いきなり鏑木に襲いかかった。
 鏑木は声を出す暇もなく、男に押しつぶされる。
「……っ!!」
 床に躰をぶつけられ、受け身を取らなかったせいで、一瞬だけ記憶が飛んだ。


2

 次にハッとして意識を持った時は、男が鏑木の躰に跨がっている。
「凄いぞ、鏑木……こんなことあるんだな」
 男がうわごとのようにそう言い出した。
「な、何なんだ!」
 訳が分からず、鏑木が叫ぶと、男は一瞬キョトンとした後に、一人で納得したように笑った。
「ああ、ああ、ごめん。これじゃ分からないよな。俺だよ俺。叶内」
 そう男が言った。
「……は?」
 何を言っているのだ。この男は。
 叶内は死んだ友人の名前だ。それもさっき死んだことを知ったばかりなのに、人を襲うのにその名前を使うなんて。
 だが、ふっとさっきの手紙を思い出す。叶内の妹が懸念していた、叶内がドナーを乗っ取って帰ってくるという話だ。
「だから、生きたいって願っていたら、生き返った。臓器の方に取り憑こうと思ってたけど、本当にできた」
「なに、言って……」
「俺だって叶内。心臓悪くて自殺した叶内。あーもういっか、そういうの」
 叶内はそう説明をしてきたが、妹が言っていた内容そのものである。この宅配便の男が本当に臓器移植を受けていたとしたら、叶内は本当に奇跡の復活をしたことになる。
 だが、復活してまでして、叶内は鏑木を床に押し倒して、何をしようというのだろうか。
 叶内は圧倒的な男の力を使って鏑木の両腕を、持っていたガムテープで何十にも巻いて拘束しようとしている。
「や……めろっ! 何やってんだ!」
 素早く後ろ手に拘束をしてしまうと、ワイシャツを一気にボタンごと引き裂く。そしてズボンに手をかけた。
「なにやってんだ! やめろ! 叶内!」
 後ろ手に拘束されたままでも、足で叶内の躰を蹴り、全身を使って起き上がって逃げようとする鏑木。男としても、一般人のヒョロッとした痩せ形の鏑木と、ラグビーでもしていそうなほど、躰を耐えている人間とでは、病み上がりであってもリハビリを真剣にやってきた叶内のドナーの方が強かった。
 逃げようとして前進する鏑木と、押さえつけようとする叶内との力で、鏑木のズボンが下着ごとはぎ取られるように脱げた。
 その拍子に鏑木は床に顔面を打ち付けて倒れ、目から火花が出る。
「……っ!」
 叶内は素早く鏑木を押さえ、鏑木のペニスを手でギュッと握った。
「ひっ……!」
「これ以上、暴れると、潰すよ?」
 叶内がそういいながら、鏑木のペニスを少し強く握ってくる。
「……ひっ……くっ」
 さすがに本気で潰すとは思えないが、今の叶内が何を考えているのか分からない以上、本当に潰される可能性もある。だから鏑木は躰を硬直させた。
「大丈夫、気持ち良くなるだけだから。そのためにたくさん調べたんだ。こうやってな」
 そう言って叶内は鏑木の腰を掴むと、尻を高く上げた。
「ひっ……あっ……な、なに!?」
 その高く上げた尻のアナルに、ザラリとした感触があった。
「んぁあああッ!! いやっいやぁああ!!」
叶内の舌でアナルを舐められているのだと分かったのは、何度もその感触が与えられてからだ。
「ゃめ…ッうぅ、気持ち悪ィ……っ」
 鏑木は抵抗しようとするが、叶内に握られている自分のペニスが、抵抗を見せるごとに強く握られているのに気付いて、それに耐えるしかなかった。
「んひぃ……っ、あ、あぁっ……」
 ピシャピシャと音が鳴るほど、涎を垂らしながら叶内は、鏑木のアナルの襞を舐め、指で広げて、開いた孔の中にまで舌を潜り込ませた。
「はっあ! ぁ、やあぁ……っやめ、いやあぁ……っ」
 今まで感じたことすらない奇妙な感覚に、鏑木は戸惑った。くすぐったい気持ちから、何か熱いモノが腰に抜けてくるのだ。
「や、ぁ、あっ! や、め、……っだ、あ、ぁ、あっあっあっ!」
 舌を立てたまま叶内は、アナルに舌を出たり入ったりを繰り返し、柔らかくなってくると、今度は涎で濡らした指を進入させた。
「いや、だ…っ! ゃだぁああっ!」
 舌よりも固いモノが中に入り込み、それが舌よりも奥まで掻き広げていく。
 ヌチャヌチャと粘り気のある液体の音が響き、更にはそこにもっと粘り気のあるものが足された。
「んぁあぁっあっ……いやっ……いやぁああ!!」
 進入した指は二本に増え、それが鏑木のいいところに当たった。
「ひうんっ……!!」
 ビクンと鏑木の躰が跳ねたのを見た叶内が言った。
「ここなんだね。ここほら」
 そこを弄られると、また鏑木の躰が跳ねた。
「ひぁあああんッ!! やめっ……やめ……ろっ……あんっあっあっ!!」
 耐えるために口を閉じて我慢していたが、怒鳴った瞬間に口を開いたために、口が開きっぱなしになり、そこからは甘い声が漏れた。
 それが自分の声だと鏑木は認識できず、更に嬌声に似た声が、息とともに上がっていく。
「ぅあん…ひっ、ひぁ…あっあぁっ、あっ、あっ、あはんっ」
 叶内はリズム良く、指を深く奥まで突き入れ、足した液体が滑りを良くして、グボグボと大きな音を立てながら、ズンズンと鏑木を追い立てていく。
「ぁあっ、はっ、はァっ! んぁっ、も、ぁ、あんっ、あんっ! あぐ、ぅ…っや、だぁ…っ!」
 そう叫んでも、前立腺を弄られると男は嫌でも勃起する。鏑木のペニスかすっかり起ち上がり、先端から白い液体を滴らせている。それが床に落ちて、糸を引き、小さな水たまりを作っている。
「ぁぐぅう…っんひ、ぁはっ、はぁんッ! んぁっあっ」
 どんどんと叶内は鏑木を追い立てていき、とうとう鏑木のペニスは限界を迎えた。
「嫌だぁあ! やめろ、やめろぉお…ああぁあぁ――っっ!」
 そう叫んだ瞬間に、鏑木は達していた。
「ひ、やぁ…あ…っ」
達っして弛緩した鏑木の躰を、叶内は抱きしめ、反り起った自分のペニスを、さっきまで舐めていたアナルに突き入れた。
「……んぁああッ…! やだッ…やめろ、やだぁあ…っ!」
 すっかり油断していた鏑木は、あっさりと叶内を受け入れてしまった。ミチミチと少し大きな叶内のペニスが、鏑木の内壁を押し開き、一番奥まで入り込んでいる。
「あー……気持ちいい……鏑木の中、凄い熱い」
鏑木の腰をしっかりと掴んで腰を入れた叶内から、鏑木が逃げようとするのだが、腰を捕まれているため、足をバタバタとしているだけになってしまった。
「ぃ、いやぁあッ!」
 自分の中に叶内がいる。それも受け入れる場所ではないところで、大きなペニスを受け入れている。それがどんなに屈辱なことなのか、叶内には分かっているのだろうか。
 しかし、叶内はこれを鏑木とするために戻ってきたのだと知らしめている。


3

「動くよ……ああ、いい」
「んんっあぁあっ!」
 叶内が腰を使って、出し入れを開始した。
 ヌチャヌチャッと音が大きく響いている。
二人の息がはあはあっと荒くなり、更には鏑木の嬌声までも響いている。
「あっ! あぁッ! あぁあっ!」
 奥まで突かれるたびに鏑木の口からは嬌声が漏れ、もはや閉じることすらできない。
「ああ、いい。やっぱり、鏑木の中は最高だ」
「あぁあんっあんっあぁんっ!」
叶内がうわごとのように何度も繰り返しそう言う。それに対して鏑木は怒りが沸くのだが、それとは裏腹に躰がそれを快楽だと認識してしまう。
 頭の奥で、これは強姦なのだ。嫌なことなのだと思っていても、躰がいいやこれは快楽だと言ってくる。
 もうどっちが正しいのか分からない。
 そもそもこの男が本当に叶内なのかさえも分からない。
 怖いストーカーが、そういう言い訳を使って近づいてきただけかもしれない。前から狙われていたのかもしれない。そしてそいつが叶内を利用しているだけなのかもしれない。
 様々な可能性があるのだが、それでも叶内が言う言葉が、それらの可能性をどんどん打ち消していく。
「ずっと好きだったんだ」
「ぅあ…あ、ぁっ…」
「心臓が悪くなって、全部諦めたけど、鏑木のことは諦めきれなかった」
「ふぁっ、ぁっ、あぁん! あぁっ!」
「最後に会った後、俺は生き返る方法を探した。臓器に思いを乗せれば、たまに元の持ち主の記憶を持つことがあるって読んで、それに賭けた」
「…っ、ぃ、い…ッ」
 叶内はそう打ち明けてくる。
 叶内が心臓が悪いことは知れたけれど、臓器に思いを乗せてという部分は、叶内は妹にしか話してないことだった。誰も知らないことで、それはこの男の中にいるのが叶内だと言っているのと同等のことだった。
「好きだった。好きなんだ。愛してるんだ」
 叶内はそう言うと、一層激しく腰を打ち付けてきた。
「ふぁッ、あふんっ、ふ、んんぅっ…ぅあんッ、あッあッ、だ、め…ッ」
 こんなことの為に生き返ったのか。こんなことをするために自分の前に現れたのかと、鏑木は悲しくなった。
 しかし目からは涙が溢れていたのだが、それが悲しみによるものか、それとも気持ちよさで流れているものなのか、判断が付かなくなった。
「ぁ…ッだめ、だめ…ッ! 嫌っ…嫌ァああッ!!」
 どんどん躰が高められていき、鏑木はまた自分が射精をしたいと思っていることに気付いた。
「出して、どんどん出して……鏑木、達って!」
「あぁあッ! 嫌ぁあっ! いやぁっ!」
 もう射精するしかない状態にされた時に叶内が言った。
「俺も出すから、鏑木の中にぶちまけてやるから、受け止めて!」
「ひッぃ…っ嫌ぁ…ッ!」
「ッはっあッ!」
「ぁあ…いや…嫌ぁ…っ! 許して…っあぁぁああ――――っ!!」
 叶内が腰を強く打ち付けてから、奥深くに射精をした。その感触を受けて、鏑木もまた達した。
 精液がビシャリと床に巻散らかされ、鏑木の奥から逆流してきた叶内の精液が、まだペニスで蓋をしている状態なのに、横から溢れて吹き出した。
「ああ……気持ちがいい……、鏑木も一緒に達ったよね? 気持ちよかったよな……まだ勃起したままだから、まだまだやろうね」
「……ひっぃい……いやだぁ!!」
 終わったわけではないと、鏑木が腰を進めようとする。それから必死に鏑木が逃げようとすると、鏑木のアナルからペニスが抜けた。
「はひ……っひぁあぁっ! ゃあぁっ!」
ペニスが抜ける感覚に、達したばかりの躰が痙攣をしていたせいで、余計に感じてしまい、鏑木は自分でも分からないまま、また達していた。
「また達ったの? 随分、好き者だったみたいだね、鏑木は」
 そう叶内が言うと、腰が抜けたようになっている鏑木の腰を掴んで、また引き寄せ、今度は仰向けにすると、鏑木の足を大きく開いてから、アナルにペニスを突き入れた。
「やめてくれ…っ、ぁ、あひぃ…ッ! いっ、ぃんッ…! んはぁ…っ!」
 すっかり叶内のペニスに翻弄されていた鏑木は、それをあっさりと再度受け入れ、全身を揺らしながら、叶内を感じることになった。
 叶内は腰を使いながらも、器用に鏑木の乳首に口を伸ばし、乳首を吸いながら腰を打ち付けている。
「はぁっ、はぁあんっ! 、ぁ、は、あっあっやっ」
 感じないはずの乳首を吸われた瞬間、躰が跳ねた。
 そんなはずはないと思っていても、躰中がそれを喜んで受け入れている。
「凄い、乳首も美味しいなんて……ふんむ」
「だめっ、もっ、あっ、ああっ んあ……っあぁああーっ!!」
叶内は唇全体で吸い付き、舌で乳首を転がしながら、時折それを噛んで乳頭を舐め、さらには噛んだまま引っ張る。
「ふ、ぁっ……ぁっ、まっ、待てっん、やめっ……あ、ぁんっ、そ、そんなっ…!」
 信じられないことに、乳首を噛んだまま引っ張られて、それだけで鏑木は達していた。精液が自分の腹部にかかり、滴り落ちる。
「んは…はぁ…っは、ふッ…」
 叶内の腰は止まってはいない。ペニスの挿入は何度も繰り返され、鏑木はそこが気持ちがいいと思うようになっていた。
「ひぁっ! ぁっぁっ、だ、めぇえっ!」
「気持ちいいんでしょ、鏑木?」
「ひぅ……っう、ぁっ、あっ、あぁっ、ひっ、ぃんっ……やっ……だめっ……!」
「いいんだ。いいんだよね、こんなに締め付けてっんんっ!!」
「いやあああッ! ひぅ、や、やめて…っ、やめてぇえ!」
 叶内は射精をしながらも、まだ腰を使い続けた。
吐き出した精液が掻き出され、それが更に音を立て、ビシャビシャぬちゃぬちゃと激しく聞こえた。
「あっ、はぁんッ、あああっ! あぁっ…ああんっ! ゃ、ああ…っ」
 知らない男が自分にのし掛かり、アナルにペニスを突っ込んで、それで自分が喘いでいる。こんな状況が理解できずに、鏑木はただただ嬌声を上げるしかなかった。
「気持ちいいっていって、そしたらやめるから」
「ぁん…っ きもちぃ…っ、あっ……、ん…っ、きもちぃ…っ」
「本当に? これが気持ちいいとか変態なの? ふっふっ」
 叶内のペニスがまた大きく膨らみ、堅さが更に増した。
「やっん!あっ! すご…っ、ゃ、いやっ…あぁっ、きもちぃ…──っ!」
 それは鏑木の本心だった。
それを証明するように、鏑木も腰を振った。
「気持ちいぃ…っぁ、あぁあ! や、ぁ、あ……っ あぁ、あん、イかせて……、も、イかせて……っ! あぁっ……いいっいいっ!」
「これからもずっと一緒にいようね?」
 叶内はそう言い、鏑木にキスをした。
「んんぅ! んん──っ!」
 キスをしながらの挿入は、ことさら気持ちが良かったという感想を鏑木は持った。鏑木は自分で足を持ち広げ、叶内は開いた手で鏑木の乳首を摘まんだり、捏ねたりした。
「んっくぅ…ん…!」
 いろんなところを攻められて、鏑木の中の常識は全て壊れたと言ってよかった。
 叶内がこんなに求めているなら、仕方がない。
 そういう風に考え始めたのだ。
 実際、叶内のペニスは気持ち良かったし、乳首も口内を舐められても感じることができた。
 最後の方はもう達しているのかいないのか分からないほど、躰が震え続け、痙攣をしっぱなしであった。
「あっ、んっ、んっ、ぁ、ちんちん、もっと……あっ! あっ! ぁっ、んっ、――っ!!」
 鏑木は全身を震わせ、絶頂を迎えた。
 鏑木の震える躰を抱き留め、叶内は満足したように微笑んでいる。
 これで叶内の目的は叶えてやった。そう鏑木は思った。


4

 けれど叶内は言った。
「もっと、このちんちん、あげるよ。まだたくさんあるからね?」
 そう叶内が言いながら起ち上がり、玄関の鍵を開けた。
 するとそこには、二人ほど男が立っていた。
 どちらも知り合いでもなく、見たことはない男性。叶内と同じように躰が屈強な男である。
「やあ、鏑木。久しぶり」
 二人はズカズカと部屋の中に入ってきて、すぐに服を脱ぎだした。
「勝手に始めるなって言ったじゃん」
「いいじゃん、見つけたの俺」
「俺って俺じゃんね?」
 三人はそう言う。
「臓器移植の人間、みーんな、俺になっちゃったんだ」
叶内たちがそう言った。
「……え?」
 叶内は心臓以外の臓器を全て移植したという。当然角膜や様々ものがいろんな人の中で生きているのだという。
 重度の移植をした人は、さすがにまだ入院をしたり通院で忙しいのだが、角膜や軽い移植の場合は、全員が叶内として自覚して、集まって話し合っていたというのだ。
「凄いでしょ、俺。でもまさか何人も俺になるとは思わなかったんだけどね」
「……え? ……え?」
 こんな調子で、まだ他にも叶内がいると思われる。
 だが当の本人達はさほど気にした様子はなく、お互い意気投合しているようだった。
 その三人が、鏑木を見下ろしている。
 その目は真剣でありながら、少し茶目っ気を出している。さすがにここまで抵抗なくいる鏑木に満足しているかのようだった。
 そのうちの一人が動いた。
「いいね、このエロい感じ、じゃお邪魔します」
 新しく来た叶内が、早速鏑木を押し倒し、反り起った凶悪なペニスを即挿入した。
「やっ、あっ、まっ、あっ、やっやっ、あっ……あぁっ……!」
 もう一人は鏑木の顔の前にペニスを差し出し。
「ね、舐めて」
 と言いながら、鏑木の口の中にペニスを突っ込んだ。
「んんっ、んふっ……んぅ、ん、んっんっ!」
 鏑木は訳も分からないまま、叶内のペニスを口に咥えて舐めた。
 もう考えれば考えるだけ訳が分からない。
 叶内が三人? しかもまだ叶内は存在すると言われた。
 三人だけではなく、それ以上が、こうして鏑木を抱きたいと思っているということなのだという。
 恐ろしい事実であるが、それと同時に、もう叶内は苦しくないんだなと、少しだけ鏑木はホッとした。
もう苦しんで息をしたり、悲しそうな顔をして人を見たりしないのだ。
 もうあんな苦しいことから解放されているのだ。
そう思ったら、鏑木はこの状況を受け入れることにした。
 否定するには、余りに異常で、鏑木は理解できないから、考えることを放棄したと言ってもいい。
「ああ、鏑木の口の中、蕩ける~」
「こっちもすげえよ。とろっとろなのに、締め付けてくる、くっああっいい」
「んんぅ…! んふ…っふぅ、っん…!」
 知らない男三人を、鏑木は叶内だと信じて、そのまま陵辱されるままになった。
「あぁああっ! っあ、はふっ……ん、はぁあん! んあ……っ、あぁあ…っ!」
一人に抱きついて、後ろからグングンと犯され、アナルは既に性器に変わっていた。凶悪なペニスで擦られると、気持ち良くて仕方がない。
「ぅあっ…あぁあ…ッ! ゃ、ああ…っ」
 気持ちよさそうに喘ぐと、皆が優しくキスをしてくれる。
 乳首を吸ったり、弾いたり、鏑木のペニスを咥えて扱いてくれたりと、既に3Pと言われる状態であるが、鏑木はそれを受け入れ、与えられるがままに従った。
気持ち良くてもうどうでもいいのだ。
 男同士のセックスがここまで気持ちがいいものだなんて、誰も教えてくれなかった。気持ち良すぎて、癖になりそうなほど全身で感じるのが、心地よくて辞められない。
 どんどんおかしくなるくらいに、攻めてほしいと、鏑木は心から思っていた。
「ひゃああっ! やめ、おかひ、おかひくなるぅう……あっあっんんぁ!」
「おかしくなっても大丈夫だよ」
「そうそう、俺等がずーっと、鏑木の側にいてあげるからね」
「そうだよ、ずーっとこうしていようね」
「ぃあっ! あぁんっ! ん、んくっ、く、ぅうん……っ! っあ、あぁああっ! ぃあああッ! はぁっ、はぁッ、あっあぁぁああ――――――!!」
 精液が出ない、ドライオーガズムを迎えて、鏑木の試練は、今日のところは終わった。

 その後、三人の叶内は鏑木と同居するための家を用意し、鏑木を強制的に引っ越しさせ、毎日セックス三昧をしている。
「ぁあっ……あっ……あっ……きもちぃっ、きもちぃよぉ…っ!」
 腰を振る叶内は、鏑木が求める以上に、鏑木を求めた。それはどの叶内も同じで、鏑木を見つけると、発情した犬のように襲ってくる。
「あふっ……あ、ぁあ……っ、もっと……あああっ、あぁん……っ、ん、ぅ……もっとぉ……っ!」
 どの叶内とも鏑木はセックスをしていた。
 全員が叶内なのだから、外見だけで区別するわけにもいかなかったからだ。
 全員の中身が叶内であることの証明が、日に日に強くなっていくことで、鏑木は全員の叶内として接しているうちに、だんだん拒否できなくなっていった。
 最後は、もう特異な状態だから仕方ないと諦めを付け、三人と+数人の叶内を全て受け入れることになった。
 だから叶内が五人以上いる状態で相手をする時もあるが、それはそれで叶内たちは気を遣ってくれたから、鏑木は拒むことはなくなった。
「俺のペニスは気持ちいいか……んっん……鏑木……っは」
「あぁああっ……ああぁあ…っ! ち○こ……奥まで……っ奥まで……来てるっ……奥っ……あぁあっ! ち○こ、きもちっいいっ、きもちぃ…い──っ!」
「ううっ鏑木……愛してるぞ……うんんっ!」
 叶内が鏑木の中で達すると、一気にペニスを抜いた。
ゴボリと精液が溢れでているが、それを気にせずに後ろで待っていた次の叶内がペニスを挿入する。違った形であるが、この叶内のペニスが一番大きかった。最初に鏑木を襲った叶内だ。
「あっ、はぁんっ、あぁあっ! あぁっ……ああんっ! ゃ、あぁ……っ」
「鏑木……愛してるよ」
「ひゃあぁっ! あぁっあぁっ! あっあっきもちぃい……っ!」
 高速でピストンされ、鏑木はまた達する。
「ひゃぁああああーっ!」
その鏑木の吐き出す精液を、別の叶内が口で受け止めた。そのまま絶頂した鏑木のペニスを咥えて掃除を始める。
「ああぁああ――っ! やぁあーっ!」
 空イキして、また絶頂を迎えるも、当然、まだまだ許しては貰えない。
「鏑木、素敵だよ」
 叶内たちが満足したように微笑んでいる。
 それに鏑木も微笑んだ。

 ――――――ああ、愛しているよ叶内たち。

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