R18novel短編

フラストレーション-2

 翌週に、小高をやっと捕まえDVDを返すと、小高は。
「分かったか?」
 と言う。
「分かったけど……どうすんだ?」
「あの教師、生徒に手を出していることを奥さんに勘付かれて、家庭内で大もめ中なんだって。だから、そのうち学校内にももめ事が起こるだろうから、俺のモノだけ抜き取りたかったんだ」
 小高はそう言う。被害者として知られるのが嫌なのか、それともあんなことをしていたことを知られるのが怖いのかと思ったが小高は違うと言う。
「俺も楽しんでいたからね。最初こそレイプだったが、俺は元々ホモで経験をして見たかったのもあったから、教師からの脅しは願ったり叶ったりだった」
 と暴露をした。
 石神はさすがにそれには呆れた顔をしてしまう。
「いいじゃん、やりたい年頃だけど、大人は怖いんだよ。見ず知らずの人間に体を簡単に預けられるか」
 小高はそう言う。だから教師とのことは、バレればもちろん問題だが、教師の方が小高以上にバレたくはないだろうと思っていたという。一昨年結婚して、子供が生まれという順調そうな教師である。勤続十年以上、順風満帆で生徒からも慕われている。
 だから小高は性の欲求不満のために教師を利用したのだという。
 だが小高がDVDとして映像が残っていることに気付いたのは、関係を続けて二年経ってからだ。一人の生徒が録画を消して欲しいと言って教師と揉めているところを小高が偶然出くわしたことからだ。
 映像なんて残されては困る。こっちはこっちで思い出にして終わらせようとしているというのに、後に何かで脅されそうなネタを残しておくことはできなかった。
 さらにはその生徒の行動で、教師の妻が生徒に何かしているだろうと気づいた。普段からおかしいと思っていたのか、元から疑いがあったのか。とにかく、石神が用事を頼まされた日に家族での話し合いになっていたらしい。
 ここまでは分かったのだが、その後は夏休みがきてしまい、石神には状況はまったく分からないままの一ヶ月弱の日数が過ぎた。

 夏が終わった後、始業式の時に、その教師が解雇されたことが生徒の噂になっていた。 生徒に手を出していたことが問題になったのだ。なんでもその録画映像を理科室に隠していたのを教頭が教師の妻に言われて探した結果見つかったという。
 教師達は隠したかったらしいが、何処かで新聞社が嗅ぎつけ、小さなニュースになった。小さなニュース扱いだったのは、その同時期に、有名な俳優が覚醒剤で捕まったり、政界で失言による大問題が起こったりとニュースに事欠かなかったからだ。
「あれから、俺のだけ抜いて、他のDVDは全部分かりやすいところに置いておいたから、教頭は簡単に見つけられたんじゃないかな?」
 小高はことの顛末をそう話し出した。
 教師がいなくなって一週間、ずっと休んでいた小高がやっと登校をしてきた。見つけて話を聞こうとしたら、小高から呼び出しを食らった。
 そうして屋上に上がり、下校している生徒や部活をしている生徒を見ながらの報告である。
「実はさ、そのDVDが見つかって、俺のだけないことを教師が知って、バラしたのは俺じゃないかって殴り込んできてさ」
 小高がしくじったなあと言う。
「被害者の中に俺がいないことを不思議に思ったらしいんだけど、たまたま両親がいなくて、それで揉めて、近所の人が通報して警察が入っちゃってさ」
「なんかDVD抜いた意味なかったってことか」
「そうでもない。俺ももちろん被害者となったけど、あの教師には被害者を増やしても罪が軽くなるどころか重くなるので、警察でセクハラを受けていたが、あのDVDみたいな被害は受けてないと言って教師とは和解した」
 つまり小高のことで教師が何か言おうものなら、教師の立場が悪くなるだっけなので、教師の弁護士が上手く教師を説得したらしい。
 更に教師の奥さんは離婚はしないといい、弁護士もそれなりに有名な弁護士を用意し、それぞれの被害者と和解しているという。
 それもそのはずで、大半の生徒にとっては昔のこと。すでに済んでしまったできごとで、蒸し返されることによって現在の生活が立ち行かなくなる問題だった。
 それは小高も同じだった。
 DVDに録画されていることは、小高にとっては不利になることが多かったと見える。大体一枚目の映像の時点で、小高は教師を利用してそれなりに楽しくやっていたように見えたからだ。最初こそレイプでもだ。
「何だって教師を利用しようなんて」
「知ってるか? ホモってバレた後に、レイプされる確率はあがるんだ。ほぼホモ仲間からなんだけど、酷い目にあっても泣き寝入りするしかないんだ。俺はまだマシな方さ。レイプはレイプでも、それなりに丁寧に扱ってもらってたようだし、教師の独りよがりではなかったしね。正直、教師と将来どうにかなりたいと思ったわけじゃなくて、今の性欲をどうにかしてくれるなら、ちょっとは大事にしてくれる人の方がよかったわけ」
 小高はそう言う。本心なのだろう。
 例えば、高校で恋人が欲しいと、エッチしたいという気持ちで彼女や彼氏を作る人たちも、将来を見据えているわけではない。その場の性欲や気持ちをその場でどうにかしたいだけなのだ。純粋に結婚や一生を見据えているわけじゃない。
 そんな先のことよりも、今の欲情をどうにかしたかったという小高の理由はそれなりに納得できるものだった。
 実際、そんな小高で抜いた石神であるから、納得するしかない。
「ま、向こうが盗撮魔だとは思わなかったけど。ねぇ見てどうだった?」
 いきなり小高は話を変えてきた。
「どうって……」
「抜いた?」
 わくわくしたように小高が聞いてくる。
「…………馬鹿言ってんじゃねーよ」
 本当はコピーもして気に入ってる箇所もあるということは石神は言わなかった。
 近寄って聞いてくる小高に、石神は慌てて逃げながら悪態を吐いた。
「うるせぇよ。ちょっとみて引いてやめたに決まってるだろ」
 石神がそう言うと、小高は納得したように頷く。
「だよな、さすがに最初はまずかったか……」 
 小高が何故、自分がレイプされている動画を見せたがったのかは分からないが、それなりに石神の性癖を見抜いていたようだった。
 石神はそれに引き摺られまいと、話を戻して言った。
「とにかく、教師は捕まって、小高のことは学校にはバレなかったんだろ」
「まあね、示談したし、学校に報告の義務はないしね」
「よかったじゃん、見通しはちょっと甘かったけどな」
 石神はそう言って、もう話すことはないというように、話を打ち切って屋上から逃げ出した。これで、小高との関係は切れるはずである。小高もこれ以上問題を起こしたくないと思っているのだから、この話はもう終わりだった。
 去って行く石神を見送りながら、小高は返してもらったDVDを眺め、そのDVDを振りながら独り言を呟いた。
「嘘ばっかり。何回も抜いたって顔に書いてあるくせに」
 てっきりこのままこっちのゾーンまで堕ちてくるかと思ったが、意外に意志が固いらしい。だが、そういうところも悪くはないと小高は思っている。
 高校生という年齢のせいで、自分の意志はほぼ殺される。小高もホモであることを家族に打ち明けたせいで、一週間も両親が発狂した。
 母親はショックのあまり離婚を言い出し、父親は信じられないものを見るように、家に帰ってこなくなった。
 こんな現実が小高には残ったのだが、石神に同じところまで堕ちてきてくれと願うのは、少し心が痛い。
 だが、石神が小高に気があるのは、今日見た反応で分かる。きっとあのレイプ動画のせいで、石神の性癖に歪みが生まれたはずだ。
 その歪みが治ることはないだろう。
「あ、コピー持ってる可能性もあるわけだし」
 石神の性癖が小高のレイプ動画にあるのなら、彼はこの動画のコピーを持っているはずである。
 これからの石神のオナニーは、常に小高になり、小高のことは忘れられなくなるだろう。
「第一段階はこんなものでいっか」
 小高はニヤリと笑って、逃げた石神を一旦は逃がしてやることにした。
 そして石神が見えるところで、石神を刺激していく。
 いつか、石神が小高をレイプするように仕向けるために、小高は何でもやってやろうという気になってしまったのだった。