R18novel短編

フラストレーション-3

 大学生になるまで、小高との接点がないまま、石神は受験をして平和に大学生になった。だが、同じ大学に小高がおり、さらには同じ講義を受けている関係で、同じ学校、しかもクラスメイトを全く知らないというわけにはいかなくなってしまう関係になった。
 その原因が友人が被ってしまうということである。
 小高は、大学に入ってすぐにカミングアウトをしてしまい、ゲイであることを公にしていた。周りはそんな人間も結構いた上に、小高には好きな相手がいると噂されていたために、警戒をする人間はいなかった。
 石神はあえて小高に関わることがなく生きていくつもりだったが、問題が一つあった。
 それがあの小高を教師がレイプしている動画だ。
 石神は一人暮らしをするようになり、時間が自由になると、暇を見つけてはその動画を見てはオナニーをする人間になっていた。
 レイプ動画は小高の初めての相手からのアナルセックスと、強制によるセックスと、バイブオナニーという、レイプなのに小高が嫌がっている様子が何一つない動画である。
 罪悪感がそれほど生まれないのも、小高が二回目からの教師とのセックスを望んでいたと言ったからに他ならない。
 だがそんな動画を見ても興奮する人間になった石神は、彼女を作ることさえできず、合コンにも金銭的な理由を付けて断るような人間になっていた。
 そんな石神を熱心に誘う友人達に負けて、一回合コンに参加することになった。
 そんな居酒屋は、合コン相手の実家で、その日は定休日なのを貸し切っての飲み会になってしまった。
 皆が飲み、盛り上がっている中で、次々に人がやってくるのだが、その中に小高がいた。小高は別の友人に連れられてきたようだが、一応石神がいることには気付いていたようだが、触れることなく飲み会を楽しんでいるようだった。
 そんな中、小高と飲んでいた人間が、酔った勢いに任せて小高を押し倒してキスをしている。周りは別のことで盛り上がっていて、二人には気付いてなかったが、石神のところからは見えていた。
「ちょっと……酔っ払い」
「いいだろ小高、もう俺……」
 そう言う相手が小高の太ももに勃起した股間を擦りつけている。
「ちょっと待って、なにして……」
「いいだろ、どうせホモなんだから妊娠しないんだし」
「はぁ? ……ちょっとどけって」
 酔った勢いでのキスなら許すが、本気に腰を振られると、冗談ではない。更に酔っ払いはたちが悪いのだ。散々やった後で覚えてないだのといい、挙げ句こっちが誘惑したと罪をなすりつける。それがレイプでもだ。
 そうしていると、小高の上に乗っていた男の重みが急に消えた。
「え?」
 小高が不思議そうに見上げると、石神が立っていた。
「お前、よりにもよって選んだのがそれかよ」
 石神がそう言い出した。
「何の話だ。何の……。見てて分からなかったよ」
「確かにお前が嫌がってるのは初めてみた。だがそうなるように仕向けていたのも、お前じゃないか」
 さすがに吹っ飛んで行った男が、盛り上がっているところに降ったら皆の動きが止まる。そして仁王立ちし、怒り狂っているような石神と倒れたままの小高を見れば、なんとなく皆が察する。
「とにかく起きろ。出るぞ」
 石神が小高を起こし、荷物を持たせる。石神は先に出ていくのだが、小高は皆が見ているのに気付いて、顔の前で両手を合わせて謝った。
 その出て行く二人を見て、全員が言った。
「いきなり石神は本気だしたのか?」
「小高くんもさ。というかなんであの二人、他人の振りしてんだろうね?」
「好き合ってるの丸わかりなのに。若干分かってなかったのがいますけど」
 そう言われた男は、涙目になりながら叫んだ。
「そうならそうって最初に言って!」


 店を飛び出した二人は、タクシーに乗って移動をした。
 酒を飲むので車はなしであるのは分かるが、電車がある時間帯にタクシーである。
 小高は石神を見るのだが、石神は無言で鬼気迫るものがあった。今までのほぼ付き合いがない状態でいたため、小高には石神が何故そこまで怒っているのか分からない。
 大人しく付いていくと、石神の自宅に辿り着いた。
 玄関を入る石神に付いていってもいいのか分からず、玄関前で立ち止まると、石神が振り返って小高の腕を掴んで玄関に放り込む。
 玄関のドアが音を立てて閉まると、石神は自分は靴を脱いだが、小高にはその暇を与えなかった。
「……っ石神? 靴を脱いでない!」
 小高が慌てたようにそう言うのだが、石神は気にした様子はなく、居間に入り、その隣にある寝室に小高を連れて行くと、ベッドに小高を放り投げた。
「……っ! 石神……お前……」
 何なのだと文句を言おうとしたのだが、起き上がろうとした小高の上に石神が覆い被さってくる。
 真剣な顔をした石神が小高を見ている。
「いし……がみ……?」
 ここまで真面目な顔をして切羽詰まった石神は見たことがない。いつもどことなくやる気がなく、適当に周りに合わせて生きてきているように見えた。
 自分が特殊な性癖を持っていることをひた隠しにしながら。
 一人暮らしになった石神は、その性癖を一人で育ててきていたなど、小高には理解できていなかった。
「誰でもいいなんて言うなら、俺でもいいよな?」
 石神はそう言うと、小高の服を脱がしていく。
「ちょっ、ちょっと石神……冗談は……」
「冗談? ここまで付いてきて何もしないなんて、あり得ないんだろう?」
 小高のことをそう言って黙らせる。石神は小高はあれからも他の人間と寝ていると思っている。だからホモだと知っているのに、家に連れ込む人間に付いてきたのだから、その気はあるんだろうと問うたのだ。
「……お前、俺を抱きたいのか?」
 小高にはそれが重要だった。もちろんそれを期待してきた。ずっとだ。あのDVDを渡した時からずっと、石神が襲ってくれるのを待っていた。
 だが、あれから石神は小高のことを見ようとはしなかった。
 よほど本物のレイプ動画を見て、オナニーをしたことが石神の心を押しとどめてしまったらしい。そう思っていた。
 だが、そうではないのだ。
「セックス好きなんだろう? それもレイプでもいいくらいに」
 小高の質問にも答えず、小高のワイシャツを開けさせ、ベルトを外しズボンも下着も取り去っていく。
 その手際の良さから、ただ酔っているだけの酔っ払いの戯言ではなさそうだ。
 そのちょっとした酔いは、石神の小さな心の隙間を大きく開けた。ここに出てくる言葉は少なくとも石神の本音だ。
「……あっ」
 石神はあのDVDの教師のように、小高の唇にキスをし、顎から首筋を舌で舐めていき、首筋にたくさんのキスマークを残していく。
「ん……ふっあっ」
 執拗に舐めてくる石神の唇や舌に、小高は感じた。
 これはあのレイプの再現なのだ。石神は確実にその影響を受けている。再現をしたくてしているのではなく、酔っている頭の中にあのレイプが浮かんできているのだ。
 やっぱり石神はコピーを持っていた。幾度となく、小高が犯されるのを映像で見て、何度もオナニーをしてきたのだ。
 一人暮らしでたがが外れたのか、家の中では性癖を隠すこともなくなったのだろう。 石神は小高の体中を舐めるように舌を這わせ、乳首に吸い付いた。
 あの覚えてもいないレイプの再現をされ、小高は少し困惑した。
 純粋に抱いてくれたなら、喜んで腰を振れただろうが、自分が覚えてないレイプを再現されても嬉しくはない。けれど、石神がそれを再現することでしか小高を抱けないというなら、石神に抱かれるには、自分がレイプされたことさえ利用しなければ、きっと二度と石神は小高を抱かないだろうと思えた。
 それが分かっているだけに、小高は石神を拒めなかった。
 プックリと勃起していく乳首、もちろんそれは小高の体がそうできているからなってしまうものだ。
 それでも石神が触れていると思うだけで、すでに小高のペニスは勃起していた。
 石神は小高の乳首を舌で捏ね回し、甘噛みをして執拗に吸い続ける。
「あっ……んぁあっ……はぁ……んんんっ」
 自動的に腰が動く。小高が悶えるように腰をくねらせて甘い声を上げた。胸を突き出していくと、小高の片方の乳首も石神は指で摘まんで捏ね回し始めた。涎(よだれ)で濡れた乳首をやっと解放したが、そっちを指で捏ね回し始め、指で弄っていた方を吸い始める。雨でも転がすように舌で舐め取るようにし、チューチューと音を立てて吸う。
 その乳首を吸いながら、手が小高のペニスを掴む。
「んぁああっ……はぁあっ! あっんっあっああっ」
 乳首を吸っていた唇が、舌へと移動を開始し、小高の体中を舐め回しながら、腹やへそまで舐め取る。
 小高はゾクゾクして体中を振るわせて、石神の舌で追い上げられる。
 やり方がどの相手とも違った。
 最初のレイプは映像で見たけれど、覚えてすらいない。だがそれをなぞるようなものなのに、レイプの記憶が石神のそれに書き換えられていく。実際にあのレイプの時に眠らされていたことがショックを和らげていたのだが、その見た記録のことですら、書き換えられていく。
 石神は何の躊躇もなく、小高のペニスを口に咥え、舌で綺麗に舐めてくる。
「んはぁああっ! あっんっ……あっあっんぁ……ああっ……」
 嬌声が止まらなくなる。全体を舐め回し、亀頭を吸われ、先走りすら舐められて、執拗にペニスをフェラチオしてくる。すっぽり咥えて口腔で扱きあげられて、小高は石神の口の中で射精をした。
「あああぁっ! んあっ!」
 石神はそれを喉の奥で受けて、やはり教師と同じように小高の精液を飲み込んだ。
 そしてそのまま、小高の体を折り曲げて広げ、アナルを露わにすると、やはり石神は何の躊躇もなく、アナルにキスをしてから舌でアナルを舐め始める。
「ひぃああぁあああっ!」
 普通にセックスに慣れてきた今なら、わざわざアナルを舐める相手とはしない。大抵、やってもらってもローションが付いた指で広げられるだけだ。
 アナルを舐めるのが好きだったのは教師であり、その映像を見て妄想を膨らませてきた石神は、当然アナルは舐めるものであると学習していたようだ。
 そしてそれは石神の本質とも関わりがあるようだ。
 小高の体を舐め回したいと常々思っていたということである。あのしらっとした顔をして、こんな淫らなことをしたかったのかと思うと、小高は気持ちが完全に高まってしまう。
 その覚えてもいない感覚が、石神の舌であると書き換えられた。
「いいっ……んぁあっお尻……ああっ」
 小高は自分でもお尻を広げ、アナルを石神にいっぱい見てもらえるようにした。やはりあのレイプの再現よりは、自分も積極的に参加したくなったのだ。
 石神もあのレイプシーンを再現したいのではなく、映像の小高の体しか知らないので、ああするしかなかったのだと思えてきた。