R18novel短編

異形の家-2

「叔父さんの……武広さんの魂が、半分入っているのっ!」
 八尋が衝撃的なことを言った。
「何言ってんだ……八尋」
「武広さんが……半分乗っ取られたところで、死んだの……魂が半分になったの……」
 だがそれでもこんなものを屋敷に置いておくわけにはいかない。
「だめぇ……僕は……これでいいのっ! やっと武広さんが触ってくれるのに!」
 そう八尋が叫ぶと、その武広の顔が触手の先から現れた。体がなく首だけの姿であるが、確かに武広だった。
「……愛してるよ、八尋……愛してるよ」
 まんまの武広の声でそう言うのだ。
「ああっ武広さんっ!」
 八尋はその武広の首を抱き寄せて、愛おしそうに撫でた。だがその首は舌を出し、八尋の乳首を舐め始めたのだ。
「あっあんっ乳首っ……あんっ、舐めて……、ぁっあっきもちっいいっ」
 八尋はその首に乳首をすりつけるようにして抱いている。その武広に似た首は、口が裂けて人間の舌ようなものが、何本も出てきて、それが八尋の左右の乳首を舐めて転がして押しつぶす。小さな管まで出てきて、それが乳首を摘まむように巻き付き引っ張り上げる。
「あっんっ、きもちいっ……乳首されるのいぃ、あっひあっん……んっ……」
 御嶽(みたけ)の前で武広に似た首を抱えて快楽に身を落とす八尋は、おぞましく見えたが、それでも目が離せないほど妖艶だった。
「乳首舐められながら、触手入れられていってしまえ」
 父武広の声で、そんな卑猥なことを言う。
 御嶽には聞いてられないし、信じられない。こんなものに父親の魂が半分入っているなんて言われても、信じることはできない。いや信じたくないのだ。
 確かに武広は八尋を可愛がっていた。御嶽が父の元を去った後に預けられた年も変わらない子供。更に異形を見、そしてそれに引きずられ、助けを必死に求めてきたなら、武広が必死になって守っただろう。十年以上だ、自分で育てたと言っても過言でない相手を愛していると言うのは普通だ。
 だが決してこんなことを望んでいたわけではないはずだ。
「コリコリしてきた。乳首気持ちいい?」
淡々とした言い方であるが、父の声でそう言われて八尋はドライオーガズム に達する。ガクガクと体が震えたが、反り返った体や顔が笑顔になっていてとても喜んでいるのが分かる。
「あぁんっ…ちくびっ…あッあッあひっ……乳首でいっ……た……」
「アナルをペニスで犯されて、射精すればいい」
 そう言った武広の首は乳首から離れ、八尋のペニスを口ですっぽりと覆った。中は幾つもある人間の舌に似たものが巻き付いているのだろう。触手のそれだけとは違った反応で、八尋は悲鳴を上げた。
「あぁあんっ! あッああっ……あっいいっあぁんっ」
 そしてまた触手が形を変える。人間のペニスの形になったのだが、太く黒くそしてボコボコした瘤がついている。人間でもそうした突起物を手術で入れる人がいるらしいが、そういうボコボコしたのではなく、もっと人工的なバイブについてあるようなものだ。
 その先から液体がビュビュッと出て自分で触手を濡らしている。
「あんっあンッ、あああぁーーっ!」
ペニスを武広の首にしごかれ舐められた八尋は簡単に達して精を吐き出した。それを武広の首が美味しそうに飲み込んでいる。
 黒光りしたペニスの形をした触手が、八尋のアナルの中へと飲み込まれていく。
「あっあ゛っああああんっ…」
 入るのは無理だろうと思っていた触手のペニスは、ズルズルと八尋のアナルに消えていく。長い触手は何処までも入り、まるで直腸をすべて犯すかのような感じだった。
「あ゛っあっあぁっあぁあんっ!」
 その長い触手のペニスが一気に引き抜かれてまた入っていく。動作が人間のそれとは全く違う動きになっていて、八尋の顔が狂ったようになっている。完全に意識がおかしくなっているのか、目は上の方を向いたままで、口はだらしなく開き、そこから涎がどんどんあふれている。
「あぁあぁ……い゛ぐっいっちゃうっあっあんっああぁっ!」
 体がビクビクと震え、八尋のペニスから潮が吹き出す。シャーッと音がして出てしまっても、突くたびに潮が出てしまうようになっていた。
「いくっ出るっあッあッあッあッああぁんっ!」
 その行為は、およそ三時間続いた。触手のペニスが液を大量に吐き出して、それが八尋のアナルから大量に漏れて出てくるのだが、それが終わったとたん、触手は一気に枯れ、ざっと粉すら残らないように散って消えたのだ。
 残ったのは裸の八尋だけだ。
「お前……浄霊をしてるのか……」
 やっと御嶽が八尋がしていることに気付いた。
 八尋は、触手の化け物を浄霊して、その中に含まれる武広の魂も浄霊しようとしているのだ。
「……僕にはこれしかできないから……」
 御嶽は浄霊の仕方は知らない。だからやれることは除霊だけだ。
「それじゃ駄目なんだ。あれは人の腹にも宿る」
 八尋がそう言う。つまり、村の人間が襲われて、そこから無限にあの化け物が生まれるのだという。
「僕には武広さんみたいに強い力はないけど、こうやってあいつがでてくるたびにこの方法で浄霊してやるしかないんだ。まだ半分にもなってないけど」
 そう言って八尋は笑う。
 八尋の腹には宿らないのかと思っていると。
「僕は異形の方に近いからかな。あれは人にしか寄生できないんだ。武広さんは寄生されるまえに心臓発作を起こしたから、体は大丈夫だったんだ」
 けれど、異形はこの結界から出ることさえできないのだという。
「この結界、武広さんが僕のために結界を強固にした。その結果、あの異形はここから出られなくなった。その腹いせに武広さんの魂を食った。だからあいつはこの結界の中なら多少は動けるようになった。これでも前は部屋まで来ていたんだけど、最近やっとこの部屋だけで収まるようになってきたんだ」
 八尋はそう言う。
「だから離れにいるくらいなら、きっと大丈夫だと思ったんだけど……見られちゃったね。ごめんね、気持ち悪かったでしょ?」
 そう言う八尋は涙を流していた。
 それを御嶽はゆっくりと抱きしめて頭を撫でてやった。
「俺が……浄霊を覚える。だから八尋はもうこんなことをやめてくれ」
 御嶽がそう言った。
 元々都会のサラリーマン生活は合わなかった。
 だからアパートを追い出される時に田舎を選んだ。無理にアパートを探して住むこともできたのにしなかった。
 それはこういうふうに、戻ってくるようになっていたのだ。
 武広も確かこういうふうに、仕事が上手くいかずに実家に戻り、憑き物落としをやり始めたのだ。この家の誰かがそうならないといけないのだ。
 村中も待っていた。新しい当主が憑き物落としとしてやってくることを。
「御嶽さん、もう出ていかない?」
「ああ、もう何処にもいかない、だから」
「……良かった……分かった、もうやめる」
 八尋はそう言ってわんわんと大きな声で泣いた。ずっと一人で張り詰めていたものが弾けてしまったのだろう。
 でもすぐにそのまま疲れとともに寝てしまった。御嶽はそんな八尋の体を洗ってから服を着せてから寝かせた。
 自室に戻った御嶽は、さっきのことを思い出した。
「……本当はやめたくないんだろうな……」
 そう呟いた。
 武広が八尋とセックスをしたいと思っているわけではないことは説明してもらったが、八尋がその方法をわざわざ選んだのは、本当に武広とああいう関係になりたかったからだ。
 だからあんな卑猥な言葉を口にし、平然と触手を迎えた。武広の魂の半分でもいいから寝たかったのだ。
 それを嫉妬から御嶽は止めた。
 武広の魂にくれてやるくらいなら、俺が手に入れてやると。その前に武広の残りの魂をさっさと追い払ってしまわなければならない。そう考えたのだ。
「早く俺のを挿れたい……ん」
 御嶽はさっきまでの八尋の痴態を思い出しながらオナニーをして夜を過ごした。
 それらは、あの異形の妖気に当てられたものであったが、御嶽はそれに気付かないまま、八尋をその手に抱くまでを想像して果てた。