R18novel短編

神隠し-2

 中沢が次に目覚めたのは、屋敷の中だった。
 会社のワンフロアーはありそうな、三十畳はある大きな部屋の中央に、一つのダブルベッドにぽつんと寝かされていた。
「あ、っー……」
 起き上がったと同時に中沢は、頭の鈍痛に顔を顰めて頭を抱えた。
 その頭を抱えたまま、ガバリと起き上がる。
「どこ、だっけ? えっと、確か」
 中沢は家の門の勝手口で若尾に担がれて暴れていて、そこで種田と話していたことを思い出す。
「なんだっけ、一目惚れがどうとか……というか、今何時?」
 慌てて時計を見ようとしたのだが、まず腕時計がない。毎日ちゃんとデジタルであるが、有名メーカーの時計をしていた。それがない。
 それからハッとして自分の体を触ると、服がまず背広ではなくなっている。
 肌触りがいいシルクのガウンのようなものを着ていた。
「覚えてない、覚えてない」
 こんなものに着替えた覚えはないので、着せられたのだろう。それからハッとして布団を剥ぎってからベッドから出る。するとガウンは足首まである少しフリルがついているガウンだった。
「つーかこれ、女性用じゃね?」
 そんな気がしてきて仕方ない。
 それから下着を履いてないことまで分かった。
「……くそっ」
 中沢はよくよく考えたら、ここに来るまでに身につけていたものすべてが自分の身から剥ぎ取られていることに気付いた。
「……鞄……って、たしか種田さんの車の中……」
 そう思い出す。あの時、車から持っては出なかったのだ。
「もうもうもうもう……何なんだよ」
 そう大きなお声でいいながら、中沢は広い部屋を歩いて入り口を探した。とにかく明るい屋敷なのだが、いかんせん窓がない。まるで地下のような作りに、外から見えた日本家屋の洋装はどこにもなかった。
「どうなってんだちくしょう」
 やっと入り口らしき両開きのドアを発見して、ノブを捻ると、ドアは簡単に開いた。
 中沢は両開きのドアの片方を開けて、そっと外を見る。
 誰もいないのを確認してから外へ出る。廊下は広く、学校の廊下の大きさくらいだ。片方は窓になっていたので、外を眺めて見たが、どういうわけか、霧でも出ているのか真っ白で何も見えない。
 時間的な感覚で朝なのではないかと予想を立てて、霧くらい出るだろうと思い直した。
 まさか異次元にいるなんて思いたくもなかったからだ。
 とりあえず二階にある部屋であることが分かったので、一階へ下りる階段を見つける。そこから更に人がいないのを確認して、外へ出ようと目論んだ。
 幸い、廊下があり、そこが窓になっていた。
 よしと思い、外へ出ようと窓を開けると庭に出られた。
 日本庭園のような佇まい、岩で綺麗に形づけられている池、その中央に小さな滝があり、水がざわざわ流れている。その中央に橋があり、滝がない方へと回り込めるようになっている。周りには植木もあり、赤い花の蕾がある。みたところツツジのようだが、秋にツツジ?と中沢か首を傾げた。
 とにかく、外へ出ようとして近くにサンダルがあることに気付いた。
 それをさっと履いて庭を歩いて壁を探す。だが歩けど歩けど壁に辿り着かない。とうとう周りは霧だけになり、歩いてきた方向さえ分からなくなった。
「マズイ……遭難する」
 山で霧の中を動くことは遭難を意味する。もし目の前に崖があっても気付かないかもしれない。それが怖くなり、来た道を戻った。だが、歩いてきた時間よりもものすごく早く建物に辿り着いた。
「あれ?」
 何かがおかしいと気付いたが、分からないふりをして家の周りを回った。屋敷の大きさは、普通の都心にある六階くらい建てのマンションくらいの敷地面積。だが上には二階しかないように見える。上も霧がかかっていて見えない。太陽は見ないけれど、明るく、家自体が光っているように見える。
「目の錯覚?」
 仕方ないので一旦屋敷に戻った。
 なんとなくではあるが、玄関から入ったら玄関からしか出られない屋敷なのではないかと、急に思い始めたからだ。
 なので中沢は玄関を探して歩き出すのだが、どこをどう行っても玄関に辿り着かない。
「…………もしかしなくても案内されないと出られない?」
 招かれた人から帰れと言われないと、出られないという昔話によくあるマヨイガ的なものなのかと中沢は思えてきた。
 あちこち歩き回ってみたが、どうにもならない。
 仕方がないので二階のあの部屋に戻る道を探すと、すんなりと見つかって部屋に戻れたのである。
 これはもう疑う余地はないように思えてきた。
 昔、絵本で見たマヨイガの進化バージョン。迷った家から出るには、家の主の願いを叶えてやること。
「普通にマヨイガなら、もう出られてるはずなんだよな……」
 中沢はそう呟く。そう例えば、普通のマヨイガならすでに服と靴を持ち出したという実績解除になっているはずなのだ。なのに出られなかった。
 だがこういう話のオチは、大抵家の主の願いを叶えてやることができずに、館の主人を殺して逃げる戦法の昔話が多い。
「どっちだ?」
 そう中沢が悩んでいると、部屋に若尾が入ってきた。
 物音一つしなかったのだが、気配で察した中沢は、大きな体を揺らしながら近づいてくる男、若尾の姿にやっと元凶が現れたとばかりに叫んだ。
「何が願いだ! ここから出るのに何を得ようとしてる!」
 そう中沢が言い出して、若尾は少し驚いた顔をしていた。まさか先に中沢から提案を持ちかけてくるとは思わなかったのだろう。
 若尾は中沢の近くまで来て、中沢の頬を撫でるように手を翳した。
 中沢は撫でられながらも表情を変えずに若尾を睨み付けている。
 すると若尾はふっと息を吐いてから、中沢をベッドへと連れて行く。
「え? え、何? また!?」
 中沢はまた若尾に意味も分からず連れて行かれることに怒りを感じて叫んだ。
「いったい何なんだよ! ちゃんと喋れ! 無言で何もかもしようとするな!」
 そう中沢が叫ぶと、若尾はそれを無視して中沢をベッドの中央に投げるようにしておいた。
「たく……っ!」
 話が通じないのか、言葉を理解してないのかと思うが、種田とは普通に話していたことを思い出す。
「何か俺に用があるのか!?」
 そう中沢が叫ぶと。
「ある」
 と若尾が初めて、中沢の言葉に反応した。
「ふぇ?」
 いきなり言葉が通じてびっくりしたが、若尾は中沢の上に乗っかり、先へと進めようとするのを中沢は止めて言った。
「待て」
 まるで犬にでも命令するように若尾に言う。すると若尾はそれで本当に待てをしているかのように手を止めた。
「何がしたい?」
 中沢は若尾に単刀直入に用件を聞いた。
「セックスがしたい」
 若尾は即答する。
「なぜ俺と?」
「お前がよさそうだった」
「男と?」
「さすがにどうかと思ったが、それでもいいからしたい」
 どうやら車に乗った時から気に入ってきていて、ずっと後ろから舐めるように見ていたのだというわけだ。セックスがしたいと思ったのが男で、さすがに迷ったのだが、それでもやっぱりしたかったので連れてきたというわけだ。
「俺の意思は?」
「俺の願いを叶えないと、ここから出られないから、ずっとここに住むことになる」
 若尾がそう言うのだ。
 やっぱり、おとぎ話のマヨイガ進化バージョンじゃないかと中沢は心の中で叫んだ。
「お前、いい匂い」
 クンクンと若尾が中沢の首筋に鼻を当てて匂いを嗅いでいる。
「香水じゃないのか?」
「それは邪魔だから洗って消した」
 どうやら香水かそうでない匂いの区別さえ付く鼻を持っているらしい。
 ということは、若尾は人間ではないということになるのか。
 中沢はそう思って聞いた。
「お前は何者なんだ?」
「俺は鬼。マヨイガに住む鬼」
 そう言って若尾は語った。
 若尾はマヨイガの庭にある木の股から生まれ、マヨイガ育ち。外には昔から出られるのでよく出ていたらしい。友人という種田は、マヨイガで知り合った人間なのだという。
「もしかして、種田さん、何かをもらうお礼に果物を持ってきてる?」
 そう聞くと。
「そうだ」
 若尾がそう言った。
「じゃあ、ここの存在は知られたくなかったんじゃないか?」
 種田的には、この屋敷の存在を他の人に知られて観光地化されては困るはずだ。だって願いを必ず叶えてくれる存在を誰が人に喋りたいと思うものか。誰にも話さず、自分だけのものにしたかったはずだ。
「だからお前を乗せたのは俺」
 若尾が困っていた中沢に見惚れて連れ込んだというのが、本来の流れらしい。
「お前は困っていた。俺も困っていた」
 願いを叶えてやるから、俺の願いも叶えてくれというわけだ。どうやら種田は、この屋敷を維持するために道を作り、土地を買い上げ、人が簡単に入り込めないようにしていたらしい。だから途中で中沢を無視したのは種田で、止めたのが若尾だというのである。
 つまり若尾がいなかったら、中沢はあのまま道に迷い、一晩山道で明かした挙げ句、その道を戻って街に行くしかなかったわけだ。だがそれも一晩、あの森で明かせればの話だ。
「あの森は熊も出る。イノシシもいる。危ない」
 若尾はそう言って中沢を抱きしめて言った。
 中沢はやっと若尾が自分の命の恩人だったのだと気付いた。
「お前はいい匂いがする」
 若尾はそう言い、体を密着してきたが、その若尾の股間が勃起していることに中沢は気付いた。
「……若尾さん……」
 思わず中沢は若尾の勃起している股間に手を当てていた。触れた瞬間、若尾が驚き、体を震わせたのが分かったが、中沢は手を止めずに股間を摩っていた。
「ふっ……ふっ……」
 気持ちがいいのか、若尾が甘い声を上げた。中沢はそれが何だか可愛くて、若尾のペニスをズボンから取り出し、直接手で扱いてやった。
「うッ……あっ……」
 扱かれて少し悶えた若尾だったが、キュッと顔を引き締めて、中沢のペニスをガウンの中から出して、同じように扱き始めた。
「あっ……んっ」
 大きな手が小さなペニスを包み込むようにして扱きあげてくるのだが、それがあまりに上手く、まるでオナホールでも使っているかのような感じだったため、中沢は身もだえた。
 そんな中沢に若尾がキスを迫ってくる。中沢はそれを断ることなんてできずに受け入れ、舌を絡めて吸い付いたりして対抗した。
 若尾も中沢がこうも受け入れてくれるとは、想像していなかったのか、すべてが後手に回ったかのように中沢に煽られる。
 キスをしながらお互いのペニスを握り合ってオナニーをし合う形になったが、それが射精するまで続いた。お互いが絶頂に達して精液を吐き出す。
「あっあぁああっ!」
「んっ―――!」
 ベタベタになった手を中沢は思わず舐めてしまう。
 興味があったのだ。鬼だと名乗る男の精液がこの世の人間の精液と同じなのかという、絶対に生きて試す機会がないであろう出来事に。
「あれ……美味しい……」
 まるでクリームを舐めているかのように、少し甘みがある味がした。それが意外過ぎて中沢は手に付いたものをすべて舐め取っていた。そういえばお腹も空いていたのだと思い出した。
 すっかりその味が気に入って、中沢は若尾のペニスまで顔を落として、潜り込むようにしてペニスを口に含んでいた。
 大きなペニスを舐めるのは抵抗がないわけではなかったが、中沢は割り切った。美味しいんだし、飲んでも問題はなさそうだし、何より中沢は実は男に抱かれることは得意だった。
 だからフェラチオはそれなりに得意だったから、その通りにしようとしたが、それよりも鬼の精液がこんなに美味しいとは思わなかったことが意外で、知り合って一日も経っていない相手、しかも鬼ということを忘れてしまっていた。
 それに鬼とは言うが、見た目は人間と同じ姿。ただ体の大きさがちょっと大きい人という印象しかない程度だ。だから問題はない。
 吹っ切れた中沢は、しっかりと若尾のペニスを舌で舐め取り、そして口で扱いた。鬼も同じように気持ちがよくなるのか分からないが、それでも同じ雄同士なら共通点はあるだろうと思ってのことだった。
 すると若尾はうめき声を上げて、腰を振り始める。そして同じように中沢のペニスを口に含んでいた。
「んんっん……あっんっ!」
 若尾のフェラチオも上手かった。二人でシックスナインになりながらペニスを吸い合い、お互いを高めていった。だが若尾はイク寸前で中沢の口からペニスを抜いたのだ。
「あっ……ん……ちょうだいこれ……」
 中沢が名残惜しそうに、若尾のペニスを欲しがる。それを見て若尾は喉を鳴らした。
 そんな中沢のアナルに若尾が何かを入れた。
 大きな指が何かを押し入れ、中沢の前立腺を触った。
「あっあっいやん……だめっあっあっん!」
 中沢の腰がガクガクと揺れる。どうやら指より先に入ったモノは、アナルの拡張を緩やかにやってくれるクスリだった。中沢のアナルに若尾のペニスとなれば、それなりに拡張が必要だ。最初からセックスをするのが目的だった若尾は、そうしたものを用意していた。
「あんっんあぁあっあっんぁあっんっ! あっ!ああぁ!あっ!」
 面白いように高められ、中沢は与えられる快楽を貪るように腰を揺らした。そんな中沢に若尾がまたキスをしてくる。
 どうやら昨今の鬼は、キスが好きらしい。そう中沢は思い、若尾のキスを受け入れた。
「んふっんんっ……あっんっ! ……うふっ! んっ!」
 アナルを広げられて大きな指が二本入り、三本目を入れようとしているのを受け入れながら、中沢は指を入れられて完全に感じていた。
 内壁を擦られ、喘ぐ中沢に若尾は興奮したようにキスをせがむ。それが可愛くて中沢はキスを受けた。
 誰がこういう風に仕上げたのかは知らないが、これはこれで可愛くていいと思ったのだ。