R18novel短編

狂った関係-1

 和納(わのう)家は、不動産王と知られ、東京都の主要地に土地を持ち、そこにビルを建て貸し出すことで巨万の富を得てきた。昨今ではその力は衰えてきたとも言われるが、それは最高に利益を出していた時代にしてはという意味であり、現在でも主要地に土地を持ち、そこを大企業に貸し出すことで巨大な利益を生んでいる。
 更に最近になり、酒造メーカーを買ったことにより、その利益は更に増加。
 そんな和納家には、三人の子供がおり、長男の二十九歳の諒は不動産会社の副社長に収まり、次男の二十七歳の雷は酒造メーカーの専務に収まった。いずれは社長への足がかりにするための配属で、役員達は一致している。
 そんな中、三男の十八歳の周(あまね)は、和納久(ひさし)が再婚して生まれた子供で、長男次男とは十歳ほど年が離れている。
 二人の兄は、雷(らい)と諒(りょう)は年の離れた弟を溺愛していた。
 授業参観には兄二人が現れるほどで、両親すら呆れてしまうほどの溺愛具合で、周は兄の愛情をたくさん受けて育った。
 愛されていると周は兄たちだけには、何でも従うようになっていく。
 両親の言うことよりも、兄たちの言うことだけを聞くようになった。反抗期もなく、母親に似て美しく育ち、やがて母親が病死をすると、周のあまりの悲しみように兄たちは更に周を愛するようになった。
 母親を亡くした父親は第一線を退く決意を決め、長男次男を社長に据え、自分は会長職になり、世界旅行へと旅だった。
 高校を卒業した周は、自宅に引きこもり、兄たちが世話をしていた。母親の死や父親の旅行、兄たちの忙しさから、寂しさを募らせていた周の様子がおかしくなっていることに気付いた時は、すでに周は少しおかしくなっていた。
 医者の診断から、鬱病だと判明し、兄たちは更に周を守るために屋敷の敷地内に平屋建てを立て、周の行動を制限し始めた。
 周りはその言い訳を鵜呑みにした。
 そうしたことで周は籠の鳥となった。
 だが美しいカナリアが鳴くところを人は見たことがない。


 和納家の大きな庭は、隣の家が見えないほどに緑が植えられており、壁も高い。防犯システムも最新のモノを導入している。だから家の中にいる周がどうなっているのか、それを他の人間が知ることはできない。
 周は毎日をテレビと共に過ごしていた。
 朝に兄に起こされ、朝食を与えられた後、仕事に出る兄を見送り、そして入り口の玄関は閉ざされる。出ようと思えば庭には出られたので、鍵をしてしまう意味はあまりない。
 周はその日、天気がいいことに気付いた。
 兄たちにここに監禁されるように暮らし始めてから、天気のことなど気になりもしなかった。ただずっとどうして母様は自分を置いていったのかということばかり気になっていた。そして父様もだ。
 あんなに兄様と言っていたことで怒ったのかとさえ、不安になった。
 兄たちは更に優しくなったが、それでも周の心は満たされなかった。
 ただ今日、たまたま天気がよくなっているということに気付いた。
 そして庭の前のドアを開けて外へと出た。
 庭は、庭師たちが恒例の剪定作業をしに来ていた。
 その一つの木の上で、周と同じくらいの年の子が作業しているのが目に入った。
「やあ、君はここの家の子だね」
 木の上から青年が話しかけてきた。
「俺は庭師の天草(あまくさ)ってんだけど、君は?」
 周はその黒く焼けた肌を持つ青年を見て、少し戸惑ったが、笑顔で名乗ってくる庭師に悪い人はいないとすぐに思い、名前を名乗った。
「……僕は周」
「あ、一番末っ子の子だね。今日は天気がいいから陽気に誘われてきたかな?」
 天草(あまくさ)はそう言って降りてきた。
 周の身長からは二十センチ以上高く、百八十は軽く超えている。兄たちよりも大きな人に出会うのは、高校時代のバスケ部の人を見て以来だ。それでも側で見たことはないため、向かい合って見ると大きな天草(あまくさ)を見上げることになってしまった。百六十しかない周は、長身の人間にある種の憧れがある上に、こうして日の下で元気に動いたことはなかったので、天草(あまくさ)の姿には二重に憧れてしまう。
「ふむ。あんまり元気がないのかな?」
「うん、母様が死んでしまって、父様も旅行に行ってしまったから」
「でも兄さんたちは、君のこと大事にしていると思うけど?」
「……うん、そう、だね」
 天草(あまくさ)にそう言われて初めて、そうだ兄様たちがいると周は思えた。不思議なことであるが、まったくの赤の他人に言われた方が、すごく納得できることだった。
「じゃあ、元気にならないと。ほら、自分の家の庭にこんなに緑があるんだ。ちょうど俺たちの作業も半分ほど終わっているから、見てきてごらん。ここの庭は毎年父さんの会社が請け負っているんだけど、皆で綺麗にしているから」
 そう言われて周は初めて庭をちゃんと見た。
 天草(あまくさ)が言うように、庭の半分の木々が剪定され、綺麗になっている。この季節は花が咲いた後は、ただ緑が茂るだけだと思っていたが、こうした季節も夏に向けて剪定が行われている。
 それを見た周は、出来上がった庭を見に歩いた。
 母親が育てていた花、バラも今の時期に咲いていたことを思い出す。毎年それを楽しみにしていたのだが、去年から見ていなかった。
 緑も深く、ツツジも青々としている。父親が母親のために作った花壇の道は綺麗に保たれていた。
「どうだい?」
 天草(あまくさ)がいつの間にか隣に立っていた。
「うん、綺麗。ありがとう。母様のバラも他の花も綺麗にしてもらってありがとう」
 思い出したようにホッとした声を出した周に、天草(あまくさ)は微笑む。
「でしょ。うちはすごいからね」
 そう言われて、その天草(あまくさ)の笑顔があまりに綺麗だったので、周はそれを見つめてしまった。
 健康な優良児を見るのは久々だった。だから眩しかった。
「明日も来る?」
「え、まあ仕事だから今週いっぱいは通ってくるけど」
「そう。じゃあ、また明日。できたところを見せてね」
 周はそう言って天草(あまくさ)に笑いかけると、出来上がった庭の方へと歩いて行く。残りの出来を眺め、その日の午後は潰れた。
 その日の周の機嫌はよくなり、夜に帰ってきた兄の一人、諒が気がついた。
「周……今日は気分が良さそうだね」
 帰ってきた諒を出迎えた周に、諒がそう言った。
「うん、庭がね、綺麗だったんだ」
 周がそう言うと、諒はなるほどと頷く。四日前から庭の剪定や補修に庭師を雇ったのだ。毎年父親がやっていたことで、今年も忘れなかったらしい。いつもの庭師なので、気にしていなかったが、どうやら周が外で出ていたというから、諒も少しは焦った。
「大丈夫だったかい?」
「ん? 大丈夫だよ。庭師の人がね、綺麗にした半分の庭を見てくださいって言ってね。それで、見てきたんだ。母様のバラも綺麗になってた。嬉しかったなあ」
 庭師が周の姿を見て、話しかけてきたという。
「その庭師は、なんて人?」
「天草(あまくさ)って人。兄様よりも大きくて、すごく日に焼けてた。それで仕事に誇りを持ってて、きらきらした人だったよ」
 周の顔が笑顔になる。
 その笑顔を見て、諒は笑顔になりながらも、心の中でその庭師を恨んだ。自分たちにはずっと笑顔さえ見せなかった周が、見ず知らずの庭師を見て笑顔で会話したというのだ。
 それは許されないことである。
 周は自分のものである。昔からこの子を愛してきたのだ。
「周……愛してるよ」
 諒はそう言い、笑顔で微笑む周を抱きかかえると、自分の部屋に連れて行く。
「諒兄様? 何? どうしたの?」
 そう言っても諒は何も言わず、ベッドに周を寝かせると、その上に覆い被さるようにした。
「……兄様?」
 諒は周に跨がるように乗り、その上で背広の上着を脱ぎ、ワイシャツも脱ぎ捨てた。
 周はそれを訳が分からず見ていて、そしてまた問う。
「兄様、何するの?」
 一緒に寝るだけかと思ったのだが、そうではなさそうだった。それが分かってしまい、周は逃げるように体を起こそうとしたのだが、それを諒に遮られた。
 真剣な顔をした諒が、周の顎を掴んで真っ直ぐに見てから言った。
「周、愛している」
「兄様……いやぁあっ」
 咄嗟に逃げなければと思い、暴れるのだが、諒は手慣れたように周のワイシャツのボタンを引きちぎって開くと、そのワイシャツで周の腕を拘束した。
「な、にを、兄様!」
「大きな声を出すと、雷に見つかるよ」
「雷兄様っ! 助けて! いやぁ! 諒兄様、嫌いっ!」
 暴れて逃げようとする周に、嫌いと生まれて初めて言われた諒は、カッとなり、周を乱暴に扱った。
 諒は周のズボンを一気に脱がし、下着も剥ぎ取って裸にしてしまう。そして周の足の間に体を入れ、押さえつけながら首筋にキスをした。
「いやっあっ」
 逃げようともがくと、起き上がったところから諒が周の体にキスをして舌で舐めていく。
「あっいやあっやめてっ! 兄様! いやっ!」
 そう叫んでも、声が誰かに聞こえることはない。
 次男の雷は今日は別の会社の接待に呼ばれ、深夜にならないと帰ってこない。
 それを諒は知っている。周もそれにやっと気付いた。
「助けなんてこないよ。周は私と愛し合うんだ」
 いつもはにこにこ笑っている諒が、恐ろしい顔をして周に言った。これは悪い夢だと思うほどに、諒の変貌が恐ろしく、周は震えてしまい、抵抗ができない。
 それをいいことに諒が周の体を舐め回し、音を立ててキスマークを残していく。
「いやっやめて……兄様……」
 周は泣きながら懇願したのだが、今の諒はそれを聞こうとしない。何が兄の機嫌を損ねたのか、周には理解ができない。なぜ庭師の話をしていて、こうなったのか分からない。
「いやっあっあっ」
 嫌だと周が逃げ回るのを諒は押さえて、とうとう舐め回していた舌が周の乳首に辿り付いた。
 ザラリとした舌が周の乳首を舐めあげ、勃起させていく。柔らかかった乳首は諒の舌ですっかり硬くなり、それを諒の唇が吸っていく。音はいやらしく鳴り響き、チュッチュウっとわざと鳴らしているように音がした。
「いやあああっあっんあんっ」
 何も感じない飾りだと思っていた乳首が、舐められるたびに腰に痺れが起こる。ビクンビクンと体が跳ねて、周にはどうしようもなかった。
 怖いと思っていた諒が優しく乳首を舐めあげてくる。そしてそれが最初はなんともなかったのに、今は気持ちがいいという感覚なのだと気付いた。
「あっんっ……あんっ……あぁっ……いやぁあ……兄様……んあっ」
 いつの間にか周のペニスが勃起し始めていた。
 初めて勃起をした時、どうしていいのか分からず、諒に抜いてもらって、オナニーというモノを教えてもらった。だが、それがとてもいやらしく思えてなかなか周はしようとは思わなかった。
 それに最初に諒がしたようにしても、簡単にはいけず、諒の手を思い出しながらオナニーをしていたくらいだ。
 その諒の手が周の乳首を掴み、指で押してくる。
「ああ、周……可愛い、周。美味しいよ……」
 諒がそう言いながら周の乳首を吸い上げて、そしてだんだんと下へと降りていく。腹を舐め、へそまで舐め取ってから、足の内ももにもキスを降らせる。
「あっだめ……あっ兄様……」
 すでに周のペニスは勃起してしまっていた。
「ああ周……私で感じてくれている」
「あぁあぁああっ!」
 諒が周の小さなペニスを咥えて扱き始める。初めて諒にオナニーをされた時以上の衝撃が周を襲う。ビクンと跳ねた周の体を受け止め、諒はペニスを舌で舐めあげていく。
「あっだめっ兄様っああぁっん……だめっだめぇ……」
 小さな抵抗がだんだんとなくなっていく。それに合わせて諒は唾液を指にたくさん付けて、周のアナルに指を挿入した。
「んぁあっ……やだ兄様ぁ……そこは……だめ」
 一本の指が入り込み、中を押し開いていく。その感覚に少しの違和感があった。この指を周は知っているような気がしたのだ。