廃園の庭

1

 近くにある公園の中に、立ち入り禁止の林がある。
 その奥には昔、植物園をしていた時に建てたガラスの温室がある。大きな建物だったのと撤去に費用がかかりすぎるために、そのまま放置されている。
 中には肝試しに中に入ろうとする輩も多く、夜中には警備員の見回りがあるほどだ。そんな廃園に、安久津は昼間、一人で入っていった。
 中にある植物の花の絵を描くために入り込んだのだが、昼間だと人通りが多いせいか、ここには逆に人がいない。見つかることがなく、入り込んで一ヶ月以上も経っても誰かに出会ったことすらない。
 だからその日もそうだと思っていたのだが、裏口から中に入って初めて人がいることに気付いた。
 若い男だ。二十代後半くらいか。作業着のような灰色の服を着ている。
「あ……」
 この建物の管理会社の人間だと思い、慌てて逃げようとすると、その人物が安久津に気付いた。
「逃げなくてもいいよ」
 そう大きな声で言った。
「……え?」
 安久津が振り返ると、その男がこっちを見て笑っている。世間一般で言うイケメンという、整った顔をしていて、優しそうである。
「私も不法侵入しているんだ。君の仲間だよ」
 そういうのである。
「え? え?」
「ここ、この時期にくると日当たりが良くて気持ちがいいんだ。たまに私も来るんだけど、君に会うのは初めてだね」
 そう言った。
 どうやら管理会社の人間ではないようで、安久津はのろのろと男の前に姿を見せた。
「ははぁ、絵を描いていたんだ? もしかしてこの花?」
 男がにっこりと分かったと頷いてそう言った。
男が指を差したところにあるのは、ハイビスカスだ。どこでも今なら売っているものなのだが、大量に咲いているのを見るには、植物園に行くしか道がなかった。お金がない安久津には、この廃園の中に偶然入り込んで見つけた、ハイビスカスの大輪群は、まさに理想だった。
「……はい。こういうのは植物園じゃないと……見かけないので」
「入場料も馬鹿にならないからね、分かるよ」
 男がそう言ってから、にこりとして頷く。
「私は蜂屋という。この先にある屋敷に住んでいるんだけど、私もここの大きな花にはびっくりした口でね。毎年見に来るんだ」
「はあ……そうですか」
「ちょうどここの屋根が一部壊れていて、そこから雨水が入り込むらしくてね。水分補給が十分できていたらしい。環境的には寒さでやられるかと思っていたんだけど、割と丈夫みたいでね」
「へえ……」
 南国の花という印象が強いので、寒さには弱いと思っていたが、温室のお陰でそこまで温度が下がるのは深夜くらいなものらしい。
「邪魔はしないから、描いて描いて」
 蜂屋はそう言うと、すっと奥の方へ入っていった。奥にも別の花が咲いていて、今が見頃である。それを見に行ったのだろう。
「……ほっ」
 思わず息が漏れた。初対面に人間の前で、いきなり絵を広げてしまえるほどの度胸はなく、オドオドしていたので、それを見透かされたのかもしれないと思った。
 嫌な人ではないことは、気を遣ってくれたことで分かったので、安久津は大人しく、絵を広げた。まだ下描きをたくさんしているところなので、絵の具は持ってはいないから、スケッチブックを広げ、筆記用具を出し、絵を描き始めた。
 そうなると周りのことは気にならなくなる。
 黙々と絵を描いていると、外で大きなサイレンが鳴った。
 お昼になると、この公園ではサイレンが鳴る。はっきりとお昼だと分かるようにしているのは、公園内部で作業をしている人に分かるようにしているからだ。そのうち、サイレンを合図に、日曜などは親子がお弁当を広げる目安に使われていて、なくてはならないものであった。
「あ……」
 サイレンが鳴って、ふっと気付くと、後ろに人がいるのに気付いた。
「……え? あ」
 さっきの蜂屋という人が、いつの間にか安久津の後ろに立っていたのだ。
「あ、御免御免。どんな絵を描くのかなって思って、好奇心で見て見たら、すごく上手いから、びっくりして、どうやって描くのかなって見入っちゃった。ごめんね、でも凄く綺麗だ」
 さすがに黙って覗いていたのは悪かったと、蜂屋は謝ってくれた。それもちゃんと褒めてくれた。
「あ、いえ。ありがとうございます」
 上手いと言われて悪い気はしないが、絵を描いている人間からすれば、まだまだ荒削りだと言われる絵である。
 しかし、最近描いた絵がある展覧会で入選して、少しの自信は付いていたところだったので、そういう評論家のような人が荒削りという絵を綺麗だと褒めて貰えたところは素直に嬉しかった。
素直にお礼を言って笑うと、蜂屋が言った。
「あ、そうだ。その奥にある花の蜜、舐めたことある?」
「え? 花の蜜ですか?」
 急になんだ?と思いながら聞くと。
「小さな花なんだけど、すごく甘いんだよ。東南アジアじゃ、それを使って蜂蜜とか作るんだって。名前はど忘れしちゃったけど」
 蜂屋はそう言いながら、安久津の手を引く。
 何だか、茶目っ気のある人だなあと、安久津は思いながら、そういう花が咲いていることに、未だ気付いてなかったので、見ておきたいと思い、蜂屋に付き添った。
 蜂屋に連れて行かれた所は、奥にある更に頑丈な温室の個室になる。そこは安久津はさすがに入ったことはなかった。
「え、そこは……」
「うん、鍵がこの間までかかってたんだけど、誰かが開けて入った後、鍵を忘れてるんだよ。私も二週間前に気付いたんだ」
 そう蜂屋は言う。
「中に花があるのは知ってたから、気になっていつも鍵を確認していたんだ。それから毎日見てるんだ。中にある花がね……」
 そう言われ、本当にドアに鍵が掛かっていなかった。
 キィッと鉄が錆びた音がして、鉄枠のドアが開く。ドアの外からは緑が見える程度で、何があるのか分からないのだが、中に入ると一気に、緑の中に真っ白な小さな花が咲いているのが見えた。
 無数の花を付けた大きな木。まるで金木犀のような花をつけていて、圧倒的に美しいものだった。
 よく見ると、それが中央にあり、周りの木々は好き勝手に育っているようだったが、真ん中の白い花の木だけは、綺麗に手入れされている気配がした。
「ほら、凄いだろ?」
 圧倒的な美しさに見惚れてしまった。こればかりは、鉛筆で表現するのは難しいものだったからだ。
「うん、凄い」
 素直にそう言った。
 安久津の驚いた顔に、蜂屋は更に木に近づくように、手を引っ張っていく。
「近くで見て、いい匂いがするから」
 そう言われて気付いた。
 この温室の個室に入ってから、すごく甘い匂いがしていることに。
「この花の匂い?」
「そうだよ、いい匂いだろ?」
 確かに蜂屋の言う通りにいい匂いが充満している。充満しているのに、金木犀のような近づくと鼻につくような濃さの匂いではなく、ほのかな香りが漂っている。どうやら、そこまで匂いが強いものではなく、通常の空間では匂いが飛んでしまって、分からないのかもしれない。
「いい匂い」
 鼻をクンクンとして、匂いを嗅ぐ。
 すると、蜂屋がその花を幾つか摘まみ、それを安久津に差し出した。
「?」
「こうやってね、花の中の方を舌に乗せる。で、上から押すとちょうど密が舌に付くんだ」
 蜂屋はそうやって花を舌に乗せて、密を舌に付けている。
 安久津も見よう見まねで、同じようにしてみると、確かに微量であるがストロベリーのジャムのような甘さを持った蜜の味がした。
「わ、凄い、イチゴのジャムみたいな味がする」
「あっちの方でジャムにするって言う話、分かるだろ?」
「うん、これなら美味しくできるね」
 安久津は思わず納得して笑った。
蜂屋が取ってくれたのは、二十個ほどあったので、それを安久津は夢中で舐めてしまう。一回味わうと、何だかもっと味わいたくなり、何度も繰り返してしまった。
「花も食べられる……よね?」
「まあ、ジャムにするくらいだから」
 蜂屋が苦笑しているが、安久津はそのまま花を食べてみた。花自体にそこまでの味はなかったのだが、蜜の味がしっかりと口の中に広がった。
「わあ、これ凄い……美味しい」
 まるで果物でも食べているような、糖度がしっかりある味が濃く口に残る。
 その味が気に入って、安久津は舐めた後の花を一個ずつ食べていく。
 口の中に広がるそれが美味しくて、ムシャムシャと食べていたが、ふっと急に酒に酔ったみたいに、視界が揺らいだ。
「……え?……え?」
 目の前にいる蜂屋が、グニャリと歪んでいく。自分がその場で円を描いて回っているような視界になってしまう。
「はち……や、さん……?」
 グルグル回る視界に戸惑って、蜂屋の方に手を出し、蜂屋を掴もうとしたのだが、その手が空を切って、安久津は前に倒れた。
 蜂屋にぶつかったと思ったが、蜂屋が避けずに安久津を受け止め、コンクリートの地面に激突はしなかった。


2

「あーあ、その花、人間の躰を麻痺させる毒があるから、ジャムにするって言っても、花じゃなくて葉っぱの方だけなんだよね」
「……は?……え?……」
「まあ、麻痺って言っても、足や手が痺れて動かなくなるだけで喋れるし、思考回路もあるんだよ。何というか、躰の自由だけ効かなくなるから、あっちの国では、レイプするのに食べ物に混ぜたりなんかするんだって」
 蜂屋がそう言って、クスリと笑っている。
「まさか、自分から花を食べてくれるとは思わなかった。……安久津くん、迂闊だよ。無邪気な姿を晒すから、悪い男に食べられちゃうね」
 蜂屋はそう言うと、安久津を抱え上げ、花の木の奥へと進んでいく。緑を抜けるとそこには、あの白い花の木が十本ほど生えた空間に出た。外から見た温室がいやに広かったのだが、外側が池の出っ張りのようなところに立っていたので、外からは見ることができない所だった。
 温室はすっかり外の雨や風、埃によって窓ガラスとしての透明さはなくなっており、磨りガラスのようになっている。
 それでも光は十分届くので、植物がちゃんと育っている。
 その対面に微かに見えるのは、高速道路の上がり口で公園の端っこである。見栄えとしては、ここから公園の中心を見ると、緑の奥に大きなマンションなどが幻想的に見える場所である。
つまり、この場所にいても誰にも見つかることはないのだ。
 蜂屋は慣れた手つきで、部屋の中央にある床に敷いているラグに安久津を下ろした。
「この温室はね。私の持ち物なんだ。公園のエリアにはあるけど、朽ちたせいで公園を管理している都は買ってくれないんだ。解体費もかかるから、解体をしたら土地を買ってやるって言われた。だから朽ちるままにしてやってたけど、最近、この花が面白くてね」
 蜂屋はそう言いながら、安久津の躰を完全に支配するように、何度も安久津の口の中に花を潰した汁を入れ続ける。
「麻酔みたいな麻痺っていうのかな。私には何故か効かないんだけど、他の人はたまに食べて倒れちゃうんだよね。でも三十分くらいで元に戻るから、食べた人が幽霊に取り憑かれた~なんて思うらしいよ。危ないから、こっちの個室で管理し始めたんだけど、面白くって、ちょっと作用を研究していたんだ」
 信じられないことを蜂屋が明かしていく。
 蜂屋は知っていて、安久津にそれを食しても大丈夫だと、嘘を吐いたのだ。
「……なぜ?」
 確かに喋ることはできた。だが、躰が鉄になったかのように重くて動かせない。下手に思考回路が正常なので、恐怖だけが溜まっていく。同じ症状になった人が怖くて。霊に取り憑かれたと思うのも理解ができた。
「君がここに来始めたのは知ってたよ。皆、監視カメラが設置されていることには気付かないもんでね。ずーっと見ていたよ。君だけだった。花を大事にして、触れることも、手折ったりして持っていくこともせず、眺めるだけにしてくれたのは……」
蜂屋がそう言って笑う。
「……だって、そうする必要がなかっただけ……」
 安久津がそう答えると、蜂屋は頷いた。
「でもね、皆、興味があるわけじゃないのに、可愛い綺麗って言って、簡単に他人のものを手折るんだよ。手折ってしまったら、三日と持たないのに」
「……でも……悪気があったわけじゃ……」
「そうだね。悪いなんて一ミリも思ってやしないんだよ。君のように、描いたり写真を撮ったりするだけなら、私も許したよ」
「……え?」
「この建物に人が入ってこないのは、周辺住民なら皆知っているからさ。入った人間が皆、不法侵入の上に窃盗をして捕まっていることをね」
 どうやら蜂屋は、監視カメラに写った侵入者を全て特定して、警察に通報し、逮捕させていたらしい。もちろん、悪気があったわけではないし、窃盗とはいえ、花を手折っただけである。どう頑張っても、書類送検、窃盗に関しては不起訴になりそうな事案である。
それでも肝試しにくる人間は減る。さすがに書類送検され、不法侵入の前科が確実に付くとなれば、そういう人間の間で噂にはなるからだ。
 だから、かなり減った侵入者の中に、安久津だけが昼間に訪れる変わった人として、蜂屋に監視されていたわけだ。
 当然座って何かを広げ、一日中座っているだけで、花には触れもしない。そんな人間が何をしているのか、蜂屋も気になったから、今日こうして出てきたらしい。
「……俺も、悪いことをしました……少しならいいって……」
 蜂屋を怒らせてしまったのだと、安久津は思った。
 不法侵入をした人達と同じである。ただ窃盗だけはしなかった。それだけの違いだ。入ってはいけない場所だと分かっていたのに、入ったことは言い訳ができない。
 そんな安久津に蜂屋は笑うのだ。
「入場料、貰おうかな」
「……え?」
「お金じゃないよ。お金は持っているからね。だから……」
 蜂屋はそう言うと、安久津の服を脱がしに掛かった。
「……あの……?」
「躰で払って……君のこの躰で」
「え!?」
 さすがに安久津は驚いた声を出して、逃げようとした。だが躰は全くいうことを利かず、親指の先がピクリと動くだけであった。
「だから、迂闊だって言ったよ。……こうして私のように悪い男に、この躰を蹂躙されるのだから」
「……や……やめ……」
 安久津がそう叫ぶも、蜂屋は一切、気にした様子もなく、安久津の服を丁寧に脱がしていく。着ていたシャツを脱がし、ズボンや下着もはぎ取っていく。
 全裸にされた安久津はラグの上に再度寝かされた。
 周りはまだお昼過ぎ、外は晴れていて、太陽の光が燦々と降り注いでいる。一応は建物の中であるが、野外にいるのとそう感覚は変わらなかった。
「……っ!」
 恥ずかしい。そう感じても躰は動いてはくれない。でも触られている感覚はしっかりあった。
「こうやってね、両方やると、感覚が繋がるんだよ」
 蜂屋がそう言い、安久津の乳首を片方で摘まみ、もう片方の手でペニスを握った。
「んっ……やっ」
最初のうちは、乳首には何も感じない。ペニスの方が気になった。
 扱かれ始めると、躰の奥が熱く感じてきて、オナニーをしているような気分になってくる。だが、それは他人の手で行われていて、自分ではない。
「ん、……はぁっ……やっ……やだ……」
 本気で嫌だと最初こそ抵抗するように、声に出した。けれど、蜂屋は慣れたように安久津のペニスを扱き、段々と安久津のペニスが反り起ってくる。
「はぁっ……はぁっ……やだ……あっやだっ」
駄目だと分かっているのに、ペニスは勝手に快楽を得ようとしてくる。生理現象だから仕方がないと分かっていても、熱を帯びてくるのはそれだけではないことが、悔しがった。
「あっああッ……んっ、ふっ、あッ、んっんっ……はぁっ、んぅっ……」
 やがてさらなる変化が訪れた。安久津のペニスが気持ちがいいと感じて勃起したように、それに連動するかのように、何も感じないはずの乳首がペニスと直結したかのように何かを感じ始めた。
「やっああっ、そこっ……だめ、あっあっあっああっ」
 嬌声が漏れ始めると、蜂屋は機嫌が良さそうに微笑んだ。
「乳首が感じ出しだんだね。そうだよ、これが気持ちがいいってこと。こっちも舐めてあげるね」
 蜂屋はそう言うと、舌でもう片方の乳首を舐め始めた。
 ペニスを扱かれ、乳首を片方は抓られ、片方が蜂屋の舌で舐められる。それが初めての経験でも、十分以上もされ続ければ感覚が生まれる。
それは快楽の方への感覚で、安久津は初めて感じる快楽に戸惑った。
「ああぁっ! んっ、はっあっあっ、ちくびっだめっ……あっあぁんっ」
「何が駄目だの、気持ちいいっていうんだよ」
「ひああっ、もっ、ちくび……だめぇっ……おちんちん……だめっあっああっ……」
一気に攻められて、安久津は嬌声を上げ続けた。
 自由にならない躰なのに、快楽は得られる。
 蜂屋が言っていたように、躰の動きを麻痺させ、レイプに使うというのは本当のことなのだろう。実際、安久津はそれで襲われている。
「ひあっ、あっあっ、あっふあっあ゛あーっ……」
「……乳首がビンビンになってるよ。恥ずかしくないの?」
「もう……やっあッあんっあんっあぁーっ……」
「やらしい……。乳首とおちんぽ気持ちいい? 正直に言って、嘘はいやだよ?」
 そう言いながら蜂屋は、安久津のペニスを一層強く扱き、更に乳首に噛みついた。
「あぁっいいっ……きもちいっ、乳首も、ちんぽもぬるぬるで、感じるっ、いいっ……ああんっ、あっあっんんっ、ああぁっ」
 もう耐えられなかった。
 気持ちいいものはいいのだ。そう正直に言わないと、イカせて貰えないかもしれない。その方が辛かった。
「淫乱……なんだね。でも私はそういう子が好きだよ」
 安久津のペニスは先走りが漏れていた。蜂屋はその先走りのぬめりを借りて、更にペニスを扱き、亀頭を親指で撫でてやる。
「ちがっ……ぁんっらめっあっ、ぁんっ、あっ、あっ、あっ」
「嘘つきは嫌いだよ。淫乱なんだよ君は……知らない男に乳首を摘ままれ、舐められ、ペニスを扱かれて、絶頂して射精しちゃう子なんだよ。そういうのを淫乱っていうんだよ。覚えなさい、君は淫乱だっ!」
「ああぁっ…ひあっ…あッ、乳首っもっ……おんぽもっおかしくなっちゃったからぁっ…あっあっい、いくっぅあぁあああ――――――んっ!!」
 動かない躰が一瞬だけぴくんと跳ね、安久津は絶頂を迎えた。
 蜂屋はそれに合わせて、乳首を強く噛み、摘まみ上げた。射精をすると同時に合わせて、乳首も絶頂になるように仕込んでいるのだ。
「い゛っああっ、ひっあっああーっ…」
 乳首を一緒に噛まれ摘ままれたことによって、安久津は二度イキをした。絶頂を迎えたタイミングで、更に絶頂をさせられたのだ。
 安久津のペニスからは、大量の精液が溢れ出て、安久津の腹部を濡らした。


3

「ほら、君は淫乱だ。知らない男の手で絶頂をした淫乱だ」
「……あひっ…うあっ、あっ……」
 躰を蹂躙されたこともそうだが、耳からも犯されている。
 確かに知らない男の手で躰を弄られ、絶頂を迎えるなんて普通ではない。
 躰の自由を奪われているとは言っても、もう少し抵抗できたはずだ。しかし、自分はその抵抗をあっさり捨てて、快楽を取ってしまったのだ。
 安久津はそう思い込んでしまった。元々意志が弱いところがある安久津は、自信満々に価値観を植え付けてくる蜂屋に洗脳されかけ始めていた。
 安久津は自分の思考回路が、少しおかしくなっていることに気付けなかった。
「さあ、これを塗って少しほぐそうか」
 蜂屋がそう言い、安久津の足を広げ、躰を折り、尻を高く上げた。
「……いや、何……?」
「これを塗って、もっと気持ち良くするための準備をするんだよ」
 蜂屋はそう言って、ドロリとした液体を安久津のアナルに塗った。
「ひゃっ、あぁっ」
それと同時に蜂屋は安久津のアナルの中に指を一本忍ばせた。
「は、ぁ…そんな、ぁ…」
 滑りを借りた指は、あっさりと一本の指を受け入れた。痛いと思っていた安久津であるが、その感覚がないことを不思議に思った。
「うっ……? やっ、ぁっ」
 アナルの中なんて気持ちが言いわけがない。安久津はそう思っていた。けれど、内壁を何度も擦られているうちに、蜂屋が安久津のいいところを見つけた
「ひ、ひぃっ…あぁんっあぅうう! あっあっあっ! ひぁっ……あーっあーっ!」
 悲鳴に似た嬌声が上がったことで、蜂屋はそこを攻めてくる。
「みーつけた。ここ気持ちがいいでしょ。前立腺」
「ひっあっぁあっぁひぃっあっ……もっやぁっあっひぁあっ」
「もう一回、イッておこうか。ほら、アナルを弄られて、絶頂するんだ」
「ひぁあっ、ああああああんっ!」
コリッとそこを抉られるように撫でられ、安久津はあっさりと絶頂を迎えた。
 鉛のように重かった躰が多少、回復してきたのか、痙攣するほど絶頂において躰が大きく震えた。
「はっ……っ、ああぅ……」
 今までこんな大きな絶頂を迎えたことはない。
「知らない男の手マンでイクんだね。本当に淫乱だ、君は。すばらしいよ」
「ちがう……いやだ……こんなの……あっあっ」
 泣きそうになりながら、蜂屋の言ったことを否定しようすると、蜂屋の機嫌を損ねたのか、蜂屋が達したばかりの安久津のペニスを掴んで、また扱きだした。
「あ゛ぁあぁーっ……あひっ、あ゛っいっあ゛っんっだめっ、あぁあっ」 
 達したばかりの敏感なペニスを扱かれ、安久津の躰が何度も跳ねた。
「嘘は嫌いだって言ったよな?」
「あ゛っ、あああーっ……ごめん……なっさい……っ!」
「大きいちんぽが好きって言え」 
「あ゛ーっ…あーっ……おっき、ち〇ぽ、すきっいいっすきいぃっ……っ」
「じゃあ、これをくれてやろうっ」
 そう蜂屋は言うと、絶頂しそうになっている安久津のペニスから手を引き、安久津のアナルに凶悪なペニスを一気に突き刺したのだ。
「ひ、っぐ、ううっ……やだ、あっむりっ、壊れるっ……こわれる……っ」
 滑りを借りた蜂屋のペニスは、安久津の広げた孔にすっと入って、キチキチになりながらも根元までしっかりと入り込んだ。
「いや、いやっ……いや、やめて、入れないで……っいや、あぁっあああぁ!」
「ふ……全部入ったよ……思ったよりも君が柔軟で助かった」
「やだ、なんで……っ、こんな……あぁ、あー……っ」
 みっちりと入り込んだまま、蜂屋は馴染むまで、動こうとはせずに、安久津が蜂屋のペニスをひねり出そうとしている感覚を楽しんでいた。
「あ、は……あぅ、あうぅ……」
「君が、私の思う通りの人間で良かった。簡単に絶頂して、アナルにスッポリとペニスを銜え込むような、本当の淫乱。ほら、今も私のペニスを内壁でしっかり受け止め、抱え込んでいる」
「あー……っ、そんなのっ……してなっ……あっ……あう……」
 何度も蜂屋は安久津の淫乱と罵った。しかし、それを悪いこととは言わず、とてもいいことだと言うのだ。蜂屋にとって、安久津が淫乱であることが望ましいことだった。
「さて、もっと淫乱になって貰おうかな」
 蜂屋はそう言うと、腰をゆっくりと穿ち始めた。
「ひああぁっ……あひっ、ん゛っおっあああっ、ひあぁっ、ああああぁ……っ」
 想像以上の快楽が押し寄せてきた。ただの苦しいだけの行為かと思っていたが、アナルの中はすっかり蜂屋のペニスを喜んで受け入れていた。
「あ゛あぁーっ……だめっ……はいって、あ゛あぁっ……、こすれてるっ…、なか、いっぱいにっなってる、あ゛っあぁ……っんっあああぁっ……!」
 内壁を圧倒的な熱さで擦られ、それが背筋がゾッとするほどの快楽として伝わってくる。出たり入ったりする、その行為こそ、セックスと呼ぶものであるが、これはれっきとした強姦である。
 犯されているというのに、安久津の躰は、蜂屋の行為に喜んで嬌声を上げるように指示をしてくる。
「ああぁんっ……なかっ、犯されてるっ……! せっくすしてるっ……あぁっあ゛っあーっ…」
「そうだよ、犯されているのに感じるんだよね、君は淫乱だから」
「ひあ゛あっうあっあんっあんっあんっ……あんっあんっあんあんっ!」
 段々と蜂屋の動きが激しくなり、ペニスの出入りが急速上がる。反り返った凶悪なペニスが、内壁を抉り入り、掻き出すように出て行く感覚を、快楽として認識した安久津が抵抗できる術はなかった。
「あ゛っああっいいっはげしすぎっひっ……あんっあんっあんっ……あぁっあ゛っうあああっ」
「セックスが好きだよね?」
「あぁっあ゛っあんっセックスっすきっすきっ……! ああっい゛いっ…きもちいっ、んっあ゛っああっ」
 それは本心であった。
 安久津はこの行為を知った時は、そんなので気持ち良くなるなんて、あり得ないと思っていた。その考えはさっきまで変わらなかった。けれど、今はどうだ。この行為に自分は嬌声しか上げてないではないか。
「あ゛ああーっ……いくっ、いくぅっ! ふあぁっあ゛っあぁあんっ!」
 何度目かの絶頂なのか、もう覚えてはいなかったが、頭の中が真っ白になるほど、飛ぶというくらいに感じて絶頂をしたことはなかった。
 その絶頂が訪れ、安久津は精液をペニスから吐き出した後、尿を漏らした。
 その尿は、安久津の胸に大量に垂れ、躰を伝ってラグに染みこんでいく。「はあぁ……っ……、あぅ……!」
 大量に出た尿が治まると、蜂屋が笑った。
「良すぎて、放尿までしちゃうんだ。淫乱すぎるよ、君は本当に淫乱だ」
「ぁあっ……は……ぅ……っひ……ぁ……ぁっ」
 安久津には返す言葉はなかった。
 蜂屋の言う通り、自分は淫乱なのだ。
 気持ち良くて放尿するなんて、AVの世界だけだと思っていた。それなのに、どうだ。自分がその通りにしているではないか。それも初めて会った男に無理矢理の強姦でだ。淫乱じゃなかったら、もっと抵抗できていたはずだ。
 そう思えた。


4

「でも、まだ私は終わってないんだよね……っ」
「ぁあうっ……あー! あっあひぃっひっあっあっ…あ――ッ!!」
 絶頂を迎え、まだ痙攣している躰を蜂屋が強引に動かす。
 冷めやらぬ快楽がまた襲ってきて、安久津を翻弄する。
「あぁっああぁんっ! ああぁっ、あんっあんっ、ふぁっ、だめええぇっ」
「いいと言え、嘘は嫌いだって覚えろ……っ」
「ひぁあっそこっあひっ…おかしくなるっ……あつい゛っあっあっあんっあんっあんっあぁんっ!」
「どうして欲しいか、言え……っ」
「あぁあっ! 乳首っ、乳首っさわってぇっ、んぅっ、こりこりってして、舐めて吸ってぇあぁあんっ」
 安久津は思っていることを口にした。
 もはや制御することはできない。
「片方は舐めてやるから、片方は自分で弄ればいい。もうほとんど麻痺は取れてきてるはずだ」
 蜂屋はそう言って乳首を吸ってきた。
 言われた通りに安久津は自分の手でもう片方の乳首を指で摘まんだ。本当に麻痺は取れており、自分で乳首をこね回せた。
 それが異常に気持ち良かった。
 これから先、オナニーをする時でも乳首を弄って、それだけでイケそうなほどの快感が得られている。
「あああぁっ! あぁっ、ちくびぃっ、いいっあぁんっ、ふぁああっこりこりっいいっ舐めてっもっと舐めて……かんでっあぁああぉぉっ!」
 舐めながら噛んでやり、引っ張ってから離してやると、安久津は痙攣しながら達した。しかし空イキというやつで、精液はでていない。
「他には何がいい?」
「あぁっ、はいって、るっ……っおっきいおちんぽがぁ、おれのなか、あっあぁんっ……いいっいいぅ……きもちっいいっあぁあっ!」
 空イキしながらでも、まだ動いている蜂屋のペニスにすっかり魅了されたのか、ペニスが出入りしているのを眺めてうっとりし始めた。
 あの花の汁には、少々の麻薬のようなものが混ざっていて、麻痺させた上で言葉で攻め続けると、洗脳に近いことができてしまうのである。
 だから安久津が素直になっているのは、蜂屋に洗脳に近いことをされているからだ。
「ひぁんっ! あぁっ、くださいぃっ、せいえき、おれのっけつにぃっああぁっもいくっ、いくっ! んんっ、あんっあんっぁあんっあああああぁっ!!」
「くれてやるよ……んふっ!!」
 安久津は自分で両方の乳首を指で弄りながら、蜂屋に急速に高められ、一気に絶頂をした。
 それに合わせて蜂屋も安久津の中で精を吐き出す。
「っひぁっ!? んっ、や、ああぁんっ!」
 安久津はその精液を受け止めながら、ドライオーガズムを迎えた。
「ああぁーっ! あっあぁっ……ぁんっ」
 蜂屋のペニスが出て行くと、ドロリとしたものがアナルから溢れて出てくる。
 しかし蜂屋のペニスはまだ半起ちをしており、まだまだセックスができそうなほど、体力も余っているように見えた。
 安久津は、そんな蜂屋のペニスを見て、ゆっくりと躰を起こす。
「欲しいなら、どうすればいいか分かるよね?」
 蜂屋がそう言うと、安久津は何の迷いもなく、蜂屋のペニスを口に咥え、頭を上下して扱いた。
「んっんっふぅっんっ…ちゅっ、れろっ、んんっ……」
「そういい子だ。美味しいだろ?」
「んんっ、んっんっふっ…んぅっ、んんーっ」
 安久津が舐めて扱いてとしていると、蜂屋のペニスが復活する。反り起ったペニスを安久津は美味しそうに何度も舐めた。
 そして、それが欲しいと蜂屋の前に腰を出し、お尻を両手で広げてアナルを見せた。
「はぁっ…おれのここに、おちんぽ、奥まで挿れて、っめちゃくちゃにしてほしいっ、ん、おちんぽ、ハメハメされてイキたいっですっ!」
言われなくても欲しいものがあれば、言えばいい。そう蜂屋が安久津に教えたことで、安久津は欲しいものは欲しいと言うような洗脳をされていた。
 広げたアナルからは、さっき蜂屋が吐き出した精液が溢れてでてきている。
「……君は、見事な淫乱だっ」
 蜂屋はゴクリと喉を鳴らし、安久津の行動を褒めた。
 そして反り起ったペニスは更に大きさを増して、安久津のアナルの中へと入っていく。
「あ゛ああっいいっいい、おしりきもちいいっ…あんっあんっあんッ、いくっあああっ!」
 蜂屋が数回、腰を掴んでペニスを挿入しただけで、安久津は空イキをする。ガクガクと震える安久津の躰を蜂屋は支えながら、更に激しく突いた。
「いいっ気持ちいっ……ぁあ、はぁんっいいよぉっあんっあんっいいっいいっ……あんああっ!」
 安久津はひたすらいいと嬌声を上げ続けた。
「あ゛あああっいくっああッ、いっちゃうっあぁああんっ!」
 再度蜂屋が安久津の中で射精をして、安久津も射精をした後に、また放尿をして果てた。


 それから、あの廃園の温室は改修工事が行われ、しっかりとした建物に変わった。周りは皆、あそこが研究室として生まれ変わったことを知ったが、自分たちとは関係ことなので、すぐに記憶の彼方に消えた。
 肝試しの人間が入ることはできなくなったが、そこに通う安久津の姿あった。
 あれから安久津は、そこで描いた絵を展覧会に出し、最優秀賞を貰って画家としてデビューをした。
 そんな安久津には熱狂的な信者がいて、彼の絵を全て買い上げるパトロンが付いていた。そのお陰で、絵の価値が上がり、依頼も殺到するほどになった。
 安久津画家の得意としている絵は、白の花の木。
 安久津は、夢に見た木であるといい、実在はしていないというが、似た木があることは知っている者は知っていた。
 安久津はあの立て直した廃園の研究所に今でも通っている。
 もちろん、絵を描くためでもあるが――――――。

「ほら、どこが気持ちいい?」
「あぁんっ、蜂屋さんのっおちんぽで、お尻ま○こぐりぐりされてっああっきもちいっあんっあんっ……おちんぽっきもちっいいっ」
 蜂屋の凶悪なペニスが、安久津のアナルを深々と抉っている。その床には何度も吐き出した精液が飛び散っており、果てないセックスが続いている。
「あぁあんっ、きもちいいからぁっ……おちんぽっでっいくっい゛いっあっああっいく――――――っ!」
 安久津の精液がガラス窓に吐き出される。
 研究所は、立て直したのだが、位置関係はそのままで、安久津が最初に犯された部屋は今でも同じ白い木があり、窓ガラスの向こうは見ようと思えば覗き見ることができる公園の端の対岸である。
 そのガラス窓に安久津を押しつけ、蜂屋が挿入を繰り返し始めた。
「あぁっあんっだめっ……イったばっかりなのにっ……あぁっあっんっ」
「私はまだイってないんだよ淫乱くん」
「あぁあんっイって、イってっ好きっ…俺のなかで、イってっ……あっあんっあんっああぁ――――――んっ」
 二人の空間は、永久に残される。
 白い木の魔法に飲まれながら。

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