R18novel短編

gasp-1

 森江は、深夜のカラオケ店の正社員だ。
 本当は営業に配属されていたのだが、現場を知っておくべきだという、会社の方針でカラオケ店の従業員として、先月の研修会が終わったとたんに配属された。
 本当は、本社はこうやって正社員がいないカラオケ店の深夜シフトに入れるために、新卒を採るのだという。そう騙されたと言っていい。
 森江以外の新卒は、配属が決定的になった時に皆辞めてしまった。森江もできれば別の会社に就職をしたかったが、目先のお金が必要だった。
 両親が離婚してしまい、経済的なサポートが貰えなくなったからだ。
 大学まで出してもらってカラオケ店の従業員では申し訳ないという気持ちはあるが、両親は既に森江に興味がなく、双方とも連絡は取れなくなった。
 仕方がないので、他の就職先を探しながら、深夜の仕事をこなした。
 とはいえ、やることはバイトと同じ。受付はベテランバイトに任せ、飲み物や食べ物を運ぶ役割が与えられている。
 正社員とはいえ、店長ではない上に、ベテラン従業員がいたりするので、森江の役割は重要なことはない。そのベテラン従業員もまた新卒で入り、そのまま居着いてしまった人である。
 これではマズイと思い、就職先をやっとの思いで見つけた。
 やっとそこへの転職ができるようになった。
 店長に話を通し、辞めることを告げる。
「そう、仕方ないね。うん、上には言っておくよ」
 店長も慣れたもので、森江の言うことはあっさりと受け取った。
 辞めるまでに一ヶ月あるので、それまでは森江も深夜の仕事はする。そういうことで話がついた。
「森江くん、本当に丁寧に働いてくれるから、勿体ないよな」
 従業員の松尾がそう言った。
「ありがとうございます。でも深夜はちょっとキツくて」
「あー、そういう人の方が多いしね。あ、いらっしゃいませ」
 受付で話していると、五人ほどの男性グループが入ってきた。
 深夜を回って一時間ほどは受付も忙しいのだが、満室になると暇になる。
「パーティールームの予約入れたものだけど?」
「はい、良知(りょうち)様ですね。こちらにご記入をお願いいたします」
「はーい」
 良知と呼ばれた人が記入をしている間に、森江は部屋の鍵とリモコンパッドにおしぼりなどをお盆に載せて、案内の準備をする。
「料理の方はパーティー用のものをすぐにお持ちいたします」
「うん」
「ご案内致します」
 森江が先を歩いて、パーティールームへと連れて行く。
 入り口の手前の方はヒトカラ用の個室が多く、奥に行くほど人数が多い用の部屋になる。その中でパーティールームは二つほど。殆どが日中はカラオケ講座などの人達が使っていることが多く、夜にだけ貸し切りパーティールームになる。二十人ほど入ることができる広さで、同窓会などの場合は二部屋を貸し切る人が多い。
 だからなのだが、五人でパーティールームを借りる人は珍しい方だった。
 予約を入れたなら、値段も手頃な手前の部屋で十分、事が足りたはずだ。
 そんなことを思いながらも、部屋のドアを開けて中へ入る。
「へえ、広いな」
「おお、いいな」
 五人は口々にそう言って、部屋の奥の方へ入っていく。
 五人では、奥まで入ってしまうことになって、入り口付近がガラ空きになる。
「こちらがリモコンになります。使い方の方は分かりますか?」
 そう森江が尋ねると、良知が言った。
「分からない。というかカラオケは始めてなんだ。お兄さん、教えて」
 そう言い出したのだ。どうみても大学生の集団なのに、カラオケが始めてとは思わなかった。
「分かりました。では、何か歌いたい曲はございますか?」
「あ、××の○○って曲」
「では、このように……」
 タッチパネルで操作の説明をし始めたのだが、良知以外は聞いていない。しかも聞いている良知に至っては、何故か森江の腰に手を回している。その手が腰を撫でるように蠢いていて、森江は困惑しながらも説明に従事した。
「分かりましたか?」
「うん、検索すれば出るんだね」
「はい。では、マイクはこちらを。あとは料理や飲み物をお運びいたしますので、歌い始めて下さい」
「うん、ありがと−」
 良知はそう言うと、腰から手を離してくれた。
 変な客だなと思いながら部屋から出て、厨房からパーティー用の料理を三回に分けて運んだ。
 彼らはカラオケを楽しんでいて、盛り上がっていた。
 全ての料理を運び終わり、受付に戻って十五分ほど。他の飲み物を運んだりしていたところ、店長がやってきた。
「おはようございます」
「あ、おはよう。あ、パーティールームの人達、来てる?」
「はい、いらっしゃってますよ」
「そっか。あの子達、友達の子供たちでね、カラオケは始めてだって言うから、心配だったっけど……あ、私から飲み物のサービスだって、これ運んできて。それで、森江くんは上がっていいから」
 店長がそう言ったので時計を見ると、三時を回っていた。
 森江の仕事は今日は三時までである。店長が出勤するので、早めに上がっていいと言われたのだ。
「あ、はい。じゃ、お先に失礼します」
「おつかれー」
 厨房を通っていくと、受付には寄らないままでロッカールームへ行けるので、そこで挨拶を済ませる。厨房で店長のサービスだと言うお酒の瓶の蓋を開けてから、お盆に載せて部屋に行った。
「失礼します。店長からのサービスです」
 そう言ってテーブルに飲み物を並べた。
 すると歌っていた二人がスッとマイクをオフにしてテーブルに置いた。
「え?」
 まだ曲は流れているので大きな音が鳴っているが、異様な自体に森江は少し戸惑った。それでもお酒を飲むために歌うのを辞めたのだと思い、そのまま部屋を出ようとした。
 すると、その二人が森江の腕を捕まえ、いきなりソファに森江を押し倒したのだ。
「……っ! な、何ですか!」
 そう森江が叫ぶのだが、押さえつけてきた二人の力は圧倒的で、森江が暴れても身動きが全く取れなかった。
「テーブル、どけて」
 良知がそう言うと、残りの二人がパーティールームのテーブルを入り口の方へと寄せた。更には、ソファも一部を動かし、テーブルとソファで入り口が封鎖されてしまう。
「何してんですか! やめてください!」
 そう叫んでも全員が真剣な顔をして、森江を押さえつけてくる。ソファから、空いた床に移されて、今度は制服をはぎ取るように、脱がされていく。
「やっ……やめろっ! 助けて! 誰か!!」
 森江がそう叫ぶのだが、声はカラオケの音と、防音されている壁などに阻まれて外には聞こえない。
 パーティールームはトイレの奥にあり、一般客とぶつからないようになっている。だから助けを呼んでも誰にも聞こえない。誰かがわざわざ部屋まで来るまでは。若しくは監視カメラを見た受付の人が異変に気付いてきてくれるまでは、森江には助けはなかった。
 しかし、その監視カメラが問題だった。
 監視カメラは、奥の方の機材周辺を映していて、中央から入り口に近い森江が押し倒されている所は映っていないのである。
 森江は全裸に近い形にされ、制服はワイシャツを広げられ、中に着ていたシャツは彼らが持っていたナイフで切り裂かれた。
 ズボンもベルトを外して、一気に二人がかりで脱がされ、下着も一緒にはぎ取られた。