R18novel短編

全ては気分次第-3

 謎の男に襲われ、温泉で初めて男に犯された和志は、旅行先の温泉宿で、三時間ほど仮眠をした。
「……十九時? ……うわっ飯の時間過ぎてる!」
 目が覚めて、周りが暗いことに気付いて、手元に置いていた携帯で時刻を確認してハッとして起き上がる。
 隣では八向がまだ寝ている。
「八向っ飯、飯にいかないと食いっぱぐれるぞっ!」
 ここは山奥の秘境。もちろんコンビニはないし、近場に食堂どころか民家すらない場所だ。宿から出される食事を逃したら、拝み倒して作って貰うしかない。
「……ん、え? あ、もう七時? 起こしてくれないんだね……ここ」
 食事の時間になっても呼びに来ないのには驚いたが、確か受付でそういうことを言われたのを思い出す。
 食事の時間は夜十八時とだけ言われた。客に干渉をしないのがこの宿のポリシーで、客から要請がなければ、ほとんど放置される形になる。
 乱れた浴衣を直して、二人で慌てて食堂と言われた座敷に行くと、従業員がそれに気付いて、食事を運んできてくれた。
「間に合った……」
 食事は十八時であるが、取り置きをしてくれるのはその日の二十時までと決まっているようだった。
「あのまま寝てたら危なかったな」
「二度寝してたら危なかった」
 新鮮なモノを用意しているという宿側の気持ちを考えると、作り直しさせるのは忍びない。
 幸い、遅れたのは一時間。ばたばたとやっているうちに宿側が食事を用意してくれたようで、温かな川焼き魚二匹にひじきの煮物、大根の浅漬け、山で採れた栗のご飯と、美味しい食事ができた。
 二人で黙々と食べ、最後にお茶を飲むと、八向が言った。
「真柄(まがら)、温泉、どうだった?」
 そう聞かれて、和志は焦る。
「あ、紅葉が綺麗で、びっくりした……き、気持ち良くて……うっかり長風呂しちゃって……そういうお前も、個室風呂はどうだった?」
 そう和志は慌てて話を逸らして、八向に問うと、八向は急に顔を赤くして言った。
「あ、うん、良かったよ。景色は見えないけど、外で……その……温泉に入るのは気持ちいいね……一人だとのんびりできちゃって、逆上せちゃったけど……」
 八向はそう言ってお茶を一気に飲むと、席を立った。
「と、トイレにいきたいから、先に行くね……」
 八向はそう言って和志の返事を聞く前に食堂を出て行った。
「……どうしたんだろ?」
 八向の様子が明らかにおかしいのだが、何がおかしいのか分からない。あまり親しくしてるわけでもないから、変に指摘するのも旅行の雰囲気を壊す気がして、和志はそれ以上尋ねなかった。
 それよりも自分も尋ねられたら困ることが起こっていたので、人のことを言えた義理ではなかった。八向もおかしいと思っていただろう。
「……っ 忘れよ……」
 そうは言っても、さっき弄っていたアナルが既に疼いている。
 和志はビクリとして、お茶を一気に飲んでから食堂を後にした。
 その食堂を出たところで、和志は驚いて足が止まる。
 先に出た八向が、途中の廊下で誰かにキスをされているではないか。
 和志はやっと八向の様子がおかしいのはこれかと気付いた。恋人と来たかったが、親の知らない大人の男と旅行に行くなんて言えるはずもなく、別のグループで来て貰うようにしたのかもしれない。何せ、この宿には上手く言えば一人くらい客が増えても、休日の予約は入っていないから融通はきくかもしれない。
 八向は和志に気付いた様子はなかったが、相手の男は和志に気付いた。
 長髪の男。年齢は二十五か、いってても三十くらい。長い胸までの髪を後ろで一纏めにしている。身長は八向より十五センチは高い。だから和志とも十センチは違う。
 顔はイケメンと言っていいが、ちょっとホストにいそうな感じで、夜の商売をしている人に見えた。
 そんなイケメンは和志を見て、ふんっと鼻で笑って八向を連れて、明らかに和志たちの部屋の方へ行ってしまう。
「……あっ……」
 部屋に行かれてしまっては、和志が行く場所がなくなる。そう思って声を掛けようとした瞬間、後ろから口を手で何者かに押さえられ、さらには躰も抱き留められた。
「……んんっ!!!」
 いきなり何だと、驚いて後ろを見ると、二度と会うことはないと思っていた、和志を温泉で犯したあの男だった。
「っ!!! んんんっっ!!」
 和志は男の顔を見て驚いて、逃げようとして暴れたのだが、あれよあれよという間に、和志達の部屋とは真逆にある、一番奥の突き当たりの部屋に連れ込まれた。
 部屋に入ると、男が手を離してくれたので、和志は逃げようとしたが、入り口には男が立っている。周りを見回して窓から出ようとしたら、その先は断崖であり、深い谷が見えた。
「死ぬよ、さすがにそこから落ちたら」
 男がそう言ったので、和志は男と向き合うことになってしまった。
「あ、あんた、何なの?」
 和志がそう言うと、男は名刺を出し、それをテーブルに置いた。
名乗る気があるらしいので、名刺を取る。見ると、名前や肩書きが書いてある。
 男の名前は、樋口滉(ひぐち あきら)。肩書きは不動産会社社長。住所を見ると東京の一等地。不動産会社は樋口不動産。
「なんで、不動産会社の社長が……あんなこと……わっ!」
 名刺を必死で読んでいたら、いつの間にか樋口が和志の目の前にいる。
 逃げようとする和志に、樋口は柔道の大外刈りのように、和志の右足を真っ直ぐに引っかけ、スッと和志の躰を床に押し倒した。
「……っ!」
 ズンッと音がして、和志は床に倒されて、一瞬、衝撃で息が止まる。
 その隙に、樋口が和志の浴衣の紐を取ってしまう。
 こうなったら、浴衣は肩に掛けているだけの布に成り下がる。
「くっ……なんなんだよっ……もうっ!」
「……ふっ、余り者同士、上手くやれているじゃないか」
 樋口がそう言う。
「……あの男、あんたの連れかよっ」
「あいつはあの子の方がいいらしい。私はお前がいい、和志」
 耳を舐めながらそう言われて、和志はその声に感じた。
「ひぃっあっ! もうなんで、余り者だからってあんたとセックス、しなきゃっ……んあぁっならないんだっもうっ……触るなっんはぁっ」
 耳や首筋にキスをしながら、樋口は和志の言うことを聞かずに、和志の下着を下ろし、ペニスを取り出している。