R18novel短編

全ては君のため-1

 知野桜(ちの さくら)は、十五歳の誕生日に、叔父の借金の形に、志良堂(しらどう)という人間に売られた。
 志良堂というのは、地元の人ではなかったが、地元に別荘を持っている。夏になると家族でやってきて、二週間ほど過ごしていく。
 そんな志良堂家は、その地元では金貸しをしていた。段々と産業や農地を買い上げていく様子に、地元の人間はよい顔をしなかったけれど、文句を言っていた人間ほど志良堂に金を借り、返せなくなっては地元から夜逃げをしていた。
 桜の家は、桜が九歳の時、両親が事故死をした。対向車線からはみ出してきたトラックの事故だった。その時、桜は学校へ行っていて、事故車には乗っていなかった。
 そんな桜を引き取ったのは、地元に住んでいた母親の弟の叔父だった。だがこの叔父は、桜に渡っていた両親の保険金をあっという間に使い潰し、更には志良堂にも金を借りていた。
「こいつを使って、金を借りれないかね?」
 そう叔父が志良堂に言った。
 志良堂の家に連れて行かれた桜は、そこの大学生の息子で次男の驕iたかし)と少し仲が良かった。図書館で会ったり、道ばたで会った時に話をよくしていた。驍ェ何処かを見たいといえば、そこへ連れて行き、二人っきりの時間が増えていた。
 叔父の提案に、志良堂の当主は迷うことなく、桜だけに問うた。
「これに我慢ができれば、叔父さんに金を貸してやってもいい。もちろん、何かあった場合、私が君の面倒を見る。大学もちゃんといかせてあげるし、就職も私の会社に席を用意しよう。よく考えなさい」
 志良堂はそう言った後に、その条件を提案してきた。
「驍ェ君を欲しがっている。意味は分かるね?」
 意味は分かっていた。
 その前日に、驍ゥらキスをされ「君を抱きたい」と告白されていたからだ。
 十五にでもなれば、求められていることも理解できる。
 選んだ結果も、断った結果も。
 選べば、驍ニ寝ることになり、一生飼い殺しをされるということ。
 断れば、叔父に別の誰かに売られるということ。その場合、志良堂ほどの良心的な相手ではないこと。
誰かとセックスをしなければいけないとすれば、驍ェ一番マシだった。
「叔父さんにお金を貸してあげてください。お願い致します」
 桜にはそう答える道しか残っていなかった。
 志良堂は桜の身柄引き受けに、叔父に対して五千万円を出した。それは奇しくも両親の残した保険金の値段と同じであった。
 自分は両親の命の値段で、売られていくのだ。

 その日の夜には、志良堂の家に招かれ、驍ノは喜ばれた。
「よかった、君が来てくれて、嬉しいよ」
 笑顔の驍ノ、桜は曖昧な笑みを浮かべた。
 来たくて来たわけではなかった。行くところがなかったのだという認識がそんな顔をさせた。
「おいで」
 驍ヘさほど気にした様子はなく、桜を部屋に招いた。
 いきなり寝るのか、そう認識をしたのだが、部屋には食事が用意されていた。
「夕食はまだだっただろ? 今日はいい肉が手に入ったんだ。ミディアムは嫌いだって言っていたから、ちゃんと中まで焼いてもらったから食べられるだろ?」
 そう言われて席を勧められた。
 戸惑いながらも、驍ヘ食事を勧めてきた。
 確かに食事は美味しかった。肉もちゃんと焼かれていたし、付け合わせなども食べたことがない美味しさで、思わず笑みを浮かべてしまうほどだった。すっかり打ち解けて、いつも通りに驍ニ話をしたと思う。
 そして十時を回った。
 驍ヘ立ち上がり、桜に近づいてきた。
「……っ」
 もう逃げ道はない。そう桜が躰を強張らせると、驍ヘ桜の頬を両手で包んで顔を上げさせ、桜にキスをした。
 それは触れるだけのキスではなく、苦しくて開いた口の中に舌を潜り込ませて、舌が絡み合うキスになった。
「……んんっ……はぁああっ」
 キスが甘いなんて、人は言っていたが、本当に甘いのだと桜は思った。
 驍ヘ、頬や額、耳にと、顔中にキスを降らせてから言った。
「君を抱きたいけれど、君から抱かれたいと少しでも思って貰えるまで、キスや触ることで我慢するよ」
 驍ヘそう言い。
「怖がらせて悪かった。おやすみ、桜」
 そう言って部屋を出て行った。
 部屋のドアが目の前で閉まってしまった。
 すっかり、セックスをするのだと躰を硬くしていた桜は拍子抜けした。驍ヘ確かに桜のことは好きだが、無理強いはしたくないと言ってくれたのだ。
 ホッとするやら、拍子抜けするやら、気分はあがったり下がったりと、今日は忙しい。けれど、覚悟していたことを先送りにしてくれたのは有り難かった。
 この時は、桜はそう思っていた。

 次の日から驍ヘ、桜を見つけると誰が見ていても平気でキスをしてくるようになった。初めは恥ずかしかった桜だったが、段々と甘えるようにキスをしてくる驍ェ、可愛く思えてきた。
 執事の人が言うには、甘える驍ヘ珍しいのだという。父親に期待をされ、帝王学を身につけてから、我が儘は一切言わなかった。甘えるなんてことを許される環境ではなく、最後には両親すら心配するほどできた子供になってしまった。
 だから、驍ェ桜が欲しいと言い出した時は、志良堂の力を尽くして、桜のことを調べたのだという。
桜が環境がよくないところにいることを知ったから、あんな提案だったが、驍フところに来る方が桜には幸せなのではないかと、驍フ我が儘を受け入れたのだという。
 驍ヘいい人である、そう執事に植え付けられた知識が、すぐに崩壊することになろうとは、桜もこの時は思いもしなかった。

 ある日、寝ている桜の部屋で物音がした。
 ふっと、目を開けると、桜の目の前に大きな手とそれに握られたペニスがあった。
 あまりの出来事に硬直していると、自分の上ではぁはぁと誰かの喘いでいる声がする。
「……さくら……ああっ」
 それは上擦ってはいたが、驍フ声だ。
 では、目の前にあるペニスは驍フものなのだ。
 何故、こんなことを? そう頭の中が混乱してグルグルとしている。清楚なイメージがある驍ェ、こんな卑猥なことをしてくるとは思ってもいなかったのだ。
 けれど、ここで目を覚ませば、どっちも気まずい。そう思い、桜は黙っていることにした。
 けれど、なかなかその行為。オナニーが終わらない。
 先走りで滑った驍フ反り起ったペニスが、目の前にあり、それがいやらしいそうにピクピクとしている。
 桜は今まで他人のペニスをマジマジと見たことはなかった。小学校時代の修学旅行は風邪でいけなかったし、中学の修学旅行は両親の事故で取りやめた。高校に入っての修学旅行はまだなので、誰かのモノをはっきり分かる形でみたことはなかった。
 それが目の前にある。ピクピクと達しそうな状態のペニス。部屋が暗いから黒々としたそれが凶器に見えるように反り起っているのが、ありありと分かるくらいの明るさで、しっかりと目に入ってしまっていた。
 驍ヘすっかり自分の世界に入っているのか、こっちが見ていることに気付いていない。
 やがて。
「さくら……ああ、さくらっうう……っ」
 驍ェ射精をした。
 吐き出された精液は、目の前に置かれていたタオルに吐き出され、大量の精液が飛んでいるのが見えた。
「はあ……はぁ……はぁ」
 達した驍ヘ少しだけそのままの余韻でいたが、やがてゴソゴソと動き出し、桜の上から降りた。桜は自然と目を瞑って、驍ェ去るのを待った。
 驍ヘタオルなどを片付けると、桜の頬にキスをしてから部屋を出て行った。
 シンとした部屋の静寂が訪れて、桜はガバリと布団から起き上がった。
 手で顔を覆って、さっきまでの緊張感を抜くように深呼吸をした。
「あんな……あんなの……」
 黒くて鋭い凶器みたいなペニス。あれが自分を犯そうとしているなんて。
 そう考えただけで、恥ずかしくて死にそうだった。それにあんな大きなモノが自分のアナルには入るわけがないとさえ思えた。
 驍ヘ待ってくれると言った。けれど、それは桜との性行為の話であって、ああいうことを、これまでにもやっていたのかもしれない。
 自然と失望感はなかったが、それでも桜がそういう意味で望まれているのだというはっきりとした意思表示を見せられた気がした。