R18novel短編

玉響-1

 その日は祖父の葬式だった。
 父親方の祖父で、生きていた時は大きな会社を経営し、会長として長く君臨し続けた。病気で亡くなると、会社の人間たちが大きな葬式を用意したほどであるが、普通の家庭に育った明(めい)は、その祖父には一回しか会ったことがなかった。
 祖父の気に入らない女性と結婚した父親は、一族の中から爪弾きにされていたからだ。それでも後継者争いから一番早くに脱出したのことで、同じ後継者争いをしていた兄からは、信頼を得ていたらしく、繋がりはあったし、母親である祖母とも繋がりは切れてはいなかった。
 そのため、葬式には呼ばれてしまうわけで、参加したとたん、周りの空気の悪さに居心地が悪くなり、明は葬式会場を抜け出し、祖父の大きな屋敷に戻っていた。明が一人いなくなったところで、問題は何もない。抜け出す時も誰も明を咎めなかったからだ。
 葬儀場で話を聞いていると、どうやら会社の跡継ぎは兄に決まっていて、一昨日祖父が亡くなった段階で遺産相続も済んでいるらしい。らしいとははっきりとそう決まったと聞いたわけではないが、人々がひそひそと話しているのが聞こえてきただけだ。
 そこに弟である明の父親が現れたら、印象が悪いのは当然だった。
 しかし兄弟は長く話し合っていて、不仲説は一掃された。
 そんな兄には、楽(がく)という明よりも五歳上の子供がいる。
 その楽はその場から早々と退出していた。
 噂では祖父とは犬猿の仲と言っていいほど悪く、大学の段階で家を出て、さらには会社には入らずに一人で起業しIT企業のちょっとした顔になっているのだという。祖父はそんな楽の妨害をしようとしていたらしいが、父親がそれを止めるように助けていたらしい。
 親子仲は良く、父親の顔を立てて一応は葬儀には参加したということらしい。
 それでも葬儀は会社主体で行われているため、孫がその場にいなくなったとしても問題はない。犬猿の仲ということは誰でも知っている。
 明は葬儀を抜け出してから、自宅の方へ戻ると庭に回った。
 この屋敷に来たのは覚えている。中でも庭が気に入っていて、ずっと庭にいたと思う。そんな庭は池や山に見立てたものがたくさんある。秋には紅葉がたくさんあったことも覚えているが、今は青く茂った木々があるだけだ。
 それをかき分けて奥まで入っていく。
 奥まで行くと葬儀で鳴り響いている音がほぼ聞こえなくなる。屋敷はそれほど大きく、維持費だけで馬鹿にならないと伯父さんが愚痴っていたので、多分建て替えて実用的にされるのだろうと言われていた。
 確かに防犯上もよくないことは分かる家である。
 そんな家を眺めて裏までくると、そこには楽が立っていた。
 楽は明がやってくるとニヤリと笑った。
「やっぱり、あの時の、お前だったんだな」
 楽は明に近づいてくると、明の顎を掴んでいきなりキスをしてきた。
「……ん」
 噛みつくようなキスであるが、明はそれを素直に受け止めた。
 明は、実はゲイである。
 自分がそれに気付いたのは、中学生の時で、高校では既にゲイの集まりに参加したりしていた。大学では恋人も男であったが、つい先日、その恋人とは別れたばかりでもあった。
 理由は、明が浮気をしたと恋人に主張されたことだ。
 要するに相手が明に飽きてそう言い出しただけのことで、明はあっさりと男と別れてやった。別れてくれと言われたので別れたら、情はないのかなど、謝罪しろだのと男が喚き散らし、喧嘩になったところを助けてくれたのが、楽だったのだ。
 もちろん名前や相手がどういう人なのかは、この時は知らなかった。
 双方が何者か知らずに出会っていた。
 明は楽に助けて貰い、酒を飲み、話が会ったので一回だけ寝た。
 バーにいれば、それくらいは普通にあることで、その場限りのことで終わるはずだった。
 実際、それから会ってはいなかった。
 けれど今日、祖父の葬儀に来てみれば、目の前にその人物がおり、紹介で従兄だったことが分かってしまったわけだ。
 だが明と楽は平然と挨拶をして、初めましてとだけ言った。あのことを除けば、会ったことは本当になかったからだ。
 けれどその時、楽は明に聞こえるように、葬儀を抜け出して屋敷の一番奥の裏庭に来いと言ったのだ。
 だから明は、抜けてもかまわないという父親の言葉を真に受けて、上手く葬儀を抜け出してきた。
 楽が何を考えているのか、聞き出す為だったのだが、想像は裏切られた。
 てっきり口止め辺りだと思っていたから、キスを求められた時に、ああそっちの方かと理解はできた。
 深いキスが終わると、楽は明の腕を引っ張って歩き出し、裏口から屋敷の中に入った。そこは入り口が分厚く、部屋の中は奇妙な空間だった。
 二十畳ほどの部屋の入り口には小さなキッチンがあるが、その部屋の中心にはダブルベッドが置いてある。そして周りにはSMで使うような道具が並んでいた。
「……なに、これ……」
 思わず引いてしまった明がそう口を開くと、楽はベッドに座ってから言った。
「祖父さんの秘密部屋ってところかな。まあ、公然とした秘密。ここに買った人間を住まわせていたんだ。で、精神が壊れると病院に投げ込んで、また違う人間を買う」
 そう楽に言われて、明は目を見張る。
「お前の父さんは、それを知って出て行った」
 その言葉に明は、やっと事の真相を知った気分になった。
「俺の親父は気付いてなかった。とことん父親に無頓着だったんだろうな。最近になって、この屋敷の処分を巡って、ここが開かれるかもしれない。そうすれば皆の知ることになるだろうな」
その時を考えると地獄しか想像できないが、案外、明の父親が上手くとりなしていくのかもしれない。知っていたなら、隠して処分する方法もあるだろう。
 そう思っていると。
「入り口はわかりにくいし、中から鍵をかけると誰も入ってはこられない。さらには一度改装して、防音を徹底してる。だから誰も中で起こっていることなんて知らない。その入り口のドアの鍵は、俺がこっそり祖父の鍵束から抜いておいた」
 楽はそう言うと、明の喪服を脱がし、上着やズボンなどをそこにあったソファに丁寧に置いた。明もここまでされて、何をするのかと聞くほど鈍感ではない。
 楽が自分を抱きたがっているのだと理解できたし、酷いことをしようとしているわけではないことも分かった。
 祖父に対して何か思うところがあったのだろう。ぶつけられない怒りや悲しみなどが渦巻いて、どうしていいのか分からないのだ。
 明ほど離れて暮らしていた人間からすれば、祖父のことなど軽い存在であったが、楽にはそうはいかない事情がある。
 ワイシャツや下着まで脱いでしまうと、楽も荒々しく服を脱いでいた。
「こっちだ」
 楽は言って明の手を引き、奥のベッドへと連れていった。
「あいつが入院して、もう帰ってこないことが確定してから、ベッドは買い変えた。あいつが死んだらお前が来ると思って、準備をして待っていた」
楽は明をベッドに押し倒すと、すぐにその体をむさぼるように犯し始めた。
 楽はちゅちゅっと首筋などに吸い付いていたが、手が明の乳首を摘まんでくる。
「ぁっ……あああっ、あんっ」
 乳首が気持ちがいいなんて、誰かと寝るようになってから知った。開発されるように乳首は敏感になり、エッチなことを考えるとそれだけで乳首が起ってしまう。今だって楽が少し触れていじっただけで、乳首が勃起しているように硬くなり、乳首は楽が摘まみやすくなるようになった。
「んんっ……ふぅ、ん、ん……」
楽の舌が張ってきて、片方の乳首に辿り着く。
口に含んで乳首を吸い、噛みついてきた。
「やあぁっ……あ゛っああっ……」
 指で明の乳首を撫で回しながら、楽は言った。
「前から思ってたけど、乳首の感度良すぎだよな」
「あっ……あっ……あぁっ……」
 乳首を舐められ、撫でられるだけで腰が抜けたようになり、ガクガクと躰を震わせる。もちろんそれは気持ちがいいという理由でだ。
「エロい乳首しやがって……気持ちいいのか?」
「んぁっ、…い、い…ちくび、きもちいっ…あっあぁんっ」
 ビクンビクッと躰が跳ねながら、明は腰まで振っている。
「……本当に乳首敏感すぎ……どれだけ開発されたんだ」
「あぁんっ! ぁっあっ、もっ、らめぇっ……ちくび、あぁっ、あんっ」
 楽にとって明は、一度寝ただけで、忘れられない躰になった。血の繋がりがあることが分かっても、止められるものではなかった。
 楽は明が親戚であることは、先に分かっていた。父親経由で知ったのだが、衝撃はなかった。妙に納得したのだ。
 俺達に未来はないのだと――――――。
「ああぁっ……んっ、あっやっ、あぁっ……」
「乳首だけで、イケそうだな」
 楽は、明の乳首だけを攻め、片方は舌で舐め取りながら、指で乳首を弾き捏ね、それを強く刺激するように激しくやった。
「あっあっあっあんっあんっあぁあっやっ――――――あああっ!!」