かわいいひと

 親が再婚した。
 父親は母親が亡くなってから、麻耶が二十歳になるまで独り身で一生懸命麻耶を育ててくれた。男手一つで子育ては大変だったろうに、それでも五歳からずっと十五年間も頑張ってきた。
 そんな父親にそろそろ後添いをと言ってきたのは父親の会社の社長だった。
 麻耶も二十歳で、家を出るから一人になるのは可哀想だというわけで、見合いを用意した。その見合いで紹介されたのは、双子を育てる同じように苦労をしている女性だった。
 その女性は父親と同じ年で、双子を産んで順調に暮らしてきたのだが、八年前に夫を交通事故で亡くした。
 それから女手一つで双子を育て上げた。
 そんな双子が母親に見合いをと社長に申し出てきた。
 自分たちはもう十八歳で、家も出る。母親を一人残して行くのは今までの苦労からしてあんまりだと思ったらしい。
 そこで同じ境遇の二人なら意見も合うのではないかと、見合いが決行された。
 麻耶はそれに賛成して、まずは父親がその人を気に入るまではその話題はしなかった。すると一年もしないうちに父親が結婚をしたいと言いだした。
「うん、いいと思うよ。俺も家を出るし一緒に暮らしてみたらいいよ」
 と麻耶も賛成した。
 早速、両家族で顔合わせの食事をした。
 女性の子供は双子で、燐と蓮と言った。十八歳だけのことはあり、身長は百八十を超え、さらには旦那が海外の人だったので、その遺伝から白人のように彫りが深く、青い目をした金髪で、モデルのような容姿をしていた。
 さすがにそれには驚いた麻耶であるが、その二人は麻耶を見るなに。
「え、可愛い……すごい美人さんだ」
 と言い出した。
 それまで興味すらなさそうに物調面で座っていた二人だったが、麻耶に興味を示したとたん、それまでの態度を改めて真面目になった。
「あら、やだ。本当、美人なお兄ちゃんになるわね、よかったわ」
 そう母親が言い、二人が照れているのだ。
 ここまで大きな姿の双子が同じように可愛く照れているのを見ると、麻耶も自然と笑顔になった。
「麻耶です、よろしくお願いします」
 挨拶をするとその場はすぐに馴染んだ。
 それから数回一緒に食事をして仲を深めたが、父親と女性はなかなか結婚には踏み切れないでいた。麻耶が押しても、まだ早いというのが二人の意見だった。
「とりあえず、一緒に暮らしてみて、お互いにどうなるか見てみれば?」
 そう言い出したのは蓮だった。燐も同じ意見で、それに麻耶も賛成だった。
 子供の方がその気になって、親たちを一緒の住まいに暮らさせた。
 その時に、麻耶も引っ越しを考えていることを伝えると、双子も自分たちも独立すると言い出したのだが、それは駄目だと揉め始めた。
「えーなんで、新婚さんの家にいくのはイヤだよ」
「そーそー冗談じゃない」
 そう母親と揉め始めた双子に手を貸してあげたくなって言った。
「あの、もしよかったらだけど、俺と同じマンションとかで隣同士とかはどう? それなら俺も二人の様子を見られるし、助けられると思うんだけど」
 そう麻耶が申し出ると、母親がそれで折れた。
「分かったわ、それならいいわ。どうなの二人とも」
 そう母親が向けると、双子はふてくされていたがそれで頷いた。
 だがその後が悪かった。
 母親の実家は旧家らしく、そのことを聞きつけた祖父がマンションを用意したのだが、そのマンションが大きかったのだ。
「え、ちょっとまって、この家賃は払えないけど……」
 一緒に住むことにまでなっていて、双子に当然のようにマンションに案内された麻耶はさすがに驚いてそう言った。
「いいよ、祖父さん母さんに甘いから、家賃とかいらないって言ってた。僕らよりも母さんが結婚するって分かったら、飛び上がって喜んで、二人のマンションも用意して、麻耶の父さんを脅してたよ。うちの娘をよろしくお願いしますよって、あれ絶対断れないと思う」
「……うわあ……だから二人とも結婚をちょっと迷ってるのか」
 理由がよく分からなかったが、どうやら麻耶の父親がその祖父に気に入られてしまい、何から何までも口出しされているらしいのだ。
「ほら、僕らがどうしようもないからさ。新しい孫が欲しいんだよ。自分が気に入った男と娘が産んだ子がね」
「え?」
「僕らの父さんがイギリス人で、それが気に入らなくて娘を暫く勘当していたんだよね。父さんが死んだ時に祖父さんが母さんを引き取ろうとしたら、母さんが拒否して、それでお互いに意地張って八年。やっと普通に結婚するって一応報告したら、麻耶の父さんを調べて、そしたら自分の系列会社の副社長で、しかも父子家庭で頑張ってるって評判がすこぶるよかったからさ、もう目の色変えて」
「……なるほど、それは父さんも不本意ってところになるなあ。どうせ、系列なら本社の方にとか話が出たんじゃない?」
「それ、それで二人ともこのまま結婚していいのかって悩み出してさ。祖父さんが余計なことすると破談するよって言ったから、何とか麻耶の父さんの方の話は立ち消えになったらしいけど、孫のことは諦めきれなくて、あれこれと~」
「母さんも年齢ギリギリじゃん。だから焦ってんの。まあ僕らとしては、早く子供を産んでくれたら僕らへの干渉もなくなるんじゃないかって思ってて、ずるいんだけど」
 一応であるが、燐と連はその祖父からの間接的な教育は受けていた。母親もそれは拒むことはできなかった。大した教育を受けずに駄目な子にしてしまうくらいなら、将来が安泰する教育を受けた方がいいと判断したのだ。
 けれど毛色の違う孫を見るのは苦痛だったらしく、小さい頃にはほとんど会ったこともなかったそうだ。
 けれど、最近になっていい男に育った二人に干渉を始めた。
「この容姿がさ、割と業界で通用するって分かったみたいで」
 イケメンっぷりをみた社員が、あまりに祖父を褒めたせいで、使い道があると思い込んだらしいのだ。幸い教育はちゃんと受けさせたので、出来は悪くないのだ。
 母親が祖父に嫌みを言われないように頑張ってきた二人だったが、それが裏目に出てしまったのだという。
「で、そこで結婚話が舞い込んできたら、あっという間に僕らの束縛の話が一気に立ち消えして、母さんがまた奮闘してるわけ。もう勝手に親子喧嘩でもやっててくれって言ったから、まあ母さんも覚悟はしてると思うけど」
 双子はそう言って、その手切れ金がこのマンションなのだという。
「僕らは麻耶とここで暮らしたい。麻耶は?」
 二人は麻耶を取り囲んで言ってくる。
 二人とも背が高いので囲まれると、十センチ以上違うのでちょっと怖い感じがする。
「俺は、もう行くところがない」
 そう麻耶は答えていた。
「なら、麻耶は僕らが貰うよ」
 麻耶が父親の選んだ道から取り残されることを実際は寂しがっているのを感じて、双子がそう言った。
 親離れがこんなに辛いとは麻耶も思っていなかった。 
 父親の子離れの方がきっとあっさりとできていたのだろう。
 それが少しだけ寂しかった。
 十五年間、父親と麻耶は二人だけで暮らしてきた。麻耶は頑張って沢山家事も覚えて、できないことも笑ってできるようになって、父親のことはずっと面倒を見ていくのだと信じていた。
 それをもうしなくていいと言われたら、ただ寂しいのだ。
「麻耶、好きだよ……」
「僕らがいるよ」
 初めて双子の前で弱音を吐いた。双子はそれを静かに受け入れてくれて、慰めてくれた。その夜は三人で大きなベッドで寝た。狭かったけれど、麻耶は大きな犬とでも一緒に寝ているような気分だった。
 
 次の日からは麻耶と双子の距離はぐんと近くなった。
 引っ越しをするまで麻耶と双子を一緒になって家具や家電などを買いに行き、引っ越し先の用意などをした。
 親はやっと子供たちが心を開いて一緒に過ごしていることに気付いて、喜んではいた。
 それでも双子の母親には、一度だけ聞かれた。
「あのね。あの子たちは基本いい子なのだけど、ただ一つだけ譲れないものがあると、どこまでも頑固になるところがあるの。それが気に入ったモノなら、多分一生執着するんだと思うわ。だから、そのごめんなさい……意味が分からなくても多分私が言っている意味を理解できる時がくると思う。先に謝っておくわ。でも私、あなたのお父さんが好きなの」
 絶対に譲れない女の部分を感じた。
 父親が麻耶にべったりなのはずっとで、それを彼女は嫉妬しているんだと思った。
 母親と同じ顔をして、その母親を未だに愛している父親。それを繋ぐ息子。嫉妬は見苦しいと分かっていてもそれでも父親のことが好きだったのだ。
 だから、母親になる人の言うことを後になって知った時は、理解したと共にそうせざるを得なかった彼女を許そうと思ったのだ。

 引っ越しが終わって双子と一緒に暮らし始めた麻耶は、彼らのご飯も作る役割を持った。双子は母親にべったりだったので、台所に立ったことがないという。
「さすが、女性と男性の違いってところか」
 親ができることは親がやってしまう。母親なら母親の役割をやっていただろうから、当然そうなるだろう。麻耶のところは父親が壊滅的に味音痴で麻耶の命が危なかったので麻耶は家庭科が始まった時に学校で事情を話して、教師に毎日の料理を習ったのだ。
 麻耶は二人と暮らしてみて、また違った生活の習慣を付けられた。
 二人は父親が海外の人なので、スキンシップが好きだ。特に挨拶のキスは当然のことで、母親とでも未だにすると平然と言われて。
「いや、普通にしないし、しなくていいから」
「やだ、麻耶としたい」
「僕もしたいからする」
 そう言うと、二人が麻耶の顔を掴んで額にキスをするのだ。通りすがりなら頬にしていくこともある。最初こそ慣れずに慌てていたが、二ヶ月もすると慣れてきて、自分からもするようになった。
 最初はやけくそでやり始めたのだが、慣れてくると分かりやすい愛情表現なので使うようになった。
 そして二人は平然と麻耶の唇にキスをする。
「愛おしくて仕方ないから」
 と平然と言い放つ二人に脱力しながらも抵抗は無駄だと諦めたのも二ヶ月目だった。
 半年もすると、父親と母親が結婚した。ちゃんと正式にだ。
 何と、子供ができてしまったのだ。
「やることやってんのにね、何をごねてたんだろうね」
 双子が呆れていたが、それでも祖父の重圧からは解放されてのびのびとし始めた。
 大学生になった二人は、とにかく二人気者で高校時代から伸び始めた身長と身体の大きさから圧倒的な人気だったらしいが、大学生になったらたまのバイトでするモデルで人気が全国区になってしまったらしい。
 しかし家ではそんな素振りは一切見せないのがさすがというところか。
 麻耶も大学生であるが、大学が方向違いの場所になるので、彼らがどこまで凄いのかは友人から又聞きするまで知らなかったのだ。
「すんげえ人気だな、お前の血の繋がらない弟たち」
 そういうのは友人の林だった。
「ん? そう、らしいね」
「プレゼントざくざく貰って凄いんだろ?」
「えー? 家にそういうもの持ってこないから分からない。受け取ってはいないんじゃない?」
 物を簡単に受け取るような性格ではないなと思いながらそう言った。
 妙なところが頑固で、一度こうと決めたら梃子でも動かない性格なのだ。
「マジで? なんか車を貰ったとか、マンションを貰ったとか言われてるぞ」
「あー、マンションはお祖父さんに貰ったとは言っていたから、それに尾ひれが付いたんじゃないかなぁ。車はまだ免許取りに行ってないから貰ってもねぇ」
 麻耶がそう言うと、林はがっくりした。
「なんだよ、プレイボーイですらないとか言うなよ……」
「なんでうちの弟をそう悪くしていくわけ? 何の恨みがあるっていうんだよ」
 麻耶の言葉に林は言った。
「俺の彼女があの双子のファンなんだよ……」
「……ご愁傷様です」
 慰める言葉が見つからない。彼らのかっこよさはそれこそ卑怯なレベルである。麻耶ですら惚れるかもしれないと思うくらいに、優しくしてもらうことがあるし、甘えてくる姿は母性本能をくすぐるはずだ。
「お前、責任を取れ~」
「わ~林、やめろ~」
 麻耶と林がじゃれていると、そこにやってきた人影が麻耶と林がじゃれているのを邪魔してきた。
「くっつくんじゃねえよ、この野郎」
 二人が抱きついてるところに、割って入ってきたのが燐だった。
「え……燐? どうしたんだ?」
「いいから、麻耶、こいつ何なんだ? 何された?」
 燐が必死になって麻耶に聞いてくる。林は燐に睨まれて怯えている。
「あ、燐、落ち着いて。林は友人、ちょっとじゃれてただけだから……林、大丈夫か?」
 麻耶がそう聞くと、燐から睨まれた林はビクつきながら首を縦に振った。
「燐、林に謝って……いきなり乱暴にしたら駄目じゃないか」
 そう麻耶が言うと、燐は麻耶を抱きしめてイヤだという。
「麻耶に触るヤツが悪い。じゃれてるってわざと触ってんじゃないのか?」
 そう言いながらやってきたのは連だった。二人が揃うと周りが騒がしくなった。燐と蓮の二人組のモデルはこの大学でも有名だ。だから騒がしくなる。
「うわ……なに」
 キャーキャーと女学生が騒ぎ出し、麻耶も唖然とする。
「え、なに、草間くんと知り合いなの?」
「マジ? 紹介してもらおうよ」
「本物が見られるなんて、ラッキー」
 騒ぎが大きくなってしまい、麻耶は一旦大学を出ることにした。
「林、また後で」
「ああ、うん、俺も悪かったよ」
 林とは食堂で別れて、麻耶は燐と蓮を連れて大学を出て近くの喫茶店に入った。
 そこまで女学生が付いてきたが、さすがに店の中で騒ぐわけにはいかず、騒いでいる人にはマスターが退去するか静かにしているか選んでくれと言って、他の客に配慮をしていた。
 麻耶はマスターとは子供の頃からの知り合いで、この喫茶店も昔はよく来ていた。
「何しに来たの?」
 麻耶がそう頼むと、燐は黙ったままで連が答えた。
「麻耶のいる大学を見たかったから見学に来た」
 双子とは大学が違うので、二人は一度受かった大学を麻耶と同じ大学に行きたいからと言って浪人しようとしたほどだった。
 しかし麻耶はもう一年で卒業するし、一緒に通えるのは一年程度であることや将来のやりたいことで、選んだ大学をここで蹴ると遠回りになるから勧めないとはっきり言われたことで、大人しく受かった大学に通ってくれている。
「こんなことなら……浪人してでも付いてくるんだった」
 燐が悔しそうに言うので、それに麻耶が突っ込む。
「浪人したら、そもそも大学には入れてないじゃん」
「その分、麻耶の側にいられるじゃん……ずっと付き添って」
 燐の本気の執着に麻耶は呆れた顔をする。
「さっきの人、友達? 林って人」
 そう話題を変えて蓮が聞いてきた。
「小学校からの友人の林です。たく、じゃれるのなんていつものことなのに、なんでああなるんだか……」
 林とは長いので、兄弟のように育ったようなものだ。林の家は時折麻耶のことを預かってくれて、親子共々恩があり過ぎて頭が上がらないほどなのだ。
 そう説明をすると、燐がしまったと顔を顰めた。
「直接謝ってくれると嬉しかったけど、会わせるとまたもめそうだから、俺から謝っておく。二度と林にあんなことするんじゃない。次は許さないからな」
 麻耶が本気で怒っていることに気付いて、燐がしゅんとなると、後ろにいた女学生がその話の端を聞いていたのか。
「えらっそう、何あの人、最悪じゃん」
「何様~」
 と呟いているのが聞こえた。
 それに燐が何か言おうとしたので、麻耶が無言で止める。
「でも」
「その辺は燐、俺と麻耶は同じ気持ちだ」
 蓮がそう燐に言った。
 最近になって、連は自分のことを僕とは言わなくなった。俺と言い出し、言葉遣いも男らしい言い方になってきている。
「麻耶が悪く言われるのは、燐の軽率な行動のせいだ。俺は別に言い返してもいいと思うが、燐のやり方じゃ麻耶の立場がもっと悪くなるかもしれない」
 そう連が言い、燐はその通りだと思ったのか怒りを静めて椅子に座り直した。
「ごめんなさい、麻耶……あと、その林って人にも……」
「分かった、ちゃんと言っておく。燐が謝っていたって」
「うん」
 そう燐がしょげるのだが、それを麻耶はふっと笑って頭を撫でた。
「偉いぞ燐、そうやって素直に謝ってくれて兄ちゃんは嬉しいよ」
 そう麻耶が言うと、話を聞いている女学生たちがギョッとした顔をして麻耶たちの席から顔を背けた。
 よもやの兄である。
 燐と連の母親が再婚して、その父親の方にも子供がいて二つ上に兄ができたことは、燐も蓮も普通に話していることだった。ただその麻耶について、一緒にいるところを見た人はいない。
 特に大学生の女学生が四六時中追っかけをしているわけではないので、麻耶の存在が兄であることは知りもしないことだった。
「落ち着いたか? 燐」
 蓮がそう聞くと、燐が頷いて言った。
「うん、悪かった。麻耶が襲われているって思って暴走した」
 燐が言った言葉に麻耶が呆れた顔をした。昼間の学食でどうしてそういうことになるんだと、目眩がしたのだ。
「俺も最初はそう見えたけど、麻耶が笑ってたから違うかと思い直した」
 蓮がそう言い、麻耶は溜息を吐いた。
「君らはもう、仕方ないな……」
 そう言ったらちょっとおかしくなって笑ってしまった。そういう麻耶を見て燐はやっとほっとして息を吐いた。
 麻耶が本気で怒ったことは今までなかった。その上で、麻耶が大事にしている部分を踏み荒らしたことに燐はゾッとするほど恐怖を覚えた。
 麻耶には育ってきた環境で、絶対に頭の上がらない人たちがいる。その人を蔑ろにして麻耶が怒らないわけがない。下手すれば麻耶は双子には見向きもしなくなっただろう。
 麻耶に嫌われること、それがここまで恐ろしいことだとは双子も思わなかった。
 その恐怖が一瞬にして燐と蓮の中に刻み込まれた。



 麻耶の周りが変わったのは、その一件以来である。
 もちろん、双子との中を取り持つようにという女学生に呼び出され、無理矢理手紙を渡されそうになる。
 しかし麻耶はそれに関しては双子から強くお願いをされていることを毎回口にした。
「あのですね。家族を使っての手紙はご遠慮願います。絶対に受け取れませんというのが二人の返事です。もしまだ渡したい気持ちがあるのでしたら、こちらの住所に送ってください……すみません」
 そう言って二人が所属している事務所の私書箱の住所を渡すのが麻耶の役割になった。
「……ひどい……手紙を渡してくれるだけでいいのに……」
「……とにかく俺を伝書鳩に使っても、彼らはその手紙を読むことはないです。彼らがそう言ってくれと伝言を受けているので」
 そう断ると、麻耶のことを悪魔と罵って消える。
 中には分かってくれる女学生もいるが、半数は「それくらいいいじゃん」と言う。
 それくらいが麻耶の負担になるからなのと、本当にそうした手紙を双子が読まずに捨てるところを見た麻耶としては、受け取るわけにはいかなかった。
 二人の言い分にも一理どころか正しいと思ったからだ。
「どうせ、麻耶を踏み台にして俺らに近づきたいんだろうけど、そんなことをして近づいてくる女なんて碌な女じゃないだろ。どこの世界にこっちの言うことを無視して我を通す女を好きになるやつがいるんだよ」
 と、燐はそう言うし。
「麻耶を踏み台に使う女なんか好きになるわけない。そんな手紙の押しつけ文句に一ミリの感情も動くわけないだろ」
 と、蓮も同じだ。
 その結果、麻耶が迷惑を被っている。
 二人の言い分を伝えても、それくらいという気持ちがあるらしい人たちから、麻耶は悪口を言われ、二人に嫉妬しているとさえ思われている。
「なんか、ほんと暮らしにくいな」
「うん」
 林は麻耶が受けている理不尽な仕打ちに対して、納得がいっていなかった。
 最初こそ文句を言ってくれていたが、やがてその理不尽が意味不明になった辺りで麻耶が林に辞めるように言ったのだ。
 もう言葉が通じるような人たちではないのだから。
 そうしていると、双子の事務所から声明文が出た。
「家族に対して理不尽な要求をし、それを拒否したことによって生じている問題に関してか……。それでもこれだもんな……あいつらの携帯はどこの世界に繋がっているんだろうな……」
「というか、自分だけは特別だって思っているんじゃないかな」
 麻耶がそう言うと、林がキョトンとする。
「そういう気がする」
 麻耶がそう言う頃には、講義を受けている教授にすらそれくらいと言われてしまい、家族がそれを受け取る事に関して、事務所側で注意発起をしていると伝えると、思った以上に大事になっていることは理解してくれた。
「有名人がいきなり家族になって、知りもしない人との橋渡しをさせられるか、それをその有名人が冗談じゃないって怒ってるってことなんだね?」
「はい、皆、それくらいというのは一枚二枚程度だと思われているのですが、毎日それが続いたらさすがにお金を取ろうかと思うほどです」
 麻耶がそう冗談を言うと、教授は笑って言った。
「確かに。それはそうだな。じゃあそう言ってきた子には切って貼って郵便に投函しろと言っておくよ」
「ありがとうございます」
 教授との話し合いは上手くいったので、一部の人はとうとう諦めたようだった。
 さすがにその有名人がかなり怒っていることや、そんなところに手紙を渡させてもきっと読んでは貰えないだろうし、寧ろ二度と顔もみたくないほど嫌いになるだろうなと教授が替わりやすい言葉で言ったものだから、さすがに状況的にマズイと思ったらしい。
 結局、自分にとってプラスにはならないと分かったら、手段を変えたようだった。
 しかし一部の女学生に根付いた麻耶の頑なな態度のことは、あくまで嫉妬ということにしておくらしい。
 無駄に女学生に嫌われて、その話題が有名になったせいで、麻耶は大学では知らない人がいないほどの人間になってしまった。
 その結果、今まで話したこともない人から妙な誘いを受けることになってしまった。
「草間さん、俺と付き合ってください!」
「すみません、そういう気は一切ないので。お気持ちは嬉しいです」
「あ、いえ……俺の方こそ、聞いてくれてありがとうございました」
 講堂の裏に呼び出された麻耶は、男の人に告白をされた。
 ここのところ、冗談じゃないかと思うほど多く、酷いと毎日呼び出されてしまう。なるべく、怪しい場所にはいかないようにして、林が側にいてくれる形でしか赴かないのだが、それにしても多い。
「今週で七人目だけど、一日一人ペースを超えたよ」
「みたいだね……」
 告白を断られた学生が去って行くのを見てから林がやってきて、麻耶はほっとしながら林と裏門から大学を出た。
 既に日が傾いているので、さすがにそんなときに講堂の裏は二人でいても怖いものだ。 早足で抜け出して、駅に行く。
「大学入った時は多かったけど、最近ぱったりだったから忘れてたな。お前、何だかんだで男にはもてるんだよな」
「あんまり嬉しくない……というか、最近多すぎる。あのアホ双子のせいで顔が売れたんだ」
「まあ、そうだろうね。あと変な噂が出てる。お前がホモだってさ。どうせ出所はあのクソ女どもだろうけどな」
「ああ……そういうことだろうけど……それとも違う、本気が多すぎる」
 麻耶がそう言うと、林もそれを感じていたらしく頷いた。
「大学入ったころは興味本位で引っかかればいいかな~くらいのことだったけど、今は本気でお前のこと好きなやつが玉砕覚悟できてる気がする……」
「何にも変わってないのにな」
「確かにお前はいつでもお前なのに」
 林も麻耶の何かが変わったとは言えないくらいに麻耶は麻耶だった。
 だから麻耶が変わったのではなく、周りの認識が変わったのだろう。それもあの双子の事件後だ。
「まあ、玉砕してくれて素直に下がってくれるのはありがたいよ」
 麻耶がそう言うと林も頷いた。
「確かに」
 とにかく騒動が一段落するまでは用心することにして、駅で林と別れた。
 電車でマンションまで帰り、エレベーターに乗って自分の階まで上がった。
 すると、エレベーター口で誰かが立っている。乗る人だったのかと思ってよけて降りたが、その人はエレベーターには乗らなかった。
 麻耶はそれに気がつかずに鍵を持って歩いて行き、端っこの部屋まで行って鍵を開けると、急にその後ろにいた人が走ってきて、麻耶を突き飛ばして一緒に部屋に入り込んだ。
「……っ!」
 思いもしなかった力で突き倒されて、麻耶は玄関先に吹き飛ばされた。
 廊下で身体を打ち付けている間に、玄関が閉まった。男が一人立っていた、その男が玄関の鍵を閉めている。
「だれ……っ!」
 廊下で後退りながら逃げようとすると、男が麻耶に襲いかかってきた。
「ひっ!」
「麻耶くん……好きだっ!」
「いやだっ! 離せ!」
 麻耶を捕まえた男が麻耶の上に乗り、暴れないように押さえつけてくるが、麻耶も負けてはいなかった。必死に暴れ、逃れよとすると、急に頬に痛みが走った。
 男が麻耶を叩いたのだ。それが二、三回すると頬が熱くなった上に恐怖で身体が動かなくなった。
「麻耶くん、酷いよ。僕の心をもてあそんで……好きだって言ったのに、断るなんて」
「ひっ……」
 それはさっき告白を断った男だった。住所を調べて先回りをしていたのだ。
 男はそのまま麻耶の服を脱がしにかかった。その時だった。
「麻耶? 帰ってきたの? 廊下で何して……」
 いたのは燐だった。
 リビングのドアを開けて出てきたところの廊下に麻耶が男に押さえつけられて倒れているのを見えた。
「……き、さまっ! 殺してやるっ!」
 何をしているかなんて、見れば分かることだった。
「ひあああっ!」
 怒りに狂った燐が襲いかかってきて、男はさすがにこれは想定外だったのか、玄関に向かって逃げた。
 しかしその玄関の鍵が開いて玄関が開く。
「蓮! そいつ逃がすな! 殺せ!」
 燐が大きな声で叫ぶと、蓮はすぐに察したように玄関に入り、その男を出迎えた。
「どけえええっ!」
「うるさい、不法侵入は貴様の方だろうがっ!」
 蓮が走ってきた男に跳び蹴りを食らわせて廊下に倒した。
 そこに燐が走ってきて、男に殴りかかった。
「きさま! 殺してやる!」
「や、やめろっ! ああっ! う! あ!」
 無抵抗に殴られる男と、廊下に倒れている麻耶がゆっくりと起き上がったのが同時で、事態が飲み込めてなかった蓮がやっと状況を把握した。
「……麻耶を襲ったのか、きさま」
 持っていた荷物を放り投げて、燐が殴っている男に向かっていく。その手には傘が握られている。
 麻耶はそれに気付いて慌てて燐と蓮を止めに入った。
「燐だめっ殺したらだめっ! 蓮もそれ駄目! お願い!蓮、警察を呼びなさい! 早く!」
 麻耶が必死に止める頃には、犯人は気を失っていた。
 燐も麻耶が後ろから抱きついて止めると、やっと殴るのをやめた。
 蓮はそんな男を上から眺め、言った。
「こんなゴミ、殺しても誰も悲しまないよ」
「だめ、蓮、警察を呼んでお願い……」
 麻耶が必死に頼むと、蓮は動かない。
 その頃には玄関先での騒ぎが、玄関が開いた時に聞こえていた、宅配便の人が玄関のチャイムを押してくれていた。
「何かあったんですか? 警察を呼びますか?」
 それに気付いて麻耶が玄関に出た。
「あの、警察をお願いします……泥棒が入って、その犯人を撃退しようとして家人が殴りかかって犯人が気絶してます……」
「分かりました!」
 宅配便の人が警察を呼んでくれた。
 すぐに警察がやってきて、犯人は気絶をしていたが警察が起こして連行していった。顔は酷く腫れていたが、それだけなので大丈夫だろうということだった。
 麻耶は燐に抱き留められていて、蓮が受け答えをしていた。
 警察も麻耶が襲われて、それを見た燐がキレて殴りかかり、蓮が帰ってきたので犯人が逃げられなかったのだろうと分かっているようだった。
 ただ、その泥棒が実は強姦魔であることが麻耶の服装の乱れから分かり、犯人を麻耶が知っていると言ったので、すぐに犯人の身元は分かった。
 同じ大学の別の学科であるが、麻耶のことを好きだったらしく、告白を断られたが家を知っていたので先回りして麻耶が帰宅するのに合わせて押し入ったというのが犯人の供述だ。
「俺の告白を断るとかあり得ない! ふざけるなよ、あんな淫乱なやつ、犯してやったらすぐ俺の物になったのに! なんだよ男と暮らしてんのかよ! ちくしょ! 殴ったヤツは訴えてやる!」
 と息巻いていたので、警察が正当防衛であることや犯人が反省してないので被害届は下げないで欲しいと言った。そうしないと次の被害が出るというのが警察の見解だった。
 すぐに両親が呼ばれたが、警察の言う通りにしてもらった。
 祖父がマンションの警備の不備をかなり怒っていたらしく、すぐに別のマンションに引っ越すようにと手続きをしているらしい。まったくの血の繋がりのない孫になるから、その怒りのポイントは自分の紹介した場所で襲われたのが気に入らないらしい。
 燐はずっと麻耶に抱きついて離れないし、蓮は刑事すら麻耶に近づくのを警戒するほどに興奮していて、警察も手を焼いた。
 何とか両親と二人を宥めて麻耶は警察の捜査に協力して深夜になってやっと警察から解放された。
 その日はホテルに泊まり、数日は大学を休むように言われたので麻耶はその通りにした。
 その間、燐は絶対に麻耶の側を離れなかったし、蓮は全ての麻耶が手にする物や口にする物をチェックして、何一つも麻耶を傷つけるものを排除をしようとした。
 あまりにも麻耶の側を離れないものだから、両親も心配したが麻耶がそれを許していた。
「ショックを受けたのは確かに襲われた俺だけど、一番ショックを受けているのはそれを見ちゃったあの二人なんだ。特に燐は……その現場そのものを見ているから……可哀想で……蓮も混乱している中で状況が分かった時は、多分酷くショックを受けてただろうから……暫くは二人とも駄目なんだと思う……」
 麻耶の言葉に両親は燐と蓮の麻耶への執着を知った。
 それと問いたそうな両親に麻耶は首を振って言った。
「俺は大丈夫、二人とも面倒を見るよ。だから二人は俺に頂戴ね」
 麻耶がそう言うと、母親の方がそれにすぐに納得した。
 父親は何が何だか分からないが、息子がそこまでショックを受けているわけではなく、弟たちのショックを和らげようと行動していることを喜んだ。



「燐、トレイに行くからちょっと離れてて」
 そういうと燐は少しだけ離れて、でも決して遠くにはいかないで待っている。
 トレイから出てくると必ず駆け寄ってきて、麻耶を抱きしめて安堵する。
 家の中で襲われたという事実が、自宅ですら安堵する場所はないのだと思っているらしい。
 自宅はすぐに引っ越しをした。
 今度はエレベーターにすら指紋認証が必要で、宅配便すらも受付で宅配ボックスを使わないといけないという場所だ。怪しい人が入り込めても、すぐに警備員が飛んでくる。
 もちろん、住人に付いて入ることはできるが、それでも目的なくうろついていると、警備に摘まみ出されるというマンションだった。
 双子の祖父がそこを選んで双子に買い与えた。先の場所はセキュリティの問題ではなく、ただ麻耶が不注意だったから起こったことだったのだが、それでも祖父はそれを許しはしなかったのだという。
 双子は黙ってそれを受け入れた。その時に初めて義理の祖父にあったのだが、あまりに双子のショックを受けた姿に、何か思うところがあったようで、麻耶に対しても丁寧に被害が大きくなかったことが何よりだったと言ったほどだ。
「この子らが私を見て何も言わないのは、初めてのことだ。麻耶さん、あんたのことが本当に大事で仕方がないんだろうね……こういうのも私の皮肉だが、やっと孫も一人前になったもんだ」
 そう祖父は言っても二人は何の反応もしなかった。
 もはや自分たちが何を言われても何も感じないのだろう。それくらいに麻耶を守るためなら平気だと言わんばかりで、麻耶もさすがに可哀想だと思った。
 慰め方は分からないが、それでも麻耶のくれてやるものなんて、自分の身一つしかなかったのだった。


 その夜、風呂に入っていると麻耶が出てこなかった。
 心配になった燐が風呂場を覗くと、麻耶がシャワーを浴びながら燐を風呂場に引きずり込んだ。
「……麻耶? 何して……」
「うん、お前があまりに可哀想で、でも俺には慰め方は分からない。けれど、こうやることは嫌いか?」
 そう言うと麻耶はシャワーの中に燐を連れ込み、燐の股間を弄った。
「ま、麻耶……何してっ」
 やめさせようとすると、麻耶が燐の顔を掴んで引き寄せてキスをした。
 麻耶からのキスは正直初めてで、燐は硬直した。
 口の中に麻耶の舌が入り込んでくる。まさかとハッとした時には麻耶を引き寄せて深いキスを仕返した。
 絶対に家族ではしないキス、それが麻耶から行われたことで燐の理性はすぐに壊れた。
「麻耶……麻耶……ああっ麻耶好きだ……」
 そう言いながらキスを繰り返し、麻耶はそれに応えた。
「あ……んっ……んんっああっもっと好きな気持ちを見せて……いいよ何でもいいから、見せて燐」
 麻耶がそう言いながらキスを仕返すと、燐は暴走した。
 麻耶の首筋にキスをして噛みつき、そこを舐めてはまた噛みついた。
「あ……はっんっああっ……んっもっと触って……んっそう……はあんっ」
 麻耶がどんどん呼び込んで、燐はどんどん煽られた。麻耶の手が燐の手を掴んで乳首や腰、尻まで導いていく。
「ああ、本当に……? 麻耶……夢じゃない?」
 信じられないという顔をしている燐に麻耶は甘く囁いた。
「いいんだよ、燐が好きにして……これしか俺はあげられないから……欲しいなら貰って……あ、ん、でも次は、蓮にもあげちゃうから、独り占めはできないけど……それでいいなら……んっんんんっ!」
 麻耶が蓮にもあげるのだと告げると、燐が麻耶にキスをした。
「蓮にもあげるけど……先にくれるのは俺? 本当に?」
 燐が信じられないことを夢見ているのだと言うと、麻耶はそんな燐の身体を弄って、上着を脱がせ、さらにはズボンも下着も腰の部分を脱がせて、そこから出てくる燐のペニスを手に取った。
「……麻耶……」
「うん、よかった。ちゃんと硬くなってるね……んんっんうっんふっ」
 麻耶は燐の前にしゃがみ込むと、そのペニスを咥えた。
「ああ、麻耶、信じられない、麻耶が俺のペニスを口に……」
 燐はそう言いながらも麻耶にやめさせようとはしなかった。優しく麻耶の頭を撫で、麻耶がしっかりとペニスを咥えているのを上から眺めている。
 燐がシャワーを止めて、麻耶のペニスを咥えている顔を見て喜んでいる。
「たまらねぇ……なんだこれ……麻耶が俺のペニスを咥えて……ああっ、たまらない、すぐにででしまう……」
「んふっ んっんーっんふっんぅん」
「麻耶……麻耶……ああ」
「んぅ……っん、んっ、んぁ……んんっ、んふっん……おいしいよ……燐のおち○ぽっ」
「うわ、腰に来ること言わないで麻耶……やばい……早漏じゃないのに……」
「んんふっんんんっんんふっん――――――っ」
「くそ、でた……」
 燐は麻耶の口の中に射精をした。自分では我慢した方だったが、それでも好きな麻耶にフェラチオをされたら我慢が続くわけもなかった。
「んふ……あっんっ」
 麻耶はそれを全部ゴクリと飲み込んだ。
 そして言うのだ。
「ああ、これをここに頂戴……燐」
 麻耶がそう言って尻を向けて、アナルを見せる。
 それを見せられた燐は吸い寄せられるように麻耶のアナルに舌を這わせた。
「ひぁっ……あああっ、あんっ、うぁ、あっあっ」
「麻耶……ああ、ここも綺麗だ……」
「あぁんっ……きもちぃっ……あうっ、ん、はぁっ、あっあっ……」
 舌でアナルを舐られて、麻耶は腰を振った。気持ちがよかったし、燐が何より喜んでいるのが嬉しかった。
「ああんっ……あっ、あぁっ……」
 舌で舐めてから燐が指を入れて、麻耶のアナルを指で犯し始める。
「あああぁっ……ひっ、あっああぁーっ……」
「麻耶、これ自分で弄ってた? なんか柔らかい……」
「……う、うん……あんっ燐たちとするために、自分で弄ってた……んふっ想像することは、燐たちがここにおち○ぽを挿れてくれることを想像して……ああんっ」
「凶悪すぎるよ麻耶……なんてイヤらしいことを……俺たちのために……」
「あふ、んふうっ、舌、きもちいいっんうぅ――……っ!」
「美味しいよ、麻耶……ああっ嬉しい麻耶が俺に身体を開いてくれるなんて……」
 燐はジュルジュルと音を立てて麻耶のアナルを舐めて吸った。
「ふうう……っ、うぅ、っふ、んんっ、んんん……っ」
 指はすっかり二本入っていて、それが挿入を繰り返している。
「あっ、あああああっ!」
「麻耶のいいところ見つけた」
「ああっ、あっ、あっ、あっ、んあぁああっ」
 燐は麻耶の前立腺を擦りあげて、麻耶の快楽を引き出す。
「んんっ、っあ……っ、ああっ、あー……っ」
 何度もイキそうになるのを堪えながら、麻耶は腰を振って燐が与える快楽を受けた。
「もう我慢できない、挿れていいよね、それが麻耶の願いだもんね……ああ」
「んぁああっ!あーーっ、ああっ! ひぁあああ……っ」
 燐は早急に麻耶のアナルにペニスを突き入れた。
「あああんっ!! あっ、ひぁっ、んぁっはぁんっ!!」
「ごめんね麻耶、我慢できない……」
 そう言うと燐は麻耶の中を掻き混ぜながら腰を強く振った。
「ああああーっ! ああぁっ、ひっふぅっ……あっ、ああぁっ」
「麻耶……麻耶っ……きもちいいよ……ああっ麻耶……綺麗だ……想像したとおり」
「あぁっ……ああ、燐のおちんぽぉっ……あっ、すごいっんあっあぁんっ!」
 譫言のように何度も燐は麻耶の名前を呼び、腰を振る。それが麻耶を快楽へと導いた。 
 男同士のセックスでここまで感じるとは思ってなかったので、麻耶は燐のペニスに快楽に突き落とされた。
「ひぃっああああぁー! あっあぁっ、あんっ、ふぁっ、ん……はあんっ!」
 燐は麻耶を突きながら、麻耶の嬌声を聞いて更に腰の動きを速めた。
「っ!? ひあああっ、あぁっ燐、いいっんぁっ、ああっ、あああぁっ!」
「麻耶……いいよ……麻耶……ああ、麻耶の初めてを……俺が貰った……」
「ああああぁ! いっちゃうっ、燐のおち○ぽでいっちゃうのぉっひぃあっ、あんっ、ぁんっ、あぁっあああああっ!!」
「イッて俺のペニスでイッて麻耶っ!」
「あぁっ……燐っああんっ……おちんぽぉっ……おれの、おま○この奥までいっぱい突いてっ、あんっあああああっ!!」
 ガンガンと乱暴に突かれながらも麻耶は燐を求めた。
「ああああぁんっ! ああぁっ、あんっあんっ、ふぁっ、気持ちいいっ燐、いいっっ」
 嬌声は風呂中に響いていて、多分廊下まで聞こえているはずだ。
「ひっあああぁっ、あっ、あっあっぁんっ! ふぁっ、いいっ燐っ……」
 そろそろ蓮がこの異常に気付くはずだ。
 だから燐とはそろそろ終わらないといけない。
「んん~っ、ふっん、ん、ぅんんっ」
「んふっ……麻耶っ……ん……すごいよ麻耶……夢のようだ……」
「んあっ……燐、きもちいいっん、んう、んっんんっ!」
 キスをしながら追い上げられて麻耶は叫んだ。
「ふぁっ……ぁっ……せいえき、いっぱいだしてっ……ああんっ!」
「出すよ、中に出すよっ麻耶っ!」
「ひぁんっ! あぁっ、燐のせいえき、おれのっおま○こにぃっああぁっいくっ、せいえきでちゃうぅっ! んんっ、あんっあんっぁあんっあああああぁっ!!」
 麻耶はそう嬌声を上げながら絶頂をした。
 そして燐も麻耶の中で射精をし、精液を中出しした。
「っはあっはぁっ……ぁ、あぁ……」
「麻耶……嬉しい……とても気持ちがいいよ……麻耶、愛してる……」
「ん、燐、好きだよ……んふっんでも、次は蓮だから……んん、そう抜いてね……またしようね、ああんっ」
 燐は言われた通りに麻耶のアナルからペニスを抜いた。しかしまだ勃起をしているペニスが目に入って麻耶は苦笑する。
「ああん、元気だね……んふ、んん」
 そう言いながら麻耶が燐にキスをしていると、風呂場のドアが開いた。
「……麻耶、これ合意だよね……」
 蓮だった。
 湯気で顔は見えないが、きっと怒っている。
「うん、……そうだよ。燐の次は蓮だよ……ちょっと待ってね、中に出されちゃったから……洗って……から……んふっ」
 自分でアナルを洗っているのを燐と蓮がしっかりと見ている。
 見られながら洗うなんてこと、予定にはなかったのだが、仕方ないと麻耶は何もかもを燐と蓮に見せた。
「……はっお待たせ……蓮?」
 やっと洗い終えて入り口に行くと、蓮が急に麻耶を抱き上げた。
「っひぁっ!? んっああぁんっ!」
「ずるいよ、麻耶……燐が可哀想だったからって、俺は後回しなんて……」
「うん、ごめんね。だから蓮一人で好きにしていいよ……初めてはごめんね。でも、蓮も好きだからね……」
 麻耶がそう言うだけで、蓮の機嫌はすぐに直った。顔を見ると真っ赤な顔をしている。
「ずるい、麻耶。麻耶にそう言われたら、許すしかないじゃないか」
「えへへ……うんありがとう蓮、優しいね」
 そう言っている間に麻耶の部屋の大きなベッドに辿り着く。
「蓮の部屋でもいいよ?」
「どうせ、終わったら燐が来るから、ここでいい」
「ふふ、蓮は本当に優しいからね……可愛い子。早く、そのペニスを見せて、俺に食べさせて」
「悩殺ものなこと言うんだな……その前にキスさせて……」
「んっ、ふっぅ、んぅ……」
 麻耶はベッドに座ったがすぐに蓮に跨がってキスを仕返し、蓮の服を脱がせた。
 待ちきれないとズボンを脱がせて、ペニスを取り出した。
「……ああんっやっぱり蓮の方が大きい……んんっ」
 双子とはいえ、ペニスの形は似ているが、大きさは微妙に違っていた。蓮の方が大きくて、燐の方が長い。そういう違いだ。
「んっ!? ふぁっ、んっんっ、んっぅんっ」
「麻耶……ああ、きもちがいい……麻耶すごい……夢みたいだ……」
「んっちゅっ……蓮のおち○ぽ……美味しいんっはぁ、ふぅっ……」
 麻耶は夢中で蓮のペニスを口で咥えて扱き、キャンディーのように何度も舐めて咥えた。
「ふむぅっ、んんっ、んっ」
「麻耶……きもちよすぎる……はやく、麻耶の中に入りたい……」
「ぅんっ! まって……口に一回出して……ふぁんっ、んっ、んぅっ、んんーっ!」
「うわっそういうこと言う? わかった出すから……でるっ」
「ふぁいっ、ん、ぅんっ、んんーーっ!」
 蓮は麻耶の口の中で射精をして精液を一回吐き出した。
 それを麻耶は喉で受け止めて、しっかりと全部を飲み込んだ。
「はぁっ、はぁっ……んふ、蓮のもおいしい……んふ」
「マジで悩殺ものなんだけど……どこでそんなイヤらしいこと覚えたんだ……」
 そう言いながら、蓮は麻耶の身体を抱えて起き上がり、ベッドに麻耶を押し倒して、さっそく足を広げた。





「ああ、蓮、早く、おま○こにして……ああん、蓮のおち○ぽを俺のおま○こに挿れて、いっぱい突いて」
「俺らの専用ま○こになってくれるってこと?」
「なるよ……だから頂戴、二人しかいらない……あん、あんっぁあああぁんっ」
「仕方ないな、麻耶は欲張りだから、どうせ俺らどっちかは選べないんだよな。だったら、二人分ちゃんと愛して」
「うん、愛するよ、蓮も燐も大好き……あああぁっ! ああんっちくびぃっ、あぁんっ、ふぁああっ」
 蓮はペニスを麻耶のアナルに突き入れてから、腰を動かしながら麻耶の乳首を唇で吸い上げた。
「あんあんっ……ぁんっ、ちくびっああんっいいっ舌っんふっきもちいいっんっ、ふぅっんんんっ」
「あ、乳首好きなんだね……よかった俺もずっと麻耶の乳首を舐めてみたかったんだ……一番はもう叶ってるけど」
 そう言うと、蓮は麻耶をペニスで突き上げた。
「あぁっあっひっあぁんっんっあっいいっ、あぁん」
「麻耶……俺のペニスに酔って……もっとイヤらしいところ見せて……もっともっと沢山見せて」
「あぁあんっ! あっあひっらめっあんあんっ! ちくびっくりくり、あぁっいいのっきもちいっ……あっあぁーっ!」
「俺も気持ちが良いよ……麻耶、ああ、嬉しい……麻耶を抱けるなんて……」
「ふあぁっんっおま○こっ……あっああっんっ蓮のおち○ぽいいっ……あっあっ」
「卑猥な言葉がその口から漏れてくるのが……もうゾクゾクするくらいいい」
「ひああっらめっ、いいっあひっ……おかしくなるっあっい゛っあっあっあんっあんっあんっあぁんっ!」
「おかしくなって……俺たちが愛してあげるから、もっと狂って麻耶……」
「あひっああっいくっいくっあぁっ……んあ゛っひっああぁんっ!」
 麻耶はそのまま絶頂して、蓮も麻耶の中に射精をした。
「……うわっ釣られた……すごい、中がトロトロしてて、凶悪じゃん」
「……ふっ、んっぅ、蓮、すごい……ん、んん……」
 二人で余韻に浸っていると、燐がやってきた。
「はい、一回は一回だから、混ざるからね」
 そう言うと、蓮から麻耶を取り上げ、蓮のペニスの前に麻耶を四つん這いにさせると、後ろから燐が麻耶を突き上げた。
「ひあぁああーっ……! あひっ……あ゛っあぁあっ……はぁっいいぁっ……ああっ……」
「はい、麻耶、蓮の咥えて……そうそう、口でしてあげてね」
 そう言われて、麻耶は後ろから燐に犯されながら蓮のペニスを口に咥えた。
「ふぁっ……んんっ、んんーっ! んっぅんっんっ」
「すげっ蓮の咥えたとたん、中が締まってきた……好きなんだなそれ」
「んんんーっ! ふぁっあっあっすきっあんっ……蓮のおち○ぽっおいしっんっんはっ燐のおち○ぽすきっん、んんっ……」
「なんて凶悪で可愛いんだ……麻耶……」
 蓮が天を仰ぎ見た。
「マジ凶悪すぎる。こんなの俺たちで可愛がってやらないと、大変だ」
「ああ、そうだな。俺たちでだ」
「んんんっ! んっはふっ……んぅーっんっんっんっ!」
「本当に美味しそうに咥えるなあ……このビジュアルだけやばすぎる」
「んんっ……はぁっ、あっあぁっ……」
「麻耶、もう可愛い……麻耶も嬉しいよね?」
「れ、蓮のおちんぽ、おいしい、ぁっ、もっとハメて、燐のおちんぽ……っ、あはぁっ、おま○この奥までずっぽりハメハメしてっ、ぁんっ、おちんぽ突きまくってほしぃっ……おち○ぽ咥えながら犯されるのすきっあっふぁあっ」
「どこでそんな言葉覚えたの!」
「マジでそれ! なにこれ……凶悪過ぎるでしょ!」
「あ゛ああぁんっ! あぁっ、あっあんっあんっいいっいいっ! はぁっあんっあぁああんっ……」
「ああくそ、また出た! 早漏じゃないのに早漏の気持ちが分かるよっくそっ」
 麻耶の姿に悩殺された燐が麻耶の中に射精をしてしまい、それで蓮が麻耶を同じように蓮のペニスの前で四つん這いにさえてから、後ろから犯した。
「あぁっ! あっあっあひぃっ……おちんぽっすごっあんっはぁっあぁんっ」
「中凄いな……もうこれ、麻耶じゃなきゃペニスたたねえよ」
「あっあっあぅっ……んっ、んんんーっ」
 麻耶は目の前にある萎えた燐のペニスを口に咥えて扱いた。
「んっんっふぅっんっ……ちゅっ、れろっ、んんっ……」
「これだけですぐ復帰できるから、どうしたんだって思うよ……」
 麻耶が口で扱いてやると、燐のペニスが復活した。
「んんっんーっ! はふっ……んっんあんっ……あぁっあひっあんあんっ! んんっ! ……んっぅっ、んんっ」
 それを咥えて、口で何度も扱きあげる。しかし、それでも物足りなくて燐は麻耶の頭を押さえてイラマチオをした。
「んんっ、んっんっふっ……んぅっ、んんーっ」
 喉まで突き入れられながらも、麻耶は燐のペニスに舌を絡めた。
 二人に前から後ろからと犯されまくり、それが気持ちよくて幸せで仕方なかった。ちゃんと二人は麻耶を愛してくれる。だからその分、ちゃんと身体で愛していると何度も何度も伝えた。
「んんーっんっんっんっぅんっ!」
「麻耶っでるっ」
 燐が絶頂して麻耶の喉の奥で射精をすると、麻耶はそれをまた全部飲み込んだ。
「ん――っ! あ゛あああぁっあひっあひぃっ! あっあんっあんっあぁあんっ!!」
「あーたまらん、これ、夢にまで見たやつ。麻耶を抱くのも好きだけど、蓮に犯されてるのを見るのもたまらねえな……」
「はぁああ……みちゃらめぇ……ぁんっあぁっ……」
「可愛い乳首も摘まんでやろうね……」
 燐がそう言って麻耶の乳首を摘まんで引っ張った。
「ひあああぁんっ! やぁっもっやらっあっあんっはぁあっ」
 乳首を捏ね回されて、後ろからペニスで突かれて、麻耶は全身で双子の愛を受けた。
「ふぁああっ……らめっあーっ……あふっあっんんっ……はぁんっ!」
「麻耶、中で出るよっ俺の精液受けて……」
「あぁあっ……あっぁん……あぁあっあんっいぃっ……もっおちんぽっも、らめぇはぁああっ……」
 麻耶は連続で絶頂させられ、倒れ込むと、仰向けにされて体中を二人に弄られて舐め回された。
「んっ……んっ、ふぅ、ん……んぅ、ん、ん、ふっ……」
 燐とキスをして息を継ぐと蓮にキスをされる。
 キスをしていると乳首を弄られて、ペニスを弄られる。
 それに気を取られるとアナルをペニスで犯される。
 セックスは一日経っても終わらず、寝て起きたらまた抱き合ってと、場所を変えながらも台所だったり、居間だったり玄関先だったり、風呂場だったり、トイレでペニスを突き入れられて絶頂をしながら放尿させられたりと、全てを麻耶は二人に見せた。
「はあぁっ……ん、んっ、ふぅ、んんっ……んんーっ……、んっ、んぅ、んっんっ」
「麻耶、こっちもしてね」
「ふぁあっ、んっ、んっ、はぁっ、ぁっあっん、ん、んっぅっんっ」
 あっちをキスすればこっちをして、片方が寝ている間に隣でセックスをして、また休んだら違う方としてと馬鹿みたいにセックスばかりをして一週間を過ごした。
「んんーっ、んっ、んんっ……んーっ……ん、ふぁっ、はぁっ、ぁん……」
 キスをしながら乳首を弄られて、立ったまま犯される。
「あんっあっ、ちくびっ、きもちい……、あっぁっ、あっあっ、んっ、いい、あんっ」
「好きだよね、乳首を舐められながら突かれるの……」
「んっ好き、きもちい、ふぁっ……ひぁっあっあ゛っらめっ……あぁんっ」
 蓮に乳首を引っ張られて突き入れられているのに気を取られている間に燐にペニスを咥えられる。
「あっまた、いっちゃう、らめっ、あっあんっあぁんっ! ひあっあ゛っいくっいくっあんあんあんっ!」
 そのまま絶頂させられて、燐の口の中で射精をして、アナルでは蓮の精液を射精され、中出しされてまた絶頂する。
「ああんっ……すきっ、おま○こにおちんぽハメられてっ、あぁっ、いっぱいおちんぽでおま○こを突いてほしいっあっあぁんっ」
 こんな日々が続くんだろうなと麻耶は何となく思った。
 それくらいに二人の心は手に入れたし、麻耶も二人にメロメロになった。
「おま○こっ、はぁっ……おま○こに、二人のおち○ぽ、奥まで挿れてっめちゃくちゃにしてほしいっ、ん、あぁあっ!」
 燐にそのまま犯されて絶頂すると、蓮が入ってきて絶頂させられる。
「あ゛ひっ……ぅあ、あっあぁんっ! あひっ、ぁあっ、あっあっあっ」
 もうセックスに狂っていて、何日経ったのか覚えてないけれど、それでもいいと思えた。二人は麻耶に付き合ってくれて、最後の最後まで麻耶を犯してくれた。
「んっあぁっあぅっ、おち○ぽでおま○こゴリゴリされるの気持ちいいっ……あっあひっあ゛んっおっおっんっ!」
「麻耶は俺たちのこと好きだよね」
「ひっあっ、あんっうん、すきっああっいいっ、あぁっおま○こっ、おちんぽハメハメされてっあんっきもちいいっひああっんっ!」
「俺らも麻耶をあいしてるよ……ずっと一緒だよ。俺らの天使……」
「あんっ!ぁあっ、あっ、あひぃっひあぁっあひっ、あ゛っ、おちんぽらめぇっ……おま○こ壊れるっあぁっあっああんっ!!」
 セックス三昧の終わりは、倒れたところに二人の精液を体中にかけられた。
 それを浴びながら、麻耶は幸せでこのまま死んでもいいと思った。
「ぁんっ、あぁ、はぁっ、あふっ……」


 麻耶と双子は、今でも一緒に暮らしている。
 その後、麻耶は両親に双子とのことをカミングアウトした。
 母親はそれに驚いてなかったし、父親も最初は混乱したが、麻耶が真剣に二人のことを愛しているのだと言うから、仕方なく折れた。
 双子たちは麻耶のことを本当に天使だと思っていたことを告白した。
「初めて見た時、俺には麻耶が天使に見えた。ああ、俺のところに天使がきたって。それを蓮に言ったら、蓮もそう思ったって。だから絶対に麻耶と一緒になるんだって思って、親をくっつけた。そうしたら俺ら兄弟で、いわゆるあれよゲイの人が結婚するやつになれるって。家族になったら何があっても真っ先に麻耶のことを知れるし、病院とかそういうところでも家族なら絶対に優先されるじゃん、だから絶対に家族にならなきゃって。そう思ってた」
 燐がそう言うと、蓮も頷いている。
 それには麻耶も苦笑した。
「俺は天使じゃないよ、天使はセックスしないじゃん」
 そう麻耶が言うから、燐が大受けしている。蓮は呆れた顔だ。
 最近は双子も違う部分が多くなった。見た目は同じでも性格は違っていて、それでもお互いを尊重し合っている。それは麻耶も感じた。
 双子はモデルの仕事も順調だったが、それ以上の仕事、つまりテレビに出たりはしなかった。個人的な問題というよりは、祖父の実家関係でバラエティに出ること自体がNGになっているのだ。
 事務所も業界もそれは知っていて、二人にそれ以上の仕事は割り振らなかった。
 そのせいか双子の生活は秘密のままで、謎に包まれた双子という売りでまだまだ売れているし、パリコレのようなコレクションにも出るようになっていて世界でも活躍し始めた。
 大学を先に卒業した麻耶は二人のマネージメントを引き受けた。
 そうした仕事が向いていたのと、双子が麻耶のいうことなら大体は聞くので事務所が麻耶をスカウトしたのだ。
 そのお陰で双子はそのままで売れて、男性ファッション誌の双子の看板モデルになっていた。
 それを麻耶が喜んで褒めるものだから、双子も調子に乗って売れた。
 この先のことは分からないが、とりあえずの未来は麻耶も燐も蓮も幸せで、それを周りがとやかく言うことはできなかった。
「ほら、燐、蓮、そろそろ空港に行くよ」
 玄関で麻耶が呼ぶと、まず蓮がやってきた。
「重いの、持たなくていいよ。麻耶じゃ持てないから」
「うえ、ほんとだ重すぎる」
 それからすぐに燐が走ってやってくる。
「ごめん、トイレに行ってたら遅くなった」
「もう、だから早めにいけっていったのに」
「はいはい、麻耶の言う通りですぅ」
 そう言いながら荷物を持って先に燐が出て行く。
 それを追って蓮が出ると、麻耶も玄関から出て玄関を閉めながら言った。
「いってきまーす」
 ドアが閉まり、日常が始まった。