R18Dreamnovel

虚ろな花

 ルシアンは、現在乞食だ。
 家族離散で家はなくなり、バッグ二つほどで家を出て以来、住み込みのバイトなどをしていたが、とうとうそのバイトも首になった。
 理由が、そのバイト先の店長といい仲になったのだが、店長が心変わりをしたせいで振られ、仕事まで奪われたわけだ。
 その店長は、そうしてお気に入りをバイトに入れては悪戯を繰り返し、飽きたら捨ててしまうような人だったのだ。もちろん、初めてバイトに入った時はそんなことになるとは思わなかったし、自分がゲイの素質まであるとは見抜けなかった。
 店長はルシアンを上手く調教し、思うままにした。
 そんなルシアンに残されたのは、体を使ってその日の日銭を稼ぐくらいしか道がなかった。
 そんな時だった。
 公園でご飯を食べていたところ、身なりのいいスーツを着た老人に話しかけられたのだ。
「君は住むところはないのかい?」
「見ての通りです」
 ルシアンがそう答えると、老人はクスリと笑い、ルシアンに提案をした。
「住むところと仕事を紹介できるが、多少難問があってね」
 老人は親切にもそう言ってきた。
 てっきりボランティアの人間で、こうして見かねた人間に声をかけて回っているのではないかと思えてきたほどだった。次の言葉を聞くまでは。
「実は男とセックスをする仕事なのだが……」
「……え?」
 ルシアンは売春斡旋かと肩の力が抜けた。やっていることは今と変わらない。
 ただ組織に属するのか、そうでないかの違いだけだ。
「君は個人で客を取っているようだが、最近、ここらあたりを根城にしている組織が、君の稼ぎ具合に対して不満を持つようになったようなのだ」
 つまりいい客をルシアンに取られた売春男子が、ルシアンを排除しようとしているのだという。
「逃げたら済むと思ってるなら、甘いよ。あの組織、結構幅広くやっててね。君はあちこちの公園でやりすぎたんだ」
 つまり各公園で稼ぎを出していた売春組織たちの反感を買ってしまい、これ以上公園での客を取ることは不可能になったと言われたのだ。
 それは困ることだ。公園という分かりやすい穴場を手放すわけにはいかなかった。
「そこで提案なのだが、私が住むところと生活費を出す。君は私の頼んだ相手と寝る。これだけなのだが、このまま寒くなる公園で野宿をして、凍死するかい? それとも相手組織に殺されて川に浮くかね?」
 老人は鋭い視線を向けてルシアンにどちらか選べと言った。
 この問答無用の選択肢、たった二つ、生きるか死ぬかの道しかもう残されていないのだと分かってルシアンは初めて自分の命の危機を悟った。
 逃げ道はない。きっとこの老人がその組織の人間なのだ。この提案を受けなければ、老人が去った後、自分はこの場で殺される。
 そろそろ日が暮れかけてきていて、さっきまで散歩をしていたり運動していた人たちが消えていった。
 ザザッと風が吹いて、落ちた木の葉を運んでいく。
 時間にして一分ほどだっただろうが、ルシアンは悩んでから老人に問う。
「危ないことは無しだよ。特殊なことも……」
「そこは心配しなくていい。むしろ今よりは安全だ」
 老人はそう言う。
 確かに個人であれば、健康ケアも相手が病気持ちかそうでないかも気配で感じなければならないわけだが、この組織はそうしたものもやってくれるというのだ。
「……分かった。あんたの組織に入るよ」
 ルシアンがそう言うと、茂みの中から数人の男たちが出てきた。懐に明らかに銃らしきものを持っていた姿だ。やはりルシアンが考えた通り、この老人は組織の幹部だったのだ。
「君が物わかりがいい子でよかった」
 老人はそう言って笑った。
「さっそくだが、今夜から仕事だ。なに、簡単だ。衣装を着て、いつも通りにセックスさせればいいだけだ。君は気持ちよくよがればいいだけ」
 老人がそう言うと、ルシアンに付いてくるようにいい、公園の近くにあるマンションへ連れて行った。いわゆる億マンションというものであるが、そこの一部屋をルシアンに与え、老人は風呂に入って体を綺麗して衣装をつけろと言って出て行った。
 迎えの時間になればまた来ると言って去って行った。
 ルシアンはとにかくホッと息を吐いてから、言われた通りにした。
 どう考えてもマズイ組織であることは分かる。億マンションの一部屋を与えてくるなんておかしな話である。たかが売春男子に対してだ。
 もしかしたら、この後、本当に殺されるかもしれないとルシアンは怖くなったが、どの道、生きていく術がないことが逆にどうなってしかたないという気分にさせた。
 覚悟を決めて今日生き抜くか、それとも死ぬか、その運命に身を任せた。


 着るように言われた服は、今時の服ではなく、中世の物のような洋装だった。
 ジェストコールのコートにジレというベスト、そしてキュロットという膝までの半ズボンという形で、ちょうどフランス革命期あたりの貴族の格好だ。
「なんでこんな格好……」
 着方はメモがありその通りにしてみたり、スマートフォンで検索して探して着てみたが、少々窮屈に感じる。
 それを着て待っていると、老人がやってきた。
 老人は座っているルシアンを見ると、満足したように微笑んだ。
 ルシアンの髪は金髪で、瞳もサファイアのように青い瞳だ。そんな人間がこんな格好をすればそれなりに似合っていると言われてもおかしくない格好だった。
「見立てはよかったようだ」
 言われた通りに髪も後ろでまとめて、映像で見たとおりにしたのだが、これで売春?と首をかしげたくなる姿だ。
「さて行こうか」
 そう言われて車で連れ出される。さすがに億マンションは個別にあるエレベーターで地下まで直通な上に誰にも姿を見られることはなかった。
 そうして辿り着いたのは、見たこともないような広大な土地を持つ個人宅。昔の貴族の屋敷や土地をそのまま買い付けた、どこかの億万長者の自宅だという。その入り口で車を降りると、その横には昔の派手な馬車がある。
 ロイヤルファミリーが乗るような派手なもので、中も広そうだった。
 それに乗れと言われて、開いているドアから中に乗り込もうとしたところ、中にすでに人がいた。
「大丈夫、さあ、おいで」
 見た目は三十代後半から四十代か。身なりはかなりよく見え、顔もイケメンと言っていい。同じようにルシアンのように中世の格好をしていて、それが似合っていた。黒色の髪はさすがに長くはなかったが、髪を撫でつけてピシリとしている。多分、スーツや燕尾服を着ると、女たちがほっといても勝手に寄ってくるような男だ。
 馬車は、対面で座れる大きさで、四人は乗れるサイズだ。大の大人でも膝をつき合わせても当たらないくらいの幅がある。
 男は進行方向に向かって座っていて、ルシアンはその対面に座らせる。
「名前はなんと言う?」
 これに答えていいのか分からず、老人の方を向くと、老人は頷いて答えるように指示してくる。
「ル、ルシアンです」
 言える範囲のことは話しても大丈夫だと耳打ちされてから、馬車は出発した。
 どうやら、馬車で行く先に何かがあるのだろうと思っていると。
「私はイジドアという。そう呼びなさい」
 優しく言った口とは裏腹に、イジドアの手は素早く動き、ルシアンのベストを開けさせて、中に着ているワイシャツを一気に引き裂いたのだ。
 いきなりの行動にルシアンが戸惑うのも気にせずに、イジドアは目を見開いてルシアンの体を見て興奮している。
「ああ、素晴らしい体だ」
 ススッと手が脇から包み込むように這い上がってきて、それが胸を通る時にはイジドアの親指がルシアンの乳首を何度も撫でるのだ。
 急激な刺激に乳首はキュッと引き締まり、ツンッと立ち上がってしまう。
 そしてその刺激は、慣れた快感をペニスへとダイレクトに伝えてくる。
「あ……っ」
 ビクリと体を震わせると、イジドアは満足したようにため息を漏らした。
 片方の親指で乳首を撫でひっかいたりしながら、もう片方の乳首を舌で舐めてくる。
 ざらりとした舌の感触は久しぶりだった。いつもはアナルをローションで濡らしただけで突っ込んでいくヤツしかいない売春だったが、今回は違う。
 ねっとりとした舌が固くなった乳首を器用に転がし、そして唇で吸い付いて、まるで夢中でアイスクリームを舐める子供のように舐め取っていくのだ。
 指で弄られる乳首は、摘ままれて押しつぶされるように捏ねられ、指で弾かれて押しつぶされて爪で引っかかれる。
 椅子に座ったままで馬車に揺れられているのだが、イジドアは床に膝を付き、ルシアンを抱えるように胸に吸い付いたままだ。
 ルシアンの体がビクビクッと何度も跳ね上がる。
「んぁっ……ああぁっ!」
 正直、乳首を責められることはなかったが、自分で弄って感じることができるようにはなっていた。ペニスでアナルを責められている時に乳首を弄るのは好きで、そのせいか、乳首は快楽のスイッチの一つになっていた。
「んふっ……あぁっ! っあ!」
 散々弄ってきた乳首の方の感覚がおかしくなるほどになると、自然とルシアンのペニスも立ち上がっていた。だがキツイキュロットの中では窮屈になって苦しかった。
 すると、イジドアはズボンを器用に切り裂き、見事に下着まではぎ取ったのだ。
 もしかすると、こういうはぎ取りがしやすいように縫い込みになっていてたのだろうか。下半身は完全に裸にソックスになり、靴も履いたままであるので妙なことになっている。
 だがイジドアは興奮したように、乳首から舌を這わせたまま、ペニスの近くを通り、内股にキスをするのだ。
「あああぁ……んっ!」
 完全に股を開いて、イジドアの顔の前にペニスを差し出した形で座っていることに気付いたルシアンは、さすがに恥ずかしくて足を閉じようとするのだが、それをイジドアがしっかりと腕で押さえつけて、パックリと足を開かせる。
 そそり立つルシアンのペニス。それをイジドアは何の躊躇もせずにパクリと口に銜え込んだ。
「んんっあぁああああっぁぁあぁあ――――――っ!」
 イジドアは口の粘膜で固いペニスを扱いた。それもまた酷く上手く、巧妙に舌を絡められてルシアンは乳首で感じていた高まりもあって、すぐに射精をしてしまった。
「あああああああああぁぁっっ!」
 イジドアの頭を抱えて、押さえつけるように達したルシアンのペニスから吐き出された精液をイジドアは嬉しそうに飲み干してしまう。そしてまだ残っている精液を一滴も残さずに舐め取ってしまうのだ。
 そのたびに射精で精液が出ないまま、二度も達してしまい、ルシアンイジドアの舌だけで、実に三度も射精をさせられた。
「んぁあっあっあっ……」
 ルシアンはぐったりしたままイジドアにもたれかかっていたが、イジドアルシアンの体を半分、椅子に置いたままルシアンの腰を高く上げ、そのアナルに唇を寄せ、ルシアンのアナルにしゃぶり付いた。
 ジュルジュルジュルと大きな音が鳴り、ざらついた舌がアナルの襞を舐めてくる。
「あぁっんっんっあぁっ!」
 ちゅくちゅくと唾液が足されていき、閉じていたアナルが徐々に開かれていく。少しだけ緩んだアナルに舌が侵入し、それがツンツンと何度も出入りしては、アナルの襞も舐め取っていく。
「あんっおしり……いやんっあっあっん」
 嬌声がひたすら漏れて、嫌だと言いながらも何の抵抗もしないルシアン
 売春だというのに、ここまで丁寧な前戯は初めてだ。あの店長でもここまではしなかった。
 アナルがゆっくりと開いていくのを唇と舌だけでやってくるイジドア。彼は慣れたようにアナルを三十分かけて舐めて開き、緩くなったところに持っていただろうローションを垂らした。
 それに合わせて指が一気に二本も入り込んでくる。
 グジュリグジュリとアナルの中をかき回してくる指にルシアンは言い様もないほど感じてしまう。
「んぁあっやっあ゛っあ゛っ!」
 やすやすと指を飲み込み、更に三本にされた指で穴を広げられて、ルシアンはひたすら嬌声を上げた。
 この男、イジドアはセックスの過程が酷く上手い。相手を喜ばせることをよく知っていて、そこらの売春の相手とは天と地ほども違った。
 売春相手は、相手だけが気持ちよくなるパターンが多く、ルシアンが達しないことだってあった。だがこれは違う。何度も何度もその舌で達し、何度も何度も勃起するのをやめられないのだ。こんな快楽があったなんて夢にも思わなかった。
「おしり……んぁきもちっいいっいいっあはんっ」
 次第に淫語が口から自然と出るくらいに、イジドアの手管に翻弄された。
「いくっいくっいくっっ――――――あぁぁぁああぁぁっっ!」
 アナルを指で広げられているだけでルシアンは四度目の射精をした。ビュービューと溢れる精液が、もう出ないと思っていたのにまだ大量に出た。
 その精液が顔や胸にかかって、べたりとしたのだが、それすらどうでもよかった。

2
「さあ、次はこれだ。どうだい?」
 アナルの入り口を固い何かが擦っている。
 広がったアナルが少し先の方だけ受け入れているそれは、イジドアのペニスだ。
 その大きさは、今までルシアンが見たペニスとは長さも太さも段違いに大きかった。
「ほら、入っていくよ……ああぁすごい、飲み込んでいく」
 絶対に入らないと思ったのとは裏腹に、イジドアのペニスはルシアンのアナルにしっかりと入っていく。キツキツになりながらもローションで滑るお陰で、イジドアが腰を進めるたびにゆっくりと大きく長いペニスがアナルに入っていく。
 イジドアのペニスが八割入ったところでイジドアは腰を止めた。
「あ……あっ……あっ……あぁあっ」
 じんわりとした痛みと共に、なんともいえない圧迫感がある。だがそれがルシアンの気分を悪くはさせなかった。ルシアンの内壁はしっかりとイジドアのペニスに絡みつき、離すまいとしてしっかりと銜え込んでいる。
 馴染ませるように待っているのか。経験上、無理をすれば相手を壊しかねないと知っているのか。どちらか分からないがイジドアはそのままでしばらく待ち、ルシアンの顔や胸に散った残滓を舌で舐め取り始めた。
「あ、やっん……んぁっ」
 もう全身が敏感になっていて、イジドアに触れられた場所はすべて性感帯になっているかのように体が反応する。
 馬車に乗ってすでに一時間は立っている。その馬車もいつの間にか止まっていて、揺れがまったくなくなっていたのだが、ルシアンはそんなことにすらすでに注意が向けられないほど快楽に堕ちていた。
 両足を押し上げて胸まで届くほど折り曲げた状態で、イジドアは一気にペニスを抜いた。「ひぅあぁあああぁぁぁぁあああっっっ!」
 アナルセックスは抜ける感覚がとてつもなく感じるのだが、それが大きな圧迫感があるものだとすれば、余計に感じる。
 あり得ないほどの快楽の後に、経験のない快楽。それが脳天を突き抜ける快楽となれば、もうルシアンの心配など空の彼方だ。
「あ゛っ!あ゛っ!あ゛っ!あ゛ぁあっ!……おしり……こわれっあ゛ぁああっ!」
 抜けたイジドアのペニスがすぐさま入り込み、そしてまた出て行く。ピストンの動きに合わせてルシアンの嬌声は出続ける。アナルはすでに陥落したと言っていい。あとは残っている思考が消えるまで、そう時間はかからなかった。
「おち○こっすきっ……いっちゃ……いっちゃあぁああ゛ぁっっ!」
「いいね、君、私のペニスにすっかりなじんでる……あぁすてきだ、ルシアン……ぁあ」
 イジドアルシアンが達するのも気にせずに、アナルを犯し続ける。グチュグチュと鳴っていた音にパンパンと肌がぶつかり合う音が鳴り出し、イジドアが強く腰を使っていることが分かる。
 アナルはすっかり溶けきっていたが、それでもイジドアのペニスに食いつき、出て行くのを止めるように絡みついてくる。それにイジドアが力一杯腰を使ってピストンを速める。
「あ゛あぁっ……も、だめっぇ……んぁひあぁっんあああぁ――――――!」
 そう叫んだ時に熱い物が奥の内壁に叩きつけられた。
「あぁんあ゛っあ゛い、いっいい―――っ!」
 奥まで届いたのはイジドアの精液だった。それを感じた瞬間、ルシアンは連続で達していたが、ペニスから精液はでなかった。ただ体が痙攣を繰り返し、絶頂が長く続き、ビクビクと跳ねる体をイジドアがしっかりと受け止めている。
「はは、連続に達するとは、なかなか快楽に弱いんだね。いいよ。まだまだ続くんだから思い存分私の愛を受け取るといい」
 そうイジドアが言ったのだが、それはルシアンには聞こえてなかった。意識が朦朧とし、もはや普通の言葉も口にできないほど、快楽でおかしくなっていたからだ。
 イジドアはペニスを一旦抜いた。すると大きく開いたアナルからイジドアが吐き出した残滓がゴボゴボと吹き出して出た。
「ひぁあっ〜〜んぁ」
 それが伝わる感覚もまた快楽で、嬌声が出る。
 それにイジドアが興奮したように、ルシアンを立たせた。
「さあ、壁に手をついて……そう、後ろから思いっきり突いてやるよ」
 腰を突き出した形にされ、ルシアンは後ろからイジドアに犯された。
 ニュチャニチャッと精液が皮膚に触れて鳴る音や、アナルからなるビュヒといういやらしい粘着音が鳴り響き、あとは荒い息づかいがする。
「あぁん……そこっいい……あ゛っあっんっんあんっあんっ!」
「最初の頃よりは随分といい声で啼くようになったな」
 パンパンと後ろから突き入れられ、ただ前後に揺すられるだけになり、立っているだけでやっとのルシアンがその行為から解放されるのは、セックスを開始して約四時間後だった。
 最後の方はただ椅子にもたれていただけで、腰だけ突き出して、それをイジドアが腰を掴んでパンパンと突き上げているだけになっていた。
 イジドアは絶倫と言ってよかった。普段、それほどやっているわけではないらしい。それもそのはずで、女性相手だとペニスが大きすぎて入らないのだという。だからアナルを使うのだが、アナルを使うセックスなら、何も面倒ごとになりそうな女性よりは男性を買った方が楽だという理由だったらしい。
 ルシアンも買われた一人だが、そのルシアンの具合がよいことが評判になっていたので選んだと言った。
「これだけの名器だ、そこらの男に使わせるなどもったいない。次からは、私の指名だけ受ければいい。飽きるまでは飼ってあげるよ」
 イジドアはそう言って最後にまたルシアンのアナルに精液をたっぷりと注いでいった。
 馬車の床に倒れたままのルシアンを置いたまま、イジドアが馬車から出て行った。
 ルシアンはわずかな意識でそれを見ていた。
「お疲れ様でした」
 そう老人がイジドアに言うと、イジドアは嬉しそうに答える。
「今回のお前の人選は、素晴らしかったぞ。アレを長く使えるようにきっちりと世話をしてくれ」
「畏まりました」
 イジドアはさっとその場で着替えると、真っ黒な車に乗って敷地内の道を走っていく。その先には目映い光が見え、どうやらイジドアの自宅があるらしい。
 だがそこへルシアンは連れていかないのだろう。
 外にマンションを与え、敷地内の馬車の中でセックスをする。甘い時間なんてありもしない、ただひたすら穴に棒を突っ込むだけの行為。
 これは売春なのだ。ただ、高給を与え、セックスするためだけに体を整え、そしてそれにいつでも応じることがルシアンに与えられた当面の仕事だった。
「よくやりました。次も体調を整え準備を怠らず、イジドア様を喜ばせるよう努めてください」
 老人の言葉が決定的だった。
 ルシアンは愛されているわけではないことは、頭で理解していたのだが、あんな優しく乱暴なセックスをしてくれたイジドアのことは絶対に忘れられないだろうと瞬時に理解した。
 あんなに激しく求められたこともなかったし、受け止められたことも、まして食べ尽くされたこともなかった。
 仕事を始める前のさみしさは何処にもなかった。
 だから、この仕事を降りるとは言えない。
「……わかりました……」
 次はある。まだ一回目だ。イジドアは飽きてはいない。
 だから飽きられないように勤めよう。そして、飽きられた時、精一杯の彼から愛情代わりに与えられるモノを持って、遠い世界に行こう。
 そう覚悟が決まった。
 
 それからルシアンは四年三ヶ月、イジドアの元で売春を続け、五年後にはイギリス都市部から遠く離れた避暑地に暮らすことになる。
 小さな農場を作り、そこで自給自足をする生活という、一家離散する前の生活と同じような暮らしになったが、ルシアンには不満はなかった。
 穏やかな日常が流れるようになり、それなりに幸せだった。
 だがそこには時々、新しい売春男子に飽きたイジドアルシアンの元に訪れ、二日ほどルシアンを抱き尽くしては去って行くことを繰り返していた。
 やがてイジドアの会社が倒産し、資金繰りが伴わなくなると、すべてを失ったイジドアルシアンと共に何処かへ消えていった。
 その後の二人の消息は誰もしらない。